近年、多くの業界で人手不足が深刻になっています。その中で「採用にかかる費用を少しでも減らしたい」と考える企業は少なくありません。

こうした課題を支える仕組みのひとつが「助成金」や「補助金」です。
ただし、制度の種類が多く、手続きもやや複雑なため、実際にはうまく活用できていない企業も少なくありません。
そこで今回は、外国人を雇用する際に利用できる助成金や補助金、公的なサポート制度をわかりやすく紹介します。

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助成金・補助金とは?

助成金や補助金とは、国や地方自治体が事業の取り組みを応援するために支給するお金のことです。その中には、外国人を雇う企業を対象とした支援制度もあります。

申請時には、それぞれの条件に沿って手続きを行い、取り組みを実施したあとに報告や審査を受けます。これを通過すると、費用の一部が後払いで支給される仕組みです。
また、金融機関からの融資とはちがい、返済や利息の支払いが不要である点も特徴です。
ただし、事業にかかったすべての費用が支給されるわけではなく、各制度の目的に合った経費の一部だけが対象になります。

助成金と補助金の大きな違いは、どちらも返さなくてよいお金である一方で、補助金のほうが審査や条件がより厳しい傾向にあるという点です。
これは、補助金が限られた予算の中で効果の高い事業を選び、優先的に支援する仕組みになっているためです。その分、成果目標の設定や費用対効果の確認、交付決定前の着手制限などが細かく定められています。

一方、助成金は雇用保険などを財源とし、条件を満たせば支給される「申請型」が多く見られます。通年で募集されていることも多く、比較的申請しやすい制度といえるでしょう。
いずれの制度を利用する場合でも、計画書や契約書、領収書、実施記録などの証拠資料(エビデンス)を早めに整えておくことが大切です。

全国で使える助成金・補助金・公的サポート

国会議事堂の画像

ここからは、国がおこなっている「外国人雇用」に関する主な支援制度を紹介します。
外国人が安心して働ける環境を整えたい企業は、ぜひ参考にしてください。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

外国人労働者が安心して長く働けるように、職場環境の整備に取り組む中小企業を支援する国の助成金です。
たとえば、多言語対応の就業規則づくりや相談窓口の設置、日本語学習のサポートなど、外国人ならではの事情に配慮した取り組みにかかった費用の一部が支給されます。
こうした取り組みを通して、外国人従業員の定着を促すことを目的としています。

項目内容
所管厚生労働省
対象企業・人材雇用保険の被保険者となる外国人労働者を雇っている事業主(※特別永住者および在留資格「外交」「公用」は対象外)
助成率・上限制度で定められた5つの「就労環境整備措置」のうち、1つの導入につき20万円を支給。最大4措置で上限80万円まで受け取ることができます。
対象となる措置①雇用労務責任者の選任
②就業規則などの多言語化
③苦情・相談体制の整備
④一時帰国のための休暇制度の整備
⑤社内マニュアルや標識類の多言語化
対象経費多言語化(就業規則・労契書・社内標識・マニュアル等)、苦情・相談体制の整備、一時帰国休暇制度の整備、外部委託に係る見積・翻訳・作成費用など、計画に基づく就労環境整備の費用。
備考(注意点)離職率の基準:算定期間6か月で15%以下(外国人労働者が2〜10人の場合は離職者1人以下)
参照URL人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

eラーニングを受講する外国人労働者の画像

この制度は、企業の中で行う職業訓練を通じて、外国人を含む社員の専門スキルを高める取り組みを支援するものです。訓練にかかる費用や、訓練中に支払う賃金の一部が助成されます。
計画的な人材育成を進めることで、外国人労働者の技能向上と企業の競争力アップを同時に支援することを目的としています。

項目内容
所管厚生労働省
対象企業・人材雇用保険の適用を受ける事業所で、計画に基づいて外国人を含む労働者に職業訓練を実施する企業
助成率・上限
  • 訓練経費助成:中小企業45%、大企業30%
  • 訓練中の賃金助成:1人あたり1時間800円(大企業は400円)
    ※訓練内容や時間によって異なります
対象経費外部研修の受講料、教材費、講師への謝金、eラーニング費用などの訓練実施経費、および訓練期間中の賃金の一部
備考(注意点)助成対象となる訓練の受講回数は、1人1年度あたり3回までです。
参照URL人材開発支援助成金

