外国人社員の再入国NG⁉︎ 一時帰国トラブル完全防止策

外国人従業員、特にアルバイト・派遣として活躍する方々にとって、一時帰国はリフレッシュや家族との再会を果たす上で欠かせない機会です。しかし、この一時帰国には、在留資格や再入国に関する厳密な法的ルールが付随しており、その理解不足は予期せぬトラブルの原因となり得ます。もし、手続きの不備等で在留資格を失い再入国が不可能になれば、それは従業員にとって深刻な事態であると同時に、企業にとっても大切な労働力を失い、場合によっては不法就労助長のリスクを負うことにも繋がります。
本記事では、そうした事態を避けるため、外国人従業員の一時帰国に際して特に注意すべき「みなし再入国許可」制度の運用や「在留カード」の取り扱い、それらに関連するリスク事例を具体的に示し、企業が取るべき予防策と初期対応を詳しく解説していきます。外国人材と企業双方が安心できる体制構築にお役立てください。
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要注意!「みなし再入国許可」の誤解と失効リスク
外国人従業員が一時帰国する際に便利な「みなし再入国許可」制度ですが、その条件を正しく理解していないと、意図せず在留資格を失ってしまうことがあります。
「みなし再入国許可」制度とは?
みなし再入国許可とは、有効な旅券(パスポート)と在留カードを所持する正規の在留資格を持つ外国人が、出国後1年以内(または在留期間満了日のいずれか短い期日まで)に再入国する場合に、原則として通常の再入国許可の取得を不要とする制度です。手続きが簡便である一方、以下の点を誤解すると重大な結果を招きます。
- 有効期間の厳守が大原則: みなし再入国許可の有効期間は、出国した日から1年以内です。ただし、在留期間の満了日が1年より前に到来する場合は、その在留期間満了日までとなります。このいずれか短い方の期日までに必ず再入国しなければなりません。例えば、在留期間満了日が2025年10月31日の従業員が2025年5月1日に出国した場合、みなし再入国許可の期限は2025年10月31日です。 この有効期間は、海外で延長することはできません。
- 在留期間満了日間際の一時帰国の危険性: 在留期間の残りが少ない状態での一時帰国は特に注意が必要です。出国前に在留期間の更新許可申請をおこない、新しい在留カードの交付を受けてから出国するのが望ましいでしょう。更新手続き中に一時帰国を希望する場合は、事前に地方出入国在留管理局に相談することをお勧めします。
(参照:https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/minashisainyukoku_00001.html)
出国時の「意思表示」の重要性と不備によるトラブル事例
みなし再入国許可制度を利用するためには、出国時にその意思を明確に示す必要があります。
- 再入国出国記録(EDカード)へのチェック: 出国審査の際、EDカードの「みなし再入国許可による出国を希望します」という欄に必ずチェック(☑)を入れ、入国審査官に提示しなければなりません。
- 意思表示漏れ・不備のリスク: このチェックを忘れたり、意思表示が不明瞭だったりすると、通常の出国(在留資格の放棄)とみなされ、所持していた在留資格が消滅してしまいます。その場合、日本へ戻るためには、改めて査証(ビザ)を取得し直すという大変な手続きが必要になります。
通常の「再入国許可」が必要となるケースとの区別
みなし再入国許可の有効期間(最長1年)を超えて日本を離れる予定がある場合は、出国前に地方出入国在留管理局で通常の「再入国許可」(有効期間は最長5年または6年、在留期限を超えない範囲)を取得しなければなりません。また、一部の在留資格(例:在留資格取消手続中の者)はみなし再入国許可の対象外です。
「在留カード」不備による一時帰国トラブルと対処法
在留カードは、日本に中長期間在留する外国人の「身分証明書」であり、一時帰国の際にも極めて重要な役割を果たします。
在留カードは生命線!一時帰国における携帯・提示義務と有効性の確認
- 常時携帯・提示義務: 在留カードは常に携帯し、入国審査官や警察官などから提示を求められた際には提示する義務があります。これは出国・再入国時も同様です。
- 有効性の確認: 在留カード自体に有効期間が記載されています。この有効期間が切れていないか、出国前に必ず確認が必要です。
在留カードの有効期限切れ・更新漏れのリスクと出国前のチェック体制
在留カードの有効期間が切れている場合、みなし再入国許可は適用されず、日本への再入国もできません。企業としては、日常的な管理の中で従業員の在留カードの有効期限を把握し、期限が近づいていれば更新手続きを促すことが、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です(これは企業の法的義務ではありませんが、雇用管理の一環として推奨されます)。
在留カードの紛失・盗難時の対応フロー(国内・海外での違い)
- 国内で紛失・盗難にあった場合: 速やかに最寄りの警察署または交番に遺失物届または盗難届を提出し、その事実を知った日から14日以内に、住居地を管轄する地方出入国在留管理局に在留カードの再交付申請をおこなってください。
