外国人雇用のメリットとは? 企業成長につながる5つの理由
2024年10月末の時点で、日本で働く外国人労働者は約230万人にのぼり、前年比で約25万人増加しました。これにより、過去最多を更新しています。
人手不足が深刻になるなか、外国人を雇うことは単なる「労働力の確保」にとどまりません。視点を変えれば、企業の競争力を高める大きなチャンスにもなり得ます。
この記事では、よくある誤解やリスクへの備えもふまえながら、外国人雇用の具体的なメリットと、成功につなげるためのポイントを紹介していきます。
外国人雇用の5大メリット

人手不足を補うだけでなく、企業に新しい価値や成長のきっかけをもたらしてくれるのが、外国人雇用の大きな魅力です。
ここでは、実際の職場で感じられている代表的なメリットを5つに分けて、具体例とともに紹介します。
1. 慢性的な人手不足をカバーできる
多くの業界で「人が足りない」状態が続いており、外国人の雇用はその対策として注目されています。
とくに地方の製造業・建設業・外食や介護の現場では、国内の若い人たちだけではまかないきれない仕事も多く、外国人の採用によって現場が安定したという声が多く寄せられています。
実際、厚生労働省の調べによると、外国人労働者の増加にともなって受け入れをおこなう事業所数も年々増え、現在では約34万か所に達しています。背景には、留学生や技能実習修了者の活用、専門職ビザの拡大、在留資格の多様化といった制度面の変化も影響していると考えられます。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
2. 多言語対応・インバウンド接客で活躍できる

外国人観光客や在日外国人への接客では、多言語が話せる人材の存在がとても心強く感じられます。とくに接客業や小売、ホテルなどの業界では、英語や中国語、ベトナム語、ネパール語などを使えるスタッフがいることで、サービスの安心感や質が大きく向上します。
たとえばあるアパレル企業では、外国人スタッフがSNS発信や接客を通して自国の観光客を呼び込み、ECサイトの売上アップにもつながったという実例があります。
このように、店舗とネットの両方で効果が広がる点も、多言語対応の大きなメリットといえるでしょう。
3. 海外展開・新市場開拓の起点になる

外国人社員は、自分の出身国についての文化や買い物の習慣、消費者の好みなどをよく理解しています。そのため、海外進出を目指す企業にとっては、まさに橋渡しのような存在になってくれます。
実際に、日本で活躍していた外国人社員が、のちに現地法人の立ち上げや営業サポートを担うケースも増えてきました。
さらに、国際的な視点を持つ社員が社内にいることで、商品づくりやPRのアイデアに幅が出て、日本国内でも他社と差をつけやすくなるというプラスの効果もあります。
4. 助成金や制度の活用で採用コストをおさえられる

外国人を採用するときや、働きやすい環境を整えるためには、国や自治体のサポート制度が活用できます。たとえば、厚生労働省の「外国人労働者就労環境整備助成金」では、研修費やマニュアル作成、多言語対応システムの導入などに対して、最大72万円が支給されるしくみです。
また、外国人も雇用保険や労災保険の対象となるため、待遇や保険制度がしっかり整っていれば、日本人と同じように働いてもらうことができます。
このような制度をうまく活用すれば、長く働いてくれる戦力として育てやすくなるはずです。
5. 組織の活性化と人材育成の促進

文化や考え方のちがう人が職場に入ると、新しい視点や気づきが生まれ、チーム全体の視野が広がっていきます。とくに「日本のやり方にとらわれていない柔軟な考え方」が、ポジティブに受け入れられる場面も増えてきました。
さらに、しっかりと育成やサポートを続けることで、外国人社員が職場に定着し、将来的にはリーダーや海外との連携担当として活躍することも期待できます。
実際に「若手が育たない」と悩んでいた企業が、外国人社員を長期的に育てたことで組織の安定につながった例もあるのです。
メリットを最大化する定着・育成施策
外国人を採用しても、すぐに辞めてしまったり、力を発揮できないまま退職してしまったりすることがあります。だからこそ、企業にとって大切なのは「採用したあと、どう育て、職場に定着してもらうか」です。
ここでは、外国人社員が長く働き、しっかり活躍できるようにするための具体的な取り組みを紹介します。
日本語教育と業務スキルの向上を支援する
定着のための土台となるのは、日本語力と仕事に必要なスキルを身につけるためのサポートです。とくに現場で働く外国人にとって、日本語で書かれたマニュアルや指示を正しく理解する力は、仕事の成果にも大きく影響します。
多くの企業では、次のような支援が取り入れられています。
- 多言語で書かれたマニュアルや動画の提供
- 日本語能力試験(JLPT)対策講座や学習アプリのサポート
- 業務時間内に日本語学校へ通える制度
- 専門用語をわかりやすくまとめた用語集の配布
こうした学びの環境を整えることで、言葉の壁によるミスや不安が減り、結果的に離職の防止にもつながります。
メンター制度と社内コミュニケーションを工夫する

