【2024年最新版】外国人採用の始め方|外国人材を初めて雇用する企業が知っておくべき採用フロー、注意点などを解説
日本の総人口が減少することで、生産年齢人口(15歳から64歳)も減少しています。これによって労働力の不足が深刻化し、企業にとっては従業員の確保も年々難しくなっています。
この労働力の減少を食い止めるには、いくつかの柱となる方針が示されていますが、いま政府主導でも、外国人の受け入れ、つまりは「外国人雇用の拡大」をさらに推進しようという考えが示されています。
この記事の中では、外国人採用を行う企業のために、仕組みや流れについてわかりやすく説明しています。日本全国の企業の23%が、外国人採用をすでに行っています。当たり前になりつつある外国人採用について基本をまとめているので、ぜひこちらの記事を読んでみてください。
外国人採用を検討する際に知っておくべきこと
まずは外国人採用を考えるうえで、前提となる知識を頭に入れておきましょう。ここではいくつかポイントを紹介します。
その1:なぜいま「外国人採用」が注目されているの?
・人手不足の対策(人材の確保)
日本は年々人口が減少し、今後はさらに高齢化が進みます。人口比の偏りによって労働力はさらに減少していき、一部の産業や地域ではすでに人手不足が深刻化しています。
企業が経済成長を目指すには、労働力がベースになります。労働力は企業にとって必要不可欠なものであり、どれだけ効率化や機械化・AI化が進むとしても、一定数は必要です。
一般に「女性の雇用を増やす」こと「高齢者の再雇用」も、人手不足に対しては大きな柱のひとつとされています。しかし「外国人採用こそが問題解決のための最重要施策」と考えている方も多いです。
・グローバルな競争力の向上
伝統や安定性を重視する多くの日本企業は、新しいアイデアに対して保守的傾向がみられます。実際に世界の経済発展をけん引しているIT分野では、日本は新しいアイデアの導入が遅れているようです。
外国人が持つスキルや専門知識は、日本経済における課題である「新しい技術の導入」や「ビジネスチャンスの創出」をサポートし、産業全体の発展に寄与します。
さらに複数言語を活用できる外国人が、多くのプロジェクトに加わることで、企業の国際展開や多国籍企業とのコミュニケーションが進み、日本のビジネス環境がより国際的になることが期待されています。
・政策支援が手厚い
日本政府は「特定技能制度」や「技能実習制度」などを通じて、外国人労働者の受け入れを支援しています。このことで、企業はより安心して外国人労働者を採用できます。
外国人労働者の権利や労働条件を保護する法的な枠組みがどんどん整備されており、安心して採用が可能なのです。
その2:外国人労働者を雇用する企業が増加中
厚生労働省が公表しているグラフをみると、外国人労働者数は増加していることがわかります。
引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)をもとに作成
外国人労働者の雇用が急に増加している状況下では、法的および事務的な対応方法も変化します。こちらに対する理解と対応力があれば、新しい採用プロセスもすばやく確立できます。
すでに日本企業の 23%以上が外国人採用を始めており、今後もさらに増えていくことが予想されます。外国人労働者の最新情報ニュースなどは、こまめにチェックしておきましょう。
その3:外国人が日本で働くには特定の在留資格が必要
日本に滞在している外国人は、かならず在留資格を取得しています。ただし在留資格を持っている外国人なら、誰でも雇用できるわけではありません。
業務内容が在留資格と異なる場合は「不法就労」となり、これを助長したとして企業が罰則を科せられることもあります。
任せたい業務に対して適切な在留資格は何なのか、採用担当者が事前に把握しておくことが重要です。
在留資格は大きく3種類。
◉身分系の在留資格
「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」
こちらの資格は身分や地位に応じた在留資格と呼ばれるもので、一定期間以上日本に暮らすことを前提とした在留資格です。仕事における活動内容が制限されないため、日本人とほとんど同じように雇用することが可能です。
▽こちらの記事にさらに詳しく書かれています
「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説
◉就労系の在留資格
「外交」「公用」「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職1号・2号」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能1号・2号」「技能実習1号・2号・3号」
これらは就労を目的とした在留資格です。外国人が日本で活動を行うために、29種類の在留資格がありますが、そのうちの19種類がこの就労系の在留資格です(※正式な呼び方ではないですが、「就労ビザ」という呼び方もよくされます)。
▽こちらの記事にさらに詳しく書かれています
外国人の「就労ビザ」ってなに? 全16種類の内容や申請方法、雇用企業が知っておくこと
◉それ以外の在留資格
「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」「特定活動」
留学目的の方が該当する「留学」、さまざまな個別の事情の方が該当する「特定活動」など、それ以外の在留資格がこちらです。留学生は資格外活動許可をもらって、週28時間以内の勤務をすることも多く、企業にとってもこちらの在留資格に該当する方と関わることは多いでしょう。
▽こちらの記事にさらに詳しく書かれています
外国人は特定活動ビザでは就労できない? 企業担当者が気をつけておきたいこと
外国人労働者を採用する流れ(採用フロー)
外国人採用の一般的な流れとしては、以下のステップになります。
在留資格の種類や国内ですでに住んでいるか否かなどで、ステップは異なります。今回はすでに日本に住んでいる方の採用の進め方についてお話したいと思います。
STEP1.外国人への求人募集
以下に外国人採用の代表的な求人方法を紹介します。
・自社サイトや自社で使っているSNSに掲載
求人を集めるには、自社サイト(コーポレートサイト)に求人の掲載をするのが、もっとも簡単でコストもかかりません。SNSでもよく雇用している会社を見かけることも多いのではないでしょうか?
