【2025年最新】特定技能「自動車運送業」完全ガイド|ドライバー採用の要件・試験・手続きを解説
「ドライバーがなかなか集まらない…」
運送業界の多くの会社様にとって、人手不足は大きな課題となっています。
特にドライバーの採用は年々難しくなり、その状況は続いています。
この課題に対する新しい解決策として、2024年4月から特定技能制度の対象に「自動車運送業」が加わりました。
これにより、一定の条件を満たせば、外国人の方をトラック・バス・タクシーのドライバーとして雇い入れることができるようになりました。
とはいえ、 「特定技能『自動車運送業』って、どんな制度?」 「うちの会社でも外国人ドライバーを雇えるの?」 「どんな準備や試験が必要になるの?」 など、疑問に思う点も多いことでしょう。
この記事では、特定技能「自動車運送業」について、国の機関が出している情報をもとに、採用ご担当者様が知りたいポイントを分かりやすく、かつ詳しく解説します。
外国人ドライバーの採用を考えるうえで、お役立ていただければ幸いです。
目次
特定技能「自動車運送業」とは?
「特定技能」制度の基本
まず、「特定技能」という制度についてご説明します。
これは、人手不足が深刻な特定の仕事の分野で、専門的なスキルや知識を持った外国人の方に日本で働いてもらうための国の制度(在留資格)です。
似た制度に「技能実習」がありますが、技能実習がおもに技術を伝える国際貢献を目的としているのに対し、特定技能は日本の人手不足を補うことを目的としています。
現在、「自動車運送業」は特定技能1号という種類にあてはまります。
特定技能1号の主な特徴は以下のとおりです。
- 日本にいられる期間: 合計で最長5年まで
- スキル: 仕事に必要なスキルや知識があるか、試験などで確認します
- 日本語能力: 日本での生活や仕事に必要な日本語力が、試験などで確認されます
- 家族と暮らすこと: 基本的にはできません
(参照:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」)
対象となる仕事の内容
特定技能「自動車運送業」で外国人の方ができる仕事は、以下の3つの運転業務です。
- トラックの運転: 会社の荷物を運ぶトラック(緑ナンバー)の運転業務です。
- バスの運転: 路線バスや貸切バスなどの運転業務です。
- タクシーの運転: お客様を乗せるタクシーの運転業務です。
これらの運転の仕事とあわせて、関連する作業(例:荷物の積み下ろし、車の点検、お客様対応、運転前後の準備など)を、運転業務に支障がない範囲でおこなうことも認められています。
【注意点】 霊柩車、自社の荷物だけを運ぶ車(白ナンバー)、軽トラックでの運送などは対象外です。
(参照:国土交通省「特定技能『自動車運送業』分野について」)
外国人ドライバーを採用するメリットと注意点

特定技能で外国人ドライバーを採用することは、人手不足解消に役立ちますが、メリットと注意点の両方を理解しておくことが大切です。
【メリット】
- すぐに活躍が期待できる人材: 一定のスキルと日本語能力を持った人材を雇えます。
- 長く働いてもらえる可能性: 最長5年間働いてもらえるので、会社の安定した運営につながります。
- 若い人材の採用: 日本人の若手ドライバー採用が難しいなか、新たな採用の道が開けます。
【注意点】
- 費用がかかること: 人材紹介会社への手数料、外国から呼ぶ場合の渡航費、住まいの準備費用、様々なサポートのための費用などが必要です。
- 会社側の受け入れ準備: 外国人社員がスムーズに仕事や生活を始められるように、社内での理解を進めたり、サポート体制を整えたりする必要があります。
- 手続きが多いこと: 日本で働くための許可申請や、様々な届け出など、必要な手続きがたくさんあります。
【重要】採用するための条件

特定技能の外国人を受け入れるには、会社(受け入れ側)と外国人ドライバー(働く側)のそれぞれに、クリアすべき条件があります。
会社(受け入れ側)の条件
- 法律やルールを守っていること: 労働関係の法律(労働基準法など)、社会保険関係の法律、税金関係の法律などをきちんと守っている必要があります。
- 運送業の許可を持っていること: トラック運送、バス運送、タクシー運送のいずれかの事業許可を持っている必要があります。
- 外国人社員をサポートする体制があること: 外国人社員を支援するための計画書を作り、その計画にそって適切にサポートできる体制が必要です。(サポート業務を専門会社にすべて任せることも可能です)
