帰化とは? 永住との違いや許可される条件、日本国籍を取得するメリット、職業の選択肢についてくわしくまとめました

近年、日本で暮らしたいと考える外国人が増えてきています。日本で働いたり生活したりするために「在留資格」をとって、それぞれの目標をかなえています。たとえば「永住者」や「特定技能」など、在留資格の種類はさまざまです。こうしたビザがあれば、日本に長く住むことができるようになります。
その中でも「帰化」は、国籍を日本に変えるという特別な選択です。帰化をすると、日本の一員として、もっと広く社会に関わることができるようになります。
この記事では「帰化とはどういうことか」「どんなメリットがあるのか」「帰化すると何ができるのか」などについて、わかりやすく説明していきます。
目次
帰化ってなに?
帰化(きか)とは、今の国籍をやめて、日本の国籍を新しくもらう制度のことです。
法務大臣に許可されると戸籍ができて、日本人と同じように選挙に出たり公務員になったりする権利が与えられます。2024年には8,863人が帰化を許可されていて、ここ数年は毎年7,000人から9,000人ほどの人が帰化しています。
帰化はただ日本に長く住めるようになる「在留資格の延長」とは異なります。国籍そのものが変わるので、「パスポートの色が変わる」だけではなく、選挙に行けるようになったり、今まではできなかった仕事に就けるようになったりと、生活の大きな変化につながります。
永住権とはちがうの?
帰化とよく比べられるのが永住権です。しかし、この2つはまったく別のものです。
永住権は「ずっと日本に住んでいいですよ」という在留資格の一種で、外国籍のまま生活を続けます。一方、帰化は「日本人になること」なので、国籍が変わります。
違いがわかりやすいように、以下の表にポイントをまとめました。
比べるポイント | 帰化 | 永住権 |
国籍 | 日本国籍になる | 外国籍のまま |
選挙に行ける? | 行ける(立候補もできる) | 行けない |
公務員になれる? | 多くの職種で可能 | 一部は制限あり |
パスポート | 日本のパスポート(ビザなしで行ける国が多い) | 母国のパスポート+再入国の許可が必要 |
手続きの更新 | なし | 在留カードの更新が必要 |
注意点 | 元の国籍を失う、手続きが複雑 | できない仕事があるなど、制限が残る |
帰化には3つのタイプがある?
帰化には、申請する人の立場や状況によって、3つのタイプがあります。
1. 普通帰化
日本に5年以上住んでいて、仕事や収入が安定しているなど、いくつかの条件をすべて満たしている人が対象です。
2. 簡易帰化
日本人の家族がいる人や、元日本人の人などは、一部の条件が緩和されます。たとえば、日本に住む年数が1〜3年に短くなることがあります。
3. 大帰化
日本に特別な貢献をした人が、国会の承認を受けた場合だけ認められます。ただし、このタイプはとても特別で、これまでに実例はありません。
これらは、国籍法の第5条から第9条に基づいて決められています。自分の状況に合ったタイプを選ぶことが、帰化の申請をスムーズに進めるポイントになります。
帰化するとどんなことができるの?
帰化が認められると、日本人としての立場が得られ、今までできなかったことができるようになります。ただし、母国の国籍を手放すことになるため、事前に確認しておきたいこともあります。
ここでは、帰化のメリットと注意点をわかりやすく紹介します。
帰化のメリットってどんなこと?
