技能実習生の受け入れが可能な90職種165作業を解説! 受け入れるメリット、特定技能への移行についても知りましょう
日本は2007年に「超高齢社会」を迎えたといわれており、現在では多くの企業で慢性的な人手不足がささやかれています。問題解決にあたり「外国人雇用」という選択肢を考える人事担当さまも多いのではないでしょうか。そんな中で注目されているのが「技能実習生制度」です。
この言葉を一度は耳にしているのではないでしょうか? 技能実習生制度は問題も多い制度であり、政府からは新しい制度(「育成就労」)に移行していくことが発表されています。
現行の技能実習制度ではどの職種でも適用できるわけではありません。受け入れるためには条件があります。そのため制度の仕組みや対象となる職種をしっかり把握することが大切です。
今回の記事では技能実習生制度の内容、メリット、受け入れ可能な職種についてご紹介いたします。
目次
技能実習生制度と受け入れ可能な職種について丸わかり
ここでは、技能実習生制度の仕組みについてご説明します。また技能実習生の受け入れ可能職種や審査基準についてもご解説します。
そもそも外国人技能実習生制度とは?
外国企業からの派遣労働者(=技能実習生)を受け入れ、日本企業で技能実習を受けてもらう制度です。技能実習が主目的ではありますが、技能実習生のスキルが上がれば日本企業の労働力を支えてくれる存在にもなります。
ただし一人の技能実習生が日本に滞在できる期間は、2023年12月現在では最長で5年間です。また職種や作業内容によっては、最長で3年間の場合もあります(詳しくは後述します)。
期間終了後、技能実習生は帰国して習得した技能を母国企業で活かせます。外国企業は自国にはない技術を習得でき、日本企業は不足している労働力を補えるという制度です。
技能実習生の受け入れ方式は「企業単独型」と「団体監理型」の2種類
企業単独型とはその名のとおり単独の日本企業が、海外の合弁企業や取引先企業から実習生を受け入れる方式です。一方で団体監理型は「監理団体」と呼ばれる組織が、日本企業の代わりに技能実習生の受け入れや監理を行う方式です。
監理団体は技能実習に関する監理を行う非営利団体です。
現在では技能実習生の大半が団体監理型での受け入れとなっています。
企業単独型だと、手続きをすべて自社で行わなければならないためです。団体監理型を適用するには監理団体と契約する必要があります。
監理団体には「一般監理団体」と「特定監理団体」の2種類あり、合計数は3,000を超えます。
この中からひとつを選ぶのは難しいですが、より長く技能実習生を受け入れたい場合は「一般監理団体」を選びましょう。受け入れ期間が特定監理団体は3年、一般監理事業は5年で、一般監理事業の方が2年長いためです。
技能実習生を受け入れが可能な職種を徹底解説!