文化や言葉の違いから「質問しにくい」「職場にとけこめない」と感じてしまう外国人も少なくありません。そんなときに助けになるのが、日本人のメンターや、同じ国から来た先輩の存在です。
定着に成功している企業では、次のような工夫が取り入れられています。
- 入社後3か月〜半年は、先輩社員が専属の相談役になる
- 勤怠管理や申請方法などを多言語でまとめた社内ポータルを整備
- 社内チャット(LINEやSlackなど)で気軽に相談できる仕組みをつくる
とくにチャットやポータルのような「話しかけなくても相談できるツール」があると、聞きたいことがあっても声をかけにくい…という気持ちのハードルを下げる効果があります。
宗教・文化への配慮や柔軟な勤務環境を整える
長く働いてもらうためには、その人の文化や宗教を尊重する姿勢も大切です。たとえば、以下のような対応をしている企業があります。
- ムスリム社員向けに礼拝スペースを設置
- ラマダン期間中の勤務時間を調整
- 菜食主義者にも対応できる社員食堂のメニューを導入
こうした取り組みは、あまり大きな費用をかけずに始められるうえに「自分たちの文化を理解しようとしてくれている」と感じてもらえるため、信頼関係づくりにもつながります。
また、子育てや介護など家庭の事情がある場合には、在宅勤務や時短勤務を柔軟に取り入れることも、働き続けてもらううえで大切なサポートになります。
外国人同士の「つながり」を育てる
職場以外の場所でも交流できる相手がいると、心の安定につながります。多くの企業では、外国人同士がつながりやすくなるよう、次のような機会をつくっています。
- 出身国ごとの文化紹介や料理会などのイベントを開催
- 地域の国際交流センターと連携して、日本語学習や相談会を紹介
- 入社したばかりの外国人社員をつなぐ「同期ランチ」を実施
「職場だけが頼れる場所」になってしまうと、ちょっとした悩みでも大きなストレスになりがちです。仕事以外の場所でも安心できる仲間がいることは、長く働いていくうえでの大きな支えになります。
外国人雇用の課題と、企業ができる備え