選挙に参加できるようになる
日本国籍を取ると、18歳以上で選挙に投票できるようになります。さらに25歳以上になれば、市や町の議員や市長などに立候補することも可能です。
政治に関わることで、地域や社会にもっと深く参加できるようになります。
公務員として、働ける仕事が増える
警察官や消防士、自衛官、裁判官など、日本国籍が必要な仕事はたくさんあります。帰化すれば、こうした安定した職業にも応募できるようになります。
また、外国人だからという理由で出世のチャンスが少なくなることもなくなります。
日本のパスポートが使えるようになる
帰化すると、日本のパスポートを申請できます。日本のパスポートは、世界の多くの国にビザなしで行けるほど信頼されています。旅行や仕事で海外に行く機会がある人にとっては、大きなメリットといえるでしょう。
融資を受けやすくなる
日本国籍になると、銀行や信用金庫などでの信用が高くなり、住宅ローンなどの審査に通りやすくなります。とくに長期間のローンを組むときには、永住権を持っている外国人よりも帰化した人のほうが有利になることもあります。
戸籍ができて日本名が使えるようになる
帰化すると、日本人としての戸籍が作られます。日本名を希望すれば、それを本名として使えるようになります。
就職や病院での手続き、不動産の契約など、公的な場面で名前のことで困ることが少なくなるため、これまで通称名と本名を使い分けていた人にとっては、大きな安心につながります。
帰化するときに気をつけたいこと
今の国籍を手放さなければならない
日本では、原則として二重国籍が認められていません。帰化するためには、母国の国籍を放棄する必要があります。そのため、母国での選挙や福祉サービスが使えなくなることもあります。
また、国によっては国籍を手放すための手続きが複雑だったり、高い費用がかかったりすることもあります。
元の国籍には戻りにくくなる
一度帰化すると、あとで母国の国籍に戻るのは簡単ではありません。国によっては再取得ができないことや、長くその国に住まないと認められないこともあります。将来の計画もふまえて、慎重に考える必要があります。
母国の義務が残ることもある
たとえば兵役の義務がある国では、帰化してもその義務が消えないことがあります。そのままにしておくと、罰則を受けることもあります。また、母国での土地や家の相続、所有についても制限を受ける可能性があります。
帰化のために必要な7つの条件とポイント
「普通帰化」という日本国籍を取るための最も一般的な方法では、国籍法第5条で決められている7つの条件を満たす必要があります。
ここでは、それぞれの内容と実際のチェックポイントをわかりやすくまとめました。
条件 | 内容 | 詳細 |
住所の条件 | 5年以上日本に住んでいること | 年間で100日以上の出国や、1回3か月以上の海外滞在は避ける |
能力の条件 | 18歳以上であること | 18歳未満の場合は、親と一緒に申請する |
素行の条件 | 法を守って生活していること | 税金や保険料の滞納、交通違反の有無などを確認 |
生活の条件 | 安定した収入があること | 年収や貯金などで証明が必要 |
国籍の条件 | 元の国籍を手放す意志があること | 国籍離脱の証明書を提出する |
憲法の条件 | 日本の法律や憲法を守っていること | 過激な政治活動や団体への関わりがないか調べられる |
日本語の条件 | 日常会話や読み書きができること | 小学3年生レベルが目安、面接でチェックされることもある |
ポイント① 住所の条件を守るためにはどうすればいい?
「5年以上日本に住んでいること」とは、ただ在留カードが切れていない状態を指すわけではありません。海外に長く滞在すると、これまでの年数が無効になることがあります。
たとえば、留学や転勤で海外に行く予定がある人は、在留資格の種類を変更することで対応することがあります。「配偶者」や「高度専門職」などに切り替えておくと、「5年以上日本に住んでいる」という条件を満たしやすくなります。
ポイント② 交通違反や税金の滞納に注意!
帰化の審査で落ちる理由としてよくあるのが「素行」の問題です。
小さなスピード違反でも、何回も繰り返しているとマイナス評価になることがあります。また、税金や健康保険、年金の支払いをきちんとしていないと、審査が通らない大きな理由になります。
ただし、過去3〜5年のあいだに税金や保険料をきちんと払っていて、交通違反などもなければ、面接では大きな問題になることは少ないでしょう。
ポイント③ 面接ではどんな質問をされるの?
