外国人を正社員として雇用する方法|外国人正社員の数が少ない理由・企業が対応するべきことを解説

日本で年々増加している外国人採用ですが、雇用形態は非正規雇用(アルバイト/派遣/契約社員)が多くを占めています。正社員として雇用されている外国人はまだまだ少ないのが現状です。
本記事では企業が外国人を正社員として雇用していない現状についての解説と、その解決策を解説します。
目次
外国人を正社員として雇用するメリット
外国人の正社員雇用で得られるメリットはたくさんあり、採用を検討している企業は多いです。
今一度、外国人を正社員として雇用するメリットを振り返りましょう。
- 多様な専門知識とスキルの提供
例えば外国人エンジニアを採用した場合、最新のテクノロジーに関して日本人とは違う視点で見ることで、製品開発・企業の競争力向上に貢献します。 - グローバルな視野の拡大
多様な文化・背景を持つ外国人正社員の存在は、国際市場や外国の顧客との関係構築など企業のグローバル展開に貢献します。 - ダイバーシティの推進
外国人正社員の採用は、企業のダイバーシティに対する価値観を強調し、多様性を尊重する文化がある企業であることを証明します。
その他にも、日本人社員の柔軟性を高めたり、企業のブランド力向上に貢献するなど外国人の正社員採用が企業成長に直結する例は数多くあります。
いまだに外国人の正社員が少ない3つの要因
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出によると、2022年の外国人労働者は182万人を超えています。これは過去最高記録となっており、10年連続で更新し続けています。
しかしながら、正社員雇用の数は増加しにくい傾向が続いています。
大きな要因となっているのが「入管法の影響」「日本企業の需要との関係」「受け入れ体制の整備不足」の3つです。
外国人の正社員雇用を検討している企業担当者は、これらの要因をしっかり理解しておく必要があります。
入管法の影響で「就労目的の在留資格」の取得が難しい
入管法(出入国管理及び難民認定法)とは「日本に入国、又は日本から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続きを整備すること」を目的とした法律です。
日本国内での外国人の滞在と労働が規制されているため、外国人を雇用する際は入管法に則った在留資格や労働許可の取得が必要となります。
2019年の改正で「特定技能」という新たな在留資格が創設され、今まで対象外とされていた業界でも外国人を正社員雇用できるようになりました。
しかしながら、特定技能も含め正社員雇用を見込める在留資格には「技能」や「日本語能力」を確認する試験があるため、誰でも簡単に取得できるものではありません。
入管法の改正で受け入れ可能な外国人の母数は増えた一方、就労ビザの取得自体のハードルが高く正社員雇用が難しいのが現状です。
「日本企業の需要」と「在留期間制限」のバランスが取りにくい
永住権を取得し、就労の制限なく日本で働くことを望んでいる外国人がいる反面「出稼ぎ」として一定期間日本で働き、在留期間が終了するとともに帰国する外国人が多いのも実情です。
出稼ぎの外国人労働者は正社員以外の雇用契約であることが多いですが、実際に外国人を雇用する場合の雇用形態は以下の4つに分類されます。
パターン1. 【直接雇用】日本人正社員と同等の立場「正社員」
- IT・製造・建設・教育・医療などの業種に多い
- 安定した給与や福利厚生が受けられる
- 採用プロセスが比較的厳格で、高い日本語能力が求められる
パターン2. 【直接雇用】日本人の嘱託、アルバイト・パート等と同等の立場「非正社員」
- 飲食・小売などの業種に多い
- 契約内容が柔軟に対応可能で、短期雇用が可能
- 低賃金・社会保険がなく安定性が低い
- 留学生が資格外活動として就くことが多い
パターン3. 【間接雇用】請負会社から企業に派遣された「請負社員」
- 建設・製造・工場などの業種に多い
- 専門的な技能を提供するため、安定した収入が得られる
- 雇用主からの指示と制御が限定的
- 契約期間に制約がある
パターン4. 【間接雇用】派遣会社から企業に派遣された「派遣社員」
- 製造・物流などの業種に多い
- 契約内容が柔軟に対応可能で、短期雇用が可能
- 契約期間に制約がある
- 給与水準が一般的に低く安定性が低い
就労ビザを取得した外国人が実際に日本で働く場合、多くが「間接雇用」を選ぶ傾向があります。これは「永住者」や「特定の条件が必要な在留資格」を持っていない限り、在留期間が最長5年であることも関係しています。