- 国の協議会に参加すること: 初めて特定技能の外国人を受け入れた日から4か月以内に、国土交通省が作る協議会(情報交換などをおこなう場)に参加し、協力する義務があります。
- その他: 過去に法律違反がないなど、受け入れできない条件に当てはまらないことも必要です。
外国人ドライバー(働く側)の条件
- 年齢: 18歳以上であること。
- 仕事のスキル: 「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」という試験に合格していること。(詳しくは後述します)
- 日本語能力: 以下のどちらかの日本語試験に合格していること。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic):A2レベル以上
- 日本語能力試験(JLPT):N4以上
- その他: 健康であること、過去に問題を起こしていないことなど、日本で働くための基本的な条件を満たしていること。
【必須】クリアすべき試験について
外国人の方が特定技能「自動車運送業」として働くためには、必ず以下の2種類の試験に合格している必要があります。
①「自動車運送業分野」特定技能1号評価試験
これは、ドライバーとして働くために必要なスキルや知識があるかを確認するための試験です。
- 試験をおこなう機関: 国土交通省が作り、指定された団体が実施します。
- 試験の形式:試験は学科試験30問、実技試験20問の計50問
- 試験の日時や場所: CBTには決まった受験日は設けられておらず、テストセンターに空きがあれば随時受験が可能です。
空き状況は試験申請画面よりご確認ください。 - 試験問題:運転マナーや運行業務について、荷物の種類など多岐に渡ります。詳しくは全日本トラック協会のHPをご確認ください。
- 受験料・合格証明書発行手数料
| 受験料(国内) | 受験料(海外) | 証明書発行手数料 |
| 5,000円(税抜) | 37米ドル (※為替レートの変動による) | 14,000円(税抜) |
試験受験日において、満 17 歳以上であることが必要です。(※インドネシアでの試験では満18歳以上であること。)
【重要!】この試験の詳しい内容や日時は変更の可能性があります。国土交通省の発表をよく確認するようにしてください。
参照:https://sswt-portal.classnk.or.jp/
②日本語能力をはかる試験
仕事や日本での生活で困らない程度の、基本的な日本語能力があることを証明する必要があります。以下のどちらかの試験で、決められたレベル以上に合格する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic): 「簡単な日常会話ができ、基本的な内容なら理解できるレベル」(A2レベル)以上に合格。 (参照:国際交流基金日本語基礎テスト 公式サイト)
- 日本語能力試験(JLPT): 「基本的な日本語を理解することができるレベル」(N4レベル)以上に合格。 (参照:日本語能力試験 公式サイト)
よくあるご質問(Q&A)
Q. 採用にはどれくらいの費用がかかりますか?
A. 人材紹介会社を使う場合の手数料、外国から呼ぶ場合の飛行機代、住まいの初期費用、サポートを専門会社に頼む場合の費用などが考えられます。具体的な金額は状況によって異なるため、関係する会社や機関にご確認ください。
Q. 採用が決まってから働き始めるまで、どれくらい時間がかかりますか?
A. 採用する人の状況(日本にいるか、外国にいるか、試験に合格しているかなど)や、手続きの進み具合によりますが、一般的には数か月から半年くらいかかることが多いようです。
Q. 技能実習を終えた外国人を雇うことはできますか?
A. 「技能実習2号」をきちんと修了し、実習内容と特定技能の仕事内容に関連があれば、スキルや日本語の試験が免除される場合があります。「自動車運送業」での詳しい扱いは、今後の情報を確認する必要があります。
Q. ドライバー以外の仕事(整備士など)は対象になりますか?
A. 特定技能「自動車運送業」は、トラック・バス・タクシーの運転業務だけが対象です。自動車整備士は、「自動車整備」という別の特定技能分野になります。
まとめ
特定技能「自動車運送業」は、運送業界の人手不足を和らげる一つの方法となる制度です。しかし、この制度をうまく活用するには、内容や条件、必要な手続き、採用後のサポートについて正しく理解し、きちんと準備を進めることが大切です。
特に、まだ新しい分野のため、スキルをはかる試験の詳細など、これから発表される情報もあります。国土交通省や出入国在留管理庁のウェブサイトなどで、常に最新の公式情報をチェックするようにしましょう。