2023年12月現在、技能実習生の受け入れが可能とされているのは「90職種165作業」です。ただし職種によって技能実習の最長期間が変わってきます。技能実習生制度は以下のように実習期間に応じて、第1号~第3号の3フェーズに分かれています。
- 第1号技能実習…実習1年目
- 第2号技能実習…実習2~3年目
- 第3号技能実習…実習4~5年目
受け入れ可能な職種や作業を以下表でご紹介しますが「△」が付いているものは第2号技能実習まで(最長3年間)しか受け入れられないので注意が必要です。
「△」が付いていないものはすべて第3号技能実習まで(最長5年間)受け入れられます。
1.農業関係(2職種6作業)
職種名 | 作業名 |
耕種農業 | • 施設園芸 • 畑作・野菜 • 果樹 |
畜産農業 | • 養豚 • 養鶏 • 酪農 |
2.漁業関係(2職種10作業)
職種名 | 作業名 |
漁船漁業 | • かつお一本釣り漁業 • 延縄漁業 • いか釣り漁業 • まき網漁業 • ひき網漁業 • 刺し網漁業 • 定置網漁業 • かに・えびかご漁業 • 棒受網漁業△ |
養殖業 | • ほたてがい・まがき養殖 |
3.建設関係(22職種33作業)
職種名 | 作業名 |
さく井 | • パーカッション式さく井工事 • ロータリー式さく井工事 |
建築板金 | • ダクト板金 • 内外装板金 |
冷凍空気調和機器施工 | • 冷凍空気調和機器施工 |
建具製作 | • 木製建具手加工 |
建築大工 | • 大工工事 |
型枠施工 | • 型枠工事 |
鉄筋施工 | • 鉄筋組立て |
とび | • とび |
石材施工 | • 石材加工 • 石張り |
タイル張り | • タイル張り |
かわらぶき | • かわらぶき |
左官 | • 左官 |
配管 | • 建築配管 • プラント配管 |
熱絶縁施工 | • 保温保冷工事 |
内装仕上げ施工 | • プラスチック系床仕上げ工事 • カーペット系床仕上げ工事 • 鋼製下地工事 • ボード仕上げ工事 • カーテン工事 |
サッシ施工 | • ビル用サッシ施工 |
防水施工 | • シーリング防水工事 |
コンクリート圧送施工 | • コンクリート圧送工事 |
ウェルポイント施工 | • ウェルポイント工事 |
表装 | • 壁装 |
建設機械施工 | • 押土・整地 • 積込み • 掘削 • 締固め |
築炉 | • 築炉 |
4.食品製造関係(11職種16作業)
職種名 | 作業名 |
缶詰巻締 | • 缶詰巻締 |
食鳥処理加工業 | • 食鳥処理加工 |
加熱性水産加工食品製造業 | • 節類製造 • 加熱乾製品製造 • 調味加工品製造 • くん製品製造 |
非加熱性水産加工食品製造業 | • 塩蔵品製造 • 乾製品製造 • 発酵食品製造 • 調理加工品製造 • 生食用加工品製造 |
水産練り製品製造 | • かまぼこ製品製造 |
牛豚食肉処理加工業 | • 牛豚部分肉製造 |
ハム・ソーセージ・ベーコン製造 | • ハム・ソーセージ・ベーコン製造 |
パン製造 | • パン製造 |
そう菜製造業 | • そう菜加工 |
農産物漬物製造業△ | • 農産物漬物製造 |
医療・福祉施設給食製造△ | • 医療・福祉施設給食製造 |
5.繊維・衣服関係(13職種22作業)
職種名 | 作業名 |
紡績運転 | • 前紡工程 • 精紡工程 • 巻糸工程 • 合ねん糸工程 |
織布運転 | • 準備工程 • 製織工程 • 仕上工程 |
染色 | • 糸浸染 • 織物・ニット浸染 |
ニット製品製造 | • 靴下製造 • 丸編みニット製造 |
たて編ニット生地製造 | • たて編ニット生地製造 |
婦人子供服製造 | • 婦人子供既製服縫製 |
紳士服製造 | • 紳士既製服製造 |
下着類製造 | • 下着類製造 |
寝具製作 | • 寝具製作 |
カーペット製造△ | • 織じゅうたん製造 • タフテッドカーペット製造 • ニードルパンチカーペット製造 |
帆布製品製造 | • 帆布製品製造 |
布はく縫製 | • ワイシャツ製造 |
座席シート縫製 | • 自動車シート縫製 |
6.機械・金属関係(15職種29作業)
職種名 | 作業名 |
鋳造 | • 鋳鉄鋳物鋳造 • 非鉄金属鋳物鋳造 |
