2024年春に卒業する予定となっている高校生の就職活動で、企業の学校訪問や求人情報の公開が7月から解禁されました。現在は少子高齢化で労働力が減っており、新卒高校生の採用で争奪戦が起きています。

高校生採用がバブル期の求人倍率を超える

厚生労働省によれば、24年春の高卒者の求人倍率は3.49倍となっています。
この倍率は近年急激に高まっており、今回は過去に計測を始めてから(88年以降)もっとも高校生の求人倍率が多かったとされる、1992年の3.34倍を超えました。

92年は日本のバブル経済の終盤で、経済はまだ比較的好調でした。
その結果として、経済成長にともなって企業の需要は高まり求人が増えたことが、当時の新卒高校生の求人倍率につながった理由ではないかとされています。

1992年と2023年の違いは?

92年、高校の卒業生は180万人程度といわれ、比率としてはこのうちの3割を少し超える程度の方(50万人程度)が就職を希望していました。
この数に対して当時はほぼ3倍の求人があったため、150万人程度の新卒高校生の求人があったことになります。

一方で近年は、文部科学省のデータによれば、高校生の生徒数は2022年5月時点で294万人程度であるため、24年の春の卒業生は100万人に届かない人数となります。
このうちの15%(13万人程度)が就職を希望しており、求人はその3倍以上ある状況になっています。

 卒業生 就職希望者数  求人数 
1992年180万人50万人150万人
2023年95万人13万人40万人

高校生の採用難はさらにつづく?

新卒高校生の採用難は今後もさらにつづくと予測されます。
具体的な理由としては、以下の3つのポイントがあげられます。

・高校卒業時に就職を希望する人が減少
・サービス業の需要がさらに拡大する見込み
・労働力人口は毎年5万人ずつ減少

高校卒業時に就職を希望する人が減少

高校生の数は年々減少していますが、大学・短大への進学率は令和に入ってからもどんどん高まって過去最高を更新しています
このためただでさえ高校生の数が減っているのに、高校卒業時に大学進学を選ぶ方が増え、就職を希望する方が減るために採用はより難しいものとなっていきます。

サービス業の需要がさらに拡大見込み

求人倍率が過去最高になったことが大きく騒がれていますが、サービス業界では、これからさらなるインバウンド需要に引っ張られる形で、採用の需要が拡大することが予想されています。

ホテルや飲食業界などで、新卒高校生の人材がさらに必要となります。

労働力人口は毎年5万人ずつ減少

労働力調査」によれば、労働力人口(※15歳以上の人口のうち就業者と完全失業者を合わせた人口)は、2022年の平均では6,902万人で、前年にくらべて5万人の減少となりました。

ちなみに男性は前年から22万人減少していますが、女性の社会進出が進み、女性は16万人の増加となっています。

高校生の離職率はどのくらい?

2022年に厚生労働省が出している「新規学卒就職者の離職状況」によると、高校生の3年以内の離職率は35.9%となっています。
これは大学卒の3年以内の離職率である31.5%よりもさらに高い数値です。

若い方の場合には、まだ結婚していない方や子供がいない方も多いため、離職することにもリスクを感じない方が多いのかもしれません。

ちなみにおもな離職の理由としては

「人間関係がよくなかった」
「労働時間、休日、休暇の条件が良くなかった」
「賃金の条件がよくなかった」

というものが多いようです。

新卒高校生に限らず、採用力を強くするにはどうする?

新卒高校生の採用倍率が上昇している状況では、競争が激化しており、一部の企業は求人に対する応募者が足りないという課題に直面しています。
この問題に対処するために、以下の方法や戦略を検討することが重要です。

  1. 非伝統的な人材プールの活用

    新卒高校生に限らず、他の人材プールを探しましょう。たとえば、既卒者や第二新卒者、中途採用者、または転職希望者などが考えられます。彼らは既に職務経験を持っており、組織に新しい視点とスキルをもたらすことができます。

  2. 教育・研修プログラムの強化

    若手従業員や未経験者に対する教育・研修プログラムを強化し、必要なスキルや知識を提供しましょう。これにより、採用基準を緩和し、より多くの候補者が応募する可能性があります。

  3. インターンシッププログラムの設立

    高校生や大学生向けのインターンシッププログラムを設立し、学生との関係を構築しましょう。インターンシッププログラムを通じて、将来の従業員としてのポテンシャルを評価し、有望な候補者を特定することができます。

  4. リクルートメント戦略の見直し

    求人広告やリクルートメント戦略を見直し、魅力的な職場環境や福利厚生を強調しましょう。また、オンラインプラットフォームやソーシャルメディアを活用して、幅広い層の求職者にアクセスしやすくすることも重要です。

  5. 地域社会との連携

    地域社会との連携を強化し、地元の学校や大学と協力して、若い世代との関係を築きましょう。これにより、地元の若者に対する認知度を高め、採用プールを拡大できます。

  6. 採用プロセスの効率化

    採用プロセスをスムーズにし、応募者が手間なく応募できるように工夫しましょう。選考プロセスを迅速化し、候補者の待ち時間を短縮することが大切です。

  7. ネットワーキング

    業界のイベントやキャリアフェアに参加し、人脈を広げましょう。業界内でのコネクションを通じて、新しい人材を見つける機会が増えます。

高校生の採用倍率が高い場合でも、上記の戦略を用いて、適切な人材を獲得するための努力を続けることが重要です。競争が激化している状況でも、柔軟性を持ち、多様な人材を受け入れる姿勢を持つことが、企業の成長と発展に貢献するでしょう。