在留カードとマイナンバーカード、何が違うの? 入社時の確認ポイントを解説

外国人を採用するときは「在留カード」と「マイナンバー」の違いを正しく理解しておくことが大切です。
どちらも本人確認に使いますが、使われる場面や確認のポイントはそれぞれ異なります。とくに入社手続きでは、ちょっとした見落としや思い込みが原因で後々のトラブルにつながることも少なくありません。
この記事では、2つのカードの特徴や、入社時に確認しておきたいことをわかりやすくまとめました。スムーズに手続きが進められるよう、基本をしっかり確認しておきましょう。
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「在留カード」と「マイナンバーカード」の違いは?
「在留カード」と「マイナンバーカード」は、どちらもカードという名前がついていますが、それぞれの目的や使われ方は大きくちがいます。ここでは、それぞれのカードの特徴や会社での確認ポイントについて説明します。
在留カードとは
在留カードは、日本に3か月以上住む外国人に対して発行される「身分証」です。
カードには名前や国籍、在留資格、住所などの情報が書かれており、日本で働いたり暮らしたりするうえでとても大切な書類です。このカードは出入国在留管理庁が発行し、入国時や在留資格の更新時に交付されます。
- 発行機関と申請場所:出入国在留管理庁 ※入国時は空港で受け取り
- 対象者:3か月を超える在留資格を持つ外国人
- 有効期限:原則として在留期間と同じ ※永住者は7年間
- おもな使い道:働くときの資格確認、アルバイト許可の確認、ライフラインの契約など
- 企業での対応:採用時に「在留資格」「在留期間」「資格外活動の有無」を確認し、カードのコピーを保管します
マイナンバーカードとは
マイナンバーカードは、日本に住民票があるすべての人に交付されるカードです。個人番号(12桁)を証明するもので、外国人であっても住民票があれば申請できます。
このカードは顔写真付きで、行政手続きや健康保険証として使えるのが特徴です。
- 発行機関と申請場所:市区町村の役所
- 対象者:住民票のあるすべての人 ※外国人も含む
- 有効期限:成人は10年間。電子証明書は5年間。ただし外国人は原則として在留期間が切れるまで
- おもな使い道:マイナポータルやe-Taxなどのオンライン手続き、健康保険証の代用、本人確認書類としての提示など
- 企業での対応:マイナンバーを取得し、法律にそって安全に管理・利用し、不要になったら適切に廃棄します
採用・入社手続きでそれぞれのカードの何を確認すればいい?
外国人を採用するときには、在留カードとマイナンバーカードの内容をしっかり確認することが大切です。
それぞれ見るべきポイントが違うため、事前に整理しておきましょう。
在留カードで確認すること
外国人を雇うときに、まず確認すべき情報が在留カードに3つあります。
どの仕事ができるかを示す「在留資格」、アルバイトなど別の活動が許可されているかを示す「資格外活動許可」、そして日本にいつまで滞在できるかを示す「在留期間」です。
なかでも重要なのは「在留資格の種類」です。その内容によって、正社員として働けるのか、アルバイトに限られるのかが変わります。
以下で順番に見ていきましょう。
在留資格
「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」といった働くことを目的とした在留資格を持っていれば、フルタイムの正社員として働くことができます。また、「永住者」や「定住者」といった身分に基づく在留資格も、就労に制限がありません。
ただし、資格によってはできる仕事の内容が決まっているため、業務内容がその範囲に合っているかを確認する必要があります。
資格外活動許可の有無(裏面)
「留学」や「家族滞在」「文化活動」などの在留資格は、学業や生活が主な目的なので、基本的に働くことは認められていません。アルバイトをするには、事前に「資格外活動許可」を取る必要があります。
条件は次のとおりです。
- 週28時間以内のアルバイトが可能(留学生は長期休み中に週40時間まで)
- 許可を受けた場合、在留カードの裏面にスタンプが押されています
このスタンプがないと働けないため、しっかり確認しましょう。
在留期間
