外国人労働者の教育方法をわかりやすく解説! 何を教えれば良いのか、教育しないリスク、教育をうまく進める方法は?
外国人労働者を採用するときは、彼らのために教育体制を整えることがとても大切です。
しかし、労働文化の違いからくるギャップが大きく、教育システムを作る段階でつまずいてしまう企業が多いのが現実です。
この記事では、外国人労働者の教育内容や教えかたについて解説します。
外国人労働者の教育でありがちな問題は?
まずは、たくさんの企業が直面する「外国人を教育する際に起こりがちな問題」について説明していきます。
言語の壁があり、コミュニケーションが取りにくい
外国人労働者を雇うときに、よく起こる問題のひとつは「言語の壁」によってコミュニケーションがうまくいかないことです。
もし、外国人労働者が日本語が十分に理解できない場合、仕事に関する指示や説明を誤解してしまうことがあります。これによって、仕事の質や安全性に悪影響が出ることもあります。
さらに、業務の中で日本語を学ぶ時間を設けていても、日本の言語教育方法に慣れている人とそうでない人の間で、学びの進み具合や理解度に大きな差が出ることがあります。
とくに、日本語を習得するのに時間がかかる人の場合、実際の仕事の指導内容を正しく理解できるようになるまでに、どうしても時間がかかってしまうことが多いです。
技術や知識の違いによって、指示を誤解してしまう
業務に必要な技術や知識の違いによって、指示を誤解してしまうこともよくある問題です。日本人が仕事をしているときに当たり前だと思っている技術や知識が、外国人労働者の出身国では必ずしも通用しないことがあります。これによって、必要な知識の差が生まれてしまいます。
たとえば、特定の業界用語や作業手順が日本独自のものである場合、外国人労働者はそれを理解するのに苦労することがあります。
とくに、安全に関する知識は国や文化によって異なるため、業務に必要な安全意識が十分に徹底できないと、事故や大きなトラブルが起こる可能性があります。
職場のルールやマナーの違いに戸惑ってしまう
日本で初めて働く外国人はもちろん、過去に日本での就労経験がある外国人でも、転職をしたときには職場のルールやマナーの違いに戸惑うことがあります。
たとえば、時間に対する考え方は文化によって影響を受けやすいため、会議やミーティングへ参加するときに大きな違いが見られます。
日本では時間を守ることがとても大切ですが、他の国ではそれが必ずしも重要ではないということです。
また、日本の上下関係の考え方は独特で、敬語の使い方や上司への接し方について理解するのに時間がかかることがあります。
さらに、休日や祝日の過ごし方や、有給休暇の取り方についても文化によって考え方がちがうため、日本の一般的な慣習に慣れるのが難しいこともあります。
外国人労働者を教育しないことで起こるリスクは?
ここからは、外国人労働者を雇ったあとに、しっかりとした教育を行わないとどんなリスクが起こるかについて説明します。
外国人労働者のモチベーションが低下する
外国人労働者に対してしっかりとした教育をしないと、仕事へのやる気が下がることがあります。
彼らは必要なスキルや知識が足りないと感じると、自信を持って仕事ができません。
とくに、仕事の内容や職場のルールを理解しないまま働くと、自分が期待に応えられていないと不安になることもあります。
こうした状況に陥ると成長する機会が少なくなるため、外国人労働者の気持ちはさらに落ち込んでしまいます。
また、職場で孤立したりコミュニケーションがうまく取れないことも、やる気を失う原因になります。
結果として、働く意欲が減ってしまい、最終的には辞めてしまう人が増えることが懸念されます。
外国人労働者の生産性が低下する
十分な教育を受けていないと、仕事の効率は下がってしまいます。
これは日本人にも言えることですが、外国人労働者の場合はとくに次のような問題が目立ちます。
まず、必要なスキルや知識が足りないため、仕事が進まなかったり、ミスが多くなったりすることがよくあります。とくに仕事のやり方や手順がわかっていないと、無駄な時間がかかることが増えます。