しかしあくまで知られている企業にとっては非常に有効な手段ですが、有名ではない企業の場合にはあまり効果は認められないかもしれません。
・人材紹介会社
人材紹介を専門とする会社は、それぞれ得意とする業界を持っていることが多いです。業界特有の求人票の作成方法や、選考プロセスのコツを教えてくれます。
人材紹介会社は、企業と求職者どちらものプライバシーを尊重するために、幅の広いネットワークを持っています。そのコネクションを活かして「高度専門職の在留資格を持つ外国人」など、直接的なアプローチが難しい層の候補者を紹介してくれます。
ちなみに日本では「高度人材の紹介」というかたちで、外国人採用の老舗の会社が多くあります。
・外国人向け求人掲載サイト
国内での在留外国人が増えるにつれて、「外国人向け求人掲載サイト」も次第に大きな規模になってきました。求人に対して、多くの外国人から応募を集めて採用したいという方には、この求人掲載サイトは有効な問題解決方法となるでしょう。
求人掲載では、サイトで掲載しても実際には採用までいたらなかった、というケースも発生することがあります。しかし、コストパフォーマンスの面では、多くの求職者を集めたい仕事では非常にすぐれている場合が多いです。
「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート・アルバイト」など、雇用形態や雇用条件もこまかく選ぶことが可能です。
この求人掲載サイトでは、日本の企業さまにとっての負担を軽減する、「一次面接代行」などが付いているプランもあります。
STEP2.在留カードと在留資格の確認
国内にすでに住んでいる方から応募がきたら、一般的にはまず面接よりも前に在留カードと在留資格を確認します。
在留カードで確認することは、在留期限が切れていないか、保持しているのは就労ができる在留カードかどうかということです。こちらは専用のアプリを使って確認することもできます。
STEP3. 面接での選考
資格面で問題がなければ、つぎは面接の選考を行います。
外国人採用では、以下で注意点としてあげていることを確認してみると、ミスマッチを避けることができるでしょう。今回はとくに求人媒体経由で、比較的単純なノンデスクワーカーの外国人雇用で考えるべきこと、面接官が気をつけるべきことを共有いたします。
◆前の会社をやめた理由は?
日本人と同様ですが、前の会社をやめた理由をしっかりと聞くことで、応募者の仕事への考え方を知ることができます。自分の責任ではなく、環境や他人のせいにしてしまう方を雇うリスクを避けることができます。
◆ダブルワークはしている?
雇用形態によりますが、アルバイト、パート、派遣、非正規雇用などの場合には、ダブルワークをしている方も多いです。仕事にしっかりとリソースを割いてくれるのか、必要な稼働を確保してくれる応募者なのかを知るためにも、ダブルワークをしているかどうかは知っておきましょう。
◆仕事内容を理解してる?
場所と給与水準だけを見ていて、仕事内容にあまり興味を持っていない方もいます。このようなタイプの方は、実際に働き始めて思っていた仕事とちがうとすぐに会社をやめてしまいます。どうしてこの仕事をやりたいと思ったのかをしっかりと確認するのも、とても大切なポイントです。
◆本当にいまの仕事をやめられる?
