なぜフィリピン人は英語が話せるの? 日本の小学生の英語学習時間は約100時間ですが、フィリピンでは1700時間?!
外国の企業との取引を増やすために、「社内をグローバル化したい」と考えている方もいるでしょう。現在は在留外国人が増えていますが、中でも英語力が高いと考えられているのがフィリピン人。
そこで今回の記事では、フィリピン人の英語レベルや、日本国内でフィリピン人が多い業種について解説します。フィリピン人の雇用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
フィリピン人は幼い頃から英語が話せる、英語ネイティブ?
フィリピン人は小さい頃から英語を話せる人が多いです。実際に2023年のEF英語能力指数世界ランキングでは、シンガポール(2位:非常に高い)につづき、アジアで第2位、全体で20位に選ばれています。
その背景にはフィリピンの英語教育があります。まずはフィリピンという国の概要を知って、フィリピンの英語教育についてもご紹介いたします。
フィリピンの基礎情報
フィリピンは7,000以上もの島々で構成される島国です。
島の数はインドネシアについで世界で第2位。国名の「フィリピン」は16世紀のスペイン国王「フェリペ2世」が起源です。
フィリピン国内では80前後の言語が話されており、公用語は「タガログ語」と「英語」です。人口は約1億156o万人(2022年のデータ)以上で、2億人までは順調に増えつづけるのではないかと予想されています。
フィリピンはASEAN(東南アジア諸国連合)のなかでは唯一のキリスト教国で、国民の83%がカトリック、その他のキリスト教徒が10%から構成されています。またイスラム教徒も5%います。
日本ではリゾート先として有名な「セブ島」など、美しいビーチがある国としての印象が強いのではないでしょうか?
日本から比較的アクセスしやすく、旅行先としても人気があるフィリピン。多くのフィリピン人が日本に在留しています。約30万人のフィリピン人が日本に住んでいます。
フィリピンの歴史
14世紀〜15世紀頃、フィリピンにイスラム教が伝わり、フィリピン初のイスラム国である「スールー王国」が誕生します。
1571年にはスペインの植民地となり、1898年からはアメリカの植民地になります。また第2次世界大戦中には日本の統治下にも置かれました。
その後1946年に「フィリピン共和国」として独立することになります。
フィリピンは1898年から1946年にかけて、アメリカの植民地支配を受けていました。そのため公用語が英語となり、いまでは世界でも英語話者が多い国となっています。
フィリピンはなぜ英語が話せる? 英語教育について
フィリピンでは小学校から大学まですべて英語で教育が行われます。英語を「習う」のではなく、英語を「使い」勉強します。フィリピンでは3歳から英語にふれるといいます。
教科書もほとんど英語のものが多いので、英語が理解できるのはフィリピン人にとって当たり前のことです。
フィリピン教育省の資料(2010年)によれば、公立学校における6年間の英語の総授業時間数は1,746時間。一方で日本の小学校では、4年生から始まり年で35時間程度です。小学校4年生から6年生までの総授業時間を足し合わせても合計で100時間くらい。
もっとも脳が柔らかい時期に、15倍以上も英語に触れていることを考えると、成人してからの語学力の違いもかなり大きなものになることが想像できるでしょう。
またフィリピンでは英語を話せることが、高収入につながる切符のようなものです。英語話者はコールセンター、英語教師として、フィリピン国内でも給与水準の高い職につけます。
一方で英語が話せなければ、収入の高い職につくことは難しく、比較的低い賃金での労働になりがちです。
フィリピンの貧困率は2022年時点で18.1%です。フィリピンでは経済成長が順調なように見えますが、物価もそれに合わせて上がっているため苦しい生活をしている人が多いようです。
子どもの英語力は、家族を養っていくためにも重要です。貧困層から抜けだすためにも、幼少期から英語をしっかり勉強する子供が多くなります。フィリピン人の高い英語力は、フィリピンの英語教育にくわえて、このような社会的背景が後押ししていると考えられます。
フィリピン人の英語が話せる割合
英語が公用語の一つであり、英語が話せる人が多いという印象のフィリピンですが、実際にどのくらいで割合で英語が話せるのかご紹介していきます。
海外で行われた調査によると、フィリピンの英語が使える人の割合は約55〜80%でした。2人に1人以上の割合で英語を話すことができるようです。
フィリピン人の英語にはどのような特徴がある? 訛りは?