外国人を雇うことには多くのメリットがありますが、その一方で、あらかじめ知っておきたいリスクや注意点もあります。ここでは、実際の職場で企業が直面しやすい課題と、それに対する具体的な対策を紹介します。
採用したあとで「こんなはずじゃなかった」とならないように、制度・文化・実務の3つの視点から、しっかり理解を深めておきましょう。
手続きの多さと法令順守への対応
外国人を雇うときは、日本人とちがう手続きや法的なルールに対応しなければなりません。次のようなことは、すべて法律で義務づけられており、対応を怠ると企業側が処罰を受ける場合もあります。
- 就労可能な在留資格かどうかを事前に確認する
- 在留カードの期限を管理し、必要に応じて更新を支援する
- ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出する
- 社会保険や雇用保険などの加入手続きをきちんとおこなう
対策として有効なこと
- 採用時に在留資格を確認するためのチェックリストをつくる
- 在留カードの更新期限を管理するしくみを社内に整える
- 行政書士や社会保険労務士など、専門家と連携する
- 登録支援機関などの専門サービスに業務を委託する
制度のルールを正しく知り、それをチームで共有しておくことが大切です。そうすることで、確認ミスやルール違反を防ぐことにつながります。
文化・価値観の違いによるすれ違い
日本人にとっては当たり前の仕事の考え方やマナーが、外国人にそのまま伝わるとは限りません。たとえば、次のような違いから、職場で誤解や戸惑いが生じることがあります。
- 時間の感覚や、報連相の考え方の違い
- 上司への敬意の示し方が国によって異なる
- 担当外の業務でも「察して動く」日本流が伝わりづらい
対策として有効なこと
- 入社前後に文化理解のための研修をおこなう
- 社内ルールを言葉で明確に伝える
「空気を読む」「言わなくてもわかるはず」といった社風は、外国人にとっては戸惑いの連続です。あらかじめ具体的なルールや行動の基準を言葉にして伝えることで、価値観のずれを減らすことができます。
日本語の壁とコミュニケーションのむずかしさ
言葉の壁は、企業にとっても大きなハードルです。とくに現場での作業や接客などでは、細かい指示やお客様とのやりとりが必要になる場面も多く、言語面での不安がつきまといます。
たとえば、こんな悩みがよく聞かれます。
- 作業や安全の指示がうまく伝わらず、時間がかかる
- 接客に時間がかかってしまい、まわりに負担がかかる
- トラブルの説明がうまくできず、対応が遅れてしまう
対策として有効なこと
- 図や写真を使ったわかりやすいマニュアルを用意する
- 翻訳アプリやタブレットなどのICTツールを活用する
- 社内に簡単な通訳ができるスタッフを配置する
- 重要な書類や研修資料を母国語でも用意しておく
「すべてを完璧な日本語で伝えること」をゴールにするよりも、お互いにわかり合うための方法を増やしていくほうが、現実的で効果的です。
雇用前後に押さえたい3つの注意点
外国人を雇うときには、法律や制度の違いだけでなく「働く環境」や「採用の判断方法」「定着を支える工夫」など、いくつか気をつけたいポイントがあります。
ここでは、採用の前後で企業側がしっかり確認しておきたい3つのポイントを紹介します。
差別のない採用・評価を徹底する
国籍・宗教・名前・出身国といった理由で、採用の合否を決めたり、待遇に差をつけたりすることは、日本の法律でも禁止されています。たとえば厚生労働省が示している「公正な採用選考」でも、国籍や性別、宗教などを理由に不利益を与えることは認められていません。
実務で注意したいポイント
- 在留カードを見せてもらうのは「採用内定後」にする
- 国籍欄のある履歴書は使わず、氏名や学歴、職歴などをもとに選考する
- 評価制度や昇格の条件は、外国人にもわかりやすく、できるだけ明確に伝える
「不公平かもしれない」と思われる制度や運用は、職場に不信感を生むおそれがあります。できるだけ透明性のある仕組みを意識しながら、安心して働ける環境を整えていきましょう。
生活支援や地域との連携も視野に入れる
言葉や文化の違いだけでなく、住まいや生活面の不安が理由で、せっかく採用した外国人が早く辞めてしまうケースも見られます。とくに日本での生活が初めての人にとっては、役所での手続きや病院の利用など、日常のことも大きなハードルに感じられるかもしれません。
企業ができるサポートの例
- 住まい探しを手伝ったり、不動産会社を紹介したりする
- 住民登録や国民健康保険の加入など、役所の手続きをフォローする
- 地域の国際交流協会など、外国人向けの支援窓口を案内する
- 相談ができる窓口を社内に用意する(母国語対応があると理想的)
中小企業では、自治体の国際課やNPOと連携して生活支援の一部を外部に任せるしくみをつくっておくと、無理なく対応しやすくなります。
支援の体制が整っていれば、外国人にとって安心できる職場につながっていきます。
在留資格の確認と期限管理は必須
外国人を雇うときに、もっとも大切なのが「その人が持っている在留資格で、希望する仕事ができるかどうか」をしっかり確認することです。もし認められていない業務をさせた場合、企業側が法律違反になる可能性もあるため、細かくチェックしておく必要があります。
最低限おこなっておきたい確認
- 履歴書などに在留資格の種類を記載してもらい、面接でも口頭で確認する
- 在留カードにある「在留資格」「就労制限の有無」「期限」をしっかり確認する
- 雇用が決まったら、14日以内にハローワークへ「外国人雇用状況届出」を提出する
- 在留期限が近づいてきたら、本人と一緒に更新の準備を進める
最近では、在留カードの期限を社内のシステムでまとめて管理したり、期限が近づいたときに自動で通知するツールを使う企業も増えてきました。
「この人は働けるのかどうか」という確認は、ただの採用判断ではありません。企業にとっての大きな責任にも関わるため、念には念を入れて確認することが大切です。
さいごに
外国人を「労働力」としてではなく、「一緒に働く仲間」として迎え入れられるかどうかが、これからの企業に求められる姿勢です。
文化や価値観のちがいを認め合いながら、それぞれの強みを活かせる職場づくりに取り組むことが、企業の成長と社員の満足の両方を育てていく鍵になります。
人手不足を補うためだけでなく、組織の多様性を広げたり、海外につながる新たなチャンスを手に入れたりするためにも「外国人採用」という選択肢を前向きに考えてみてはいかがでしょうか。
どんな採用方法が自社に合っているか、悩んでいませんか?
「外国人を採用したいけれど、どの職種から始めればいいのかわからない」「本当に自社に合うのか不安がある」という声に応えるため、ガイダブルジョブズでは、実際に外国人採用を導入した企業の成功事例を紹介しています。
さまざまな業種や企業規模の事例をまとめており、自社と似たケースを参考にしやすい内容になっています。
どんなサポートを受けて採用に取り組んだのか、採用後にどのような場面で活躍しているのかなど、実務に役立つ情報をわかりやすく整理しました。
初めての外国人採用に不安がある方こそ、まずは資料を読んでヒントを見つけてみてください。


