近年、多くの企業で外国人材の活用が進んでいます。

その採用プロセスにおいて、候補者である外国人の「住民票」および「在留カード」の確認は、コンプライアンス遵守と円滑な採用活動のために極めて重要です。

適切な確認を怠った場合、不法就労助長罪に問われるリスクが生じる可能性があります。

本記事では、特にブルーカラー職種(飲食、建設、警備、製造、人材派遣、清掃、運輸など)のアルバイト・派遣採用を検討している企業の採用担当者様に向けて、外国人採用における「住民票」の役割と活用方法、そして採用プロセス全体での「在留カード」と合わせた書類確認のポイントを、行政機関の情報を基に分かりやすく解説します。

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1.外国人採用における「住民票」の役割と基礎知識

2012年7月9日から、外国人住民の方も住民基本台帳制度の対象となりました。これにより、日本人と同様に外国人住民の方にも住民票が作成されます。

(参照:総務省|外国人住民に係る住民基本台帳制度について

採用担当者として、この住民票からどのような情報を得られ、どう活用すべきかを理解しておくことが重要です。

住民票からわかること:採用担当者が見るべき記載事項とその読み解き方

外国人住民の住民票には、主に以下の事項が記載されています。これらの情報は、応募者の在留資格の確認や本人確認において重要な手がかりとなります。

  • 氏名、生年月日、性別、住所: 本人確認の基本情報です。
  • 国籍・地域: 応募者の国籍を確認できます。
  • 外国人住民となった年月日: 日本での居住開始時期の一つの目安となります。
  • 在留資格、在留期間、在留期間の満了の日:「在留資格」は、日本で行うことができる活動の種類を示します。採用する職務内容が、その在留資格で許可された活動範囲内であるかを確認する必要があります。また「在留期間の満了の日」は、その在留資格で日本に滞在できる期限です。期限が迫っている場合は、更新手続きの状況などを確認する必要があります。
  • 在留カードの番号: 在留カードとの照合に用います。(中長期在留者でなくなってから14日以内に国外転出する場合など、一定の要件に該当する場合)

これらの記載事項は、出入国在留管理庁が発行する「在留カード」と相互に補完し合う情報となります。

採用時に住民票の提出を求めるケースと、依頼時の適切な伝え方・注意点

採用選考の過程で住民票の提出を求めること自体に法的な禁止規定はありませんが、個人情報保護の観点から、その必要性を明確にし、取得目的を本人に説明することが求められます。

提出を求める主な目的

    • 現住所の確認
    • 在留資格や在留期間等の在留管理に必要な情報の確認(在留カードと合わせて)
    • 社会保険等の手続きのため(採用決定後)

依頼時の注意点

    • 収集目的を具体的に伝え、本人の同意を得るように努めてください。
    • 原則として、世帯全員が記載されたものではなく、本人分のみの住民票を依頼します。
    • マイナンバー(個人番号)が記載された住民票の提出は、法律で定められた社会保障や税の手続き以外では求めないようにしてください。マイナンバーの記載がない住民票を依頼するか、記載がある場合はマスキング(黒塗り)して提出してもらうよう指示します
    • 収集した個人情報は、目的の範囲内でのみ利用し、厳重に管理する必要があります。
      (参照:マイナンバー(個人番号)制度・マイナンバーカード|デジタル庁

2.「住民票」を活用したダブルチェックと見逃し防止テクニック

住民票は、在留カードと合わせて確認することで、より確実な本人確認と在留状況の把握に役立ちます。

在留カード情報との照合ポイント

応募者から在留カードと住民票の両方を提示された場合、以下の点を確認し、情報の整合性をチェックします。

  • 氏名、生年月日、国籍・地域: 在留カードと住民票の記載が一致しているか。
  • 在留資格、在留期間、在留期間の満了の日: 在留カードと住民票の記載が一致しているか。
  • 在留カードの番号: 住民票に記載された在留カード番号が、提示された在留カードの番号と一致しているか。
  • 住所: 在留カードの裏面にある「住居地記載欄」と住民票の住所が一致しているか(転居手続きのタイムラグも考慮)。