鍛造 | • ハンマ型鍛造 • プレス型鍛造 |
ダイカスト | • ホットチャンバダイカスト • コールドチャンバダイカスト |
機械加工 | • 普通旋盤 • フライス盤 • 数値制御旋盤 • マシニングセンタ |
金属プレス加工 | • 金属プレス |
鉄工 | • 構造物鉄工 |
工場板金 | • 機械板金 |
めっき | • 電気めっき • 溶融亜鉛めっき |
アルミニウム陽極酸化処理 | • 陽極酸化処理 |
仕上げ | • 治工具仕上げ • 金型仕上げ • 機械組立仕上げ |
機械検査 | • 機械検査 |
機械保全 | • 機械系保全 |
電子機器組立て | • 電子機器組立て |
電気機器組立て | • 回転電機組立て • 変圧器組立て • 配電盤・制御盤組立て • 開閉制御器具組立て • 回転電機巻線製作 |
プリント配線板製造 | • プリント配線板設計 • プリント配線板製造 |
アルミニウム圧延・押出製品製造△ | • 引抜加工 • 仕上げ |
金属熱処理業 | • 全体熱処理 • 表面熱処理(浸炭・浸炭窒化・窒化) • 部分熱処理(高周波熱処理・炎熱処理) |
7.その他(16職種29作業)
職種名 | 作業名 |
家具製作 | • 家具手加工 |
印刷 | • オフセット印刷 • グラビア印刷△ |
製本 | • 製本 |
プラスチック成形 | • 圧縮成形 • 射出成形 • インフレーション成形 • ブロー成形 |
強化プラスチック成形 | • 手積み積層成形 |
塗装 | • 建築塗装 • 金属塗装 • 鋼橋塗装 • 噴霧塗装 |
溶接 | • 手溶接 • 半自動溶接 |
工業包装 | • 工業包装 |
紙器・段ボール箱製造 | • 印刷箱打抜き • 印刷箱製箱 • 貼箱製造 • 段ボール箱製造 |
陶磁器工業製品製造 | • 機械ろくろ成形 • 圧力鋳込み成形 • パッド印刷 |
自動車整備 | • 自動車整備 |
ビルクリーニング | • ビルクリーニング |
介護 | • 介護 |
リネンサプライ△ | • リネンサプライ仕上げ |
コンクリート製品製造 | • コンクリート製品製造 |
宿泊△ | • 接客・衛生管理 |
RPF製造 | • RPF製造 |
鉄道施設保守整備 | 軌道保守整備 |
ゴム製品製造△ | • 成形加工 • 押出し加工 • 混練り圧延加工 • 複合積層加工 |
鉄道車両整備 | • 走行装置検修・解ぎ装 • 空気装置検修・解ぎ装 |
木材加工△ | • 機械製材 |
8.社内検定型の職種・作業(1職種3作業)
職種名 | 作業名 |
空港グランドハンドリング | • 航空機地上支援 • 航空貨物取扱 • 客室清掃△ |
ボイラーメンテナンス△ | • ボイラーメンテナンス |
技能実習計画審査基準とは?計画書モデルもご紹介!
前述のとおり、技能実習生制度には実習期間に応じて第1号~第3号の3フェーズがあります。そして第1号から第2号、第2号から第3号へと技能実習を継続していくためにはフェーズごとに実習条件を満たさなければなりません。
各フェーズの技能実習に必要となる実習条件を以下の表でまとめています。
技能実習のフェーズ | 対象 | 技能実習の承認条件 |
第1号技能実習 | 実習1年目 | ・第1号技能実習計画が承認される |
第2号技能実習 | 実習2~3年目 | ・第1号技能実習を修了 ・第2号技能実習計画が承認される ・学科試験および実技試験に合格 |
第3号技能実習 | 実習4~5年目 | ・第1号、第2号技能実習を修了 ・第3号技能実習計画が承認される ・実技試験に合格 |
それぞれのフェーズについて、技能実習計画の承認が必要なことがわかります。
技能実習計画には審査基準があり、各作業内容に応じて必須作業、関連作業、周辺作業とそれぞれ作業項目が明記されています。
この内の必須作業の50%以上を、技能実習計画に織り込まないと承認されないのです。
職種や作業によって審査基準はそれぞれ異なります。厚生労働省の以下サイトでは全職種・作業の技能実習計画審査基準や計画書のモデル例を公開しています。この機会にチェックしておきましょう。
技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準
技能実習生を受け入れるメリットをご紹介!