帰化申請では、面接の中で日本語の読み書きや会話力が確認されます。法律で細かく決まっているわけではありませんが「今日は何時に起きましたか?」「この新聞の見出しを読んでください」といった日常的な質問を通じて、日本語でのやりとりができるかを見られます。
目安としては、小学3年生程度の日本語力があれば問題ないとされています。
帰化申請の流れを知っておこう
日本国籍を取得するための帰化申請には、いくつかのステップがあります。どの段階もとても大切なので、流れをしっかり把握しておくことが必要です。
ステップ① 法務局で事前に相談する
まずは住んでいる地域を担当する法務局(国籍を扱う部署)に電話をかけ、相談の予約を取ります。いきなり書類を持って行っても申請はできないため、最初に「事前面談」を受ける必要があります。
この面談では、日本に住んでいる年数や仕事の内容、家族のことなどを聞かれます。そのうえで、必要な書類の一覧や今後のスケジュールの目安を教えてもらいます。はじめの段階でしっかり確認しておくことで、後から慌てずに準備を進められるでしょう。
ステップ② 書類を集めて準備する
申請前には、たくさんの書類を集めなければなりません。自分自身のものだけでなく、配偶者や両親、子どもに関する書類も必要になります。出生証明書、結婚証明書、卒業証明書、年収の証明、住民票、税金や年金の記録など、集めるものは多岐にわたります。
もし外国で発行された書類がある場合は、日本語訳も一緒に提出する必要があります。翻訳は自分でしてもかまいませんが、間違いを避けるために行政書士に依頼する人も多いです。
書類は100枚以上になることもあるので、数週間から数か月かけて準備することになります。
ステップ③ 書類提出と面接を受ける
すべての書類がそろったら、もう一度法務局に予約を入れて申請書を出します。このとき、多くの場合で「面接」と「日本語テスト」も実施されます。
面接では、これまでの生活や仕事、税金や年金の支払い状況、家族のこと、交通違反があったかどうかなどを聞かれます。日本語テストでは、新聞の見出しを読む、簡単な質問に答えるといった内容で、小学3年生程度の日本語力があるかを見られます。
ステップ④ 法務省での最終審査
面接と書類の提出が終わると、申請内容は東京にある法務省の本庁に送られます。ここで最終的な審査が行われます。
審査には6か月から1年ほどかかるのが一般的ですが、追加の資料を求められた場合にはもっと長引くこともあります。審査では、面接での話と書類の内容に矛盾がないか、条件をきちんと満たしているか、社会的に信頼できる人物かどうかなどが総合的に判断されます。
「まじめに生活しているかどうか」が大きなポイントになると考えられています。
ステップ⑤ 官報に掲載され、許可の連絡が届く
審査を通過すると、官報という政府の広報に「帰化が許可されたこと」と「名前(帰化前の本名)」が掲載されます。その後、法務局から本人に電話などで連絡が入り、正式に帰化が認められます。
もし不許可になった場合でも、理由は伝えられません。また、再申請には原則として1年以上あける必要があります。だからこそ、最初の申請時にていねいに準備しておくことがとても重要になります。
帰化が認められた後に必要な手続き
在留カードや特別永住者証明書の返却(14日以内)
帰化が認められると外国人としての立場がなくなるため、これらの証明書は法務局か入国管理局に返さなければなりません。
市区町村への「帰化届」提出(1か月以内)
住民登録している役所に「帰化届」を出し、新しい戸籍を作る手続きを行います。希望すれば、日本名の登録もここで行うことができます。
日本のパスポートの申請
戸籍の手続きが終わると、日本人としてパスポートの申請ができるようになります。これで正式に日本国籍を持つ人として、海外へ渡航することも可能になります。
さいごに
帰化は、外国の人が日本の国籍を取って、日本社会の一員として生活していくための大きなステップです。帰化が認められると、選挙に参加できるようになったり、公務員になれる仕事が増えたりするなど、さまざまな権利が得られます。
その一方で、もとの国籍を手放さなければならないという大きな決断も必要になります。だからこそ、帰化のしくみや条件についてきちんと知っておくことが大切です。
今後、日本では働く人が足りなくなると考えられていて、これからも外国人を多く受け入れていく流れが続くでしょう。その中で、帰化という選択はますます重要になっていくはずです。