万が一、情報に不一致や疑義がある場合は、本人に丁寧に確認することが重要です。意図的な虚偽でなく、手続きの遅延や誤解である可能性も考慮し、高圧的な態度は避けるべきです。

住民票から深掘りできる情報と採用判断への活かし方

住民票の写しには、現在の住所の他に、一つ前の住所が記載される場合があります(市区町村により取り扱いが異なる場合があります)。短期間での頻繁な転居は、生活の安定性という観点から一つの参考情報となることもありますが、それだけで採用可否を判断するのではなく、あくまで多角的な情報の一つとして捉えるべきです。

住民票を活用して採用リスクを低減する具体策

  • 現住所の確実な把握: 採用後の連絡や書類送付先の正確性を担保します。
  • 在留資格等の裏付け確認: 在留カードと合わせて確認することで、情報の信頼性を高めます。
  • 社会保険手続きの準備: 採用決定後、スムーズな手続きに繋がります。

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3.【住民票編】採用担当者のギモンを即解決!よくある質問

ここでは、外国人採用における住民票に関して、採用担当者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q. 外国人の住民票は、必ず提出してもらうべき?法的な義務はある?

A. 採用選考時に住民票の提出を法的に義務付けるものはありません。しかし、前述の通り、現住所の確認や在留状況の正確な把握のために提出を求めることは合理的と考えられます。その際は、必ず本人に目的を説明し、理解を得ることが大切です。

Q. 住民票で家族構成や同居人も確認できる?プライバシーへの配慮は?

A. 本人分のみの住民票(抄本)を依頼すれば、本人の情報のみが記載されます。世帯全員が記載された住民票(謄本)を求めると、家族構成や同居人の情報も記載されますが、採用選考においてこれらの情報は通常必要ありません。プライバシー保護の観点から、本人分のみの住民票を依頼することを推奨します。業務上真に必要な場合を除き、家族構成などの機微な情報を収集することは控えるべきです。

Q. マイナンバーが記載された住民票の取り扱いで気をつけることは?

A. マイナンバーは、社会保障、税、災害対策の分野で法律に定められた行政手続きに限り利用できるものです。採用選考の段階では、原則としてマイナンバーの提供を求めることはできません。住民票を依頼する際は、マイナンバーが記載されていないものを依頼するか、記載されている場合は応募者本人にマスキング(黒塗り)して提出してもらうよう明確に指示してください。収集した場合の管理も厳格に行う必要があります。(参照:マイナンバー制度|厚生労働省

Q. 短期間で複数回転居している外国人の場合、どの時点の住民票を参考にすべき?

A. 原則として、提出時点での最新の住民票を確認します。住民票には通常、一つ前の住所まで記載されることがありますが、それ以前の住所履歴を詳細に追う必要がある場合は、本人に確認するか、状況に応じて戸籍の附票(外国人にはない)に代わるものとして、市区町村が発行できる「住民票の除票」や「改製原住民票」の提出を検討することもありますが、採用選考でそこまで求めるのは稀です。重要なのは、現在の居住実態と連絡先を正確に把握することです。

Q. 住民票の有効期限はある?取得日からどれくらいまで有効として扱える?

A. 住民票自体に有効期限の定めはありません。しかし、記載されている情報が最新であることを確認するため、一般的には発行日から3ヶ月以内や6ヶ月以内など、企業が独自に基準を設けて提出を求めることが多いです。提出を求める際には、発行日からの期間についてあらかじめ伝えておくとスムーズです。

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4.採用プロセス別:「在留カード」と「住民票」の確認タイミングと実践方法