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

この制度は、職務経験が少ない人や就職に不安を抱える人を、まずは短期間(原則3か月)お試しで雇う企業を応援する仕組みです。外国人の求職者でも条件を満たせば利用できます。
企業は本採用の前に適性を見きわめられ、求職者は実務経験を積める点が大きな利点といえます。

項目内容
所管厚生労働省
対象企業・人材ハローワークなどの紹介により、職務経験が不足するなど就職がむずかしい求職者(外国人を含む)を試行的に雇用する事業主
支給額・上限定額支給:1人あたり月4万円(母子家庭の母などは月5万円)を最長3か月支給
備考(注意点)同じ対象者について、助成対象期間が重なる他の助成金とは併給不可。
支給対象期間中の合計額がまとめて1回で支給されます。
参照URLトライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

キャリアアップ助成金

正社員として雇用契約を結んだ外国人労働者の画像

有期雇用やパートタイムなどの非正規で働く人を正社員へ転換した企業に対して助成金が支給されます。
外国人の方も対象に含まれ、非正規のキャリアアップと安定した雇用を後押しすることがねらいです。

また、キャリアアップ助成金は正社員化支援として「正社員化コース」「障害者正社員化コース」処遇改善支援として「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「社会保険適用時処遇改善コース」「短時間労働者労働時間延長支援コース」の合計7種類があります。

今回は例として処遇改善支援の「正社員化コース」について紹介します。

項目内容
所管厚生労働省
対象企業・人材キャリアアップ計画届を提出し、非正規労働者(契約社員・アルバイトなど)を正規雇用へ転換した事業主(外国人労働者も対象になり得ます)
助成額・上限
  • 中小企業:正社員転換1人あたり40万円(有期→正規の場合は1人80万円)
  • 大企業:正社員転換1人あたり30万円(有期→正規の場合は1人60万円)
備考(注意点)人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合など、一定の要件を満たす場合に加算あり。
参照URLキャリアアップ助成金

外国人雇用サービスセンター等による相談支援

外国人雇用サービスセンターで外国人雇用のアドバイスを受ける採用担当者の画像

外国人の雇用を支援するために、東京・大阪・愛知などには「外国人雇用サービスセンター」が設置されています。また、各地のハローワークにも専門の相談窓口があり、採用希望者とのマッチングや企業からの相談に対応しています。

外国人の採用手続きや在留資格の確認、労務管理の注意点などについても、専門の相談員から無料でアドバイスを受けることができます。

項目内容
所管厚生労働省
対象企業・人材外国人の採用を検討・実施している企業、人材紹介会社、外国人求職者本人 など
支援内容外国人採用に関する総合相談、求人・求職のマッチング支援、各種セミナー、雇用管理に関する情報提供
利用料無料
利用方法窓口来所、電話、メール(予約制の専門相談あり)
備考(注意点)助成金ではなく相談支援のため、ほかの制度とあわせて利用可能。企業の機密情報の取り扱いには注意が必要です。
参照URL外国人雇用サービスセンター一覧(Employment Service for foreigners)

 

ハローワークで外国人を採用するには? 求人の出し方と活用ポイント

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地方自治体が実施する助成金・補助金・公的サポート

ここからは、地方自治体が中小企業などに向けて行っている支援制度を紹介します。
国の制度に比べて申請条件がやさしいものも多く、地域の企業にとって利用しやすいのが特徴です。

自治体によって内容や対象が異なるため、ここで紹介する例を参考に、お住まいの地域や勤務先の所在地で使える制度もぜひ調べてみてください。

中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金(東京都)

ビジネスマナー研修を受ける外国人新入社員の画像

東京都内の中小企業が外国人従業員に対して日本語やビジネスマナーの研修を行う際に、その費用の一部を助成する制度です。
外国人社員の日本語力やコミュニケーション能力を高め、職場への定着をサポートすることを目的としています。

