人手不足が深刻化している特定産業分野において、即戦力となる外国人材の受け入れが可能になるのが「特定技能制度」です。

しかし、特定技能外国人を雇用する企業(受入れ機関)には、安定的かつ円滑な活動を支援する「義務的支援」が課せられています。

この支援は多岐にわたり、自社ですべてを担うには専門知識とリソースが必要です。

そこで注目されるのが、支援業務を代行する「登録支援機関」です。

本記事では、登録支援機関の概要や具体的なサポート内容について紹介します。

登録支援機関とは?

特定技能制度における「受入れ機関」は、特定技能外国人に対して生活や職業上の支援計画を策定し、実施する義務があります。

この支援業務を委託できるのが「登録支援機関」です。

登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録された団体のみが支援を代行できます。

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登録支援機関が代行できる支援の範囲

 

引用:外務省|登録支援機関について

結論から言うと「支援計画書」の作成は受入れ機関へのサポートのみ可能で、それ以降の実務(書類作成や支援実施など)はすべて登録支援機関で代行が可能です。
そして、支援内容は10項目ありますが、その一部を登録支援機関に委託することも可能です

注意しておきたいのは「支援計画書」だけは受入れ機関が作成する必要があると言う点です。支援計画書は、受け入れ予定の外国人が在留資格の取得(変更)申請をする際に提出する書類です。
ただし、支援計画書の書き方や具体的な内容は登録支援機関の担当者と話し合いながら一緒に作成することが可能です。
(支援期間中に計画を変更する場合は、登録支援機関からの申請で問題ありません。)

(参照:1号特定技能外国人支援・登録支援機関について

登録支援機関のサポート内容と義務的支援の内容

続いて、支援内容の10項目について具体的に紹介します。
必ず行わなければならない「義務的支援」に加えて、できるとなお良い「任意的支援」についても記載していきます。

登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録された団体のみが支援を代行できます。

義務的支援(全10項目)

1. 事前ガイダンス

在留資格の取得申請(または変更申請)の前に、労働条件や活動内容について説明する機会をもうけます。

説明は対面でも、テレビ電話などを利用しても問題ありません。

具体的な内容は以下になります。

  • 従事する業務の内容、報酬額、そのほかの労働条件についての説明
  • 対象者が日本でおこなえる活動範囲についての説明
  • 入国に至るまでの手続きについての説明
  • 本人や関係者(配偶者や親族など)が、失踪防止を目的とした契約(雇用継続が条件の保証金や不履行時の違約金徴収など)・その他金銭的な束縛を受けるような不当な契約をしていないかの確認
  • 雇用契約の段階やそれまでの準備において本人が自国の機関に費用を支払っている場合は、その額や内訳を理解して合意しているかの確認
  • 支援を受ける際に発生する費用は、直接的・間接的に本人が負担することはないという説明
  • 入国の際は、空港〜受入れ機関(または住居)間の送迎がされることの説明
  • 適切な住居を確保するために支援がされることの説明
  • 職業生活・日常生活・社会生活に関しての相談ができること、その体制についての説明

任意的支援
・受入れ機関からの支給品がある場合、その内容や用途の説明
・日本での生活上必要で、自国から持参した方が良いものの説明
・自国から持参できないものの説明 など

2. 出入国する際の送迎

入国時は空港〜受入れ機関(または住居)間の送迎をおこないます。
また、帰国時は受入れ機関(または住居)〜空港の保安検査場まで同行します。

3. 住居確保・生活に必要な契約支援

新たに住宅の確保が必要な場合は住居探しをサポートし、契約時に(保証人がいない場合は)保証人になります。
銀行口座の開設や携帯電話・ライフラインの契約など、生活上必要になるものの手続きをサポートします。

