日本のマナーは独特であり、おもてなし文化が根強く息づいています。とくにサービス業では、「明るく」「笑顔で」などが当たり前とされていますが、これは海外ではそうではないこともあります。

本記事では、「外国人労働者が日本のマナーや社会習慣をどの程度理解し、適応しているのか」について調査した結果を紹介します。

調査概要

調査対象:日本でサービス業に従事している外国人労働者(10代〜60代の男女)

調査人数:105人

調査方法:インターネット調査

調査期間:2024年3月28日〜4月24日

調査元:Guidable株式会社

調査対象者の基本属性

※調査対象者の業種「その他」には生活関連サービス業(ハウスキーパーやクリーニング)、フリーランス等が含まれています

外国人労働者が感じる、日本と海外の「ビジネスマナー」の違い

まずはじめに、日本と海外におけるビジネスマナー(態度・礼儀)の違いについての回答をまとめます。

日本のビジネスマナーの「難易度」は普通〜やや難しいと感じる外国人が6割

まず「日本のビジネスマナーについてどう思いますか?(5段階評価)」という質問では、難易度レベルが「普通」と回答した人が最も多く、次いで「やや難しい」と感じる人が多い結果となりました。

※5段階評価(1=とても簡単 〜 5=とても難しい)

全体で見ると難しい側にすこし傾いてはいますが、極端に偏った結果ではないため、日本のビジネスマナーは受け入れ難いものではないということがうかがえます。
一方で、日本のビジネス文化が外国人にとってまったく問題ないレベルであるとは言えないこともわかります。

9割以上の外国人が、就職前に日本のビジネスマナーについて勉強している

「就職活動をするときに、日本のビジネスマナーについて勉強したことを教えてください。(複数選択)」という質問では、外国人労働者の9割以上が、就職活動をする前に何らかの形で日本のビジネスマナーを勉強していることが明らかになりました。
なかでも最も多く勉強されているのが「時間の管理」、次いで「敬語の使い方」と回答されました。

この事実から「日本で働くためには日本のマナーに合わせる」という意識が外国人労働者の間で非常に強いことがうかがえます。

海外と比べて、日本のビジネスマナーは形式的と感じられる側面がある

「出身国と日本のビジネスマナー(態度・礼儀)で違いを感じたことを教えてください。 (自由記述)」という質問に対しての、代表的な回答を紹介します。

  • 「日本のビジネスマナーは形式的で、しっかりと規制されていると思う」
  • 「時間に対する意識が高い」
  • 「(母国には)敬語がありません」
  • 「私の国でも目上の人には正式な言葉遣いをしますが、厳格ではなく友好的なコミュニケーションが好まれます」
  • 「日本人は勤勉で礼儀正しい人が多いが、フォーマルすぎる」
  • 「母国ではもっと直接的に発言します」
  • 「日本人は自分の責任ではなくても顧客をサポートする」

「形式的」「厳格」というキーワードが目立ち、日本人の多くがマニュアルやルールに沿って仕事を進めており、それを特徴的だと感じる外国人が多いことがわかりました。

日本と他の国のビジネスマナーには大きな違いがあり、それぞれが異なる文化や考え方に根ざしています。
外国人労働者が「日本のビジネスマナーに合わせる」ことを意識していたとしても、働き始めた瞬間に日本人と同様にすることは難しいという点は理解しなければなりません。

サービス業に従事する外国人の労働スタイル

続いて、サービス業における外国人労働者の「働きかた」やその結果として「褒められたこと」「指摘されたこと」についてまとめます。

サービス業に欠かせない「明るい挨拶」や「笑顔」は6割以上の外国人が実践

「仕事中に意識していることを教えてください。(複数選択)」という質問では、6割以上の外国人が「明るい挨拶」「笑顔」「話し方・言葉遣い」を選択しました。
一方、選択が最も少なかったのは「私語・雑談」次いで「他のスタッフの表情・行動」となりました。

「明るい挨拶」「笑顔」「話し方・言葉遣い」は、日本のサービス業において顧客の印象を左右する「接客の5大要素」にも含まれる重要なポイントです。
第一印象に影響を与えることが大きいこの3つのポイントを6割以上の外国人が意識して働いているということは、日本企業が大切にしている「顧客との良好な関係構築」を理解し、積極的に取り組んでいることを示しています。