在留カードには、在留期間の満了日が書かれています。
有効期限が近い場合は、更新手続き中であることを示す「受付票」などの書類を出してもらう必要があります。更新後は新しいカードのコピーを受け取り、管理台帳の内容も忘れずに更新しましょう。
こうした確認をせずに、働く資格がない人を雇ってしまうと企業側も法律違反になる可能性があります。
そのため、人事担当だけでなく現場の責任者とも情報を共有し「どこを確認すればいいのか」を社内でルール化しておくことが大切です。
マイナンバーカードで確認すること
入社時にマイナンバーカードを提出してもらったら、会社はカードの内容を正しく確認し、必要に応じて記録します。このカードは、個人番号と本人確認が1枚でできる便利なものですが、取り扱いには注意が必要です。
氏名・住所など
カードの表面には、氏名・生年月日・性別・住所・顔写真などの基本的な個人情報が表示されています。入社時に提出された履歴書や在留カードと内容が合っているかをチェックし、本人確認を行いましょう。
個人番号(裏面)
カードの裏面には、12桁の個人番号が記載されています。他の書類や本人が記入した番号と一致しているかを確認しましょう。
裏面には大切な情報が含まれているため、コピーをとる場合は「法定調書の作成」など、法律で認められている目的に限られます。
有効期限
マイナンバーカードには、カード自体の有効期限(通常は10年)と、電子証明書の有効期限(5年)の2つがあります。外国人の場合、在留期間に合わせてもっと短く設定されていることがあるため、期限切れのカードを受け取っていないかどうかを必ず確認しましょう。
コピーしたカードの保管は鍵のかかる場所に限定し、アクセスできる人も制限します。処分するときは、番号が見えないように裁断などの対応が必要です。
よくある確認漏れとトラブル事例
外国人の入社や在籍中に、書類の見落としが原因でトラブルになることがあります。ここでは、実際によくあるケースを紹介します。
在留期間の更新を忘れていた
入社時にカードの期限を確認しコピーも取っていたにもかかわらず、その後の更新日を把握しておらず、有効期限が切れてしまったケースがあります。
こうしたトラブルを防ぐためには「在留期間満了日」を定期的にチェックし、期限が近づいたら早めに本人へ声をかけることが重要です。在籍中も継続して管理できる仕組みを用意しておきましょう。
ローマ字のスペルが違っていた
在留カードのローマ字表記と、銀行口座の名前に1文字違いがあったことで、給与の振込ができなかった例もあります。外国人の中には、書類によってスペルが異なる場合もあるため、入社時に本人と一緒に確認しておくと安心です。
マイナンバーカードを持っていなかった
マイナンバーを確認しようとしたところ「カードを作っていない」「通知カードをなくした」「どこにあるかわからない」と言われることがあります。
このような場合は、番号が記載された住民票を本人に取得してもらいましょう。ただし、住民票で番号を確認する場合は、別の本人確認書類(在留カードやパスポートなど)も必要になることに注意してください。
在留カードとマイナンバーカードが一体化! 「特定在留カード」とは?
2024年の入管法の改正により、「在留カード」と「マイナンバーカード」が1枚にまとめられた「特定在留カード」が導入されることになりました。
この制度には、次の3つの目的があります。
- 行政の手続きをまとめて行いやすくすること
- カードの更新や持ち歩きの負担を減らすこと
- 偽造を防ぐためのセキュリティを強化すること
制度の本格的な運用は2025年度から始まる予定で、外国人本人がオンライン手続きを活用しやすくなると考えられています。
特定在留カードの申請・交付方法
特定在留カードは、希望する人だけが申請できます。希望しない場合は、これまでのカードをそのまま使うことも可能です。
制度の運用が始まったら、在留資格の更新や変更の手続きをするタイミングで地方出入国在留管理局や市区町村の窓口で申請できるようになります。特別永住者の場合は、これまでどおり市区町村での申請のみになる予定です。
企業としては、本人が「どこで申請するか」を自分の生活スタイルに合わせて選べることを伝えておくと安心です。退職や引っ越しの予定がある場合でも、適切なタイミングで案内できるよう準備しておくとトラブルを防げます。
企業にとってのメリットは?
