特定技能での外国人材採用を成功させるには、適切な人材を見つけることと並んで、複雑な申請手続きを正確に進めることが不可欠です。特に、申請に必要な書類は多岐にわたり、準備に多くの時間と労力を要します。

この記事は特定技能申請ガイドの【前編】として、基本的な申請の流れと、最も重要となる「必要書類」について詳しく解説します。(主に地方出入国在留管理庁の窓口での申請を想定)

なお、近年利用が広がっている効率的な「オンライン申請」の方法については【後編】で具体的な手順を詳しく解説しますので、そちらも合わせてご確認ください。

まずは、申請全体の流れと必須書類をしっかり押さえましょう。

本記事では、日本国内に在住している外国人を採用する際の「在留資格変更許可申請」を例に解説を進めます。

在留資格変更許可申請の場合【申請のステップ一覧】

採用担当者様が全体像を正確に把握し、手続きを円滑に管理できるよう、申請の全フローを10のステップに分け、各段階で「企業がやること」と「本人がやること」を時系列で整理した一覧表をご用意しました。双方のタスクと役割分担を明確にすることで、書類の準備漏れや手続きの遅延を防ぎ、確実な受け入れを実現しましょう。

ステップ企業がやること本人(外国人)がやること補足
1候補者探しと採用決定特定技能の要件を満たす人材を募集・選考し、採用を決定する。求人に応募し、選考を受ける。(前提として特定技能試験等に合格しておく)
2雇用契約と支援計画の準備・法令基準(日本人と同等以上の報酬等)を満たした「特定技能雇用契約」を締結する。
・「1号特定技能外国人支援計画」を作成する。
雇用契約の内容を確認し、締結する。支援計画の作成・実施は登録支援機関への委託も可能。
3事前ガイダンスの実施雇用契約や支援内容等について本人に対面またはオンラインで説明し、本人が理解したことを確認する書面を作成する。事前ガイダンスを受け、内容を十分に理解し、確認書にサイン等を行う。業務内容や労働条件、日本で生活する上でのルールや注意事項などを確認。
4申請書類の準備【最重要】・自社に関する書類(登記事項証明書、納税証明書等)を準備する。
・本人が準備すべき書類を明確に伝え、取得方法を案内・サポートする。
自身の書類(パスポート、在留カード、住民税の証明書、試験の合格証明書等)を準備する。後述する「申請書類リスト」の章で詳しく説明。
5申請書の作成(申請取次を行う場合)「在留資格変更許可申請書」の作成を代行する。(本人が作成する場合)出入国在留管理庁のウェブサイトから最新様式をダウンロードし、申請書を作成する。出入国在留管理庁のウェブサイト最新様式はこちらから確認。
6地方出入国在留管理庁への申請(申請取次者として)本人に代わって申請書類一式を提出する。原則として、自身の住居地を管轄する地方出入国在留管理庁へ申請書類一式を提出する。申請取次者(企業の職員、弁護士・行政書士)による代理申請やオンライン申請も可能。
7審査(特になし)出入国在留管理庁からの照会等に対応できるよう準備しておく。(特になし)審査結果の通知を待つ。審査期間は申請内容や時期により異なる。
8結果通知と新しい在留カードの受領本人からの許可連絡を受け、就労開始に向けた最終準備(社会保険手続き等)を進める。①許可通知ハガキを受領する。
②指定期間内に、必要書類を持参し、地方出入国在留管理庁で新しい在留カードを受け取る。
新在留カード受領時に手数料(収入印紙4,000円)、通知ハガキ、パスポート、現在所持している在留カードが必須。
9就労開始と関連手続き新しい在留カードを確認後、社会保険や雇用保険への加入手続きを行う。新しい在留カードを受け取った後、正式に就労を開始する。このステップをもって、特定技能外国人として正式に就労可能となる。
10支援の実施と定期届出・「支援計画」に基づき、生活オリエンテーションや相談対応等の支援を開始、継続する。
・四半期ごと等、定められたタイミングで出入国在留管理庁へ定期的な届出を行う。
企業からの支援を受け、必要に応じて相談等を行う。支援の実施と定期的な届出は企業の義務。

参照:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について | 出入国在留管理庁 、出入国在留管理庁: 標準処理期間 、手数料について

【特定技能外国人の受け入れ】手続きの流れに沿って解説!

