外国人留学生を日本企業が採用する方法|留学生の就職に対する悩みとサポート方法について解説
日本は慢性的に人手不足に悩まされていて、2030年には341万人の労働者不足になると予想されています。
日本企業は外国人の採用を後回しにできない状況となっていますが、実際のところ外国人採用に踏み切れていない企業は多いです。
幸いなことに日本には外国人留学生が多く、卒業後にそのまま日本で就職を希望する外国人もたくさんいます。
しかしながら、その希望が叶わず帰国を余儀なくされるケースも少なくありません。
本記事では日本での就職にあたって留学生がどんな問題を抱えているのか、また企業としてどのような取り組みができるのかを解説します。
目次
日本に来ている外国人留学生の就職状況と課題
日本の教育機関で学業を修了するために「留学」の在留資格を取得し、日本に入国した外国人のことを「外国人留学生」といいます。
留学生は、大学や専門学校、語学学校などで学ぶことが一般的です。
ここでは、外国人留学生の就職状況と就職活動における課題について解説します。
外国人留学生が日本で就職活動をおこなう割合
外国人留学生総数のうち、卒業を控える年度の留学生は約3割といわれています。
その中で就職を目的として「在留資格の変更申請」をおこなう外国人は約半数、そして実際に申請が許可されるのは申請をおこなった人数の約8割となっています。
仮に現在の外国人留学生数(約30万人)をもとに計算した場合、以下のような概算になります。
- 外国人留学生総数:約30万人
- 卒業を控える留学生:約30万人 × 3割 =90,000人
- 在留資格の変更申請を行う留学生:90,000人 × 半数 =45,000人
- 申請が許可される留学生:45,000人 × 8割 =36,000人
この概算にもとづくと、多くの外国人留学生が日本での就職を目指して在留資格の変更申請を行っているものの、申請が許可されないケースが比較的多いことがわかります。
参考:出入国在留管理庁 令和5年6月末現在における在留外国人数について
参考:独立行政法人日本学生支援機構 外国人留学生進路状況・学位授与状況調査
参考:独立行政法人日本学生支援機構 外国人留学生のための就活ガイド
日本の就職活動は外国人留学生にとって「難題」
卒業を控える外国人留学生のうち、在留資格の変更申請をおこなわない(日本で就職しない)ことを決めた外国人から「日本の就職活動は特殊で、対応が難しい」という声をよく聞きます。
外国人留学生が日本の就職活動でつまづいてしまう内容は、実際の調査結果によると以下が代表的です。
外国人留学生向けの求人が少ないと感じる
日本の求人市場は主に日本語で運営されているため、外国人留学生が求人情報を見つけにくい状況になっています。
本来は外国人も対象となっている場合でも、その求人にピンポイントでアクセスできないことから、求人自体が少ないと感じ断念してしまうことがあります。
日本の就職活動の仕組みがわからない
日本では、ほとんどの学生が同じタイミングで一斉に就職活動を始めます。その反面海外では「欠員が出た」「新しい人材が欲しい」と企業側のタイミングで都度採用をする場合が多いため、学生が就活をする時期も様々です。
卒業前に就活をしない学生も多いため、日本人のように一斉に就職活動を始めることに慣れていない外国人が多いです。
また「内定」という概念は日本の就職活動特有のものです。海外では学生が複数の企業で面接を受け、合格した企業を比較したうえで就職先を決定することがほとんどです。
「内定を辞退することは良くない」という文化のある日本での就職活動は、将来の活躍の幅を狭める可能性があるため、懸念する外国人がいることも事実です。
日本語による適正試験や能力試験が難しい
外国人留学生の中には英語が堪能で、入社すれば活躍が期待できる優秀な学生も少なくありません。
しかしながら日本語で行われるSPIなどの適性試験では、日常会話や読み書きに不自由しないとしても「ビジネスレベルの日本語が必須」とされてはじかれてしまうケースが多く見受けられます。
面接の評価項目が海外と違う