実際「出稼ぎ」として一定期間日本で働き、在留期間が終了するとともに帰国する外国人は多いです。
長期雇用を重視する日本企業にとって、正社員として雇用期間を定めずに外国人を採用することは「需要が限定的」ととらえられる場合もあります。
そのため正社員の採用プロセスは、5年間で発揮できるスキルがあるかどうかを見極める比較的厳格なものになっています。
そして外国人本人も、正社員としての契約のために厳格な採用プロセスへ挑むよりも「契約内容が柔軟に対応可能」で「採用プロセスが簡素化されスムーズに働き始められる」間接雇用や非正社員を選ぶことが多いのが実情です。
引用:(独)労働政策研究・研修機構 日本における外国人労働者雇用の現状と課題
受け入れ体制の整備に課題がある
外国人労働者を正社員として採用する際には、企業側も受け入れ体制を整えなければなりません。
事務的な準備としては、英文の就業規則や雇用契約書などの作成があります。非正規社員と異なる法的要件の説明や定期的な面談、カルチャーサポートなども必要です。
職場の環境としては外国人労働者の雇用労務責任者を選出したり、日本国語教育を推進することも望ましいです。そして、日本人社員の異文化理解を深めることも重要です。
ここでは、外国人を正社員として無期限雇用することに成功した企業事例をご紹介します。
事例1. 日揮株式会社
- ビジネス日本語検定J1以上で奨励金を支給
- 社内の部活動・クラブ活動などを通して人間同士のつながりを深めて定着を促進
- 社内ファシリティ案内を英語で表記
- イスラム教徒向けのお祈り部屋の設置
事例2. カシオ計算機株式会社
- キャリアプランをイメージしやすくするために職種別採用を実施
- ビジネス日本語能力テストの受験料を補助
- 「母国帰国休暇」を制度化し、有給を申請しやすくした
- イスラム教徒向けのお祈り部屋の設置
事例3. パナソニック ホールディングス株式会社
- レベル別にビジネス日本語研修を実施
- 仕事の進め方に対する違いをワークショップ形式で学ぶ
- 異文化研修の実施
- 経営理念研修を個別に実施
外国人労働者の正社員採用が初めての場合は、何に重点を置けばいいのか分からず手間取ってしまうこともあります。
上記のような企業例を参考に、自社ではどのような受け入れ体制の整備ができるかを考えましょう。
外国人の正社員を雇うために企業が対応するべきこと
外国人の正社員雇用には数多くのメリットがある一方、前述した要因により、外国人の正社員雇用は少ないのが現状です。
外国人を正社員として長期雇用するために、企業ができることを紹介します。
- 在留資格取得サポート
外国人正社員候補者への在留資格取得のサポートを提供し、特定技能試験や日本語能力試験の受験に関する支援を行う。 - 採用プロセスの最適化
外国人正社員の採用プロセスを柔軟かつスムーズにする。
採用条件や面接の際に日本語能力の評価を緩和し、個別のケースに応じた対応を検討する。 - キャリアパスの明確化
外国人正社員に対して、将来的なキャリアパスや昇進の機会を示し、長期雇用に対するモチベーションを高める。
キャリア開発支援を通じて、正社員としてのスキル向上を促進する。 - サポート体制の充実
外国人正社員が生活に関する課題や困難に対処できるよう、サポート体制を整備する。
必要に応じて住宅支援、医療・福祉情報提供、法的サポートを提供する。 - 多文化教育とトレーニング
日本文化やビジネス習慣に関する教育プログラムを提供し、外国人正社員と日本人社員の相互理解を促進・円滑なコミュニケーションを支援する。 - ブランディング
ダイバーシティの重要性を広く社内外に伝え、外国人正社員を受け入れる姿勢を強調し、企業のブランド価値を向上させる。
企業側の対応を柔軟に変えていくことで、外国人自身の仕事に対するモチベーションが向上し、正社員雇用に繋がります。
こういった活動をしていくことで、多様な人材の導入と長期的な雇用を実現できるでしょう。
外国人の正社員雇用について詳しくなりましたか?
外国人労働者が過去最高を記録する一方、実際の内訳は留学生のアルバイトや技能実習の割合が多く、正社員はほんの一握りに過ぎません。
しかし、外国人の正社員雇用はメリットがとても多く、実際受け入れに成功している企業も増えつつあります。
在留資格や複雑な受け入れ体制など、企業側が理解しなければならないこともありますが、ポイントをおさえて効率的な正社員雇用を実現しましょう。