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特定技能 申請書類リストと準備の注意点

特定技能の在留資格変更許可申請には、非常に多くの書類が必要です。
ここで挙げるのは主なものであり、申請者の状況(現在の在留資格など)や受入れ分野によって必要書類は異なります。
申請前には必ず、出入国在留管理庁のウェブサイトでご自身のケースに必要な最新の書類リストを確認してください。

【受入れ機関(企業側)が準備する書類】

書類名内容とポイント
登記事項証明書法人の場合に必要。最新の情報であることを確認してください。
役員の住民票の写し日本に住所を有する役員全員分が必要です。
特定技能所属機関概要書法務省が定める所定の様式で作成します。
直近2年分の決算文書の写し損益計算書および貸借対照表。新規設立などの場合は事業計画書などを準備します。
労働保険関係成立届等の写しまたは労働保険料等納入通知書の写しなど、労働保険に加入していることを証明します。
社会保険料納入状況照会回答票
または健康保険・厚生年金保険料領収証書の写しなど、社会保険料を適正に納付していることを証明します。
税に関する証明書
法人税、消費税、源泉所得税、地方税(法人住民税・事業税)などの納税証明書。未納がないことを証明する必要があります。
※提出を省略できる書類について
過去の申請から内容に変更がない場合など、一部提出を省略できる書類があります。詳細は出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。

 

◾️ 雇用契約・労働条件に関する書類

書類名内容とポイント
特定技能雇用契約書の写し省令で定められた基準(日本人と同等以上の報酬など)に適合していることが必須です。
雇用条件書の写し労働基準法第15条に基づく書面です。特定技能雇用契約書と一体として作成することも可能です。

 【関連】【特定技能】「雇用契約書」の作り方 完全ステップガイド

◾️ 支援体制に関する書類

書類名内容とポイント
1号特定技能外国人支援計画書省令で定められた基準に適合し、適切な支援を実施することを明記します。
支援責任者・支援担当者の書類
支援責任者と支援担当者それぞれの履歴書、就任承諾書、役職員であることの証明書が必要です。
(登録支援機関に全部委託する場合)登録支援機関登録通知書の写し、特定技能外国人支援委託契約書の写しを提出します。

◾️ 事前ガイダンス・費用説明に関する書類

書類名内容とポイント
事前ガイダンスの確認書所定の様式を使用し、ガイダンスを実施した事実を確認します。
支払費用の説明書
外国人本人が日本に来るまでに負担する費用がある場合に作成します。
徴収費用の説明書保証金などを徴収する場合に必要です(原則禁止されています)。

◾️ 分野別書類(該当する場合)

書類名内容とポイント
分野別追加書類
例:建設分野では「建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録証明書」など。
申請する分野の所管省庁の指示を必ず確認してください。

 

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【外国人本人(申請者側)が準備・提出する書類】

書類名内容と準備のポイント
申請書在留資格変更許可申請書(顔写真貼付)。必ず最新の様式を使用してください。
証明写真規定サイズ(縦4cm×横3cm)。申請前3ヶ月以内に撮影されたものが必要です。
パスポート及び在留カード申請時に窓口で提示します。コピーではなく原本が必要です。
技能試験の合格証明書の写し従事する業務区分に対応した技能試験の合格を証明するものです。
日本語能力試験の合格証明書の写しJFT-Basic または JLPTのN4以上の合格を証明するものです。
健康診断個人票指定された検査項目を全て満たし、医師の所見が記載されていることが必須です。
特定技能外国人の報酬に関する説明書法務省が定める所定の様式を使用します。
直近1年分の住民税の課税・納税証明書住所地の市区町村役場で取得します。未納がないことが必要です。
<試験免除の場合の注意点>技能実習2号を良好に修了した外国人などは、技能・日本語試験が免除されます。
この場合は、免除対象であることを証明する書類(例:技能実習評価調書など)を提出します。

【書類準備の注意点】

  • 最新様式の確認:申請書や各種様式は変更されることがあります。必ず出入国在留管理庁ウェブサイトから最新版をダウンロード・使用してください。
  • 証明書の有効期限:登記事項証明書や住民票、納税証明書などは、通常「発行日から3ヶ月以内」のものが有効です。期限切れの書類は受理されません。
  • 書類内容の整合性:申請書、雇用契約書、支援計画書など、提出する書類間で記載内容に矛盾がないか、提出前に必ず確認しましょう。
  • コピーと原本:原則として提出書類はコピーで良いものが多いですが、窓口で原本の提示を求められる場合があります。指示に従ってください。
  • 翻訳:日本語以外で作成された書類には、原則として日本語の翻訳文を添付する必要があります。