日本の企業は学歴を重要視する傾向があり、特に大手企業では学校名や学位の種類に重点を置くことがあります。一方海外では、採用後に即戦力となることを期待されるので、学歴や学生時代のエピソードよりもどういった成果を出してきたかが重要です。
実力があるにもかかわらず、分かりやすい学歴や資格が重視されることに違和感を感じて就職活動を諦めてしまう外国人留学生も少なくありません。
以上のように日本の就活には独自の文化が多く、留学生の就職を難しくする大きな原因になっています。
参考:独立行政法人日本学生支援機構 外国人留学生のための就活ガイド
外国人留学生が日本で就職するために、企業がサポートするべきこと
外国人留学生が日本でのキャリアを構築できる機会があれば、グローバル社会において必要になる貴重な人材を確保できることになります。
留学生が日本での就職活動で抱える問題を理解し、企業側が歩み寄ることで外国人留学生の採用を加速させましょう。
外国人採用の基準を見直す
外国人採用にあたってビジネス上級レベル以上の日本語能力を求める会社が多いですが、企業の採用基準が高すぎると応募が集まりにくくなります。
ビジネス上級レベルの日本語は「日本語検定1級」に相当しますが、検定合格率は10%を下回っており、取得することは簡単ではありません。
日本人の新入社員と同様のビジネスマナー研修に加え、入社後に実務や研修などで日本語の能力を高めることは十分に可能ですので、入社時の日本語のレベルの基準を下げることを検討してみましょう。
採用基準を「日常会話や読み書きに不自由がない」レベルまで下げれば門戸がぐっと広がります。
採用プロセスのガイダンスをおこなう
外国人留学生がスムーズに求人に応募できるよう、企業側がアドバイスすることも大切です。
例えば採用プロセスが始まる前に、適切な履歴書(レジュメ)や職務経歴書の作成方法についてアドバイスします。これには必要な情報の記入方法やフォーマットの提供、言語の使い方などが含まれます。
また、自社の企業文化や価値観について説明し、外国人留学生が企業に適合するかどうかを本人が見極められるような情報を提供することも重要です。
社内の外国人受け入れ体制を整える
留学生を受け入れるにあたり、社内の体制作りも重要になります。自国ではない国でも安心して働けるようにすることがポイントです。
事務的なサポート
外国人留学生は就職するにあたって業務に適切な在留資格を取得する必要があります。企業担当者が在留資格の申請方法について理解し、必要な書類や手続きについてサポートできるようにしましょう。
また、住居探しや生活環境に関するサポート、他の日本人社員とのコミュニケーションの機会を作ることも外国人が安心して働くうえで重要になります。
こういった受け入れ体制がある場合、外国人留学生に積極的に発信しましょう。
日本語の習得のサポート
外国人留学生が日本で働く上で大きな壁と感じるのが言語の壁です。英語以外を母国語とする学生もたくさんいるため、コミュニケーションを円滑にするためにも日本語習得へのサポートは欠かせません。
日本語教室やオンライン学習の他に、自治体やNPOで主催している教室も積極的に活用しましょう。値段が安く抑えられるので、コスト削減になります。
価値観を共有する
仕事の進め方や価値観は事前にしっかり共有する必要があります。留学生は労働環境はもちろんのこと、文化や価値観も日本とは異なる環境で育ってきています。
例えば日本では空気を読む、察するといった「暗黙の了解」の文化が根強く残っていますが、多くの外国人にはこの文化は通用しません。
日本企業のビジネスで重要な「時間厳守」「集団行動を重んじる」「残業がある」といった点も理解されにくいことが多いので、価値観を共有する努力が必要です。
外国人留学生の採用について詳しくなりましたか?
企業のグローバル化が進み人手不足も問題になっている中で、外国人留学生の採用を積極的に考えなければならない企業は確実に増えています。
グローバル社会に対応し他社に差をつけて成長するためにも、外国人留学生に対するサポートを充実させて優秀な学生の採用をおこなっていきましょう。