外国人雇用、6つの落とし穴|知らないと損する課題と解決策
日本では、深刻な人手不足を補うために外国人労働者の受け入れが広がっています。
けれども実際の現場では、文化や言葉の違いから思わぬトラブルが起こることも少なくありません。
外国人を雇ううえで注意すべき点はいくつかありますが、事前の準備をしっかり行えば、多様な人材を安心して迎え入れられます。
この記事では、外国人雇用で起こりやすい6つの問題と、その解決策をわかりやすく紹介します。
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外国人を雇う企業は年々増えている

データ出典:厚生労働省 外国人雇用状況の届出状況について(報道発表)
厚生労働省の発表によると、2024年10月末の時点で日本で働いている外国人は2,302,587人、外国人を雇っている企業は342,087社にのぼり、どちらも過去最高を更新しました。
少子高齢化が進む中で、日本では今後さらに人手不足が深刻になると予想されています。
全国の労働力人口は、2020年の6,868万人から2040年には5,460万人まで減ると見込まれており、長期的な人材確保を見すえた受け入れ体制づくりが欠かせません。
外国人労働者への需要はこれからも高まり、大企業だけでなく中小企業でも採用の動きが広がっていくでしょう。
日本で働く外国人が企業に期待していること
ここでは、外国人が「なぜ日本で働きたいのか」について紹介します。背景やきっかけは人それぞれですが、多くの人が次のような思いを抱いて日本を選んでいます。
こうした期待にどう応えていくかが、これからの企業の採用力を左右するポイントです。
1. 安定して働きたい
日本は経済規模が大きく、世界的にも安定した国として知られています。さらに、他の国と比べて解雇が少なく、長く働き続けられる点も魅力です。
そのため、経済が不安定な国で働くことに不安を感じている人にとって、日本の安定した雇用環境は大きな安心につながっています。
2. キャリアアップやスキルアップをしたい
とくに技術職や専門職で働く人の多くは、日本で学べるスキルや知識が世界で高く評価されていることを知っています。
日本の技術やノウハウはトップクラスとされており、それを身につけることで自分の力をさらに高められると考える外国人も少なくありません。
3. 家族を支えたり、より良い生活を送りたい
日本で働いて得た収入を、母国にいる家族の生活費や教育費にあてたいと考える人もいます。
また、日本は医療や教育などの社会保障制度が整っているため、家族と一緒に安全に暮らせる国として人気があります。
そのため、就労ビザに加えて家族を呼び寄せるためのビザを取得しようとする人も増えているのです。
4. 国際的なキャリアを築きたい
日本での実務経験を次のステップにつなげたい人も多くいます。
日本企業は海外拠点や国際案件が多く、グローバルに関わる機会が得やすいからです。その意味で、日本はキャリアを一段引き上げる環境といえるでしょう。
外国人雇用で課題となっていることは?

