最近の日本の労働市場では、外国人労働者の重要性がますます増しています。しかし外国人採用に対しては、いまだに「差別」や「偏見」といった問題に対する懸念が残っています。この記事の中では外国人差別の現状や、その対策について紹介し、企業が積極的に外国人採用を進めるべき理由を探っていきます。

外国人労働者の増加とその現状

ここ数年、日本では急激に外国人労働者が増えています。これは日本が直面している、少子高齢化による深刻な人手不足が背景にあるでしょう。

東京都の報告によれば、とくに中小企業では労働力を確保することがむずかしく、外国人労働者の活用が欠かせない状況へと変わってきています。一方で外国人労働者自身は、就職後に差別や偏見を受けることも多く、企業側にもより細かく柔軟な対応がもとめられています。

過去5年、日本での外国人労働者は以下のように推移しています。

外国人労働者数
2019165.9万人
2020172.4万人
2021172.7万人
2022182.3万人
2023204.9万人

2021年から2022年では平均の増加率は5.6%、2022年から2023年までの平均の増加率は12.4%です。今後も日本政府としては、積極的に外国人を受け入れていくことが表明されています。このことから今後の数年で、外国人労働者の増加率はさらに高まる可能性も十分にあります。

外国人労働者に対する差別の現状と対策

外国人労働者が直面する差別の実態としては、職場での文化的な違いによるものや、言語の壁によるコミュニケーションの問題など様々なものがあります。

とくに職場内での待遇や昇進の機会に差が生じることが大きな課題となっています。政府や自治体はこうした問題に対して、さまざまな支援策を展開しており、差別の防止に向けたガイドラインを作ってもいます。
また企業側でも「ダイバーシティ研修」や、外国人労働者のためのサポート制度を導入する動きが広がっています。

◼︎具体策

・差別防止ガイドラインの策定

東京都なら、東京都外国人労働者就労環境整備指針を発表しており、外国人労働者が安心して働ける職場づくりをすすめています。

・労働者に対する相談窓口を設置

外国人労働者が抱える悩みや不満を相談できる窓口を設けています。これには職場での差別や、不当な待遇に関する問題を、専門的に対応する窓口も含まれています。

東京都は外国人労働者の労働環境に関する、相談を受け付ける「外国人相談窓口」を運営しています。こちらではさまざまな言語に対応しています。

・労働基準法の強化と適用

日本の労働基準法は外国人労働者にも適用されており、外国人労働者は法的に日本人労働者と同じ待遇を受ける権利があります。

政府は外国人労働者に対する違法な差別や不当な労働条件を防止するため、労働基準監督署を通じて監視を強化しています。定期的に職場環境の実態調査を行い、差別的な扱いが発見された場合には、是正勧告を行うこともあります。

外国人採用のメリット

外国人労働者の採用は、企業にとって大きなメリットをもたらします。とくに国内での人材不足が深刻な分野では、外国人労働者がその空白を埋める存在となっています。

国内の2023年度の「人手不足」による倒産は191件。この数値は前年度と比較すると2.4倍にもなります。
2024年は上半期だけで、前年同期比116%で145件と過去最多です。年間を通してこのペースで倒産がつづくと、日本全国で1年で300件近く人手不足が原因で倒産する会社が出ます。

このように年々ひどくなる人手不足を解決するには、外国人採用はかなり身近なものになっています。

外国人労働者が感じる差別|仕事

外国人労働者が仕事を通じて感じる差別について、具体的な内容をみていきましょう。

給与や待遇の差別

外国人の中には、日本人と同じ業務をしていても、給与や待遇面で不利な扱いを受けることがあります。昇給やボーナスが日本人とくらべて低かったり、同じポジションでも契約形態が異なって正社員になれない、などです。

職場での孤立、差別的な言葉

職場で日本人の同僚たちから、疎外されるケースが往々にしてあります。すべての会話が日本語で行われたり、早口やスラングなどで遠回しに揶揄されるなど、いやな体験をしたことのある外国人労働者は多いです。

身体的な特徴の違いからも、嫌がらせを受けるケースもみられます。

日本文化への適応の強要

外国人労働者が日本の文化や慣習にうまく適応できないとき、それが問題視されることがあります。

たとえば日本独特の職場の礼儀やビジネスマナー、年功序列といった文化に従わなければならない、などです。これらのことが日本人同様にできない場合に、差別的に扱われるケースがあります。

外国人労働者が感じる差別|プライベート

外国人労働者がプライベートで、感じる差別について具体的に見てみましょう。

賃貸住宅の入居拒否

外国人が日本で賃貸住宅を借りる際に、オーナーや不動産会社から入居を拒否されることがあります。これは「外国人は文化や言語のちがいでトラブルを起こすかもしれない」という偏見、「日本語が十分に話せないからコミュニケーションがむずかしい」といった理由が背景にあります。
多くの外国人が賃貸物件を探す際に「外国人不可」と断られた経験を持っています。

