ワーキングホリデー(特定活動)ビザの外国人を雇うには? 滞在期限、社会保険、他ビザへの切り替えについて
18〜30歳の人が使える、休暇が主な目的の制度であるワーキングホリデー。日本にも年間で2万人以上の外国人が、この制度を使った在留資格で日本に滞在しています。この在留資格は海外で休暇できるだけでなく、滞在中にその国で働くことができます。
今回はワーキングホリデービザについて、滞在期間から、社会保険に入ってもらう必要があるのかなど、雇用する立場の方が理解しておくべきことをまとめました。
目次
ワーキングホリデーとして日本で働くには?
ワーキングホリデーとは、旅行・滞在資金を補うために日本で働くことを外国人に認める制度です。
その趣旨としては、国・地域間で相互理解を高めることにあります。
日本では27カ国の地域(※2023年2月現在)間でワーキングホリデーの制度を導入しており、年間では約15,000人程度の外国人がワーキングホリデーの資格で来日しています。
今回お伝えするのは、「長期雇用の可否」や「就労制限の有無」などです。
ワーキングホリデーで来ている外国人を受け入れる場合、まずはこれらの制度を調べ、日本で働く外国人について知ることが大切です。
在留資格名「特定活動」がワーキングホリデー
在留資格には非常に多くの種類がありますが、ワーキングホリデーで日本に滞在する方は、「特定活動(とくていかつどう)」という名称の在留資格を持っています。この「特定活動」という資格は、法務大臣が個別に滞在目的を任命するもので、ワーキングホリデー以外にも40種類以上ものタイプがあります。
外国人を雇用するときは「在留カード」を確認することはご存じと思います。ワーキングホリデーで滞在している外国人の在留カードには、「特定活動」とだけ記載があります。特定活動の中には就労できない方も多いです。就労できる方かをしっかり確認するためにも、パスポートについている「指定書」を確認しましょう。ここには特定活動の在留資格を持っている方の、より詳細な内容が書かれています。
滞在期限も確認しましょう!
ワーキングホリデーで滞在できるのは、入国から1年間と決まっています。この期間を超えて、同じ在留資格で滞在をつづけることはできません。採用する予定の方が、ワーキングホリデーとして日本に来日したばかりなのか、すでに半年が経過しているのかなどは確認する必要があります。
ワーキングホリデー(特定活動)ビザの取得要件
ビザの取得条件
ワーキングホリデー(特定活動)ビザは、おもに以下の条件をクリアした外国人がもらえます。
- 申請時の年齢が18歳以上30歳以下
- 過去にワーキングホリデービザを取得したことがない
- 日本での滞在に必要な最低限の資金を所持している
- 心身ともに健康で、過去に犯罪歴がない
- 渡航先の身体、健康に関係する保険に加入している
またワーキングホリデービザの就労制限は「風営法関連の仕事(キャバクラや性風俗など)での就労が認められない点」のみになっています。留学ビザなどとは異なり、労働時間の制限がない点は雇用する側にとって大きなメリットでしょう。
社会保険について
企業の人事担当者は、社会保険について以下の4つのことを考えましょう。
まずはワーキングホリデー制度で日本に来ている方がどの保険に加入するべきかを表で確認してください。
内容 | ワーキングホリデーの方の場合 | |
厚生年金保険 | 会社員や公務員が加入するもので、報酬に応じて年金が老後に支給される | 加入する |
健康保険 | 医療費の一部を負担する制度。病気やケガをしたときのための保険 | 加入する |
労災保険 | 労働者が仕事中に負傷したり、病気になった場合に給付を受ける制度。企業が保険料を全額負担。 | 加入する |
雇用保険 | 失業した場合に給付を受ける制度。失業以外にも、育児休業給付、教育訓練給付などがあります | 対象外 |
雇用保険に注意! 基本は日本人雇用とおなじ
外国人を雇用する際、原則的に社会保険の加入に関しては日本人とおなじです。しかしワーキングホリデーでは雇用保険の対象になりません。その理由は、来日の目的が「就労」ではなくあくまでも「休暇」だからです。
厚生年金保険、健康保険も対象外になるケースもある?
