外国人の新卒採用のイロハ教えます!

外国人が増加傾向にある近年、多くの企業が積極的な「外国人採用」をはじめています。日本へ留学する外国人も年々増えており、外国人の新卒採用は苦労する話ではないように思えるでしょう。
ところが実際に、日本での就職活動を行う外国人留学生は、日本独自の就活システムに戸惑うことが非常に多く諦めてしまう学生も少なくありません。外国人雇用を検討する企業などは、これら留学生が抱える悩みや問題もしっかりと把握して対策しておくと成功する可能性が上がることは間違いないでしょう。そこで今回は外国人の新卒採用に関する情報をまとめましたので徹底解説していきます。
目次
外国人の新卒採用:最近の動向って?!
外国人の新卒採用を検討する企業は、外国人留学生の就職活動状況などを事前にしっかりと把握しておく必要があります。また、同時に新卒外国人が好みやすい業界などもリサーチしておくと、効率的な採用活動が行える可能性もあるでしょう。そこでまずは外国人の新卒採用者の割合、新卒外国人に人気の業界などをリサーチしました。
新卒外国人はどれくらいいるの?
冒頭でもお伝えしたように近年は高等教育機関(大学や大学院など)への外国人留学生は増加傾向にあります。しかし、実際に新卒採用のみの枠でいうと外国人留学生が占める割合は決して高くはありません。以下に参考になるデータをまとめましたのでチェックしてみましょう。
年 | 新卒採用における外国人留学生の割合 |
2013年 | 1.66% |
2014年 | 1.54% |
2015年 | 1.82% |
2016年 | 1.75% |
2017年 | 1.67% |
2018年 | 1.89% |
※割合は大学、大学院卒相当、正規社員として採用されたもの
【参考】リクルートワークス研究所「外国人留学生は若手採用難の時代の“救世主”たりえるか 古屋星斗」
上記の表を見ると、2013年から2018年までの新卒採用における外国人留学生の割合は1.5%~1.9%ほどと横ばい状態が続いています。
ちなみに法務省入国管理局によると、平成29年に就職目的で在留資格変更を申請した留学生は2万7,926人となっており、このうち2万2,419人が許可されています。これは前年(平成28年)の2万1,898人より6,028人(27.5%)、前年の許可数である1万9,435人より2,984人(15.4%)増加していることになるのです。
【参考】法務省入国管理局「平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」
また、平成29年における在留資格変更許可申請に対する許可状況を主な国籍、地域別で見ると以下のようになります。
国籍・地域 | 許可数 |
中国 | 1万326人 (前年比713人 6.5%減) |
ベトナム | 4,633人 (前年比2,145人 86.2%増) |
ネパール | 2,026人 (前年比859人 73.6%増) |
韓国 | 1,487人 (前年比65人 4.6%増) |
台湾 | 810人 (前年比 121人 17.6%増) |
【参考】法務省入国管理局「平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」
日本企業での就職を希望する外国人留学生を国別に見ると、中国、韓国、台湾など日本から非常に近い国や地域からの留学生が多く、平成29年は東南アジアのベトナムからの日本企業就職を希望する若年層世代が飛躍的に増加しました。
新卒外国人はどんな業界が好き?
次いで新卒外国人に人気の業界や志望業界などのデータをチェックしていきましょう。株式会社ディスコが2018年6月~7月にかけて2019年3月卒業予定の外国人留学生に対して行ったインターネット調査によると、文系、理系の志望業界上位は以下のようになりました。
順位 | 文系 | 理系 |
1位 | 総合商社(34.4%) | 電子・電機(30.4%) |
2位 | 情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト(23.4%) | 自動車・輸送用機器(25.0%)
水産・食品(25.0%) |
3位 | 調査・コンサルタント(22.5%) | |
4位 | 情報・インターネットサービス(22.0%) | 医薬品・医療関連・化粧品(23.2%)
素材・化学(23.2%) |
5位 | 自動車・輸送用機器(20.1%) | |
6位 | 専門商社(19.6%)
電子・電機(19.6%) |
エネルギー(21.4%)
情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト(21.4%) |
7位 | ||
8位 | ホテル・旅行(18.7%) | 機械・プラントエンジニアリング(16.1%) |
9位 | 銀行(13.9%) | 精密機器・医療用機器(14.3%) |
10位 | マスコミ(12.0%) | 商社(12.5%)
情報・インターネットサービス(12.5%) |
ご覧のように同じ外国人留学生という枠でも文系、理系によって人気の業界や志望業界は異なることがわかります。文系の第1位にランクインした商社(総合)は、グローバルに活躍できる業界でもあるため、毎年多くの外国人から人気です。
また、文系の上位には「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」「情報・インターネットサービス」などがランクインしており、IT業界への就職を希望する外国人が多いこともわかります。一方の理系は上位に「電子・電機」「自動車・輸送用機器」「水産・食品」が入っているように、主に研究や開発などを伴う専門的な製造業が人気です。
実際、外国人に人気の業種や職種などはビジネス業界でもある程度把握しているため、外国人向けの求人サイトや就職サイトでも上記のような業界の求人情報はよく掲載されています。
外国人の新卒採用:彼らの不安って?!
