研修生制度を正しく理解しよう

日本には外国人留学生を研修生・実習生として企業にて雇用する制度「技能実習制度」というものがあります。
海外の優秀な人材に、日本の技術を学んでもらい、それを持ち帰ることで発展途上国の経済発展を担う制度です。発展途上国の支援の一環として50年以上、形を変えて継続している研修生制度についてまとめました。
目次
研修生制度とは
研修生制度である「外国人技能実習制度」は留学生を企業が雇用し、様々な技能を習得してもらうという制度です。
あくまでも研修の制度であり、雇用の需要と供給を合わせるための手段としてはならない、と示されています。あくまでも研修であり雇用するための制度ではないということですね。
このほかに特定技能実習制度という制度があります。今も整備を進められ、形を変えながら、約50年の歴史がある制度です。
研修生制度の歴史は!?
研修生制度の歴史は1960年まで遡ります。当時海外に進出した企業が、海外協力の一環として始めたのがきっかけだそうです。
当時は現地法人の方を日本にて研修するという形をとり、その研修の結果現地法人でかなり優秀な結果を出した実績が多数ありました。そのため国策の一環として在留資格を発行し、研修するようになったそうです。
制度として明文化されたのは1981年からで、この時は研修のみ認められる形となっていました。1993年に技能実習としての活動が在留資格として認められるよう設定されました。これにより労働者として扱われるようになります。
しかしながら労働条件の問題などもあり、2017年11月に「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、今も制度が整えられているそうです。
特定技能実習制度とは?外国人技能実習制度との違い!
「特定技能実習制度は外国人技能実習制度と同じ」と思われることが多いですが、働ける幅などが大きく変わあります。外国人技能実習制度と違い、特定技能実習制度は日本の労働人口不足解消のための施策として施行されました。
労働人口不足解消が目的となっているため、該当する業種では、掃除や食堂の配膳などの単純作業から、専門的な分野まで、広く働くことができます。
外国人技能実習制度では研修が主な目的のため、日々の反復作業や、単純作業など、技能と関係ないことは業務にしてはいけないと定められています。
研修生はどれぐらいいるのか
実際に研修生として日本に在留資格を持っている海外の方は、法務省のHPより2018年の集計で328,360人にも及ぶそうです。
32万人もの研修生の受け入れ先にも多数の基準があります。しかしながら実情として労働力確保としての受け入れの実態や労働環境の問題、出稼ぎとして働くなど、未だ改善されない研修生制度の問題点も指摘されているそうです。
研修生を受け入れる方法とは!?
研修生を受け入れる方法は2つあり、単独の企業で受け入れる企業単独型と、協同組合や商工会議所などの非営利団体が受け入れ、企業で実習をする団体管理型という二つの方法とそのほかに受け入れの条件があります。
企業単独型とは
大手企業などが直接現地の法人に出向いて、常勤職員として受け入れる方法です。
全体の3%~4%ほどが企業単独型での研修生となっています。
団体管理型とは
団体管理型は、単独での受け入れが困難な中小企業からの研修機会拡大のニーズを受けて平成2年8月より導入された方法です。
中小企業の団体や、商工会議所などが受け入れ先となります。このときの受入団体は公的制度の外国人技能実習制度であるため、非営利団体に限ります。
受け入れ人数の制限
外国人技能実習制度では一年間に研修生を受け入れて良いとされている人数は、基本的に事業所の人数の20分の1です。これは大企業などの301人以上の事業所となっていてそれ以下の事業所の人数では、以下のように定められています。
- 201人以上、300人以下の場合:15人以内
- 101人以上、200人以下の場合:10人以内
- 51人以上、100人以下の場合:6人以内
- 50人以下の場合、3人以内
受け入れ可能な職種
受け入れられる職種にも制限があります。厚生労働省が定める77職種、139作業でのみ、研修生を受け入れ可能です。
農業関係
1.耕種農業、2.畜産農業
漁業関係
1.漁船漁業、2.養殖業
建設関係
