特定技能ビザの更新方法は? 企業が用意する書類や手続きの流れを紹介!

特定技能ビザで働く外国人を雇っている企業にとって、在留期間の更新は欠かせない手続きです。必要な書類が多く、提出の時期や支援内容の記録に不備があると、許可が下りないこともあります。
この記事では、特定技能制度の基本から、更新に向けた準備や審査のポイントまでを順を追って紹介します。書類の種類や費用負担のルール、チェックポイントもあわせてまとめました。
初めて担当する方はもちろん、内容を整理したいときにも参考にしてみてください。
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特定技能ってなに?
特定技能は、人手不足が深刻な16の分野で、即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。この制度には、「特定技能1号」と「特定技能2号」という2つのタイプがあります。
1号は、ある程度の知識や経験があれば働ける在留資格です。日本語と技能の試験に合格すれば取得できます。
滞在できるのは最長で5年間ですが、実際には法務大臣が一人ひとりに対して1年以内の期間を決め、そのつど更新する形になっています。
一方の2号は、さらに高い技能や実務経験が求められ、専門性の高い仕事を任される立場です。在留期間の上限がないため、条件を満たせば長期的に働き続けることもできます。与えられる期間は、3年・1年・6か月のいずれかに設定されています。
どちらの資格も、期限が切れる前に忘れず更新手続きを行う必要があります。
更新時にチェックされるポイント
在留期間を延長するときには、いくつかの条件が改めて見直されます。
たとえば、次のような点が審査の対象です。
- 外国人との雇用契約が正しく結ばれていて、日本人と同じ給与水準になっているかどうか(同一労働同一賃金)
- 受け入れている企業が適切に運営されており、税金の未納や法律違反がないかどうか
- 外国人をサポートする体制が整っていて、決めた内容どおりに支援が行われているか
こうした点をもとに、更新が認められるかどうかが判断されます。
1号から「特定技能2号」へ移るときは、通常の更新ではなく「在留資格の変更手続き」が必要になります。
また、2号になると在留期間の制限がなくなり、家族を日本に呼ぶことも可能です。ただし、2号へ移行するためには「技能試験に合格」していることや「一定の実務経験」があることなど、1号よりも厳しい条件が求められます。
特定技能制度の詳しいルールについて知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
特定技能ビザの更新手続きはいつ・どう進める?
更新のタイミングを逃さないためには、早めの準備が大切です。手続きの方法や費用の目安についても、あらかじめ知っておきましょう。
手続きの準備は「4か月前」からが安心
在留カードの有効期限は「満了日の前日24時」で切れます。出入国在留管理庁では、その3か月前から更新申請を受け付けていますが、必要な書類をそろえるには意外と時間がかかることがあります。
たとえば、企業が準備する書類に加えて、外国人本人の納税証明書や住民税の課税証明書なども必要です。
これらの書類をそろえるのに1〜2か月ほどかかるケースも少なくありません。そのため、4か月前から社内で担当者を決め、手続きの流れを整理しておくのがおすすめです。
また、出入国在留管理庁の審査に時間がかかることもあります。忙しい時期は2か月以上かかる場合もあるため、ギリギリの提出は避けたほうがよいでしょう。
手続きは窓口提出かオンライン申請のどちらか
更新申請には2つの方法があります。
1つはしゅtの窓口に書類を持って行く「紙申請」、もう1つは専用システムを使う「オンライン申請」です。
オンライン申請は、24時間いつでも提出できるのがメリットです。申請が終わると「申請受付番号などが記載された受付完了メール」が届きます。郵送の手間がかからないうえ、審査の進み具合をWeb上で確認できるのも便利です。
ただし、法人番号や担当者の情報を事前に登録する必要があります。初めて利用する場合は準備に半日ほどかかることもあるため、時間に余裕をもって対応しましょう。
一方、紙申請の場合は、外国人本人か代理人(弁護士・行政書士・企業の職員など)が窓口に出向き、整理券を受け取って順番を待つことになります。
この際、在留カードの裏面には「更新申請中」のスタンプが押されます。
どちらの方法でも「受付完了メール」または「スタンプ付きの在留カード」を携帯していれば、手続き中も引き続き働くことが可能です。
更新費用の目安を知っておこう
在留期間の更新手数料は、許可されたあとに収入印紙で支払います。
2025年4月以降、料金は次のように変わりました。窓口申請は6000円、オンライン申請は5500円です。この費用を誰が負担するかは法律で決まっていませんが、会社が更新をお願いする場合は、企業負担のケースが多く見られます。
行政書士に手続きを任せる場合の費用は、1件あたり3〜6万円が目安になります。
更新のときに企業がそろえる書類は?