外国人の就職活動では有名な話ですが、日本とは違う文化の国から来た留学生にとっては日本の就活活動のスタイルは難しいと感じていることが多いようです。
実際、外国人留学生に就職活動の難易度の調査をしたところ、「とても厳しい」と回答したグループが42.8%、「やや厳しい」と回答した組が37.9%となってなり、日本での就職活動に厳しさを感じている外国人は8割に上ることがわかっています。
では具体的に外国人留学生が日本の就職活動に厳しさを感じる理由は何なのでしょうか?実際に日本での就職活動を行ってきた外国人留学生のリアルな声を基に、日本での就職活動が難しい理由、原因を解説します。
ビジネス敬語は難しすぎるよ!!
日本での就職活動を難しくさせている原因のひとつに「日本語」「敬語」「ビジネス敬語」など、言葉の壁が高いことが挙げられます。そもそも日本語は世界でも難しい言語(特に英語ネイティブの外国人)に分類されることが多いため、本来であれば日常会話レベルの日本語を習得するだけでも素晴らしいことです。
ところが就職活動などのビジネスの世界になると、単に言葉を理解し、発するだけではなく、ビジネスシーン特有の敬語も覚える必要があります。一例ですが、「会社」という言葉ひとつとっても「当社」「弊社」「御社」「貴社」など複数の言い方が存在。これらはコミュニケーションを取る相手によって言い方を変化させていかなければならないため、プライベートで使える言葉を覚えたばかりの外国人にとっては非常に難しく感じるでしょう。
もちろん上記の例はあくまでもビジネス用語のひとつであり、日本での就職を希望する場合は数多くのビジネス用語や敬語を学ぶ必要があります。
面接はリラックスできない!!
外国人留学生が日本での就職活動に難しさを感じる理由の2点目は面接です。日本での就職活動は集団面接はもちろんのこと、個人面接でも面接官が複数いるケースもあるのが現状です。また、日本は米国などの海外と比較すると、1回の面接時間が長いという特徴も。実際に「アメリカの面接は10分~15分ほどだけど、日本では1時間半以上の面接を行ったことがある」という外国人もいます。
この他、日本では面接時にスーツを着用するのは当たり前ですが、実は海外ではスーツに近い服装を着用することはあっても日本のように就活専用のスーツを着用することはないといいます。実際、株式会社ディスコが行ったアンケート調査においても「日本の就職活動でおかしいと思った制度や習慣」という質問に対して「服装」と回答した外国人の割合が36.5%を占めていることがわかりました。
このように日本の就職活動の制度や習慣は他の国、地域とは大きく異なる部分が多くあります。そのため、文化などが異なる異国から来た外国人にとってはリラックスできない環境下での面接に戸惑うことも少なくありません。
外国人の新卒採用:企業の注意することは??
外国人の新卒採用はいくつかの注意点がありますが、企業側も留学生も忘れてはならない手続きのひとつに「ビザの更新」があります。外国人留学生の場合は日本での就職を希望する場合、就労ビザへの変更手続きを行わなければなりません。つまり新卒の外国人を採用する場合は、企業(雇用側)が国からその留学生に働いてもらう許可を得なければ正式雇用は不可ということです。
新卒の留学生を採用する場合は、申請人の居住地を管轄する地方入国管理局にて在留資格変更許可申請を行う必要がありますので注意しておきましょう。在留資格変更許可申請の詳細や手続き方法などは、以下の法務省の公式サイトで確認できます。
【参考】法務省「在留資格変更許可申請」
またビザの期間は人によって異なり、更新手続きには費用もかかるため、それを誰が負担するのかといった問題もしっかりと考えておく必要があります。
ビザの更新は忘れないで!!
近年、海外拠点を持つ日本企業を中心に外国人の新卒採用は増加傾向です。また日本国内の人口減などの影響もあるため、今後は外国人の新卒採用を検討する企業も増えると予想されています。
しかし文化、習慣が異なる国や地域から来た留学生は日本での就職活動に戸惑いや不安を覚えることも少なくありません。これが外国人留学生の日本での就職率が低い原因のひとつでもあります。
そのため各企業、雇用する側が外国人の新卒採用に本気で取り組む場合は、何かしらの対策や工夫などを施す必要があるでしょう。具体的にはすでに日本企業で働く外国人に英語の講師を務めてもらい、日本人社員と外国人社員のスムーズな意思疎通を促進したり、日本語勉強のための費用を一部負担したりなどの対策が挙げられます。
ちなみに上記の例は、実際に外国人採用に成功している企業が施している対策や工夫のひとつです。外国人を採用するだけではなく、その外国人に長く働いてもらいたいと考えている場合は、積極的な変革も検討しておきましょう。
外国人の新卒採用のイロハは掴めましたか?
今回は外国人の新卒採用に関するお役立ち情報を解説しました。外国人を新卒で雇う企業は年々増加しており、外国人向けの求人サイトや就職サイトも充実傾向にあります。しかし、多くの留学生は言葉の壁や日本独自の就活システムに戸惑うことが多く、日本で就職を希望するすべての留学生が満足な結果を出しているとはいえない状況です。
そのため、雇用する側も外国人が就労しやすい体制を整えたり、外国人社員向けの研修を充実させたりといった工夫、対策を施す必要もあるでしょう。もちろん留学生は職場環境だけではなく、面接時の雰囲気にも戸惑うことが多いですので、これらの課題、問題にも積極的に取り組むことが大切です。現在、外国人の新卒採用を検討している企業担当者、人事部はぜひ参考にしてください。