また、指示が正しく理解できないことで、同じ作業を繰り返してしまったり、間違った方法で進めてしまうこともあります。
こうした問題が重なると、会社全体の業務の効率が悪くなり、スムーズな運営が難しくなる可能性があります。
仕上がりにムラが出る
とくに製造業などの現場で外国人労働者を雇う場合、教育が十分でないと、製品の仕上がり具合がばらつくことがあります。
日本の品質基準や作業手順は、他の国に比べて厳しいと言われています。そのため、これらをしっかり理解していないと、仕上がりにムラが出てしまい、基準を満たせない可能性が高まります。
たとえば、製造業では細かい作業に注意が必要なことが多いですが、その重要さが伝わっていないと、不良品を生産し続けてしまうことがあります。
また、作業の理解度や経験が人によって違うため、同じ仕事をしていても結果に差が出やすく、品質管理が難しくなることもあります。
こうした仕上がりのムラは、お客様の満足度を下げたり、企業の評判を悪くすることにも繋がります。
サービス品質が低下する
接客がある仕事では、外国人労働者に十分な教育がされていないと、お客様とのコミュニケーションがうまく取れずサービスの質が下がることがあります。
たとえば、言語の違いや文化の違いが原因でお客様のニーズを正しく理解できないと、期待に応えられなくなることがあります。
また、裏方の仕事でも、業務の質が低下するとお客様の満足度が下がり、結果としてリピート客が減ったり、企業の信頼を失うことにつながる可能性があります。
最近ではSNSの利用が広がっており、サービスに対する口コミもすぐに広まります。サービスの質が低い状態が続くと、悪い評判がネットで拡散されてしまい、新しいお客様を得ることが難しくなることもあります。
労働災害が発生する
外国人労働者への教育が十分でないと、労働災害のリスクが高くなります。
とくに、安全に関する知識や意識が不足していると、危険な作業環境に対する理解が十分でなくなることがあります。
たとえば、工場や建設現場では特定の安全手順や設備の使い方を守ることが重要ですが、教育が不十分だと、その手順を守らなかったり、設備の使い方を間違えてしまうことがあります。こうしたミスが原因で事故やケガが起こることも少なくありません。
また、文化の違いによって危険を感じる基準が異なることもあり、労働者が自分で危険に気づけないこともあります。
このような状況では、企業が責任を問われるだけでなく、労働者の健康や安全が脅かされることになります。
外国人労働者の教育で大切な3つの基本
ここからは、「外国人労働者には何を教えればいいの?」という疑問を持っているかたに向けて、教育で特に大切な3つのポイントを紹介します。
日本語教育
外国人労働者がスムーズに仕事をするためには、日本語でのコミュニケーション能力は必要不可欠です。
とくに、仕事に関する指示を理解したり、職場での会話に参加したりする力を身につけることが重要です。
もしコミュニケーションがうまくできないと、指示を誤解したり、情報が伝わらなかったりする可能性が高くなります。これが原因で、仕事の効率が下がったり、製品の品質に問題が出たり、最悪の場合、事故につながることもあります。
そのため、日本語教育は外国人労働者が日本の職場の文化や安全ルールを理解し、チームの一員としてうまく働くための基本になります。
ただし、外国人労働者それぞれの日本語の理解力には違いがあるため、各人に合ったスピードで日本語教育を行うことが大切です。
参考:一般財団法人日本国際協力センター(JICE) 厚生労働省委託事業 外国人就労・定着支援事業(研修)
業務内容の教育
業務内容の教育は、外国人労働者が必要なスキルや知識を身につけるためにとても大切です。
日本の職場での仕事の流れを理解することで、生産性が上がり、業務の質も一定に保つことができるようになります。
とくに、正確な業務の流れを理解して適切に作業を行うことは、安全な職場環境を保つためにも重要です。
たとえば、製造ラインでの作業では、手順を正しく実行することが、製品の品質を守ることにつながります。また、機械の操作方法を知らないと、労働災害が起こるリスクが高まります。