在留期間を更新するとき、企業(特定技能所属機関)が準備する書類はたくさんあります。
「書類は本人が用意するものが中心」と思われがちですが、実際は企業側が作成する書類のほうが多いです。
とくに、雇用契約や給与に関する資料は、会社が責任を持って用意しなければなりません。
特定技能「1号」の更新で必要な書類
企業が準備する書類
- 【必須】特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
- 【必須】在留期間更新許可申請書 ※本人と連名
- 【必須】特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 【必須】特定技能雇用契約書の写し
- 【必須】雇用条件書の写し・賃金の支払に関する資料
- 【登録支援機関を利用していない場合】支援実施の記録・エビデンス
- 【滞納がある場合】公的義務履行に関する誓約書 ※本人と連名
- 【前回滞納があった場合】履行証明(納税証明書、通知書の写しなど)
本人が準備する書類
- 【必須】証明写真 ※6か月以内に撮影したもの
- 【必須】住民税課税証明書 ※直近1年分
- 【必須】住民税納税証明書 ※すべての納期が終わった年度分
- 【必須】給与所得の源泉徴収票の写し ※課税証明と同じ年度のもの
- 【加入者のみ】国民健康保険証
- 【加入者のみ】国民健康保険料(税)納付証明書
- 【厚生年金に加入していない場合】国民年金保険料領収証書または被保険者記録照会
特定技能「2号」の更新で必要な書類
内容は1号とほぼ同じですが、支援関連書類は不要です。
企業が準備する書類
- 【必須】特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
- 【必須】在留期間更新許可申請書 ※本人と連名
- 【必須】特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 【必須】特定技能雇用契約書の写し
- 【必須】雇用条件書の写し・賃金の支払に関する資料
- 【滞納がある場合】公的義務履行に関する誓約書 ※本人と連名
- 【前回滞納があった場合】履行証明(納税証明書、通知書の写しなど)
本人が準備する書類
- 【必須】証明写真 ※6か月以内に撮影したもの
- 【必須】住民税課税証明書 ※直近1年分
- 【必須】住民税納税証明書 ※すべての納期が終わった年度分
- 【必須】給与所得の源泉徴収票の写し ※課税証明と同じ年度のもの
- 【加入者のみ】国民健康保険証
- 【加入者のみ】国民健康保険料(税)納付証明書
- 【厚生年金に加入していない場合】国民年金保険料領収証書または被保険者記録照会
分野によって追加で必要になる書類
基本の書類に加えて、業種によっては企業がさらに用意しなければならない書類があります。
以下に、おもな分野と追加書類の例をまとめました。※登録支援機関に関する書類は1号にのみ必要です
介護分野
- 介護分野における業務を行わせる事業所の概要書
- 協議会の構成員であることの証明書
ビルクリーニング分野
- 建築物清掃業登録証明書 または 建築物環境衛生総合管理業登録証明書
- 協議会の構成員であることの証明書
工業製品製造業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
造船・舶用工業分野
- 造船・舶用工業事業者の確認通知書
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
自動車整備分野
- 協議会の構成員であることの証明書(入会届出書など)
- 外国人支援者の整備士資格証や実務経験証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
航空分野
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
宿泊分野
- 旅館業許可証の写し
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
自動車運送業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
鉄道分野
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
飲食料品製造業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
外食業分野
- 営業許可証または届出書の写し(名義が異なる場合は、理由書や営業契約書の写しなどが必要)
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
林業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
