昨今では、慢性的な人手不足や市場のグローバル化により、外国人雇用を考えている日本企業が増えてきています。

外国の方と仕事をする時に気をつけたいのが、ビジネスマナーです。双方が気持ちよく働いていくには、相手の国のマナーを事前に理解しておくことがとても重要です。

本記事では、日本と海外のビジネスマナーの違いを紹介します。

 

日本と海外のビジネスマナーの違い6選

1.謝るのは自分に非があるときだけ

日本の謝罪文化

日本では、仕事で何か不手際やトラブルがあった際にはすぐに謝罪する文化があります。例え相手のほうに非がある場面でも、これまで築いてきた良好な関係を崩したくないという気持ちから、率先して謝る人が多い傾向にあります。また、感謝を伝える時に「すみません」を使う人もいるため、日本特有の「謝罪文化」が根付いていると言えるでしょう。

一方海外では、自分の責任を軽々しく認めるわけにはいかないという考え方から、不用意に謝らないという文化が存在します。そのため、自身に100%非があった場合にのみ謝る人が多いです。

ケース1: 電車遅延による遅刻

電車やバスなどの遅延に巻き込まれて遅刻してしまった時には、わざわざ謝らないという人が多いです。電車が遅れなければ時間通りに到着できていたはずだから、自分に非はないと考えているからです。大幅に遅刻しそうだと思った時には自分の判断で自宅に戻り、出勤しないこともあります。

ケース2: 原因の説明

外国(特にアメリカや欧米)では自分の非を認める際にも、謝罪より先に「どうしてミスが起こってしまったのか」を説明する傾向にあります。ただ謝罪するよりも、ミスの原因をはっきりさせて再発防止を防ぐことの方が重要だと考えている人が多いです。しかし、日本ではこの原因の説明が言い訳と捉えられてしまうことがあり、職場でのトラブルに繋がることがあります。

2.相槌を打つのは失礼?

「なるほど、なるほど、」の写真[モデル:大川竜弥]

日本では、相手の話題への興味や共感を示すために、相槌を打つことが一般的なマナーになっています。会話を盛り上げるために、わざとオーバーにリアクションを取る方もいるのではないでしょうか。

しかし、海外の方との会話で相槌を打つと、話の腰を折られたと感じて不快になる人もいるようです。特に、カナダなどの北米地域には相槌が多い人は話を聞いていないという認識があり、全体的に話に対するリアクションが薄いです。相手が話し終わってから初めて反応するということが常識なので、日本に来て頻繁に相槌を打たれると話しづらい、と感じる方もいるようです。逆に、相手が話をしているときにも相槌を打つことを求められるので、話に集中できないと感じるそうです。

そのため、相槌を打つことに慣れている日本人の方は、外国人が無反応で自分の話を聞いている場合、「自分の言っていることを理解していないのではないか」と考えてしまうことがあります。

3.仕事終わりの飲み会は仲良しの人たちと

「瓶ビールの注ぎ方をチェックする上司」の写真[モデル:ゆうせい]

一日の仕事が終わったら、職場の同期や後輩と一緒に飲み会に行く人は多いでしょう。時には、上司に気に入ってもらいたいから接待として行く場合もあります。プライベートな話題で盛り上がり、年次が上の人とも距離を縮めることができる職場でのいわゆる「飲みにケーション」は、日本では一般的です。

一方で、外国人の方は、家族や職場外での友人関係を重要視する傾向にあり、仕事終わりの飲み会はプライベートな時間が圧迫されると感じる人が多い傾向にあります。もちろん、職場の人との飲み会に参加することもありますが、特に仲が良い人とプライベート感覚で行くため、気乗りしない場合ははっきりと断ります。そのため、同じ職場の日本人から付き合いが悪いと思われてしまうこともあるようです。

4.日本人は回りくどい?