統計を見てもわかるように、日本では外国人の働き手を積極的に受け入れています。
外国人の多くも、日本で働くことに期待を寄せて来日しています。ただし、重要な労働力となっている一方で、外国人を雇う際にはいくつかの課題もあるのが現実です。
ここからは、東京都内で働く外国人労働者や、外国人を受け入れている企業から寄せられた相談内容をもとに、おもな課題を紹介します。
課題① コミュニケーションのすれ違いが起きやすい
外国人が日本で働くとき、「言葉の壁」や「文化の違い」が原因で、意思の伝わり方にずれが生じることがあります。たとえば、指示の内容を誤解してしまったり、質問や相談を遠慮してしまったりするケースです。
厚生労働省の最新調査でも、企業が抱える課題の中で最も多いのは「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」(43.9%)という結果でした。
このようなすれ違いは、誤解や対立を生みやすく、双方にストレスを与える要因にもなります。職場の人間関係を良好に保つためには、言葉や文化の違いを理解し合い、歩み寄る努力が欠かせません。
課題② 賃金や待遇への満足度を高める工夫が必要
外国人労働者の中には、入社前に聞いていた条件と実際の待遇に差があり、不満を感じる人もいます。
母国よりも日本の生活費が高いことや、税金・社会保険の仕組みが分かりにくいことが原因で、負担を感じる場合も少なくありません。
外国人労働者には「日本人と同じ、またはそれ以上の待遇」を求める声が多く、等級や役職ごとの賃金テーブルを明示することが信頼につながります。
待遇の違いが離職やモチベーション低下を招くこともあるため、まずは納得感を持って働いてもらうことが大切です。
また、一部の企業では「長時間労働」や「低賃金」で働かせている例も報告されています。
こうした不公平な扱いは、職場への不信感を生み、労使トラブルにつながる恐れがあるため早い段階での改善が求められます。
課題③ 労働環境に慣れるまで時間がかかる
外国人が日本の働き方や文化に慣れるまでには、一定の時間がかかります。
とくに、日本独自の「報連相(ほうれんそう)」や細かい品質管理のルールは、初めて働く人にとって戸惑うポイントになりやすいものです。
慣れない環境の中で仕事が遅れたり、ストレスを感じたりすることもあります。そのため、企業は外国人労働者がスムーズに職場になじめるよう、丁寧なサポート体制を整えることが重要です。
あわせて、基本ルールの徹底も欠かせません。違反の多い項目としては「機械安全」「割増賃金」「労働時間」が挙げられ、理解不足が原因のすれ違いも見られます。
課題④ 教育やスキルアップの支援が不足している
外国人労働者が長く働き続けたいと感じるためには、教育やスキルアップの仕組みが欠かせません。
しかし、現状では研修の内容が限られていたり、日本語学習のサポートがなかったりする企業も多いようです。
このような環境では、外国人が新しい仕事に挑戦したり、キャリアを広げたりする機会が少なくなります。
やりがいを感じながら働くための「成長を支える制度づくり」が定着率を高める鍵となるでしょう。
課題⑤ 意図せず「嫌がらせ」と受け取られることがある
東京都の労働相談件数は令和6年度で44,440件あり、そのうち「外国人労働相談」は1,970件でした。
産業別では「情報通信業」が29.3%で最も多く、相談内容のトップは「職場での嫌がらせ」でした。
管理する立場の人に悪気がなくても、外国人からは「嫌がらせ」と受け取られてしまうケースがあります。
たとえば、日本語だけの早口の指示や、人前での強い叱責、アクセントをまねる発言、宗教や食文化を軽く扱う言葉などです。また、連絡網(LINEなど)から外す、残業や休憩の配分が偏る、日本語だけのマニュアルで重要事項を伝えるといったことも、差別的だと感じさせる要因になります。
このような行動が積み重なると、外国人が職場に不信感を持ち、相談や紛争に発展することもあります。
言葉の選び方や伝え方に配慮し、手続きや連絡を「見える化」して運用することが大切です。
課題⑥ 定着率を高めるための取り組みが求められている
これまでの課題①〜⑤が重なることで、外国人労働者が早期に離職してしまうケースも少なくありません。
仕事上のストレスや文化の違いに加えて、私生活での孤独や将来への不安が重なることが、働き続ける意欲を下げてしまうこともあります。
そのため、企業は職場環境の改善だけでなく、生活面のサポートにも目を向ける必要があります。
住まいや相談窓口、日本語学習の機会などを整えることで「この会社で頑張りたい」と思える環境をつくることができます。
安心して働ける環境づくりが、定着率の向上につながっていくでしょう。
外国人雇用の課題はどう解決する?
日本人と外国人が安心して働ける職場づくりは、基本から一歩ずつ進めるのが近道です。
ここでは、前に取り上げた課題に対して、今日から取りかかれる対策を整理して紹介します。
日本人が「外国人と働くこと」を理解する

