ネパール人の特徴、仕事をするときの注意点は? 文化、国民性・歴史・隣国(インドや中国)との関係について解説!
外国人採用が日本企業にとっても一般的なものになってきているいま、日本へ来て働くネパール人が急増しています。ネパール人と聞いても、どのような国民性、文化的な背景を持っているかすぐに思い浮かばない人もまだまだ多いはず。今回は実際にネパール出身の大学生と一緒に働いている筆者の目から見た、ネパール人の性格や特徴についてもご紹介いたします。
目次
ネパールってどんな国?
ネパールの基礎知識
国名:ネパール連邦民主共和国
首都:カトマンズ
面積:14.7万平方キロ(※日本は37.7万平方キロです)
人口:3千万人程度(2024年)
公用語:ネパール語
通貨:ネパール・ルピー(NRP)
主要な宗教:ヒンドゥー(約80%、仏教9%)
名目GDP:約300億USドル(※日本は約4.9兆USドルです)
ネパールは北がチベット自治区、南はインドです。チベットとの酒井には世界最高峰である、エベレストと呼ばれるヒマラヤ山脈があります。エベレスト山は標高が8,848メートルあり、現地では「サガルマータ(सगरमाथा)」と呼ばれています。これは天空の額、という意味だそうです。
チベットでも「チョモランマ」と呼ばれており、これは「大地の女神」という意味です。
ネパールの国旗が世界で唯一長方形ではないのも、ユニークな特徴です。この三角形がふたつならんだようなデザインも、じつはヒマラヤ山脈が象徴されており、いかにこの山がネパールの誇り、国民性と深く結びついているのかがわかります。
ネパール人は若い人が多い
若い世代が国民の半数を占めるネパールは若年層の比率が高く、14歳以下が全体の約30%と非常に多く、15〜24歳までも約20%と多いです。
以下に日本の若年層比率との比較を示します。
ネパール | 日本 | |
14歳以下 | 30% | 12% |
15歳から24歳 | 20% | 9% |
ネパールには将来の労働力、経済成長には大きなポテンシャルがあることがわかるでしょう。
ネパールの隣国(インド、中国)との関係性
ネパールの隣国は中国とインドです。どちらも人口が多く、経済的にも世界的なプレゼンスを高めていますが、これらの国とネパールはどのような関係にあるのでしょうか。
インドとの関係
ネパールとインドは歴史的にも深いつながりがあり、ネパールからインドへは働きに行ったり、学んだりするひとが非常に多くいます。
経済的にもつながりは強く、ネパールの貿易の多くはインドを通じて行われます。燃料、日用品など、多くの輸入品がインドからネパールへと供給されます。またインフラ開発やエネリー関連のプロジェクトでも協力が行われており、2国間には多くの経済協定があります。
中国、チベットとの関係
中国は一帯一路構想(※中国政府が提唱している大規模な国際戦略)の一環で、ネパールとの経済的結びつきを強化しようとしています。ネパールもインドに対して経済的な依存度が強すぎることを危惧しており、バランスをとっているという状態です。
小国であるネパールは地理的にも大国の間にあり、両国と友好な関係を持ちつつ、経済的なさらなる発展を目指しています。
ネパール人と出稼ぎ
ネパールの若者が外国に出稼ぎに行く理由は、おもに経済的な要因とキャリアの機会にあります。国内の就業機会が限られているため、多くの若者は高収入をもとめて中東やマレーシアなどの国々で働くことを選びます。
これによって彼らは家族を支え、よりいい生活を送ることができます。さらに国外での経験やスキルを習得することで、将来的にネパールに戻った際に活用できると期待してもいます。しかし、この傾向は国内の人材流出を引き起こし、ネパールの経済発展に影響を与える可能性もあります。
ちなみに2022年度、ネパールのGDPは23.1%を海外送金が占めています。
ネパール人と英語力、留学
ネパールの多くの学校では、初等教育から英語を教えており、私立ではとくに重視されています。ネパールは海外から観光で来る外国人も多いため、日常的に英語を使う機会も多く、若い人も英語も英語を話せるひとが多いです。英語能力指数ランキングでも、世界で57位となっています(※日本は87位です)。
ネパール人の大学の留学先としては、インド、アメリカ、オーストラリア、中国、そして日本が多いです。
日本でも工学、IT、ビジネス分野の学部が高い評価を受けています。日本の奨学金制度や、留学生支援プラグラムが充実していることも人気の理由です。
