はじめに

みなさんは「中国」と聞いてどのような印象を思い浮かべますか?
記憶に新しい尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる問題や、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出などを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。日本の民間非営利団体「言論NPO」と、中国国際伝播(でんぱ)集団が2023年に日中両国で実施した共同世論調査では、日中両国における相手国への印象について「良くない」もしくは「どちらかといえば良くない」と答えた日本人は92・2%(前年比4・9ポイント増)、中国人は62・9%(同0・3ポイント増)となっています。


一方で中国からの旅行者や留学生は年々増加しており、コロナウイルスの猛威から抜けだした2022年の中国人留学生数は約10万人と全体の約44%を占めています。

そんな中で日本語を学んでいる中国人大学生や、中国語を学んでいる日本人大学生は現地でどのように過ごし、どこに課題を感じているのか。また卒業後の進路についても、実体験とともにご紹介したいと思います。

日本人留学生が中国で直面している課題

①反日運動の影響

日本大使館からの注意喚起

東京電力福島第1原発処理水の海洋放出問題が浮きぼりになった際、在中華人民共和国日本国大使館からは、外出するときに不必要に日本語を大きな声で話さないなど、慎重な言動を心がけるなどの注意喚起のメールが届きました。

もちろん大学内で過ごしつらいと感じたことはありませんが、このように公共の場での発言の制限は日本人留学生が直面している課題ともいえます。

タクシーでの乗車拒否?

日本とちがいタクシー料金が非常に安い中国では、留学生にとってタクシーは欠かせない存在です。しかし一部のタクシー運転手は日本人だとわかると、乗車拒否をしてくることもあるそうです。わたし自身が直接経験したわけではないですが、タクシーに乗るときは日本語を話さないようにし、身の安全のためにも出身国を聞かれても日本と答えないようにしています。

日本人留学生が直面している就活事情

①卒業後の進路問題

日本人留学生は卒業後に中国で就職するには、「大学院に進学する必要性が高い」ことや「給与が低い」などの理由から、基本的には日本に帰ることが多いです。
中国で就労ビザ(Zビザ)を取得する条件には基本的に社会人としての2年以上の就労経験が必要です。

そのため新卒で中国に移住してそのまま働くことは現実的ではありません。わたし自身も中国の大学に正規留学していますが、オンラインで就職活動を行って卒業後は帰国して4月から日本で就職を予定しています。

(※正規留学とは日本の大学で勉強するのと同じように、4年制大学や大学院へ入学し、学位取得を目指すための留学)

②卒業時期

中国の大学は一般的に入学は9月、卒業は6月下旬~7月上旬となっており、日本と卒業のタイミングがちがいます。
その影響もあり日本の大学生が就職活動を始める時期には、まだ多くの授業を受ける必要があることが多いです。

わたしの場合は就職活動の時期に、卒業実習や毎週朝から晩まで授業があったため、予定を立てることが難しい期間もありました。

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中国人留学生が日本で直面している課題

①大学院の需要のちがい

一部の学生は中国の大学で日本語を学んだあと、日本で就職希望の学部の大学院に進学して日本で就職する人がいます。
しかし日本国内の企業では、学部から留学した学生のほうが高い日本語力が期待できるため、専門学校卒業生や学部卒業生にくらべて大学院卒業生の需要がないといわれています。

そのため大学院卒業生と日本企業のミスマッチによって、日本での就職をあきらめて帰国する学生もいるそうです。

②学業とアルバイトの両立

中国に留学中に発行される留学ビザ(X1ビザ・X2ビザ)では、アルバイトやインターンシップに参加することはできないため、日本人は現地でお金を稼ぐことはできません

しかし日本では留学生がアルバイトができる「留学ビザ」もあるため、親からの仕送りに頼らずに、日本での学費や生活費をアルバイトで稼ぐ中国人学生も多くいます。
そういった中で彼らは日々のアルバイトに追われながら、学業との両立の苦しんでいる場合もあります。

今後は訪日旅行客へのサービス対応などで、中国人留学生のアルバイト需要もさらに高まることが予想されます。
弊社でも中国語ができる人材は獲得することができますので、中国人留学生を採用したいと考えている方はぜひお問合せください

(※入国管理局からあらかじめ「資格外活動の許可」を得ている人に限り、週28時間以内の範囲でアルバイトが可能)

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中国人の就活事情

①就業市場の激化

コロナ禍以降の中国国内は就活氷河期を迎えており、中国の大都市や主要な経済地域では就業市場での競争がとても激しいです。
その原因は新型コロナによって国内の企業が倒産したり、人員削減のためにリストラが行われたりと、雇用先の数が減少してしまったことです。

就職先がみつからなかった当時の学生が大学卒業後に大学院へ進学して、もういちど新卒枠を狙う動きが定石化したこともあり、コロナ禍のあとは毎年大量の新卒者が市場に出てくるため、就職はつねに買い手市場となっています。

そのため現地の学生は差別化のために英語を独学で勉強したり、大学院進学を視野に入れる必要があったりと、大学生活のほとんどを勉強で過ごす必要があるのです。

②大学の学部別の影響

中国の就職活動は日本とはちがい、基本的に大学で学んだことに関係する仕事に就きます。
そのため、とくに工学や情報技術系の学生は引きつづき高い需要があるため、理工系学生が優遇されます。一方で人文科学系の学生は適切な職を探すのが難しく、キャリアの選択肢が制限されることがあります。
とくに文系学部では、日本で就職活動をする際は学部学科は問わないことが多いです。「自分が就きたい仕事に就ける」という観点からも、日本での就職を視野に入れる中国人の学生もいます

まとめ

このように中国の日本人留学生と、現地の中国人大学生は双方でさまざまな課題を抱えています。

わたし自身は実際に中国に留学し、課題を感じながらも、まさに「百聞は一見に如かず」という言葉のとおり、生活していく中で中国人の温かさに触れて中国に対するイメージがガラッと変わりました。

中国は人口が多いがゆえに、いいニュースも悪いニュースも非常に顕著です。ニュースにはならない両国の魅力や課題を母国に伝えることも、日本語を学んでいる中国人留学生・中国語を学んでいる日本人留学生の役目でもあると思います。
さまざまな情報が錯綜している現代、一部の情報や数字に捉われず、ニュースの背景を理解し、情報の取捨選択を行っていくことが必要であると考えます。

執筆:原 なな香

現在中国の大学で4年間正規留学をしており、20241月に卒業予定の学部4年生です。趣味は旅行で昨年の冬には中国の10都市以上を一ヶ月かけて旅行しました。Guidableではインターン生として、2021年の7月からプロモーション業務や新規事業業務を経験してきました。現在は、クライアントマーケ部門に在籍しており、メルマガ配信やコンテンツ作成などに携わっています。