1.さく井、2.建築板金、3.冷凍空気調和機器施工、4.建具製作、5.建築大工、6.型枠施工、7.鉄筋施工、8.とび、9.石材施工、10.タイル張り、11.かわらぶき、12.左官、13.配管、14.熱絶縁施工、15.内装仕上げ施工、16.サッシ施工、17.防水施工、18.コンクリート圧送施工、19.ウェルポイント施工、20.表装、21.建設機械施工、22.築炉
食品製造関係
- 缶詰巻締、2. 食鳥処理加工業、3.加熱性水産加工食品製造業、4.非加熱性水産加工食品製造業、5.水産練り製品製造、6.牛豚食肉処理加工業、7.ハム・ソーセージ・ベーコン製造、8.パン製造、9.そう菜製造業
繊維・衣服関係
1.紡績運転、2.織布運転、3.染色、4.ニット製品製造、5.たて編ニット生地製造 、6.婦人子供服製造、7.紳士服製造、8.下着類製造、9.寝具製作、10.カーペット製造、11.帆布製品製造、12.布はく縫製、13.座席シート縫製
機械・金属関係
1.鋳造、2.鍛造、3.ダイカスト、4.機械加工、5.金属プレス加工、6.鉄工、7.工場板金、8.めっき、9.アルミニウム陽極酸化処理、10.仕上げ、11.機械検査、12.機械保全、13.電子機器組立て、14.電気機器組立て、15.プリント配線板製造
その他
1.家具製作、2.印刷、3.製本、4.プラスチック成形、5.強化プラスチック成型、6.塗装、7.溶接、8.工業包装、9.紙器/段ボール箱製造、10.陶磁器工業製品製造 、11.自動車整備、12.ビルクリーニング、13介護
※規則別表第二第八号の法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める職種及び作業
空港グランドハンドリング
研修生制度の問題点
研修生の労働環境が劣悪?
中小、零細企業などでの研修を行う研修生が多く、厚生労働省の発表によると、約5000ある受け入れ組織のうちの7割以上にて労働基準関係法令上の違反が認められたそうです。
大阪府では、介護職において外国人研修生の過酷労働の問題が浮き彫りになったほか、安全確認が取れていない機械の操作によって、研修生が死亡する事故が発生しました。
研修生の賃金が安い?
外国人研修生の賃金が外国人正社員より安いという実態が浮き彫りになっています。
正社員での雇用は平均が27.6万円、研修生での雇用は18万円以下が半数以上を占めるという結果になっています。外国人正社員に限ると日本人と同水準の給与になっていますが、研修生となるとかなり低いのが実情です。
これは研修生が3年間しか在留資格がないので高度なことを任せることができないという実情があります。高度なことを任せることが難しい上に、長期的に雇うことができないため賃金は低くなりがちです。
また、中小企業、零細企業では深刻な人手不足が顕在化しており、制度の趣旨とは違い、労働者確保のために外国人技能実習制度を利用したり、実習生側も日本の高賃金を期待して出稼ぎとして外国人技能実習制度を利用している場合が少なからずあります。
研修生による犯罪や、資格外活動
外国人研修生による事件や犯罪、不法在留も問題視されています。警視庁によると、外国人研修生、技能実習での来日外国人の犯罪者数は年々増加しているのが実情です。
この背景には上に記した劣悪な労働環境と、賃金の安さが背景にあると言われています。
研修生制度は都合の良い制度ではない
外国人技能研修制度は企業の都合の良い制度などではなく、あくまでも国際協力を主体とした制度です。50年に及ぶ長い歴史があり、30万人以上の外国人がこの制度によって来日しています。
また、外国人の技能を上げる制度として、研修生制度だけではなく技能実習制度を利用することが可能です!受け入れには多数の条件がありますが、業種などの条件さえ揃えば事業規模に関わらず、一定の範囲内で研修生を受け入れることができます。
研修生制度のほか、外国人技能実習制度という制度が用意されていて、より柔軟に働いてもらうことができる制度です。いろいろな問題も孕んだ外国人技能研修制度ですが、企業の社会貢献の一環として、また若い活力や、外国人という新しい考え方を取り入れる良い機会ではないでしょうか。
今回の記事の作成における引用・参考文献
参照:厚生労働省:別紙4移 行 対 象 職 種 ・ 作 業 の 一 覧:平成29年12月6日時点・77職種139作業
参照:警視庁 ホームページ