ノンデスクワーカーの外国人雇用においては、約束した日(入社日)に勤めている会社をまだやめていないということもたまに起こります。まだべつの会社に所属していて、転職を申し出ている方の場合には、何度もこの点を訊ねて確認しましょう。
STEP4. 雇用契約手続き
面接で話した雰囲気で人柄を理解し、日本語レベルも会社で行う業務に支障がないと思えたら、雇用契約を行います。「労働条件通知書」や「雇用契約書」を用意することになりますが、外国人採用では「雇用契約書」でかならず本人の合意を得ましょう。
◇雇用契約書で注意すべきこと
- 職務内容 :やさしい日本語(小学校2~3年生のレベルを意識するといい)もしくは英語
- 就業場所を細かく
- 在留資格に適した勤務期間
- 職務上の地位
- 賃金
- 賞与・最低賃金額
- 退職金の有無・条件
- 安全・衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 表彰・制裁に関すること
- 休職に関すること
より詳細な内容は、以下の記事を参考にしてください。
外国人労働者向けの雇用契約書の作り方 作成する際にチェックしたい12のポイントを紹介
◆家族の反対がでた場合は?
当人が入社の意志を持っていても、家族からの反対が上がるケースもあります。これまでいた業界から離れて、新しい業界に転職するときなど、家族が不安から転職をブロックすることがあるのです。
このような場合には、ご家族にも面接に立ち会ってもらって、自分たちの会社のいいところや転職のメリットを直接伝えましょう。
STEP5.在留資格申請と変更
海外に在住している方を雇用するときは、入国するために在留資格申請が必要になります。国内にすでに在留しているかたも、業界や業務が変わり、なおかつ就労ビザで働いている方は変更手続きが必要となることがあります。
◆具体的な例◆
具体例 | |
特定技能や技能実習 | 転職で受け入れ企業がわかる場合、同じ在留資格でも変更の手続きが必要。新しい雇用主が特定の条件を満たす必要があります。 |
高度人材(高度専門職) | 新しい職務内容が高度人材を満たすかは確認が必要です。 |
技人国から技能職への転職 | たとえばITエンジニアとして働いていた方が、飲食業の技能職に転職するときには、在留資格変更が必要です。 |
STEP6. 入社の準備と受け入れ
会社に入社が決まった外国人がスムーズに業務を開始できるように、必要があれば社内の受け入れ体制を整えます。
・配属先の調整(メンターの割りあて)
配属先となる部署(チーム)のメンバーから、外国人の社員にメンターを割りあててもいいでしょう。外国人社員の言語的なサポートや、日常生活におけるケアなど、安心して働ける環境をつくりましょう。
・やさしい日本語、英語マニュアルの準備
初めて外国人を採用する企業は、日本人向けのマニュアルをよりやさしい日本語で書いたものを用意しましょう。日本語レベルがN3〜N4でも、英語のレベルは非常に高い方もいますので、もし可能なら英語でのマニュアルを準備することもおすすめいたします。
・出身国に関する情報を確認
出身国によって、宗教観はさまざまです。「お祈りの時間が決まっている」「ヒジャブを外すことはできない」など、少し制約がある場合があります。これらの情報はしっかりと聞いておくことが大切です。
最近ではベジタリアンの方も増えていますし、ハラール食品(イスラム教で許されている食品)のみ食べる方もいます。食事面にも気を遣ってあげるとよさそうです。
「怒る・叱る」ことに関して、日本は世界的にもきびしいことでよく知られています。自分たちではあたりまえと考えていても、世界的には厳しすぎる傾向にあります。人前で怒るなどのパワハラ的な行為は、たいていの国の方から信頼を失います。注意しましょう。
・住居の確保
外国人が賃貸物件の契約を行うことは、一般的にハードルが高いです。「意思疎通が難しいのでトラブルを避けたい」と考えるオーナーの方針や、支払い能力に対する懸念、連帯保証人がいない、など理由はさまざまです。
外国人を採用する場合には、「寮・社宅の提供」や「連帯保証人・保証会社の確保」など、住居を確保するサポートもできるといいでしょう。
外国人採用に必要な手続き・書類
入社前後に必要な、事務的な手続きを紹介します。
入社前に必要な手続き・書類
【採用担当者】条件通知書・雇用契約書の作成
採用フローの中でも紹介した通り、採用通知の際に「雇用契約書」を作成・送付します。
話しておたがいに納得した内容が書かれている雇用契約書を、やさしい日本語または英語で作成しましょう。
日本語があまりできなくて読めない方の場合には、いっしょに読んであげることや、家族と話して考えてもらうプロセスが必要になります。ここで相手に内容をしっかりと理解して同意を得ることが重要です。
【雇用される外国人】就労資格証明書の発行・提出(任意)