現在は、日本語教育や異文化理解のための研修を実施する企業を対象としており、ウクライナ避難民を雇用している企業向けの特別コースも設けられています。

項目内容
所管東京都産業労働局 雇用就業部
対象企業・人材
  • 一般コース: 都内の中小企業などで、日本語能力試験N2程度以下の外国人従業員を雇用している企業
  • ウクライナ避難民採用企業コース: ウクライナ避難民を雇用している都内の中堅・中小企業など
助成率・上限
  • 一般コース: 対象経費の2分の1(上限25万円:標準プラン/15万円:短時間プラン)
  • 避難民コース: 対象経費の10分の10(上限50万円:標準プラン/30万円:短時間プラン)
対象経費日本語教師による日本語研修の委託費、日本語教材の作成費、ビジネスマナーや異文化理解講座の受講費など
備考(注意点)ビジネスマナー・異文化理解講座の受講のみを単独で行うことはできません(日本語研修との併用が必須)。
参照URL中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金

神奈川県高度外国人材受入支援補助金

この制度は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」や「高度専門職」を持つ高度外国人材を中小企業が採用する際に、その初期費用の一部を補助するものです。
神奈川県内の企業がグローバル人材を採用しやすくすることで、県全体の産業成長を後押しすることを目的としています。

項目内容
所管神奈川県 産業労働局 雇用労政課
対象企業・人材神奈川県内に事業所をもつ中小企業などで、在留資格「技術・人文知識・国際業務」または「高度専門職」をもつ外国人材を新たに採用(受け入れ)する企業
助成率・上限対象経費の3分の1以内で、上限は1人あたり50万円。1社あたり3人まで。
対象経費在留資格取得手数料、来日時の渡航費、リクルート費用、内定者の日本語学習費用など
備考(注意点)予算枠に上限があるため、早めの申請がおすすめです。
参照URL神奈川県高度外国人材受入支援補助金

外国人介護職員が長く働ける、魅力ある埼玉介護の促進補助金

介護施設で働く外国人労働者の画像

この制度は、埼玉県内の介護施設や事業所で働く外国人介護職員の資格取得と長期的な定着を支援する補助金です。
技能実習生や留学生アルバイト、特定技能の外国人など、将来的に介護福祉士を目指す人たちが安心して働ける環境づくりを目的としています。

項目内容
所管埼玉県 福祉部 高齢者福祉課(介護人材支援担当)
対象企業・人材埼玉県内で介護保険サービスを提供し、「埼玉県外国人介護職員応援宣言」に賛同して外国人介護職員のキャリアアップに取り組む介護施設・事業所。
助成率・上限
  • 資格取得支援・コミュニケーション促進費: 対象経費の3分の2(上限:1事業所30万円、1法人60万円)
  • 日本語学校学費補助(留学生対象): 支出額の3分の1(上限60万円/人)
  • 居住費補助(技能実習生・特定技能対象): 住居費など事業所負担分の3分の1(上限3万円/月・人)
対象経費
  • 資格取得支援: 試験対策教材費、外部講習受講料、講師招へい研修費など
  • コミュニケーション支援: 手順書作成・翻訳費、多言語翻訳機購入費、日本語学習支援費、異文化理解研修費など
  • 生活支援: 外国人職員向け社宅・寮の家賃補助など
備考(注意点)交付要件として「埼玉県外国人介護職員応援宣言」への賛同が必要です。
参照URL外国人介護職員が長く働ける、魅力ある埼玉介護の促進補助金

外国人材受入加速化支援事業(MEET IN OSAKA)

この事業は、大阪府内の中小企業と外国人留学生などをつなぎ、外国人材の採用と定着を支援することを目的としています。
すでに外国人を採用している企業と、これから採用を検討している企業のネットワークづくりも支援するなど、採用から定着までを包括的にサポートする大阪府の取り組みです。

項目内容
所管大阪府 商工労働部(商工労働総務課 企画グループ)
対象企業・人材大阪府内の企業(主に中小企業)で外国人材の採用を検討している事業主、および大阪での就職を希望する外国人留学生・海外人材
支援内容
  • 企業と留学生のマッチングを支援する合同企業説明会(オンライン)の開催
  • 外国人採用のノウハウや実践的ポイントを学べる企業向けセミナーの実施
  • 日本での就職活動をサポートする留学生向けセミナーの実施
  • 外国人材採用企業・検討企業による情報交換会の開催
  • 採用内定を得た留学生同士のネットワーク形成(内定者交流会)
参加費用無料(オンラインシステムへの登録が必要)
備考(注意点)本事業はマッチング支援のため、金銭的助成は伴いません。他の助成金制度とあわせて活用できます。
参照URL外国人材受入加速化支援事業(MEET IN OSAKA)