レストランやバーでの対応

一部のレストランやバーでは、外国人客に対して特定のメニューを提供しなかったり、場合によっては入店を拒否されたりすることがあります。これは言語の問題や、文化的なちがいに対する懸念からくるものです。また外国人が入店した際に無言で断られる、または「英語メニューがない」という対応をされることもあります。

公共施設や温泉での入場拒否

外国人が温泉やプール、公共の浴場などの施設に行った際に、入場を拒否されることがあります。これは過去に一部の外国人利用者がルールを守らなかったという事例にもとづいて、外国人全体を拒否する傾向があることが原因です。

銀行や行政機関での手続きの困難さ

銀行や役所などの行政機関で外国人が手続きをする際に、サポートが不十分であると感じることがあります。日本語でしか対応が行われず、書類もすべて日本語であるため、外国人にとっては理解がむずかしい状況が多いです。

また対応する職員が外国人に対して不親切だったり、必要以上にきびしく対応されたりするケースもあります。

職場以外での社会的孤立

日常生活で日本人とのコミュニケーションや交流が少ないため、外国人は社会的に孤立を感じることがあります。地域のイベントや近隣の住民との関わりが少なく「自分だけが外部者」という感覚を持ってしまうことが、孤立感や疎外感を強める原因です。

企業が取るべき対応|差別を減らす取り組み

外国人採用には、適切な対応が必要です。なかでも言語面でスムーズに意思疎通ができないことが多いため、外国人を受け入れてからは、より細やかな心理的ケアをすることが大切です。

コミュニケーションのサポート

①やさしい日本語を使う

日本語がネイティブではない方と話す際には、専門用語や難しい表現はなるべく避けて、短くてわかりやすい言葉をこころがけましょう。やさしい日本語についてはこちらの記事でも解説しています。

やさしい日本語って何? 外国人採用を始めるなら知っておきたい基本! 求人票作成、雇用後の説明でも必要です

②通訳や翻訳ツールを活用

複雑な内容を伝えたいときには、DeepLやGoogle翻訳を使ってしっかりと意思疎通をしましょう。またこうしたツールを使っても、かならずしもうまく翻訳できているかはわからない場合があります。
外国人がどう理解したかをしっかりと確認しましょう。

③非言語コミュニケーション

言葉だけでなく、ジェスチャーや視覚的なサポート(たとえば図やイラスト)を使って説明を補強することも大切です。意識して笑顔で話すようにするのもいいでしょう。心理的な安全につながります。

④英語を学習する

外国人に「もっと日本語をうまくなってもらいたい」と思う方も多いでしょうが、日本人が英語を学習することもとても重要です。共通言語ができれば意思疎通もより簡単になります。おたがいに言語学習パートナーになることもできます。

相手の立場になるための研修

職場全体で異なる文化を理解するため、「相手の立場になるための研修」を実施するのはおすすめ。
社員みんなにこの研修を受けさせるのが難しい場合は、管理者として目を配うべき立場の方に、異なる言語の中でひとりで置かれる研修などを体験してもらうといいでしょう。

百聞は一見にしかず、です。理解できない言語の中に実際に自分が置かれてみると、考え方が大きく変わります。

定期的なフィードバック、フォローアップ

外国人労働者に対して、定期的なフィードバックをすることも大切です。彼らの困っていることを確認して、お客さまや同僚とうまくいかなかったことを親身になって聞いてあげましょう。話を聞く場を作るだけでもちがいます。

弊社の求人媒体(Gudable Jobs ガイダブル・ジョブス)を使って外国人採用に成功されている、訪問介護事業の会社さまでも10n1の面談を多く行っています。外国人採用の事例に興味がある方は、ぜひこちらから見てみてください。

訪問介護、居宅介護支援を行うケアラインさまの外国人採用事例 リーダーの定期的な1 on 1が重要!

交流イベントなどを開催する

疎外感を感じることが多い外国人の方と、日本人の従業員の交流をうながす意味でも、積極的に交流イベントを開くことをおすすめします。

季節のイベントなどは、みなさん楽しんで参加してくれるでしょう。弊社を利用してくれている企業さまも、ピクニックや食事会などをしている話を聞きます。外国人の方の母国料理を用意して、みんなで食べるというイベントも文化交流にもなっていいでしょう。

おわりに

外国人労働者が職場で差別や不平等を感じることがないよう、企業としても取り組むことが定着率を上げるためには非常に大切になります。文化や言語のちがいを尊重して、日本人と平等な待遇、昇進の機会を与えて、彼らの能力を最大限に引き出しましょう。

外国人採用を進める際には、適切なサポート体制を整えて、すべての従業員が働きやすい環境を作りましょう。こうした努力が企業の成長にもつながります。