「経済効果」とは、あるできごとが国や地域にどれだけの経済的な利益をもたらすかを表す言葉です。近年では日本で生活する外国人が増えてきていますが、彼らは日本経済にどんな影響を与えているのでしょうか?

この記事では外国人労働者が日本経済に、どんな影響を与えるのかについてわかりやすく説明いたします。

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日本の「外国人労働者の受け入れ」実態は?

日本における在留外国人数の推移のグラフ

引用:出入国在留管理庁

出入国在留管理庁によると、2023年末には日本に住む外国人の数が341万人に達し、毎年その数は増えつづけています。

日本で働く外国人(アルバイトを含む)の数は、国内の派遣労働者をすでに超えており、日本経済において重要な存在となっています。

これまで日本では、外国人が単純労働を目的に滞在することは基本的に認められていませんでした。
しかし出生率の低下や高齢化により、日本が深刻な人手不足が起こる可能性が高いことは広く知られています。とくに介護や飲食業、運輸業や製造業などの特定の分野では、いま以上に深刻な人手不足が心配されています。

このような日本経済の課題を解決するために、外国人労働者を受け入れ、単純労働も含めて人手不足を補うという流れが強まっています。

参考:出入国在留管理庁 令和5年末現在における在留外国人数について

外国人労働者の受け入れがもたらす経済的効果は?

外国人労働者の受け入れによる経済効果3種類を説明する画像

ここからは外国人労働者を受け入れることが、日本経済にもたらすいい影響について解説します。

GDP(国内総生産)との関係性

GDPと外国人労働者との相関関係グラフの画像

引用:参議院

GDPとは「一定期間に国内で生み出されたお金の総額」のことで、景気がいいかどうかを判断するための指標です。
日本では多くの企業が人手不足で困っており、生産活動がうまく進まないことがあります。しかし外国人労働者という働き手が増えることで、人手不足が解消されます。
これによって企業の生産性が高まり、さらには外国の文化を取り入れた新しい市場が生まれる可能性もあります。

また外国人労働者が日本で生活するために商品やサービスを購入することで、国内の消費活動はさらに活発になります。

外国人労働者が増えるとGDPが増加するというわけではないですが、労働力不足の日本では外国人労働者は大きな人的リソースとなっており、GDP増加を支えている1つの要因ともいえます。

国内産業の維持につながる

日本では働き手が足りないことで、倒産する会社が増えています。
高齢化が進んでいる地域では、介護、外食、宿泊業など、ひとびとに必要なサービスを提供する業界で労働力不足が起きています。

「特定技能」などの就労ビザを持つ外国人労働者は、こうした人手不足が深刻な業界で即戦力として活躍します。
また一部の就労ビザでは、家族を日本に呼び寄せていっしょに暮らすことができるため、長期間、安定した働き手として活躍することが期待されています。

これにより、企業は安定したサービスを提供しつづけることができ、消費者も安心してそのサービスを利用できます。
その結果として地域経済が強化され、日本の産業全体の存続が可能となるでしょう。

特に地方の人口減少が進んでいる地域では、外国人労働者は人手不足の解決策として大きな役割をになっています。

産業構造が進化する

外国人の高度人材の導入は、日本の産業に多くの変化をもたらします。

とくに、日本が遅れを取っているAIやバイオテクノロジーといった先端分野では、外国人が持つ専門的なスキルが、企業の技術革新や新製品の開発を加速させます。
さらに、外国人の知識や経験を活用することで、日本人の視点では見落としがちな新たなビジネスチャンスが生まれ、既存の産業も進化します。

外国人高度人材の国際的なネットワークや言語能力は、日本企業のグローバル展開を支援し、海外市場への進出を加速させる可能性があります。

受け入れ拡大に向けた具体的な施策は?

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた具体的な施策を説明する画像

前述のように人手不足が深刻化するなかで、日本はこれまで拒否してきた単純労働者の受け入れに大きく方向転換しました。
最近では、飲食店での接客や宿泊施設の清掃、土木や農業など、さまざまな分野で多くの外国人が働くようになり、実際に彼らが日本の労働市場を支えています。

以前は単純労働をおこなう外国人といえば、留学生が資格外活動として働くイメージが強かったですが、現在では日本政府が「就労系の在留資格」の創設や改正に力を入れています。
とくに注目されるのが、「特定技能」と「技能実習」という2つの在留資格です。

これらの資格はほかの就労ビザとは異なり、単純労働を含む仕事に従事できるのが特徴です。

ここからは外国人労働者をより多く受け入れることができる、この2つの在留資格について解説していきます。

「特定技能」の改正

特定産業12分野の画像

引用:出入国在留管理庁 特定技能ガイドブック

日本の少子高齢化による人手不足を補うために、2019年4月に創設された制度(在留資格)です。特定産業分野(2024年1月時点で12分野)で即戦力となる外国人材を受け入れることを目的としています。

特定技能は1号と2号に分かれ、1号は基本的な知識と技術を持つ外国人が対象で、在留期間は通算5年です。
一方、2号は熟練した技能を持つ外国人が対象で、在留期間に上限はなく、家族の帯同も可能です。
1号も2号も、持っている知識や技術を生かす幅広い業務の一環として、単純労働を含むことができます。

特定技能に関する今後の動きとして、特定産業分野に「自動車運送業」「鉄道業」「林業」「木材産業」が追加される予定です。
また、既存の分野でも対象業務の追加が検討されています。

これにより、さらに多くの外国人が日本で働けるようになり、これまで外国人を受け入れられなかった企業でも、外国人労働者を雇用する機会が創出されます。

在留資格「特定技能」についてぜんぶわかる|制度の概要・受け入れや支援の方法・関連機関の役割をまるっと解説

「技能実習」の廃止と「育成就労」の創設

現行の「技能実習」は、開発途上国などの外国人を一定期間受け入れ、日本で技術を学んでもらう制度です。
技能実習を受け入れられる職種は主に90職種165作業です。実習期間によって、第1号(1年目)、第2号(2〜3年目)、第3号(4〜5年目)に分かれます。

現在の技能実習では、実習の範囲を超えて単純労働を行うことは原則として禁止されています。
しかし、今後はより幅広い業務に従事できるように、技能実習制度を見直し、新たな在留資格「育成就労」が創設されることになりました。

育成就労制度では、「国内の人手不足対策のための人材確保・育成」を目的としています。この制度は2027年までに施行される予定で、育成する人材が日本で働き続けることを見据え、在留期間中に特定技能への移行をしやすくする方針です。
そのため、特定技能のように業務の一環として単純労働を含むことができるようになる予定です。

【最新情報】新制度「育成就労」について|技能実習制度との違い、何が変わるのか、今後の動きを詳しく解説

さいごに

多くの産業で人手不足が深刻になっているなかで、外国人労働者は日本経済にとって非常に重要です。
とくに今後の日本の就労ビザで存在感が増すであろう「特定技能制度」を使って受け入れた外国人は、必要なスキルや知識を持っているため、すぐに役立つ貴重な人材となります。

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