採用予定の外国人が、現在持っている在留資格のまま自社で働けるかを確認するために、就労資格証明書を提出してもらいます。この書類は原則として、外国人本人が出入国在留管理庁に申請を行う必要があります。提出してもらう場合は早めに発行を依頼しましょう。
【採用担当者/雇用される外国人】在留資格変更許可申請
もしも業務内容に合わせて内定者の在留資格を変更する場合は、入社前に変更を完了させておく必要があります。
申請時には、企業担当者は「雇用契約書のコピー」「法人登記事項証明書」「企業の決算報告書」など、外国人が自立して生活できる条件での雇用が証明できる・実在する企業だと証明できる書類を準備します。
またその申請は内定者本人が、「申請書」や「現在の在留カード」「パスポート」などを持参して行う必要があります。申請内容に問題がなければ、通常は申請後1〜2ヶ月で変更許可がおります。
入社後に必要な手続き・書類
【採用担当者】外国人雇用届の提出
外国人の入社日の翌月10日までに、氏名や在留資格などをハローワークに届け出る義務があります。
採用した外国人労働者から在留カード・パスポートを借り、かならず照らし合わせて確認してください。
在留カード・パスポートのコピーの提出は不要ですが、届出の記載内容にまちがいがあると企業が罰則を科される恐れがあります。十分に注意しましょう。
【採用担当者/雇用される外国人】所属機関等に関する届出
特定の在留資格を持つ外国人を雇い入れた場合は、入社から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。この届出は本人の署名があれば会社が提出することも可能です。
所属機関の名称が変わった場合や、所在地が変わった場合も同様に提出してください。
【採用担当者/雇用される外国人】在留期間更新許可申請書
引きつづき外国人を雇用する場合、在留資格の期限が切れるまえに期間の更新が必要です。
申請時には、企業担当者は「在職証明書」や「前年ぶんの給与所得の源泉徴収票」など、外国人社員が自立して生活できていることを証明できる書類を準備します。
またその申請は、内定者本人が「申請書」や「現在の在留カード」「パスポート」などを持参して行う必要があります。申請内容に問題がなければ、通常は申請後2週間〜1ヶ月で変更許可がおります。
このほかにも雇用保険加入の手続きなど、日本人社員に対して行う手続きは外国人社員にも同様に行います。
外国人労働者を採用する際は、事務手続きが多く時間もかかります。それをみこして早めの準備・申請を進めるようにしましょう。
外国人採用の注意点
あらためて、外国人を雇用する際に抑えておくべきポイントをまとめます。
外国人の待遇は日本人と同じであることが前提
「同一労働、同一賃金」は外国人にも適用されます。これは賃金や福利厚生などをふくめ、日本人のあいだで待遇差別がないようにする制度です。
多様性と平等がますます重視される現代、適正な労働条件を用意することは企業にとって果たさなければならない責任です。法的な基準を満たすことはもちろん、モチベーション維持のためにも、差別や区別をしないで評価を行い、働く環境を整備しましょう。
技能実習生の給与はどのくらい? 賃金を支払うときに気をつけるべきこと
在留資格で認められている仕事のみできる
外国人の在留資格は、その種類に基づいて、働くことができる職種や期間が限定されています。企業は外国人の在留資格についてよく理解し、内容に合っている業務を割りあてる必要があります。
もし在留資格とは異なる業務をしていると、外国人社員の在留資格は取り消されてしまいます。また企業も不法就労助長罪に問われるため、経済的にも大きなペナルティが科せられることは知っておきましょう。
入社後のフォローアップを継続する
入社後のオリエンテーションが済んだら完了とはいえません。組織に定着してもらい、戦力として活躍できる環境を作ることが最重要です。
採用担当者やメンターは外国人労働者との定期的な面談を通じて、コミュニケーションを深めましょう。
キャリアパスに対して具体的な目標の設定や達成度の確認をしたり、私生活に関する疑問・不安をヒアリングしてフォローをつづけることが大切です。
問題解決や改善点の共有を行うことで、円滑な業務遂行と外国人労働者の定着率が上がります。
【◉外国人採用の注意点をもっとくわしく知りたい方はこちら!】
まとめ|外国人採用の始め方
外国人向けの採用活動では、日本人向けの採用活動とは異なるポイントが多くあります。初めて外国人労働者を雇用する場合には、企業側の担当者が新しく覚える業務も多く、戸惑うこともあるかと思います。
しかし企業にとって、外国人材の受け入れは当たり前のことになりつつあります。ぜひ今回の内容を参考にして、企業にとって大きな利益を生み出してくれる、有能な外国人人材を雇用しましょう!