「就労不可」の在留カードとは|アルバイトOK?雇用前に知るべき注意点まとめ
外国人を採用する際、在留カードに「就労不可」と記載されているのを見て、「この人は雇えないのか?」と困惑された経験はありませんか? 実は「就労不可」には複数のパターンがあり、条件次第では雇用できるケースもあります。しかし、ルールを正しく理解せずに雇用してしまうと、企業側も不法就労助長罪として罰せられる可能性があります。 本記事では、就労不可の在留カードの見分け方と、雇用時に確認すべきポイントを詳しく解説します。
目次
在留カードってなに?

画像引用:在留カードとは? | 出入国在留管理庁
在留カードとは、中長期にわたって日本での滞在を許可された外国人に交付されるカードのことです。
原則として、在留カードを保有していない外国人は、日本での長期滞在が認められていません。
外国人を雇用する際はまず、在留カードの有効期限と在留資格を確認しましょう。
「就労不可」には2つのパターンがある
結論から言うと、在留カードの「就労不可」には、大きく分けて2つのケースがあります。
パターン1:原則として就労が認められない在留資格
以下の在留資格は、本来の活動目的が就労ではないため、原則として働くことができません:
- 文化活動
- 短期滞在
- 留学
- 研修
- 家族滞在
ただし、「留学」「家族滞在」については、資格外活動許可を得ることでアルバイト(週28時間以内)として雇用できます。
パターン2:完全に就労が禁止されている在留資格
以下の在留資格では、資格外活動許可を取得しても就労はできません:
- 短期滞在(観光目的など)
- 研修
就労可能な在留資格とは?
日本で就労可能な在留資格は、以下の19種類です。
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習
詳細な諸条件などについては、以下の記事をご確認ください。
ここでは、在留資格ごとにどのような仕事に就けるか、一部をピックアップして紹介します。
在留資格 | 職種 |
| 技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、通訳、翻訳、デザイナー、営業などの専門性の高い仕事 |
| 企業内転勤 | 外国の企業から日本の関連企業への転勤者 |
| 経営・管理 | 日本で事業を営む、または会社を設立・運営するなどの仕事 |
| 技能 | 調理師、スポーツトレーナー、外国料理のシェフなど特定の技能が必要な仕事 |
| 特定技能 | 特定の14業種(介護、建設、造船・舶用工業、農業、漁業など)で働くことができる。特定技能1号と2号がある |
| 高度専門職 | 高度な専門知識や技術を持つ人材に対するポイント制の資格。ポイントが高いほど優遇される |
| 技能実習 | 発展途上国の人材が日本で技能を習得し、母国の発展に寄与することを目的とした制度(この制度は廃止され、「育成就労」という新しい制度に切り替わることが決まっています) |
| 家族滞在 | 働くことができる在留資格を持つ人の家族(配偶者や子供)に与えられる資格で、資格外活動許可を得ることでアルバイトが可能になる |
| 特定活動 | 上記に該当しない特定の活動を行うための資格。例としてワーキングホリデーや企業のインターンシップなど |
これらの在留資格を取得するためには、資格ごとに定められた要件を満たす必要があります。
就労制限のある在留資格とは?

先にあげた就労可能な在留資格19種類の中でも、ほとんどの在留資格には就労の制限があります。
むしろ以下の4種類の在留資格以外はすべて制限がある、といえます。
- 永住者
- 日本人の配偶者など
- 永住者の配偶者など
- 定住者
これらを持つ在留外国人は一般に「身分系」と呼ばれており、就労制限なくほとんど日本人と同じような仕事に就くことができます。
ちなみに永住権を取得できるのは、基本的には引き続き10年間日本で暮らしていて、素行が善良、独立した生計を営むに足りる資産または技能を持っている人が対象です。
詳しくは以下の記事を読んでみましょう。
アルバイト雇用について
資格外活動許可があれば就労可能
「就労不可」の在留資格でも、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を取得すれば、アルバイトとして雇用できます。
ただし、以下の条件を守る必要があります。
勤務時間の制限
– 原則:週28時間以内
– 長期休暇中:1日8時間、週40時間以内
– 複数アルバイトの場合:すべての勤務時間を合算して週28時間以内
例えば、A店で週15時間、B店で週15時間働く場合、合計30時間となり違法です。
禁止業種
資格外活動許可があっても、以下の業種では就労できません:
– 風俗営業関連(キャバクラ、ホストクラブ、パチンコ店など)
– 店舗型性風俗特殊営業
– 無店舗型性風俗特殊営業
– 映像送信型性風俗特殊営業
休学中の扱い
留学生が休学中の場合、資格外活動許可があってもアルバイトは認められません。
許可を得る前に働くのは違法
資格外活動許可証が交付される前にアルバイトを始めることは違法です。
必ず許可を得てから勤務を開始させてください。
正社員雇用の可否について
就労不可の在留資格者を正社員として雇用できるのか?
結論:在留資格の変更が必要
「留学」や「家族滞在」などの就労不可の在留資格を持つ外国人を
正社員として雇用したい場合、在留資格の変更手続きが必須です。
在留資格変更の流れ
1. 該当する就労可能な在留資格を確認
例:大学卒業後の留学生 → 「技術・人文知識・国際業務」
2. 在留資格変更許可申請
出入国在留管理庁に申請(審査期間:通常1〜3ヶ月)
3. 許可後に雇用契約を締結
在留資格変更が許可される前に雇用することは違法です
よくあるケース
留学生を卒業後に正社員採用する場合
– 卒業前に「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更申請
– 許可が下りてから入社日を設定
– 学んだ専門知識を活かせる職種であることが条件
家族滞在から正社員になる場合
– 日本人配偶者等の場合:「日本人の配偶者等」へ変更(就労制限なし)
– それ以外:該当する就労可能な在留資格へ変更が必要
就労不可の在留カードの外国人を雇わないために