- 海外(一時帰国中)で紛失・盗難にあった場合: まず現地の警察に届け出て、その証明書等を入手します。その後、最寄りの日本の大使館または総領事館に連絡し、指示を仰ぎます。みなし再入国許可の有効期間内であれば、「再入国許可期限証明願」の発行を受け、帰国後に在留カードの再交付申請をおこなうことになります。手続きには時間を要する場合があり、予定通りの帰国が困難になることもあります。企業への速やかな連絡も重要です。
記載事項変更届出の遅延が招くトラブル
住居地(引っ越し)、氏名、国籍・地域などに変更があった場合は、14日以内に地方出入国在留管理局への届出が必要です。この届出を怠ると、罰金の対象となるほか、悪質な場合は在留資格の取消事由に該当する可能性もあります。また、在留カードの情報と実態が異なると、再入国審査で問題が生じることも考えられます。
(参照:在留資格の取消し(入管法第22条の4) | 出入国在留管理庁)
ケーススタディで学ぶ:一時帰国トラブルとその防止策
具体的なトラブル事例を通じて、企業としてどのような点に注意し、どう対応すべきかを学びましょう。
ケース1:「あと数日なら大丈夫だろう…」みなし再入国許可の有効期間超過
状況例: 飲食店のアルバイトAさんは、母国の家族の事情で一時帰国を1週間延長。その結果、みなし再入国許可の有効期間(出国から1年)を3日超過してしまいました。
結果と影響: Aさんの在留資格は失効。日本での就労を続けるためには、新たに在留資格を取得し直す必要が生じ、多大な時間と労力がかかる事態となりました。店舗も貴重な戦力を失いました。
企業としての防止策/対応
- 採用時および一時帰国前に、みなし再入国許可の有効期間について図やカレンダーを用いて具体的に説明し、厳守するよう指導する。
- 可能であれば、出国前に従業員から帰国予定日をヒアリングし、期限管理の意識付けをサポートする。
- 万が一超過しそうな場合は、期限内に日本へ戻るか、やむを得ない事情があれば事前に現地の日本大使館・領事館に相談するよう促す。
ケース2:「まさか自分が…」一時帰国中の在留カード紛失
状況例: 建設現場で働くBさんは、一時帰国中に現地の市場でスリに遭い、財布ごと在留カードを紛失。パニックになり、どうすれば良いか分からず数日間途方にくれました。
結果と影響: 再入国手続きに時間を要し、予定していた帰国便に搭乗できず。会社への連絡も遅れ、シフトに穴が空くなど業務にも影響が出ました。
企業としての防止策/対応
- 一時帰国前に、貴重品(パスポート、在留カード)の管理方法や、万が一紛失した場合の対処手順(現地の警察への届出、日本大使館・領事館への連絡、会社への報告)を具体的に説明しておく。
- 会社の緊急連絡先を明記したメモを、パスポートや在留カードとは別に保管するよう指導する。
ケース3:「体調が悪くて…」予期せぬ事態による再入国遅延
状況例: 製造工場勤務のCさんは、一時帰国中に高熱を出し入院。医師からしばらく安静にするよう指示され、みなし再入国許可の有効期間内に日本へ戻ることができなくなりました。
結果と影響: 在留資格失効のリスクに直面。Cさん本人が現地の日本大使館・領事館に相談し、診断書などの証拠書類を提出することで、状況によっては新たな査証発給の可能性を探ることになりましたが、非常に不安定な立場に置かれました。
企業としての防止策/対応
- 日頃から従業員とのコミュニケーションを密にし、緊急時にも連絡を取りやすい関係を構築しておく。
- 一時帰国前に、万が一の病気や事故に備え、海外旅行保険への加入を推奨する。
- 本人から連絡があった場合は、速やかに現地の日本大使館・領事館に相談し、指示を仰ぐようアドバイスする。企業としても状況を把握し、必要な情報提供などのサポートをおこなう。
企業が実施すべき「一時帰国トラブル予防」チェックリスト
一時帰国が発生した際に必要なアクションをチェックリストでご紹介します。
□ 従業員に対し、みなし再入国許可制度、在留カードの重要性、関連リスクについて、採用時および一時帰国前に十分な説明をおこなっているか。
□ 一時帰国前に、従業員の在留カードおよびパスポートの有効期限を確認し、必要に応じて更新を促す体制があるか。(在留カードのコピーを(個人情報保護に配慮しつつ)保管することも有効)
□ 企業と従業員間の緊急連絡体制(国内外からの連絡方法、担当者など)が明確に定められ、周知されているか。
□ (任意)一時帰国に関する社内ルールや手続きフローを整備し、従業員に周知しているか。
□ (任意)必要に応じて、登録支援機関や行政書士などの専門家と連携できる体制を検討しているか。
まとめ:リスク管理を徹底し、外国人従業員と企業の双方を守る
外国人従業員の円滑な一時帰国・職場復帰支援は、企業のリスク管理として重要です。
万一のトラブル時は状況把握と専門家相談、従業員への寄り添いをしましょう
日頃からの良好なコミュニケーションが最大の予防策であり、必要に応じて登録支援機関や行政書士、Guidable Jobsのような外国人採用のプロを活用することも有効です。
適切なリスク管理で従業員と企業を守りましょう。本記事がその一助となれば幸いです。
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