木材産業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
建設分野
- 現時点で分野別の提出資料なし
農業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
- 登録支援機関の関連書類(誓約書、協議会の構成員証明書など)
漁業分野
- 協議会の構成員であることの証明書
- 漁業・養殖業に関する公的証明書
- 漁業協同組合の所属証明書
- 漁船原簿謄本または漁船登録票の写し
- 登録支援機関の関連書類(誓約書など)
書類のひな型(参考様式)は、出入国在留管理庁の公式ホームページからダウンロードできます。
企業の役目と更新時のチェックポイント
在留期間の更新では、企業にも守らなければならないルールがあります。支援や契約の内容など、見落としやすい点をあらかじめ確認しておきましょう。
労働条件が日本人と同じかどうか
審査では、外国人の契約期間や給料、勤務時間が、日本人と同じ水準になっているかどうかが確認されます。あわせて、労働基準法に違反していないかも見られるため、注意が必要です。
毎年の最低賃金が変わるたびに、給料の基準も見直している企業は多いと思います。その場合は、雇用契約書や賃金規定を最新版に差し替えておきましょう。
また、派遣形態で働いている場合は、派遣先が変わったときに在留カード裏面の「所属機関」の記載も変更が必要になります。
更新申請の際は、派遣先の一覧を最新の状態にして、あわせて申請書類に添付しておくと安心です。
支援計画がきちんと実施されているか
特定技能1号の更新では、外国人に対する支援がしっかり行われているかも審査の対象になります。とくに、登録支援機関を使わず、企業が自社で支援を行っている場合は注意が必要です。
このような「自社支援型」のケースでは、支援の内容を証明できる資料をそろえておくことが大切です。
たとえば、事前ガイダンスの実施記録、生活オリエンテーションの資料(出席者の署名付き)、日本語学習の記録や受講ログなどが挙げられます。空港への送迎時の記録や写真もあわせて用意しておくことをおすすめします。
こうした資料をきちんとそろえて出しておくと、企業の支援体制が伝わりやすくなります。審査がスムーズに進み、追加の書類を求められる心配も減るでしょう。
協議会への加入と定期報告は継続が必要
受け入れ企業は、分野ごとに決められた協議会に加入し、定期的に報告書を提出し続けなければなりません。報告が遅れたり提出しなかったりすると、更新が認められない原因になります。
報告書は支援機関にまかせきりにせず、書類のコピーを社内でもしっかり保管しておきましょう。あわせて提出記録も残しておけば、出入国在留管理局から連絡があったときに落ち着いて対応できます。
特定技能ビザの更新に関するよくある質問(FAQ)
Q 更新手続きを行うのは企業?それとも本人?
在留期間の更新では、申請者は外国人本人になります。
ただし、書類の準備や手続きは、企業(特定技能所属機関)が進める場合が多いです。
申請書の中には、本人と企業が連名で署名・押印するものも含まれています。また、出入国在留管理局への提出は、外国人本人のほか、弁護士・行政書士・企業の職員が代理で行うことが認められています。
友人やブローカーが代わりに提出することはできないので注意しましょう。
Q 転職を予定している場合、更新はどうすればいい?
転職を予定している人については、いま働いている企業が更新手続きをすることはできません。その代わりに、新しい受け入れ企業が「変更申請(在留資格変更)」を行う必要があります。
具体的には「転職先が決まる→変更申請→許可→入社」の流れになります。仕事が決まっていない期間は在留が認められないため、順番を守って進めることが大切です。
Q 将来2号に移るために、今からできる準備はある?
2号に移行するためには、熟練技能の試験に合格し、通算3年以上の実務経験を積んでいることが必要です。※分野によって条件は異なります
1号の更新が2回目にさしかかる頃には、本人の技能評価や日本語力の向上について、社内で計画を立てておくとよいでしょう。
早いうちから試験に向けた準備を始めておけば、移行もスムーズに進められるはずです。
さいごに
特定技能ビザの更新では、書類の準備や支援内容、働く条件の確認が大切になります。どれも日々の業務と関わっている内容だからこそ、早めに整理しておくことが大切です。
とくに書類は種類が多く、項目ごとの確認があいまいだと、申請が止まってしまうこともあります。支援・契約・報告のそれぞれを見直しておけば、ミスや遅れを減らせるでしょう。
一つひとつを丁寧に確認することが、スムーズな申請につながります。
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