まずは日本人側が、文化や考え方の違いを前提として受け止める姿勢を持つことが大切です。
あわせて、在留資格や手続きなどの基本知識を社内で共有し、誤解が生まれにくい環境を整えましょう。
ポイント
- 文化・宗教・食習慣・休暇の違いを個性として尊重し、からかいをしない
- 在留資格・雇用契約・社会保険の基本を一覧にまとめ、全員で確認する
- やさしい日本語に図や具体例を添えて説明し、必要に応じて母国語で理解度を確かめる
- 不安があれば、行政書士や外国人採用に詳しい人材紹介会社へ早めに相談する
外国人労働者向けの教育を充実させる
コミュニケーションの土台は、日本語学習の機会です。
さらに、安全や品質のルールは、言語が違っても同じ水準で理解できる形に整える必要があります。
ポイント
- 日本語学習(社内・外部)を勤務時間内に一部組み込み、到達目標を明確にする
- 必要な特別教育や免許を洗い出し、計画的に受講する
- マニュアルを多言語・図解・動画で整備し、改訂の周知を徹底する
- OJTを実施し、チェックリストで進捗を見える化する
日本人社員と仕事以外で関わる機会をつくる

ちょっとした交流があるだけで、誤解は減らすことができます。会社が「話しかけやすい場」を用意し、関係づくりを後押ししましょう。
ポイント
- 月1回の軽い交流(ランチや短時間の雑談会)を続ける
- 参加は任意と明記し、宗教や食の配慮を事前に案内する
- 生活相談の窓口を一本化し、対応言語と受付方法をはっきり示す
- 連絡網や会議招集から外さない運用ルールを整え、情報の抜けを防ぐ
待遇を日本人と同じ水準にそろえる(同一労働同一賃金)
同じ仕事なら、賃金・福利厚生・休暇などの扱いに差をつけないことが基本です。仕組みを見える化し、納得感を高めることが誤解の防止につながります。
ポイント
- 職務・等級に基づく賃金テーブルを日本語と多言語で共有する
- 雇用契約を多言語で作成し、残業代・控除・社会保険の扱いを具体例つきで合意する
- 評価基準に期待行動の例を明記し、年功と成果の考え方を事前に説明する
- 厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」を定期的に見直し、運用へ反映する
市場の動きを見ながら労働環境を見直す
労働市場の水準はつねに変わります。他社の状況を定期的に確認し、条件や働き方を無理のない範囲で調整していきましょう。
ポイント
- 賃金・手当・シフトの水準を四半期ごとに点検し、必要に応じて改定する
- 所定外労働の上限・割増・休憩ルールを、現場で実行できる手順に落とし込む
- 休憩スペースや設備・備品類を実情に合わせて更新する
- 業務負荷の申告を匿名でも受け付け、改善サイクルを回す
具体的なキャリアプランを一緒につくる

将来の見通しがあると、人は安心して仕事に向き合えます。
スキル、昇給・昇進、在留手続きの道筋を明確にして、本人と合意を重ねましょう。
ポイント
- 3〜6か月ごとの育成目標(業務スキル+日本語)を本人と共同で設定する
- 昇給・昇格条件を項目化し、面談で差分と次の目標を共有する
- 在留資格変更や永住の可能性と要件を説明し、専門家への相談ルートを用意する
- 社内のキャリア事例を紹介し、成長のイメージを見える化する
地域との交流を促進する
地域に居場所があると、生活の不安がやわらぎます。企業が橋渡しをすると関係づくりが進みやすいため、積極的に支援しましょう。
ポイント
- 地域イベント(お祭り・スポーツなど)の参加情報を社内で周知する
- 料理や文化の紹介の場を設け、双方向の理解を促す
- 自治体の日本語教室や生活相談会に参加しやすい勤務調整を行う
- 災害や医療の緊急連絡カードを多言語で整備し、配布する
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