参照: 出入国在留管理庁: 日本での活動内容に応じた資料【在留資格変更許可申請】 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/index.html#midashi02 (こちらで必要な最新の書類リストと様式を必ずご確認ください)

申請手続きに関する注意点とよくある疑問 (Q&A)

特定技能の申請をスムーズに進めるために、以下の点にご注意ください。

Q: 申請はいつまでに行う必要がありますか?

A: 在留資格変更許可申請は、現在持っている在留資格の在留期間が満了する日までに行う必要があります。申請が受理されていれば、審査結果が出るまで(または元の在留期限から最大2ヶ月を経過する日まで)は、現在の在留資格で引き続き日本に滞在できます(特例期間)。ただし、審査には時間がかかるため、在留期限ギリギリではなく、余裕をもって申請準備を進め、早めに申請することが重要です。

Q: 申請書類に不備があった場合はどうなりますか?

A: 提出した書類に不足や記載漏れなどがあった場合、出入国在留管理庁から電話や郵送(資料提出通知書など)で連絡があり、追加の書類提出や説明を求められます。指示に従い、速やかに対応してください。指示に応じない場合や、不備が解消されない場合は、申請が不許可となる可能性があります。

Q: 審査にはどのくらいの期間がかかりますか?

A: 出入国在留管理庁は標準処理期間を公表していますが、これはあくまで目安です。申請内容、提出書類の状況、申請時期、地方局の混雑具合などによって、実際の審査期間は変動します。許可が出るまでの期間を見越して、採用計画や本人の生活設計を考える必要があります。

Q: もし申請が不許可になった場合はどうすれば良いですか?

A: 不許可となった場合、その理由を確認することが重要です(通常、不許可通知書に簡単な理由が記載されていますが、詳細は窓口で確認できる場合があります)。理由を分析し、問題点を改善できれば再申請も可能です。ただし、再申請しても必ず許可されるとは限りません。専門家(行政書士など)に相談することも有効な選択肢です。

Q: 申請手続きについて、どこに相談できますか?

A: 申請手続きに関する一般的な質問は、最寄りの地方出入国在留管理庁のインフォメーションセンターや、外国人在留総合インフォメーションセンターに問い合わせることができます。個別の申請に関する相談や、より専門的なアドバイスが必要な場合は、申請取次資格を持つ行政書士などの専門家への相談を検討しましょう。

参照: 出入国在留管理庁: 外国人在留総合インフォメーションセンター

申請をスムーズに進めるために

特定技能の申請手続きは複雑であり、多くの時間と労力を要します。スムーズに進めるためには、以下の点が役立ちます。

  • 早めの準備開始: 特に書類収集には時間がかかるものが多いため、採用が決まったら速やかに準備を開始しましょう。
  • チェックリストの活用: 必要な書類をリスト化し、準備状況を管理することで、漏れやミスを防ぎます。
  • 専門家の活用検討: 自社での申請が難しい場合や、より確実に手続きを進めたい場合は、登録支援機関(支援計画作成・実施、一部申請サポート)や行政書士(申請書類作成、申請取次)など、外部の専門家のサポートを検討することも有効です。

まとめ

今回は、特定技能申請ガイド【前編】として、国内在住の外国人を採用する際の「在留資格変更許可申請」を中心に、申請全体の流れと、特に重要な必要書類について解説しました。

【前編のポイント】

  • 申請プロセスは多段階にわたり、企業と外国人本人の双方で準備が必要。
  • 必要書類は非常に多く、正確な収集・作成が不可欠。
  • 申請は在留期限までに、余裕をもって行うことが重要。

手続きの複雑さ、書類準備の大変さを感じられた担当者様もいらっしゃるかもしれません。

【後編】では、こうした手続きの負担を軽減できる可能性のある「在留申請オンラインシステム」を利用した申請方法について、メリット・デメリットから具体的な手順まで詳しく解説します。ぜひそちらもご覧いただき、貴社にとって最適な申請方法をご検討ください。

【特定技能オンライン申請】担当者向け実践マニュアル

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