在留資格は一見すると複雑にみえますが、いくつかのポイントを抑えておけば就労不可の外国人を採用することは防げます。ここでは外国人アルバイトを採用する際の注意点をまとめました。上記で述べてきた内容と重なる部分もありますが、これらのポイントをしっかりと頭に入れておきましょう。
1. 在留カードの確認
在留カードの表面には在留資格が、裏面には「資格外活動許可」の有無が記載されています。 「就労不可」の在留資格でも、裏面に資格外活動許可の記載があれば、 条件付きでアルバイトとして雇用できます。
【確認すべきポイント】
✓ 表面:在留資格の種類、有効期限
✓ 裏面:「許可:原資格活動の遂行を妨げない範囲内」などの記載
2. 在留カードの有効性確認
在留カードの有効期限が切れていないことを確認します。
また、在留カードの更新が行われている場合、最新の情報を反映したカードを確認することが重要です。
3. 在留資格認定証明書の確認
必要に応じて、外国人労働者が持っている在留資格認定証明書を確認します。これは在留カードの発行前に出入国在留管理庁が発行する書類で、在留資格とその条件を詳細に示しています。
4. 出入国在留管理庁への確認
出入国在留管理庁のオンラインシステム(出入国在留管理庁の在留カード等読取アプリケーションシステム)を利用して、在留カードの有効性を確認することができます。これによりカードの真偽や在留資格の詳細を確認できます。
5. 資格外活動許可の確認
就労が制限されている在留資格を持つ外国人(例:留学生や家族滞在者)が「資格外活動許可」を取得している場合、その許可内容と範囲を確認します。
6. 定期的な確認
雇用している外国人労働者の在留資格や在留カードの有効期限を定期的に確認することで、不正な就労を未然に防ぐことができます。特に在留カードの更新時期には注意を払いましょう。
7. 従業員教育
人事担当者や採用担当者に対して、外国人の在留資格確認手順や法令遵守の重要性について教育を行います。これにより、ミスを防ぐことができます。
8. 法律専門家への相談
外国人の在留資格に関して不明点がある場合、出入国在留管理庁や専門の弁護士に相談することが有効です。専門家の助言を受けることで、法令違反を防ぐことができます。
よくある質問
Q1. 「就労不可」と書かれた在留カードを持つ外国人は、絶対に雇えないのですか?
A. いいえ、ケースによって異なります。
「留学」「家族滞在」の在留資格で資格外活動許可を取得していれば、アルバイト・パートとして週28時間以内で雇用できます。ただし、正社員として雇用する場合は在留資格の変更が必要です。一方、「短期滞在」や「研修」の場合は、いかなる形でも雇用できません。
Q2. 留学生を卒業後に正社員として採用したいのですが、どうすればよいですか?
A. 卒業前に在留資格を「技術・人文知識・国際業務」などの就労可能な資格へ変更する必要があります。
審査には通常1〜3ヶ月かかるため、卒業の3〜4ヶ月前には申請を開始することをお勧めします。在留資格変更が許可される前に雇用契約を結ぶことは違法ですので、許可後に入社日を設定しましょう。
Q3. 資格外活動許可はどこを見れば確認できますか?
A. 在留カードの裏面に記載されています。
「許可:原資格活動の遂行を妨げない範囲内」などの記載があれば、資格外活動許可を取得しています。表面だけでなく、必ず裏面も確認してください。
Q4. 留学生が複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、どうカウントすればよいですか?
A. すべてのアルバイト先での勤務時間を合算して、週28時間以内に収める必要があります。
例えば、自社で週15時間、他社で週15時間働いている場合、合計30時間となり違法です。採用時に他でアルバイトをしているか確認し、勤務時間の調整が必要です。
Q5. 長期休暇中は勤務時間を増やせると聞きましたが、いつからいつまでが対象ですか?
A. 大学や専門学校が定める夏季休暇、冬季休暇、春季休暇などの長期休業期間中は、1日8時間、週40時間まで勤務できます。
ただし、休暇期間は学校によって異なるため、本人に学校の休暇証明書や在学証明書を提出してもらうと確実です。
Q6. 風俗営業が禁止されているとのことですが、具体的にどのような業種が該当しますか?
A. キャバクラ、ホストクラブ、スナック、パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター(風俗営業許可を受けている場合)などが該当します。
たとえ接客をしない清掃スタッフや厨房スタッフであっても、これらの店舗での勤務は認められません。
Q7. もし間違って就労不可の外国人を雇ってしまった場合、どうなりますか?
A. 企業側は不法就労助長罪として、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。
「知らなかった」「確認を忘れていた」では済まされません。違反に気づいた時点で速やかに雇用を停止し、出入国在留管理庁や専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
外国人の雇用において、在留カードの確認は避けて通れない業務です。特に「就労不可」と記載された在留資格については、「本当に雇えないのか」「どこまでなら大丈夫なのか」と判断に迷われることも多いでしょう。
大切なのは、アルバイトとして雇うのか、正社員として雇うのかで対応が大きく異なることです。アルバイトなら資格外活動許可の確認、正社員なら在留資格の変更が必要と、まずはこの基本を押さえておきましょう。
もし判断に迷ったときは、一人で抱え込まず、出入国在留管理庁の「外国人在留総合インフォメーションセンター」や社会保険労務士などの専門家に相談してください。相談は無料ですし、確認することで大きなトラブルを未然に防げます。
外国人材と共に働く第一歩は、正しい知識から。この記事が、皆さまの安心できる雇用管理の一助となれば幸いです。