日本へのネパール人留学生の数は、2022年の調査では、全体でも第4位である18,825人を記録しています。日本へ働きに来ているネパール人も増えており、厚生労働省の調査によレば、日本にいる在日ネパール人は17.6万人(※2023年末)です。
ネパール人の特徴
親しみやすさとホスピタリティ
ネパール人は非常に親しみやすく、訪問者を温かく迎えることで知られています。
たとえば、トレッキングで有名なアンナプルナ山群を訪れた観光客は、地元の村人たちの親切なもてなしに感動することが多いといいます。
観光客が山道を歩いていると、しばしば地元の住民が「ナマステ(こんにちは)」とあいさつし、家に招待してお茶や食事を提供します。このホスピタリティはネパールの文化と伝統に深く根ざしており、国際的な観光客の心をつかむ大きな要因となっています。
勤勉さと努力
ネパール人は非常に勤勉で努力家です。とくに海外で働くネパール人労働者の多くは、その努力と勤勉さで評価されています。
たとえば中東やマレーシアで働くネパール人労働者は、過酷な労働条件にもかかわらず、家族のために一生懸命働き、多額の送金を行っています。この努力により彼らの家族は経済的に支えられ、子どもたちの教育や生活水準の向上に寄与しています。
彼らの勤勉さは、ネパール経済の重要な支柱となっています。
控えめな性格
オープンな姿勢をもち、初対面でも親しみやすいですが、多くのネパール人は控えめな性格であるようです。
これにはネパール語の語順が、日本語と同じことが関係しているのかもしれません。英語だと「私は、する、野球を」のような語順になり「私がやるんだ」という自己主張型の表現になります。
対してネパール語では、日本語と同じように「私は、野球を、する」という語順で話します。そのためネパール人には自己主張が強すぎるタイプは少なくなるといわれています。日本人に近い人間関係の常識や、対話する際の距離感をもっているといえるでしょう。
仕事をする上で気をつけるべきこと
時間にルーズ?
ネパール人と日本人の大きなちがいとして、時間感覚があります。
ネパール人の多くは時間に対してルーズな性格で、「ネパリタイム」という言葉が存在するほどです。「遅刻が当たり前」という文化なので、時間を守ろうとする日本人とはときに齟齬が生まれるかもしれません。
しかしそういった傾向があるだけで、すべてのネパール人が時間にルーズなわけではありません。きちんと時間を守れる人もたくさんいます。
ネパール人を採用する際には「日本では、時間を守ることが大切である」ことを説明しましょう。
ヒンドゥー教
ネパール人と働くうえでいちばん気をつけるべきことは、宗教にまつわることです。ネパールでは、人口の約8割がヒンドゥー教徒で、その点で注意すべきことが2つあります。
ひとつめは、ヒンドゥー教では左手が不浄なものとされていること。そのため食事の際には左手を使いません。とくに握手では左手をださないように注意しましょう。
ふたつめは、食事に関することです。ヒンドゥー教では、牛は神の使いとされているので、牛肉が食べられません。また、バターやゼラチンのような、牛からとった出汁や脂肪の混合した加工食品も食べることができないので要注意です。
厳しいヒンドゥー教徒の場合は、肉全般や魚なども食べないことがあるので、ともに食事をする時には事前に確認をとって注意するようにしましょう。
家族中心の生活
南アジア全般に共通したことですが、ネパールでは家族との時間を生活の中心とします。
家族とともに暮らすのが一般的であり、ひとり暮らしはほとんどしないそうです。歳を重ねて経済的に独立しても、親元は離れません。結婚すると実家を出ますが、それ以降も両親や祖父母と深いかかわりを持ちつづけます。また家族が病気になったら、仕事や学校を休むのはよくあることのようです。
そのためネパール人を雇用する場合には、家族との時間を尊重する必要があるでしょう。
まとめ
今回の記事ではネパール人の特徴や、日本でネパール人と働くうえで気をつけるべきことをご紹介しました。ここまで読んでいただいたように、ネパール人は性格や国民性の面では日本人に似ている部分も多いです。しかし文化的に異なる面もたくさんあります。
ネパール人は働き盛りの若者が多く、観光客への対応や人手不足に悩んでいる日本では貴重な人材です。外国人採用をお考えの方は、ぜひ今回の記事の内容を参考にしてみてください!