一方で「私語・雑談」に対する意識があまり高くないこともわかります。これは、外国人がコミュニケーションを重視しており、雑談を通じて人間関係を構築しようとする傾向があることが原因と考えられます。
このような場面に遭遇した場合は、あからさまに否定するのではなく「適切な状況やタイミングでコミュニケーションを取ること」「雑談が業務に影響を与えないようにすること」を配慮することが日本のマナーであると伝えられると良いでしょう。

「日本」で働くことを選んだ外国人は、勤勉な割合が高い

「仕事をしていて喜ばれた(褒められた)ことはありますか?(単一選択)」という質問では、8割近い外国人が「喜ばれた(褒められた)ことがある」と回答しました。


「具体的にどのように喜ばれ(褒められ)ましたか?(自由記述)」という質問に対しての、代表的な回答を紹介します。

  • 「いつも一生懸命で失敗しない」
  • 「前向きで、熱心に働いてくれる」
  • 「いつも笑顔で誰にでも挨拶すること、前向きな姿勢、勤勉であることを褒められました」
  • 「上司から『教え方が上手い』と言われた」
  • 「一定のエチケットを守った行動に感謝された」
  • 「仕事早い事、いつも明るくて元気に見える事、他より行動力高い事(を褒められた)」
  • 「英語、インド語、ネパール語、チベット語、タガログ語が話せる事に対して毎回褒めていただいております」
  • 「いつも真面目に働いて、間違いから学ぶ能力が素晴らしい」
  • 「日本語上手いし発音もいいと褒められた」
  • 「前より 日本語 よく話せると言った(日本語レベルの向上を褒められた)」

これらの回答から、日本で働く外国人は「真面目」「前向き」といった仕事に対して真摯に取り組む姿が周囲から高く評価されているとわかります。
また外国人の持つ多言語スキルやコミュニケーション能力も優れたものであり、日本人よりも優れたスキルを持つ外国人は少なくないと言えます。

外国人の「時間」に対する考えは、文化の違いでありルーズではない

「仕事をしていてビジネスマナー(態度・礼儀)について指摘されたことはありますか?(単一選択)」という質問では、約4割の外国人が何らかの指摘をされたことがあると回答しました。

「具体的にどのような指摘をされましたか?(自由記述)」という質問に対しての、代表的な回答を紹介します。

  • 「時間」
  • 「時間厳守」
  • 「時間管理」
  • 「もっと効率的に」
  • 「4時間運転した後、30分は休憩を取ることを遵守(してほしいと言われた)」
  • 「(話し方が)直接的すぎる」
  • 「仕事のスピードが遅い」
  • 「上司への電話の仕方」
  • 「無意識に敬語を使っていないことがある(と言われた)」

圧倒的に「時間」に関する内容が多い結果となりました。
日本のビジネス文化では時間厳守が重要視されていますが、「仕事のスピード」だけでなく「休憩時間を十分に取っていない」ことに対する指摘もあります。
真面目すぎるあまり「過度な丁寧さ」や「休息不足」について指摘されたケースは少なくないようです。

さいごに

今回のアンケートでは「日本に暮らしているあいだは、日本のマナーに合わせて生活したい」といったポジティブな回答が多く見受けられました。
最後に回答者からの「日本での生活とマナー」に関するコメントを紹介します。

  • 「日本のマナーや生活が好きです、自分自身を向上させるのに本当に役立つからです。」
  • 「ことわざにあるように『ローマにいるときはローマ人と同じことをしなさい』(あなたが住んでいる場所の習慣を尊重する)というのが正しいと思う」
  • 「日本のマナーに従って生活することで、その国の文化をより深く理解できるようになります。」
  • 「外国(日本)に住む場合、平和的に生活し、働くために適切なマナーとルールに従うのは正しいことです。」
  • 「優れたビジネスマナーは昇進に必要です。責任感を感じています。」
  • 「私は日本にいて、ほとんどの顧客は日本人なので、適応する必要があります。」

多くの外国人は「日本社会への適応」や「自己向上」を目指し、責任感を持って生活しています。
日本人が彼らの日々の努力を理解し、受け入れや支援を通して共に成長していくことにより、今後の社会はより豊かになっていきます。

優秀な人材を採用・育成したいと考えている方は、この機会にぜひ「外国人採用」を検討してみてはいかがでしょうか。