福岡県外国人材受入企業支援補助金

この制度は、福岡県内の中小企業などが外国人技能実習生を受け入れるときの取り組み費用を一部補助するものです。人材確保と定着を後押しすることをねらいとしています。
とくに、企業の魅力発信(リクルート活動)や住環境の整備にかかるコストを軽くし、受け入れ準備を進めやすくする効果が期待されています。

項目内容
所管福岡県(実施団体:福岡県中小企業団体中央会)
対象企業・人材福岡県内に事業所をもつ中小企業などで、外国人技能実習生の受け入れを計画・実施する事業者
助成率・上限補助率1/2、上限30万円/社
対象経費企業PR資料の作成費、海外現地での求人活動費、受け入れ環境整備費(例:社宅の家電・備品の購入、住環境整備の資材費)など
備考(注意点)予算に上限があるため、期間内でも早期終了の可能性があります。
参照URL福岡県外国人材受入企業支援補助金

外国人雇用で助成金・補助金を活用するときの注意点

チェックポイント コンセプト画像

申請から支給までには時間がかかる

助成金や補助金の多くは、申請→審査→採択(交付決定)→事業の実施→実施報告→受給という流れで進みます。
そのため、申請した月にすぐ入金されるわけではありません。審査や実施に時間がかかる場合は、受給までに1年以上かかることもあります。

また、実施報告の内容によっては、使った費用の一部が支給対象にならないこともあります。
こうした点を踏まえ、現実的な予算計画を立てることが大切です。

申請期間が短いため、こまめに確認する

助成金や補助金の中には、申請期間が1か月ほどしかないものもあります。さらに、情報公開日が事前に告知されないケースもあります。

もし活用したい制度が決まっている場合は、前年の公開時期を確認したり、定期的にホームページをチェックしたりすることが大切です。締切を逃さないよう、日ごろから申請状況をこまめに確認しましょう。

支援を受けられる回数に制限がある

一部の助成金や補助金には、同じ事業で1回しか支援を受けられないという制限があります。また、複数回の申請が可能な場合でも、前回の受給から1年後でないと再申請できない制度もあります。
こうした条件を確認したうえで、どのタイミング(どの事業や年度)で申請するかを検討しましょう。

実施期間より前の支出は支給対象にならない

審査を通過したあと、事務手続きや説明会を経て、はじめて「事業の実施期間」に入ります。
それまでは事業に着手できず、たとえ準備のための支出があっても支給の対象外となります。

また、実際の実施中に予定より費用が増えることもありますが、計画とかけ離れた変更をすると支給対象から外れる可能性があります。
費用を変更したい場合は、必ず計画の修正や報告を行いましょう。

在留資格によっては支援の対象外になる場合がある

助成金や補助金の中には、在留資格や身分条件によって支援を受けられないものもあります。
たとえば、長期雇用を目的とする制度では、「技能実習」や「特定技能1号」などの帰国を前提とした在留資格が対象外になることがあります。

申請の前に、対象となる在留資格をしっかり確認しておくことが大切です。

併給ができるかどうかを確認する

同じ事業に対して、複数の助成金や補助金を同時に使う場合は注意が必要です。同じ経費を重ねて申請することは原則できません。

制度によっては併給が認められることもありますが、必ず規定を確認し、どの経費がどの助成制度の対象になるのかを整理しておきましょう。

さいごに

助成金や補助金には、国籍を問わず利用できるものから、外国人労働者を対象とした制度まで、さまざまな種類があります。
近年は外国人の受け入れに力を入れる企業が増えており、政府もその動きを後押ししています。そのため、支援の幅は年々広がってきました。

また、国の制度だけでなく、自治体や商工会議所などが独自に行っている支援もあります。
まずは、自社の状況に合う制度を調べてみることが第一歩です。上手に活用すれば、外国人の雇用を安心して進めることができるでしょう。

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