外国人採用を進める中で、「オーストラリアの永住権を持っています」という応募者に出会ったことはないでしょうか。その一言にどう対応すべきか、また、その言葉の裏にどのような意味があるのか、判断に迷う採用担当者様は少なくありません。

実は、オーストラリアでの就労経験を持つ人材は、貴社の事業、特に「安全文化」や「組織の多様性」を大きく前進させるキーパーソンになる可能性を秘めています。

本記事では、オーストラリアの永住権と日本での就労ルールの関係を明確にした上で、採用担当者様が見逃しがちなオーストラリア経験者の強み、そして採用時に必ず確認すべき事項を解説します。

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オーストラリアの永住権と、日本で働くためのルール

まず最も重要な結論からお伝えします。 オーストラリアの永住権を保持しているだけでは、日本国内で就労することはできません。

オーストラリアの永住権は、あくまでオーストラリア国内において永続的に居住し、就労する権利を認めるものです。日本で外国籍の方が働くためには、その国籍を問わず、日本の法律に基づいた「在留資格」が必須となります。

これは、日本の出入国管理及び難民認定法で定められており、活動内容に応じて29種類の在留資格が存在します。そのうち、就労が認められている在留資格を取得している、もしくはこれから取得することが、日本で働くための絶対条件です。
(参照: https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html

したがって、応募者がオーストラリアの永住権を持っている場合でも、採用の可否は「日本で就労可能な在留資格を持っているか(または取得見込みがあるか)」という点で判断する必要があります。

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採用担当者が見逃すな!オーストラリア経験者が持つ3つの強み

では、オーストラリアの永住権や就労経験を持つ人材を採用するメリットはどこにあるのでしょうか。それは、彼らが経験してきたオーストラリア特有の労働環境に起因する、質の高いスキルや意識にあります。

強み① 世界トップクラスの「労働安全衛生(WHS)」への意識

オーストラリアは、世界で最も労働安全衛生(Workplace Health and Safety – WHS)に関する規制が厳しい国の一つとして知られています。事業者には、労働者に安全な職場環境を提供する義務が法律で厳格に課せられており、違反した際の罰則も非常に重くなっています。(参照:Safe Work Australia (オーストラリア政府機関))このような環境で働いた経験を持つ人材は、「安全は誰かに与えられるものではなく、全員で確保するもの」という高い意識が根付いています。

【現場で期待できる貢献】

  • 建設・製造・運輸業: 工具の正しい使用方法、危険予知活動、保護具の適切な着用などが習慣化しており、現場の「ヒヤリハット」削減に貢献します。
  • 安全文化の醸成: 日本人従業員や他の外国人従業員に対しても良い手本となり、職場全体の安全意識を底上げする効果が期待できます。

強み② 移民国家ならではの「多文化コミュニケーション能力」

オーストラリアは国策として多文化主義(Multiculturalism)を掲げる移民国家です。人口の約3割が海外生まれであり、多様な人種、言語、文化を持つ人々が共に働くことが日常です。(参照:Australian Government, Department of Home Affairs “Multicultural affairs”)この環境で培われたコミュニケーション能力は、国籍の多様化が進む日本の職場において大きな強みとなります。

【現場で期待できる貢献】

  • 円滑なチームワーク: 異なる文化背景を持つ同僚の考え方や習慣を尊重し、固定観念にとらわれずに円滑な人間関係を築くことができます。
  • ハブ人材としての活躍: 日本人従業員と他の外国人従業員の間に立ち、誤解や偏見から生じるコミュニケーションギャップを埋める「ハブ人材」としての役割が期待できます。

強み③ 実践的な「スキルと英語力」

オーストラリアには、VET(Vocational Education and Training)と呼ばれる、産業界のニーズに直結した実践的な職業教育訓練制度が整備されています。多くの労働者がこのVETを通じて、専門的なスキルや資格を習得しています。

そのため、オーストラリアでの就労経験者は、特定の分野で即戦力となるスキルを保有している可能性があります。

【現場で期待できる貢献】

  • 専門スキルの活用: 建設、製造、調理などの分野で、実践的なスキルを活かした活躍が期待できます。
  • 英語力による業務拡大: 公用語である英語能力も高く、英語で書かれた機材のマニュアル読解や、外国人顧客・海外取引先とのコミュニケーションといった場面で貢献できます。

※注意点: オーストラリアで取得した資格が日本でそのまま通用するとは限りません。資格の有効性については個別の確認が必要ですが、高いスキルを保有しているポテンシャルとして評価できます。

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採用実務マニュアル:確認事項と手続きの流れ

オーストラリア経験者の強みを理解した上で、採用プロセスにおける具体的な確認事項と手続きを解説します。

在留カードの確認必須ポイント

採用面接や選考の際には、必ず在留カードの原本を提示してもらい、以下の3点を確認してください。

  1. 就労制限の有無:
    表面の「就労制限の有無」欄で、就労の可否を判断します。主に以下のパターンがあります。
    ・「就労制限なし」: 「永住者」「日本人の配偶者等」など。職種を問わず、日本人と同様に就労可能です。
    ・「在留資格に基づく就労活動のみ可」: 「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」など。定められた在留資格の範囲内の業務に限り、フルタイムでの就労が可能です。
    ・「就労不可」: 「留学」や「家族滞在」など。原則として就労できません。ただし、アルバイトとして雇用する場合は、裏面の「資格外活動許可欄」に「許可」のスタンプがあるか、そして許可されている時間(原則週28時間以内など)の範囲内であるか、必ず確認が必要です。
  2. 在留資格の種類: 表面の「在留資格」欄を確認し、貴社での業務内容がその在留資格で認められた活動範囲内であるかを確認します。(例:「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」など)
  3. 在留期間の満了日: 表面の「在留期間(満了日)」を確認し、雇用期間が在留期間を超えていないか、また、在留期間の更新手続きが必要なタイミングはいつかを確認します。

(参照:在留カードとは? | 出入国在留管理庁

採用までの基本的なステップ

  1. 書類選考・面接: 上記の通り、在留資格の有無や種類についてヒアリングし、確認します。
  2. 在留カードの原本確認:内定後、雇用契約を結ぶ前に、人事担当者が直接、在留カードの原本を目視で確認します。
  3. 雇用契約の締結:在留資格に問題がないことを確認した上で、雇用契約を締結します。
  4. ハローワークへの届出:雇用保険の加入有無にかかわらず、外国人労働者の雇入れ・離職の際には、ハローワークへの届出が義務付けられています。(雇用対策法第28条)

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まとめ:オーストラリア人材の付加価値を理解し、採用競争を勝ち抜く

本記事では、オーストラリア永住権を持つ人材の採用について解説しました。

  • オーストラリアの永住権だけでは日本で就労できず、日本の「在留資格」が必須。
  • 一方で、オーストラリア経験者は「高い安全意識」「多文化コミュニケーション能力」「実践的なスキル」という、他では得がたい付加価値を持つ可能性がある。
  • 採用時には必ず在留カードを確認し、適法な手続きを踏むことが重要。

「オーストラリア永住権」という言葉に戸惑うのではなく、その背景にある人材のポテンシャルを見極める視点を持つこと。それが、他社に先んじて、貴社の成長に貢献する優秀なグローバル人材を獲得する鍵となります。

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