外国人採用の各プロセスにおいて、在留カードと住民票をどのタイミングで、どのように確認すべきか、具体的な流れを解説します。

募集・書類選考時

求人票への適切な記載

    • 応募資格として、就労可能な在留資格を保有していることを明記します。
    • 選考プロセスの中で、在留カードや住民票(必要な場合)の提出を求める可能性があることを事前に伝えておくと、応募者も準備がしやすくなります。

提出された書類の初期スクリーニング

    • 在留カード(コピー提出の場合など):氏名、在留資格、在留期間の満了の日、就労制限の有無(特に「指定書により指定された就労活動のみ可」や「資格外活動許可」の有無)を確認します。また、明らかに就労できない在留資格(例:「短期滞在」「留学」で資格外活動許可なしなど)でないかを確認します。
    • 住民票(提出を求めた場合):現住所、氏名、在留資格、在留期間などが、他の提出書類(履歴書など)や本人の申告と大きく相違ないかを確認します。

面接時

在留カード原本確認の徹底

  • <重要なポイント> 面接時には、必ず在留カードの原本を提示してもらい、顔写真と本人が一致するか、記載内容に不審な点がないかを確認します。
  • カード裏面の「資格外活動許可欄」や「住居地変更記録」も確認すます。
  • 在留カードの偽造・変造も報告されています。不審な点があれば、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サービスで、その在留カード番号が有効かを確認することも一つの手段です(ただし、これだけで真贋が確定するわけではありません)。
    (参照:出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会
  • 就労制限の有無、在留資格が職務内容と適合しているかを再度確認します。特に「技能実習」「特定技能」などの在留資格は、許可された範囲の業務しか行えません。

住民票記載内容に関する確認(必要な場合)

    • 書類選考で確認した住民票の内容について、不明な点や確認しておきたい事項があれば、本人に直接質問します。例えば、在留期間の満了日が近い場合に更新手続きの状況を尋ねるなどです。

採用決定・入社時

最終的な書類確認と記録

    • 採用決定後、入社手続きとして、改めて在留カード(変更や更新があれば最新のもの)、住民票(必要な場合)などの内容を確認します。
    • 外国人雇用状況の届出や社会保険、労働保険の手続きのために必要な情報を正確に控えます。(参照:厚生労働省「外国人雇用のルールに関するパンフレット
    • 確認した書類のコピーを保管する場合は、個人情報として厳重に管理し、不要になった際は適切に破棄します。労働者名簿の作成は労働基準法で義務付けられており、在留カードに関する情報もこれに準じて適切に管理することが望ましいです。

入社後の変更手続きに関するアナウンス

    • 外国人従業員には、住所や在留資格、在留期間の変更があった場合、速やかに出入国在留管理庁への届出と会社への報告が必要であることを伝えます。企業側も、これらの変更を把握し、適切に対応する必要があります。

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まとめ:適切な書類確認プロセスで、安心・確実な外国人採用を実現する

本記事では、外国人採用における「住民票」の活用方法と、採用プロセス全体を通じた「在留カード」と合わせた確認ポイントについて解説しました。

重要なポイントは以下の通りです。

  • 法的リスクの認識: 不適切な確認は不法就労助長罪につながる可能性があります。
  • 住民票の活用: 在留カードと合わせて確認することで、情報の正確性を高め、採用リスクを低減できます。
  • 正確な情報確認: 行政機関の情報を基に、最新かつ正確な知識で対応することが不可欠です。
  • プロセスの標準化: 書類確認のタイミングと方法を社内で標準化し、担当者任せにしない体制が望まれます。
  • 本人への配慮: 書類提出を求める際は目的を説明し、個人情報保護にも十分配慮してください。

外国人材は、今後の日本企業にとってますます重要な存在となります。適切な知識と手順に基づいた書類確認を行うことで、企業と外国人労働者の双方が安心して活躍できる環境を整備し、確実な外国人採用を実現してください。継続的な情報収集と社内体制の整備を心がけることが、その第一歩となるでしょう。

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