フィリピン人の話す英語は、しばしばフィリピン英語(Philippine English)と呼ばれ、フィリピンの言語的背景や文化的背景の影響を受けて、いくつかの特徴があります。
ここではフィリピン英語のおもな特徴をご紹介いたします。
内容 | |
語彙 | フィリピン英語には、フィリピンの言語(タガログ語、セブアノ語、イロカノ語など)や、スペイン語の影響を受けた独特の語彙が含まれています。 現地語からの借用語、コード・スイッチング、直訳も含まれます。 たとえばフィリピン人は「トイレ」の代わりに「コンフォートルーム」略して「CR」といったり、「バランガイ」(地方行政単位)や「ジプニー」(一般的な公共交通機関)などの用語を使ったりします。 |
文法 | フィリピン英語の構文は母国語の影響を受けて、標準的な英語とは異なる場合があります。これは語順や文の構造、特定の文法記号の使い方にみられます。 たとえばフィリピン人は “The food is already cooked”(料理はすでに調理されている)など、タガログ語の影響を受けた “already “を使って完了を表すことがあります。 |
発音とアクセント | フィリピン英語の発音には、フィリピン言語の音韻的な特徴が残っていることがよくあります。 これには音節のタイミングを合わせるリズムの傾向、/ɪ/ と/iː/ の区別の薄さ(例:”ship “と “sheep “は似ているように聞こえるなど)、スペイン語や地方のアクセントの影響なども含まれている特徴があります。 |
コード・スイッチングと借用 | フィリピン人は会話のなかで英語とフィリピン語、その他の現地語をよく混ぜ合わせます。 これは「コード・スイッチング(Code-switching)」と呼ばれる現象で、ひとつの文章や会話の中で、言語を交互に使いわけることもあります。フィリピンの言語から単語や表現を借用(Borrowing)することは、日常会話で非常によくみられます。 |
礼儀とリスペクト | フィリピン英語では、とくに年長者や目上のひとに話しかける際に、”po “や “opo”(敬意を表す際に使用する)など、フィリピンの文化から借用した尊敬語や敬語がよく使われます。 |
慣用表現と比喩表現 | フィリピン英語には、フィリピン文化特有の文化的言及、慣用表現、比喩表現が含まれています。これらの表現はフィリピン人以外の話者がすぐに理解できるとは限りません。 |
フィリピン人の留学生も多い?
フィリピンでは英語圏に留学するひとも多いです。2013年にはアキノ大統領主導のもと、国内すべての教育機関を国際基準に合わせることを目的として、フィリピンの学生が海外の留学プログラミムに参加しやすくなる新たな法律をつくりました。
政府のサポートなどもあり、英語圏での質の高い教育を受けるひとや国内のインターナショナルスクールに通う人は増加しています。そのためフィリピン特有の英語のクセも減っていく傾向があり、国際的に充分なビジネスレベルの英語力を有したフィリピン人が増えています。
フィリピン人に人気の留学先
国名 | 特徴 |
アメリカ | 工学、看護学、ビジネス、コンピューター・サイエンスなどの分野の学位が人気 |
オーストラリア | 質の高い教育と多様なキャンパスが人気 |
イギリス | ロンドン、マンチェスター、エジンバラなどの都市は、法律、医学、人文科学、社会科学など、様々な分野の学位を目指すフィリピン人留学生に人気。 |
カナダ | 歓迎される移民政策、質の高い教育機関、アメリカやイギリスと比較して比較的手頃な学費。 トロント、バンクーバー、モントリオールなどの都市は人気が高い |
ニュージーランド | 農業、環境科学、観光、ホスピタリティなどの分野で学位を目指すフィリピン人学生のあいだで人気を集めている。自然の美しさと生活の質の高さが魅力 |
日本 | 科学、技術、工学、数学(STEM)分野の学部および大学院で学ぶフィリピン人学生のあいだで人気。日本の大学では奨学金が支給され、英語によるプログラムも用意されているのも人気の理由 |
シンガポール | アジアにおける教育の中心地であり、ビジネス、金融、エンジニアリング、テクノロジーなどさまざまなプログラムを提供。フィリピン人留学生にとっては母国への距離的な近さや、活気ある多文化環境を理由にシンガポールを選ぶことが多いといわれている |
韓国 | 韓国語、韓国文化、テクノロジー関連分野に関心のあるフィリピン人学生が増えている。韓国のいくつかの大学では、留学生に奨学金や英語による教育プログラムを提供している |
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