総人口のうち65歳以上が占める割合が21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれます。日本は2023年に29.1%に達し、世界でも突出した高齢社会になっています。

日本では今後も総人口の減少がつづくなかで、65歳以上の人口増加が予想されています。このような状況から危惧されるのが「介護士」の不足です。

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出典:厚生労働省 介護分野の現状等について

介護福祉士登録者数や介護福祉士従事者数は増加しています。しかし超高齢化社会であるいま、全体では介護士不足が深刻化しています。そこで近年では介護士不足を補うために、外国人介護士を積極的に受け入れています。

そのなかでもとくに多いのがフィリピン人です。今回はフィリピン人介護士が増加している背景や、受け入れ方法について解説していきます。果たしてフィリピン人の介護士が、日本の将来を支えることになるのでしょうか?

日本にフィリピン人の介護士が多いって本当?

メディアなどでも取り上げられる機会が多いフィリピン人介護士ですが、日本の介護分野で働くフィリピン人介護士はほんとに多いのでしょうか? 受け入れ状況や受け入れ方法から探ってみましょう。

受け入れの現状は?

2008年(平成20年)に発効された「日・フィリピン経済連携協定(EPA)」にもとづき、2009年(平成21年)からフィリピン人看護師・介護士候補者の受け入れが始まりました。
厚生労働省によると2017年(平成29年)9月1日時点で、フィリピン人介護士候補者は1,400人に達しています。

また公益社団法人・国際厚生事業団(JICWELS)が2017年に発表した「外国人介護士の現状~EPAによる受入れを中心として~」では、介護分野の外国人介護職員は約3,500人。そのうち41.4%がフィリピン人という結果でした。
下記のグラフからも、フィリピン人介護労働者が他国出身の介護労働者の中でも群を抜いて多いことがわかるでしょう。

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出典:外国人介護士の現状~EPAによる受入れを中心として~

外国人の介護士を受け入れる方法は?

ではつぎに外国人介護士を受け入れる方法について解説いたします。
現在のところ、外国人介護士を受け入れるための制度は4つです。

◆EPA(経済連携協定)

EPAとは物品及びサービス貿易の自由化を定めた自由貿易協定(FTA)を基盤に、ヒト・モノ・カネの自由化・円滑化を定めた協定で、二国間の経済連携の強化を目的としています。
前述したJICWELSが日本国内で唯一のあっせん機関で、介護福祉士候補者の在留資格は「特定活動」です。

◆在留資格「介護」

介護は2017年9月1日に施行されたばかりの在留資格。
対象者は日本の介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の資格を取得したひとです。最大の特徴は「留学」や「技能実習」の在留資格で入国し、2年以上の修学や研修を経て国家試験に合格することで在留資格を「介護」に変更できる点。
受け入れには「養成施設」と「実務経験」の2つのルートがあります。

◆在留資格「技能実習」

外国人技能実習とは、国際貢献の一環として開発途上国等へ技能、技術又は知識を転移し、経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。2017年11月1日に施行された「技能実習法」にあわせ、介護職種が追加されました。

受け入れ方式には「企業単独型」と「団体管理型」があり、技能実習1年目は「技能実習1号」で企業単独型は「技能実習1号イ」、団体管理型は「技能実習1号ロ」に分類されます。また2~3年目には「技能実習2号」になり、4~5年目には「技能実習3号」になります。
在留資格は最大で5年。

ほかの制度ほど高い日本語能力を求められないこともあり、介護分野では積極的に技能実習を受け入れています。しかし2年目には日本語能力試験「N3」程度が要件となるため、日本語学習と介護業務の両立が大きな課題といえるでしょう。

また技能実習制度は問題が多いということから、国際的な避難も集まっているため、べつの制度に移行することが決まっています。

◆在留資格「特定技能1号」介護

2019年3月1日に施行された在留資格「特定技能」は深刻化する人手不足の対応措置で、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れる制度です。
入国前に母国で技能水準・日本語能力水準の試験等に合格したあと、受け入れ先企業と雇用契約を締結すれば在留資格「特定技能1号」を得ることができます。

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出典:法務省 新たな在留資格「特定技能」について

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フィリピン人の介護士が多い理由は?

ではなぜ介護分野にはフィリピン人介護士が多いのでしょうか? 年収や働きやすさから、その理由を説明いたします。

日本の介護士の年収は高い?

労働条件と生活水準の改善を目的とする国際労働機関(International Labour Organization)によると、フィリピンの平均月収は約1万9000ペソ(約4万9,000円)です。月に22日働くと仮定すると、日給は863ペソ(約2,260円)となります。

ここ数年で円安が進んで、相対的な日給は増えていますが、それでもまだ日本で働くことのメリットはありそうです。

厚生労働省の「介護人材の確保について」によると、介護福祉士の有資格者の平均賃金は約23万5,000円、勤続年数1年未満でも20~24歳男性で18万3,400円、女性で17万8,900円です。
フィリピン人が日本で介護士として働くのは、技能だけでなく日本語能力の水準も求められるので大変ですが、フィリピン国内で働くより年収が高いのがわかります。

経済成長が著しいフィリピンですが、2021年の発表によれば国民の18.1%が貧困層です。

(貧困の定義は一般的に1日1.90ドル未満で暮らしている人のことをいいます。)

国内で仕事を見つけることもできるでしょうが、日本で母国と同じような仕事をすると数倍の賃金を得られるという点は、いまだに魅力的に映るようです。多くの人が海外への出稼ぎのチャンスを狙っています。

日本は住みやすく働きやすい

介護分野の外国人労働者のうち、41.4%を占めるフィリピン人。多さの理由は年収の高さだけではありません。もちろん日本が超高齢社会に突入したために、人手不足で仕事に就きやすいというのも理由のひとつでしょう。

その他に考えられる理由は、在日フィリピン人が多いことでしょう。2023年6月時点で約30万9,000人、中国、ベトナム、韓国につづく多さです。
とくに東京都足立区竹ノ塚は「リトル・マニラ」と呼ばれ、フィリピン人のコミュニティもあり情報交換の場としても機能しています。

最近は国際的な円の力も落ちて、日本も住みにくくなったと感じる人もいるかもしれません。しかし治安面においては日本ほど安全な国はありません。世界トップの治安の良さを誇る日本は、フィリピン人だけでなく外国人にとって住みやすい国といえるでしょう。

フィリピン人介護士を雇うメリットは?

では、最後にフィリピン人介護士を雇うメリットをご紹介いたします。

高い資格と経験

フィリピンの介護士は多くが高度な介護の資格や、豊富な実務経験を持っています。フィリピンでは介護業界が発展しており、高品質な介護教育プログラムが提供されています。

英語能力

フィリピンは英語を公用語として使用しており、多くのフィリピン人はある程度は英語を話すことができます。
もし日本語能力がそこまで高くなくても、英語でものごとを伝えれば意思疎通ができることで、介護を受ける方やその家族とのコミュニケーションが行えることを意味します。

カルチャーフィット

フィリピン人は温かくて思いやりのあるカルチャーを持っています。
介護の仕事においては、患者やその家族とのコミュニケーションや関係構築が重要です。在宅介護などはフィリピンにも似たような仕事があり、日本の介護業界にもすぐ適応できる人材が多いといわれています。

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フィリピン人の介護士について理解が深まりましたか?

超高齢社会となった日本で、今後ますます懸念される介護部門の人手不足。外国人介護士の受け入れが整備されれば、さらに国際化が進むでしょう。言語や文化が異なる外国人が日本で介護士として働くのは、日本人が想像する以上に大変なことです。

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