業務内容の教育には、OJT(On the Job Training)という実際の仕事を通じて学ぶ方法が推奨されています。
これにより、業務への理解が深まり、仕事に慣れるまでの時間が短くなります。
さらに、OFF-JT(Off The Job Training)を組み合わせることで、基本的な知識をしっかり身につけつつ、実践的なスキルを向上させることができます。
この2つの方法を組み合わせることで、外国人労働者がより効果的に仕事を進められるようになります。
安全衛生教育
安全衛生教育は、労働者が安全についての知識を得たり、意識を高めたりするためにとても重要な取り組みです。
日本の安全基準や作業環境に関するルールをしっかり理解し、労働災害を未然に防ぐことが求められます。
しかし、外国人労働者の中には、安全教育を十分に理解していない人が多く、日本の常識とは異なるため、特有の危険に対する意識が不足していることがあります。このため、安全衛生教育はとくに重要で、必ずおこなう必要があります。
たとえば製造業では、機械の操作や化学物質の扱いなど、危険がたくさんあります。つまり安全衛生教育では、これらの取り扱いについても教えることが大切です。
職場では安全が最優先であり、労働災害が起こると、人がけがをするだけでなく、企業の生産性にも大きな影響を与えます。
この教育を受けることで、労働者は安全に作業を行うための知識を身につけ、現場での安全性をしっかり確保できるようになります。
外国人労働者の教育をうまく進める方法は?
ここからは、外国人労働者に教育を行うときに気をつけると良い点を紹介します。
これらのポイントを参考にして、より効果的な教育をおこないましょう。
【日本語教育①】外国人労働者に伝わりやすい言葉を使って話す
日本語教育の最初のステップとして、外国人労働者と話すときには、わかりやすい言葉を使うようにしましょう。
私たちが普段使っている日本語には敬語や略語がたくさん含まれており、これらが外国人にとって非常に難しいと感じられる理由です。まずは、シンプルではっきりした言葉を使って会話することで、指示や業務の内容が理解しやすくなります。
具体的には、日常的に使われる表現や、仕事に関連した基本的な言葉を選ぶことで、コミュニケーションのズレを減らすことができます。
また、ジェスチャーや具体的な例を見せることで、言葉の意味をより効果的に伝えることができます。
このような配慮は、職場での信頼関係を築くのにも役立ち、外国人労働者が安心して働ける環境を作るための大切な一歩になります。
【日本語教育②】仕事を通じて日本語の能力を高める
仕事を通じておこなう日本語教育は、外国人労働者が実際に日本語を学ぶのにとても効果的な方法です。
職場で使う日本語は、学校で学ぶ文法や単語とは違って、実際の仕事に役立つ内容です。そのため、より身近でわかりやすく感じられます。
たとえば、仕事に関連する言葉やフレーズを何度も使うことで、自然と記憶に残りやすくなります。
また、同僚や上司との会話を通じて、実際の会話の流れや微妙な表現を学ぶことができます。
【日本語教育③】定期的に日本語教育をおこなう
外国人労働者の日本語力を伸ばしていくためには、定期的に日本語を学ぶことがとても大切です。
一度教えただけで言語スキルがすぐに身につくのは難しいため、何度も繰り返して学べる環境をつくるようにしましょう。
定期的に日本語教育を行うことで、外国人労働者は新しい単語や表現を何度も学び、言葉がしっかりと身につきます。
日本語の教え方には、いろいろな方法があります。
たとえば、受け入れ企業が独自に研修を行う場合は、実際の仕事に関係する日本語を学べます。
日本語学校に通う場合は、教えるプロの先生から基礎から応用までしっかり学べます。
また、独学で勉強したり日常生活で日本語を使ったりすることも、スキルを上げる効果的な方法です。
【OJT教育①】はっきり伝えることを大切にする
前述した「伝わりやすい言葉を使って話す」に通ずる内容ですが、業務の教育でも明確で分かりやすいコミュニケーションは不可欠です。