任意的支援
雇用期間の前後に空白期間がある場合、住宅確保や年金・健康保険切り替えのサポートなど

4. 生活オリエンテーション

職業生活・日常生活・社会生活上において円滑かつ安定的に暮らせるよう、日本のルール・マナーや公共機関の利用方法、緊急時の連絡先や災害時の対応などを説明します。

任意的支援
あらかじめ外国語・やさしい日本語で資料を作ったり、公的機関が発行している外国人向けの資料を渡す

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5. 公的手続等への同行

必要に応じて住居地や社会保障・税金などの手続きに同行したり、各種書類の作成をサポートします。

6. 日本語学習の機会の提供

日本語教室の入学案内や手続き、日本語学習教材の情報などを提供します。

任意的支援
機関での日本語教育の実施や、日本語能力試験の受験サポートなど

7. 相談・苦情への対応

職業生活・日常生活・社会生活に関しての相談や苦情について、外国人が十分に理解することができる言語で対応したり、内容に応じて必要な助言や指導をします。

任意的支援
機関内の相談窓口のほかに、公的機関などで受けられる外国人むけ相談窓口の紹介など

8. 日本人との交流促進

自治会などの地域住民との交流の場や、地域のお祭りなどの行事の案内、参加の補助など

任意的支援
本来の活動に支障をきたさない範囲での、本人が希望する交流機会の創出など

9. 転職支援(人員整理等の場合)

受入れ機関の都合で雇用契約を解除する場合、転職活動の支援や推薦状の作成をおこないます。
転職活動に時間を要する場合は有給休暇の付与、手続きのサポートをおこないます。

10. 定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者は外国人本人およびその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談し、労働基準法違反などがある場合は関係行政機関へ通報します。
外国人本人が発言しやすいように配慮しましょう。

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支援計画の作成と実施:委託できる範囲

支援計画書の作成は、受入れ機関が登録支援機関と協力して行う必要があります。

しかし、その後の実務(書類作成や支援実施など)は、すべて登録支援機関に委託可能です。

また、10項目の支援すべてを委託する必要はなく、自社で対応可能な項目は除外することもできます。

登録支援機関に支払う費用について

登録支援機関を利用する場合、費用が発生します。費用は主に初期費用と月額費用に分かれ、相場は以下の通りです。

費用の目安

  • 初期費用: 5万円〜10万円程度(在留資格の申請手続きなど)

  • 月額費用: 1人あたり2万円〜3.5万円程度

注意点: 法律により、登録支援機関に支払う費用は全額を受入れ機関が負担する義務があります。外国人本人に負担させることは禁止されています。

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費用を抑えるポイント

  • 委託する支援内容の範囲を見直す: 10項目の義務的支援のうち、自社で対応できる部分を特定し、必要な支援だけを委託することで費用を抑えられます。

  • 複数社から見積もりを取る: サービス内容や支援の質を比較検討し、自社のニーズに最も合った機関を選びましょう。

注意点: 登録支援機関に支払う費用は、全額を企業が負担しなければなりません。外国人本人に費用を負担させることは法律で禁止されています。

信頼できる登録支援機関の選び方

登録支援機関を選ぶ際は、以下のポイントを参考にしてください。

1. 出入国在留管理庁の登録簿に掲載されているか

・まず、出入国在留管理庁の登録支援機関登録簿で、事業者が正式に登録されているかを確認しましょう。

・登録には、法令遵守、支援体制の整備、過去の実績など、厳しい要件が課せられています。

2. 特定技能に特化した専門性

・特定技能制度や外国人材の生活サポートに特化した実績とノウハウがあるかを確認しましょう。

3. 提供サービスの内容と費用

・提供されるサービス内容が、自社のニーズと合っているかを確認しましょう。

・複数の機関から見積もりを取り、価格とサービスのバランスを比較検討することも重要です。

4. コミュニケーションの円滑さ

・問い合わせや相談に対する対応が迅速かつ丁寧か。

・外国人本人とのコミュニケーションを円滑にするための体制が整っているか(多言語対応など)を確認しましょう。

登録支援機関を選ぶ際に注意するポイント

ここからは登録支援機関の利用を検討している方へむけて、機関を選ぶ際に注意するべきポイントを紹介します。

登録支援機関登録簿に掲載されているか

「出入国在留管理庁 登録支援機関登録簿」に事業者名が登録されているかを確認しましょう。

登録期間は5年間で都度更新があり、以下の条件を満たしている機関が登録支援機関として認められています。

  • 入管法や労働法などの法令を遵守している
  • 支援責任者・支援担当者を選任している
  • 以下いずれかがの条件を満たしている
    • 過去2年以内に中長期在留者(就労系の在留資格)の受入れ実績がある
    • 過去2年以内に事業として外国人に関する各種相談業務をおこなっている
    • 支援担当者が過去5年のうち2年以上、中長期在留者の生活相談業務をおこなっている
    • 上記と同じレベルで支援業務を適正に実施できると認められている
  • 外国人が十分理解できる言語で情報提供などの支援を実施する体制がある
  • 過去1年以内に、会社の不正行為によって特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていない
  • 支援の費用を直接または間接的に外国人本人に負担させない