もし雇う外国人のアルバイトでの労働時間が少ないときには、厚生年金保険と健康保険も適用対象外になることがあります。なぜなら日本と、そのワーキングホリデーを使っている方の母国が、社会保障協定を結んでいるからです。
パートやアルバイトで働く場合
雇用した外国人の週に働く時間と月の労働日が、一般のフルタイムの職員の4分の3以下である場合には、保険適用から外れます。しかしここでも例外があります。以下の条件にすべて合致するときには、一般のフルタイムの職員の4分の3以下でも対象です。
① 週の所定労働時間が20時間以上になる
② 雇用期間が1年以上見込まれている
③ 賃金の月額が8万円以上
④ 学生ではない
⑤ 常時501人以上の企業
社会保障協定
この社会保障協定は、雇用した外国人が自分自身の出身国と、滞在している日本で保険料を2重で払うことを防ぐためにあります。厚生年金、健康保険においては支払いが免除されることがあります。
最新の情報は、こちらのリンクから確認してください。
労災保険は全員が加入
労災保険は労働者が業務上の災害や、通勤中にケガや障害を負った場合に治療費や休業の補償などを行う保険制度。ワーキングホリデー制度を使って日本に来ている外国人でも、この労災保険には全員加入する必要があります。
厚生年金が一部戻ってくる「脱退一時金」
脱退一時金とは、外国人が日本を離れる際に受け取ることができる、一時的な給付金のことです。日本の公的年金制度に加入していた外国人が、どのくらい税金をおさめていたかによってその額は変動します。
厚生年金について話すと、「あまり払いたくない」と考える外国人の方もいますので、支払った金額がか戻ってくるこの制度を伝えるようにしましょう。
【◉外国人労働者の年金についてもっとくわしく知りたい方はこちら!】
【2024年版】外国人労働者は年金加入するの?日本人労働者との違い、外国人特有の制度を解説!
ワーキングホリデー(特定活動)ビザは他ビザに切り替え可能?
ワーキングホリデービザの有効期限が切れるまえに、別の在留資格に変更する方もいます。以下でプロセスを簡単にまとめます。
就労ビザ(多くは技人国ビザ)への変更
ステップ1:雇用主のサポート
多くの外国人が、ワーキングホリデービザから就労ビザ(例:技人国など)に切り替えることで滞在を延長します。これは雇用主がビザのスポンサーとなって、必要な書類を提供してくれる場合に可能です。
ステップ2:在留資格変更許可申請
日本の入国管理局に対して「在留資格変更許可申請書」を出して、現在のビザから新しいビザへ変更を申請します。申請には雇用契約書、会社の登録証明書、納税証明書などが必要です。
ステップ3:審査と承認
入国管理局の審査が完了し、承認された場合に、新しい在留資格が発行されます。
他のビザへの変更
その他にも、日本語学校に通い始めれば「学生ビザ」に、日本人と結婚すれば「配偶者ビザ」などに変更することも可能です。実際このようにビザを変更する方も一定数います。
準備として日本で働く際にワーキングホリデーが使われる?
日本で働きたいと思ったとき、まずはワーキングホリデーの制度を使って働き始める方は多いです。ワーキングホリデーは最大1年間にわたって、就労しながら自由に過ごせる制度として世界中で人気です。
これは雇用する企業側にとっても、非常にメリットが大きい制度です。そのメリットとは、今回ご紹介したとおり「労働時間の制限がない」点があります。労働時間制限がないことで、企業にとっては不法就労助長罪で摘発されるリスクがないです、企業は安心して外国人を受け入れることができます。
ただしワーキングホリデーにはメリットばかりでなく、長期雇用できないというデメリットもあります。
こうしたメリット、デメリットを知ったうえで、ぜひワーキングホリデー制度で日本にきている外国人を雇用しましょう!