とくにOJT教育では、日本人と会話する時に使うことのある曖昧な表現や比喩は避けて、具体的に指示することが重要です。
たとえば、業務手順を一つひとつ丁寧に説明し、必要に応じて図や実演を用いると理解が深まります。
また、確認質問を取り入れて、相手が理解しているかどうかを逐一確認することが、誤解を減らし、業務の正確さを保つポイントです。
【OJT教育②】お互いの考えかたを尊重する
外国人労働者と日本人従業員の間には、文化や考え方の違いがあります。
OJT教育を行うときには、その違いを大切にし、互いに理解し合う姿勢が重要です。
たとえば、物の扱い方や時間の感じ方、指示の受け取り方が異なることがあります。
こういった時は、相手に押し付けるのではなく、なぜそれが大切なのかをわかってもらうまでしっかりと話し合ったり、お互いのやり方に柔軟に対応することが大切です。
【OJT教育③】こまめにフィードバックをおこなう
仕事の一つひとつに対して、こまめにフィードバックをすることが大切です。
「あの時の行動はよくなかった」と後から伝えても、いつのことなのか、その時どう考えていたのかを思い出すのは難しいため、すぐに改善するのは難しくなります。
適切なタイミングでフィードバックを受けることで、自分の進み具合や改善すべき点がわかりやすくなります。
フィードバックは、具体的でわかりやすく、何が良かったのか、どこを直すべきかをはっきり伝えることが大切です。
また、彼らは自分の成長を感じることで、モチベーションが向上します。
ミスを指摘するだけでなく、改善できたときにはその努力をしっかりと認めて褒めることも大切です。
【OFFJT教育①】作業マニュアルをつくる
事前に作業マニュアルを作っておくことはとても効果的です。
マニュアルがあれば、仕事のやり方や注意点を目で見て確認できるため、言葉があまりわからない場合でも理解しやすくなります。
また、人によっては「メモをとる」ことが習慣になっていないこともあります。
もしもメモを持っていなかったとしても、作業マニュアルがあればそれに自分のメモを書き込むように指示することができます。
さらに、母国語でメモを書いても良いと伝えれば、あとで見返すときに仕事の内容をより理解しやすいマニュアルになります。
【OFFJT教育②】ITツールを使って学習をサポートする
外国人労働者が増えるとともに、日本の職場でのルールや仕事の仕方、法律、社会保険について学べるサービスも増えています。
eラーニングや動画を使えば、時間や場所に関係なく、これらを自分のペースで学ぶことができます。
また、日本特有の仕事のやり方や文化の違いについて実際に働きながら学び、同時に自分でも学習することで、職場に早く慣れることができるようになります。
【安全衛生教育①】実際に体験しながら教える
安全衛生の教育では、実際の作業現場で教えることがとても効果的です。
たとえば、機械の使い方や安全のための道具の使い方は、実際に機械や道具を使いながら、正しい手順を教えることが大切です。
また、避難の方法や緊急時の対応も、実際の現場で教えることでよりわかりやすくなります。
シミュレーションや現場での訓練を通じて、外国人労働者が体験しながら学べる機会を作りましょう。
【安全衛生教育②】定期的に学び直しをおこなう
安全衛生の教育は、一度だけでは終わりません。定期的に内容を再確認することがとても大切です。
安全についての意識が薄れるのを防ぐために、たとえば毎月短時間のセミナーを開催して、過去の事例や新たな危険について共有し、知識を新しくします。
さらに、新しい機械を導入したり作業の手順を変えた場合には、その都度新しい情報を伝えることが必要です。
外国人労働者がいつでも最新の知識を持っている状態になるようにしましょう。
さいごに
外国人労働者を教育するときは、彼らの気持ちにもしっかり配慮しましょう。
外国人が新しい文化や生活スタイルに慣れるのは簡単ではなく、時にはストレスや不安を感じたり、心細くなったりすることもあります。
こうした気持ちを理解して支えることが、彼らが職場にスムーズに馴染むためにはとても大切です。