カードが一体化することで、これまで別々に管理していた2枚のカードが1枚になります。そのぶんコピーや保管、更新の手間も少なくなります。
マイナンバーと在留資格の情報がICチップにまとめられることで、本人の同意があれば、専用のリーダーで情報を読み取るだけで在留資格や個人番号、顔写真を同時に確認できるようになる可能性もあります。こうした仕組みを人事システムと連携させる企業も今後増えるかもしれません。
なお、セキュリティの扱い方については、今後の省令で細かく決められる予定です。
内容が公表されたらすぐに社内のルールを見直せるよう、準備を進めておきましょう。
今のカードはいつまで使える?
今使っている在留カードやマイナンバーカードは、有効期限まではそのまま使えます。
つまり、カードの更新時期が来るまでは、一体化カードに切り替えるかどうかは本人の判断にまかせることになります。企業が無理に切り替えを求めることはできません。
周知の際は「一体化してもマイナンバーは変わらないこと」「カードを作らなくても罰則はないこと」の2点をきちんと伝えることが大切です。また、更新時期が近い従業員には、手続きの場所や必要な書類、交付までの流れをまとめた資料を配布すると親切でしょう。
今後の運用に向けて、従業員が安心して選べるようなサポートを心がけてください。
在留カード・マイナンバーカード関連のよくある質問(FAQ)
Q 留学生のアルバイトでもマイナンバーの確認は必要ですか?
はい、必要です。
留学生であっても給与を支払う場合は、源泉徴収票を作るためにマイナンバーが必要になります。アルバイトであっても例外ではありません。
また、留学生が働くには「資格外活動許可」が必要です。この許可があると、週に28時間まで働けます(長期休み中は週40時間まで)。
企業は、在留カードの裏面を確認し、許可があるかどうかや在留資格の内容をきちんと把握したうえで雇用することが大切です。
Q 特定在留カードでは、在留カードとマイナンバーカードの扱い方はどう変わりますか?
カードが一体化しても、それぞれの情報に関する管理ルールは変わりません。
在留カードの役割として「在留資格」「資格外活動の許可」「在留期間」の3点は、引き続き会社で確認する必要があります。採用時にはカードのコピーを保管し、更新があれば差し替えておくと安心です。
マイナンバーの取り扱いは、より慎重に行うことが求められます。番号が書かれている裏面をコピーできるのは、法律で認められた目的がある場合だけです。
1枚になったことで便利になる面はありますが、目的ごとに情報を分けて扱う意識は引き続き大切です。
Q 国外に出るとき、在留カードやマイナンバーカードはどう扱えばいいですか?
外国人社員が一時的に海外へ行く場合、マイナンバーカードと在留カードでは対応がちがいます。簡単に言うと、マイナンバーカードは返さなければなりませんが、在留カードは持ったまま出国できます。
マイナンバーカードの取り扱い
海外に転出するときに住民票を抜く手続きをすると、マイナンバーカードは返す必要があります。ただし、12桁のマイナンバーそのものは無効にはならず、そのまま残ります。
再び日本に住民登録をすれば、同じ番号でマイナンバーカードを作り直すことができます。
在留カードの取り扱い
在留資格が有効なまま一時的に海外へ行く場合、在留カードは返す必要はありません。
自分で保管したまま出国し「再入国許可」を取ってから戻れば、カードはそのまま使えます。有効期限が切れていなければ、再入国の際に問題はありません。
さいごに
在留カードとマイナンバーカードは、それぞれ役割や使い方が異なります。
2025年前後に導入される「特定在留カード」によって、カードは1枚にまとまりますが、企業の確認内容や管理方法は基本的にこれまでと変わりません。
ただし、運用をスムーズにするためには、両カードのちがいや入社手続きの流れを整理しておく必要があります。社内ルールやシステムを見直す準備も、早めに進めておくと安心でしょう。
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