「チームワークを高めるオフィスディスカッション」の写真[モデル:たくみ 吉屋ゆり 段田隼人 KNoriX / ノリックス モデルリリース]

 

日本では、謙虚で間接的なコミュニケーションが一般的です。直接相手の意見に対して否定的な意見を伝えることによって相手が気分を害することを避け、婉曲的で曖昧な表現を使って良好な関係を保つことを重要視します。そのため、表情や雰囲気で相手に察してもらうという消極的な方法によって、自分が相手とは違った立場にいるということを知らせます。これは相手の意見を尊重し、対立を極力なくすことができますが、外国人にとっては分かりづらい場合もあります。

海外では、多くの地域でオープンかつ直接的なコミュニケーションが好まれます。例え上司と意見が食い違った場合であっても、自身の言葉で立場を明確にして議論することがよくあります。自身の待遇に不満を抱えている際にも直接言葉で伝えるため、間接的なコミュニケーションを使う人が多い日本では、失礼な人だと解釈されてしまうこともあります。

5.チームの仕事よりも自分の仕事

日本の文化においては、チームワークが一般的に重要視されています。特に職場においては、集団や組織の一員としての役割や責任を重んじる傾向があります。チームワークを通じて、メンバー間での協力や連帯感を高め、共通の目標に向かって努力することが重要視されます。そのため、個人の仕事の成果ではなく、チームで行ったプロジェクトの過程と結果を評価することが多いです。

一方で、海外では個人の成果を重要視する傾向が強いです。いかに自分一人のスキルが高いかをアピールすることがキャリアアップに欠かせないため、与えられた仕事を決められた分だけこなす、という姿勢が一般的です。そのためチームで仕事をすることになった場合、自分の仕事を終わらせた後に時間が余っていても、他の人の分を手伝わないということがあります。チームで協力して仕事を終わらせるよりも、メンバー間で完全に役割分担して個人にそれぞれの仕事の責任を負わせる考え方が主流であるため、日本のような連帯責任という考え方はありません。

日本で雇われてもその姿勢のまま仕事を行い、雇用主に協調性がないと思われてしまうケースもあります。

6.上下関係はゆるめでフレンドリー

上下関係に対する考え方にも大きな違いがあります。まず、日本では上下関係が非常に重要視されており、年齢や地位に基づいて先輩・後輩の立場が存在します。たとえば、職場や学校では上司や先輩に対して尊敬と敬意を払うことが求められます。上司や先輩には敬語を使い、謙譲語を用いて自分を表現するのが一般的です。また、上司や先輩の指示に従うことが重要視されます。

一方、海外の多くの文化では上下関係が緩やかで、個人の能力や成果が重視される傾向があります。職場や学校でも、上司や先輩に対しても尊重はするものの、より対等な関係が求められることがあります。上司と部下の関係であってもあだ名で呼びあったりするなど、日本と比べるとフレンドリーな関係です。指示に対して率直な意見を述べることや、自己主張をすることが許容されることもあります。

特に平等を重んじる欧米の人は、日本の職場で厳しい上下関係を求められると、違和感を抱くことがあるそうです。

文化のギャップにどう対応したらいいの?

上記に述べたとおり、日本と他国の文化の違いによって誤解されてしまうケースが多くあります。このような誤解は、職場での人間関係の不和を招き、早期の離職につながってしまう可能性があります。

誤解をなくすためには、雇用主が外国人従業員の文化や考え方を十分に理解しておく必要があります。

もちろん、日本なりの礼節や文化を教えることもとても重要です。例えば、電車が遅延して時間に間に合わない場合は事前に連絡する、チームで働くときに余裕があればほかの人の仕事も手伝う、などの最低限守ってほしいことを伝えることにより、日本人ともストレスなく働けるようになります。

しかし、日本の文化を押しつけるだけではなく、相手の考え方を尊重し、ほかの従業員にもあらかじめ理解してもらうことによって、人間関係が円滑な職場環境をつくることができます。

おわりに

「ラーメン屋で働くアルバイトのふたり(ひとりは外国人留学生)」の写真[モデル:大川竜弥 Max_Ezaki]

本記事では、日本と他国の職場でのマナーや考え方の違いをご紹介しました。雇用主と従業員が双方の文化を事前によく理解しておくことにより、お互いが働きやすい環境を作ることができます。

外国人採用・教育をスムーズに進めるためにも、日本の文化をただ押しつけるようなことはせずに、相手の文化を尊重し、良い関係を築いていきましょう!