ここでは技能実習生を受け入れるメリットについて解説いたします。
また在留資格変更方法や、技能実習生制度以外の外国人受け入れ方法についても合わせて知っておきましょう。
技能実習生を受け入れるメリットは?
まず前述の通り、人手不足の企業にとっては「人材確保できる」というメリットがあります。監理団体に手続きを代行してもらうことも可能なため、少ない負担で人材を確保できます。
また技能実習生は「日本で技能を習得する」という目標があるため、勤勉で積極的な人材が多いです。そのため技能実習生と接することが、日本企業の社員にとってもモチベーション向上につながります。
技能実習生制度を通して海外と交流を深められるのはいいことです。相手国との信頼関係を築けますし、将来的に海外での事業拡大などのビジョンも広がります。
外国人技能実習生の在留資格変更方法とは?
技能実習生は受け入れ時に「在留資格」を取得しますが、申請時に職種や作業内容を決めなければなりません。しかし転勤や異動などで他の在留資格に変更したいケースもあり得ますよね。
この場合は「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
申請手続きについて、以下の表に簡単にまとめました。
詳しい情報はこちら(出入国在留管理庁:在留資格「技能実習」)で確認できます。
項目 | 内容 |
申請者 | ①技能実習生本人 ②法定代理人 ③取次者 |
申請期間 | 現在の在留期間の満了日以前 |
手数料 | 4,000円 |
必要書類 | ①申請書 ②顔写真 ③活動内容を証明する資料 ④在留カード(未交付の場合不要) ⑤資格外活動許可書(未交付の場合不要) ⑥旅券または在留資格証明書(提示できない場合は、その理由を記載した資料が必要) ⑦取次者の身分を証明する文書(取次者の場合のみ必要) |
実習生制度以外で、外国人を雇用するケース
外国人を雇用できるのは、技能実習生制度以外でもいくつかあります。その中でも、2019年に施行された「特定技能」という在留資格がいまも注目されています。
これは特定分野において「一定の技能が認められた場合に取得できる」在留資格です。取得するには試験を受ける必要がありますが、技能実習生制度の「第2号技能実習」を良好に修了した場合は、一部免除されます。
「技能実習」から「特定技能」へ移行することもできる、というのが大きなポイントです。
ただし残念ながら、特定技能はすべての職種が対象となるわけではありません。特定技能が適用できる職種は2023年12月現在、88職種161作業となっています。ご自身の職種が該当するか確認しておきましょう。
また特定技能は「就労ビザ」のひとつでもあります。
就労ビザとは日本国内で外国人が働くために必要な在留資格のことで、慣用的に使われている言葉です。ただし就労ビザは「日本で働くための条件」であって「日本に入国するための条件」ではないことに注意しましょう。
つまり日本に入国するためには、雇用契約を結んだあとに別途ビザの申請が必要になります。
これから先の外国人技能実習生制度
外国人技能実習生制度は日本企業・出身国企業のどちらにもメリットのある制度でした。
しかし「転職ができない」「労働条件や賃金の保障が不十分」といった原因でトラブルが発生することも多く、現在はその解決を目指す動きが進んでいます。
日本政府は外国人技能実習生制度の変革を進めて、新たな制度への移行を検討しています。
新たな制度は、「3年間の就労で特定技能1号の技能水準の人材に育成する」ことを目指すといわれています。
また転職や労働条件に関わる要件が設けられ、外国人労働者の働き手としての価値を最大限に引き出すための変革が期待されています。
今後の政府の動きに注目して雇用体制を整備し、外国人労働者といっしょに企業の持続的な成長を実現させましょう。