【2024年版】入管法改正の変更で変わったことは? 外国人雇用への影響、特定技能での追加の変更なども解説
日本で働く外国人は急激に増えていますが、そのこととも関係して「入管法改正(出入国管理及び難民認定法改正)」は改正案が何度も出ています。入管法は外国人が日本へ入国したり、出国したりするときに、非常に大きな影響がある法律です。
たびたび問題になることも多いですが、外国人が急激に増えているために制度変更が後追いになっているともいえるかもしれません。
これまで入管法はどのように変更されてきたのか、また直近ではどの点に変更があったのかを解説いたします。
目次
出入国管理及び難民認定法(入管法)について
外国人にかかわることで、よく見聞きする入管法とは、どんな法律なのでしょうか?
入管法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」です。日本からの出国・入国におけるルールや、難民の認定手続きを整備することが目的の法律です。
「出入国管理及び難民認定法(入管法)は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律です。」
こちらを読むとわかると思いますが、外国人だけに限らず、日本人を含めたすべての人が対象です。外国人を雇用する条件として、この入管法に対してある程度の知識を持つ必要があるでしょう。
昨今では改正が何度も行われています。どんな変化が行われたかみていきましょう。
外国人採用に関わる変更点
以下では年度ごとの入管法の具体的な改正の内容と、それにともなう外国人採用における変更点を解説します。
2019年:入管法改正の時代的な背景、変更した点
2019年の入管法の大きな改正として、新たな在留資格である「特定技能」の創設があります。
この在留資格ができるまで、単純労働を含む業務で多くの外国人労働者を受け入れるには、永住権を持っている方か、別の選択肢としては「技能実習制度」しかありませんでした。この技能実習制度は多くの問題も抱えつつ、一定の役割をしてきましたが、直的な日本での定住、高い技能を持つ労働者の受け入れには限界がありました。
しかし2019年この「特定技能」ができたことで、国として幅広い業務の仕事で外国人を受け入れていく姿勢が鮮明になりました。
特定技能が取得できる人材
特定技能はおもに人手不足の解消を目的に創設されました。この在留資格によって、多くの職種・業務で外国人雇用が可能になりました。
取得のためには各分野でもうけられている試験や、日本語検定試験への合格が必要です。そのため、ある程度の知識や語学力を持った即戦力の人材が対象となります。また既存の在留資格である「技能実習」から「特定技能」への移行が可能となったことも、日本で外国人労働者が急増している要因です。
特定技能「1号と2号のちがい」「在留期間」「職種・分野」など、よりくわしい情報は以下で解説しています。
近年の入管法改正のポイント
ここ数年、入管法改正の傾向としては、専門分野の外国人は積極的に受け入れる意向を打ち出している点です。しかし専門性が少ない方の受け入れに関しては慎重になっています。
専門分野の外国人は、特定技能の創設、高度人材ポイント制の開始と拡大、特定活動46号の創設など、どんどん受け入れる方向です。
2021年:「出入国管理及び難民認定法などの一部を改正する法律案」取り下げ
2021年の入管法改正は、おもに以下の表の内容を含んでいました。
内容 | |
難民申請者の収容期間の制限 | 難民申請者の収容期間を制限し、長期収容を防止するための措置。 |
監理措置制度の導入 | 難民申請者や退去命令を受けた外国人に対する「監理人」を指定し、その監督下に置く「監理措置制度」を導入。 |
難民申請の制限 | 難民申請をくり返し行うことで退去命令を免れることを防止するため、再申請の制限を設ける。 |
この改正案は、長期収容の問題を解決して、不法滞在や再申請の悪用を防ぐために作られました。しかしながら、収容施設内の人権問題や、制度の運用に対する強い反対意見があり、この改正案は政府によって取り下げられました。
2023年6月 特定技能2号で受け入れ分野の拡大
特定技能分野の拡大
特定技能の創設につづいて、受け入れる分野の拡大が行われました。2023年の改正では「特定技能2号」に外食業・宿泊を含む9分野が追加。1号の12分野のうち「介護」以外すべての分野で、受け入れることが可能となりました。
また2024年3月には、特定技能の対象に「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」が追加されることが決定。今後正式に改正が行われるため、現在は必要な準備が進められています。
2023年6月:出入国管理に関する特例法の一部を改正
難民認定の見直し
入管法の最新の改正は2023年6月に行われました。この改正は日本からの退去ができない、収容が長期化している外国人が多くいる問題を解消することが目的です。内容は以下のとおり。
・難民認定の申請が3回め以降の場合、「相当な理由」を示さないと本国への強制送還が可能(改正前までは難民認定の申請中は送還が認められなかった)
・紛争などから逃れてきた人を「補完的保護対象者」として保護
・退去命令を受けたのに、送還を妨害したときの刑事罰を新設
・入管施設への収容を3ヵ月ごとに見直す
・収容施設ではなく、支援者や親族など入管が認めた「監理人」のもとで生活できる制度を新設
このように、外国人の収容・送還に対してのルールが変更されました。
多数の批判
しかしこの新たな改正は、取り下げられた2021年の入管法改正案から引き継がれた部分が多く、国内外から批判があつまっています。そのおもな理由としては、日本の難民受け入れに対する消極的な姿勢があります。
日本は他国にくらべて難民認定が厳しいとされています。実際に2021年に日本で認定された難民は、わずか74人と非常に少ない数字です。
参考:難民認定者数と認定率の世界比較、受け入れ数ランキングや日本の現状 WorldVision
そのうえで今回の改正では「難民認定の申請が3回め以降の場合、相当な理由を示さないと本国への強制送還が可能になりました。これまでより強制送還を容易にし、保護が必要な人たちを危険にさらす可能性をより高めたと指摘されています。
難民認定が厳しい理由
日本が難民認定にきびしい理由としては、出稼ぎ目的の在留を防ぐためといわれています。
2010年に日本では、すべての難民認定申請者に対して就労を許可していました。しかし結果として保護を必要とする方より、出稼ぎ目的で申請する人が増えました。
こうした過去の経緯を踏まえ、2018年に一律の就労許可が廃止され、現在の難民認定率の低さにつながっています。
過去の主要な改正
入管法はそのときどきの社会情勢にあわせて、改正されてきました。以下は過去の主要な改正です。
1982年:戦前から日本に住む韓国人・朝鮮人・台湾人の特例永住権を認定
1980年代後半~1990年:在留資格の明確化・不法就労者の雇用主に対する厳罰化を規定
2009年:在留カードの交付
2019年:在留資格「特定技能」の創設
この主要な改正からもわかるように、2019年の特定技能の創設を皮切りとして、近年は人手不足対応のために「多くの外国人を雇用したい」という意向が強く出ています。
まとめ
今回の記事では入管法改正に関する、最新の情報と外国人雇用にあたえる影響などをご紹介しました。
入管法は外国人雇用に関することで、定期的な大きな変更を与えます。この記事では改正があるたびに、最新の情報を更新していきます。ぜひ定期的に確認してみてください!