専門性と信頼性

特定技能外国人の支援に特化したサービスを提供している機関を選ぶことが望ましいです。
特定技能制度や労働環境に関する知識や経験が豊富な機関は専門性が高いため、効果的な支援を提供できます。
過去の実績・評判や実際に支援を受けた労働者の声を調査し、信頼性の高い機関を選びましょう。

提供するサービス内容

登録支援機関ごとに提供するサービス内容が異なります。
自社がどの範囲まで支援を必要としているか把握し、適切なサービスを提供している登録支援機関を選びましょう。
サービス内容と価格のバランス取れているか、問い合わせや相談に対する迅速な対応やサポート体制が整っているかなどを確認しましょう。

また、登録支援機関が企業に対して定期的なフィードバックや改善をおこなっているかも重要です。
労働者や企業の声を受け入れ、サービス品質の向上に努めている機関を選ぶようにしましょう。

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登録支援機関に委託するメリット

1. 専門性と安心感

・入管法や労働法に精通した専門家が支援するため、法令違反のリスクを回避できます。

・外国人材が安心して日本での生活をスタートでき、定着率向上につながります。

2. 管理コストの削減

・多岐にわたる支援業務をすべて自社で担う必要がなくなるため、担当者の業務負担を大幅に軽減できます。

3. トラブル対応

・言語や文化の違いによるトラブルが発生した場合でも、専門的なサポートを受けられます。

登録支援機関に委託する際のデメリット

1. 費用発生

自社で支援を行う場合と比べて、費用が発生します。

しかし、支援に必要な人件費や時間、トラブル発生時のリスクを考慮すると、費用対効果が高いケースも多いです。

2. 委託先の選定

登録支援機関は多数存在するため、自社のニーズに合った信頼できる機関を見極める必要があります。

自社支援で問題ないケースと注意点

すべての企業が登録支援機関に委託する必要はありません。以下の条件を満たす企業は、自社での支援も有効な選択肢となります。

自社支援が可能なケース

  • 社内に専門知識を持つ人材がいる

    • 過去に外国人材の雇用経験があり、入管法や労働法に精通した担当者がいる場合。

  • 多言語対応できる担当者がいる

    • 外国人材が母国語で相談できる体制が整っている場合。

  • 支援に必要なリソース(時間・人)を確保できる

    • 担当者が支援業務に十分な時間を割くことができる場合。

自社支援を行う際の注意点

自社で支援を行う場合、以下の点に注意が必要です。

1. 支援の徹底と記録

・義務的支援の10項目すべてを漏れなく実施し、その記録を保管しておく必要があります。

・定期的な面談も必ず行い、その記録も残さなければなりません。

2. 行政機関への報告

・3か月に1回、出入国在留管理庁へ支援状況を報告する義務があります。

3. 日本語での対応

・外国人が理解できる言語で相談に応じることが必須ですが、自社で対応が難しい場合は、通訳ツールや外部の専門サービスを活用する必要があります。

さいごに

特定技能外国人の採用は、人手不足解消の大きな鍵となります。その成功には、法令を遵守した適切な支援体制が不可欠です。

  • 登録支援機関を利用することで、専門家による安心のサポートを受けられ、企業の負担を大幅に軽減できます。

  • 自社支援はコストを抑えられますが、専門知識とリソースの確保が必須です。

貴社の状況に合わせて最適な支援方法を選び、外国人材が最大限に能力を発揮できる環境を整えましょう。

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*身分系の在留資格とは、「永住者」や「定住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」のように、日本に長く住む外国人の身分や地位に基づいて与えられる在留資格の総称です。

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