【2026年最新】外国人の医療費負担はどうなっている? 未払い問題の実態と企業ができる対策
訪日・在日外国人の増加にともない、医療費に関する疑問やトラブルが増えています。
「外国人は医療費を払わない」「健康保険を使い放題にしている」といった情報がSNSで拡散されることもありますが、実態はどうなのでしょうか。
この記事では、外国人を雇用している企業担当者が知っておくべき、医療費の制度・未払い問題の実態・企業が取るべき対策を、公的データにもとづいて解説します。
目次
日本における外国人の医療費
日本での外国人の医療費負担は、在留資格や滞在期間によって異なります。
在留期間が3か月を超える外国人は、日本人と同様に公的医療保険への加入が義務付けられており、保険適用内の医療費自己負担は原則3割です(年齢・所得により変動)。
在留期間と保険加入義務
| 保険の種類 | 対象者 | 手続き先 |
| 国民健康保険(国保) | 自営業者・学生・無職など | 住所地の市区町村窓口 |
| 健康保険(社保) | 会社員・アルバイト(週20時間以上などの要件あり)とその扶養家族 | 勤務先(会社が手続き) |
なお、在留期間が3か月以下の短期滞在者(観光・商用など)は、日本の公的医療保険に加入できません。
受診した場合は全額自己負担(自由診療)となるため、1件あたりの医療費は高額になりやすい傾向があります。
留学生の扱い
留学生は在留期間が3か月を超える場合、国民健康保険への加入が義務となります。
保険料は前年所得や自治体によって異なりますが、学生向けの減免制度を設けている自治体もおおいため、入学時に住所地の市区町村に確認しておくことが重要です。
「外国人は医療費を払わない」は本当?

SNSを中心に「外国人が健康保険を使い放題にしている」「国保料を払っていない」といった投稿が拡散されることがありますが、公的データはそれとは異なる実態を示しています。
厚生労働大臣による公式見解(2025年7月)
2025年7月15日の閣議後記者会見で、福岡資麿厚生労働大臣は保団連(全国保険医団体連合会)の質問に答え、以下のデータを公表しました。
| 指標 | 数値 |
| 国民健康保険の外国人被保険者数 | 約97万人(全被保険者の4.0%) |
| 総医療費に占める外国人の割合 | 1.39% |
| 高額療養費の該当件数に占める外国人の割合 | 1.04% |
| 高額療養費の支給額に占める外国人の割合 | 1.21% |
出典:全国保険医団体連合会 2025年7月15日記者会見レポート
大臣は「医療費や高額療養費制度において、外国人の割合が高いということはない」と述べています。
実際にも外国人被保険者は全体の4.0%を占めていますが、医療費の利用割合はそれを下回る1.39%にとどまっています。
SNSで拡散される「デマ」への注意
一時期、「外国人による国民健康保険料の未納が年間4,000億円」という投稿が拡散されました。
しかし厚労大臣は「令和4年度の国民健康保険料の未納額は、外国人に限らず全体で1,457億円であり、外国人の未納額が年間4,000億円という情報は認識と異なる」と明確に否定しています。
外国人雇用に関わる企業担当者は、不確かな情報ではなく、公的データにもとづいて理解することが重要です。
外国人患者の医療費未払い問題、実態と背景は?
「外国人全般が医療費を払わない」というのは事実ではありませんが、特定の状況では未払いが発生しやすいのも確かです。
ここでは、問題の実態と背景を解説します。
厚労省調査による未払いの実態
厚生労働省は、2024年9月の1か月間のデータを公表しています。
| 調査項目 | 結果 |
| 調査対象病院数(回答数) | 8,220病院中 5,487病院(回収率約67%) |
| 外国人患者の受入れがあった病院の割合 | 回答病院中 約5割 |
| 未収金が発生した病院の割合 | 外国人受入れ実績ある2,890病院中 470病院(16.3%) |
| 未収金発生病院あたりの平均件数 | 平均 3.9件 |
| 未収金発生病院あたりの平均総額 | 平均 約49.8万円 |
| 未収金の発生総額(2024年9月・回答病院合計) | 約2億3,291万円 |
| 1件あたり5万円以下の未収金の割合 | 71.4%(1,825件中1,303件) |
出典:厚生労働省 令和6年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果
未収金の約7割は1件5万円以下と少額です。
一方で、訪日外国人(観光客など)は公的保険に加入しておらず自由診療となるため、件数が少なくても1件あたりの金額が高額になりやすい傾向があります。
未払いが発生する3つのパターン
外国人患者の未払いは、おおきく3つのパターンに分かれます。
| パターン | 内容 | 対策の優先度 |
| ①支払う能力がない | 不法滞在・経済困窮。在留資格がない場合は自費診療で高額になりやすく、支払い能力とのずれが生じる | 中(外国人特有ではなく日本人にも共通) |
| ②支払う意思がない | 悪意があるケースのほか、回復後に「値引き交渉できるのでは」と考えはじめるケースも含まれる | 中(同上) |
| ③意思も能力もあるが払えない | 日本と海外の医療制度・支払い慣行の違いによるもの。外国人患者特有のケースで最もおおい | 高(医療機関の対策で効果が出やすい) |
日本と海外の医療制度の違いが生む誤解
上記③のパターンでおおいのが、日本の「後払いの仕組み」とのずれです。
日本では診察や検査がすべて終わったあと、会計窓口で初めて請求額が伝えられます。
しかし、海外では治療前に費用の選択肢が示され、患者が同意してから診療を受ける国もおおくあります。
外国人患者にとっては「費用の事前説明がない」「会計の流れがわからない」と感じやすく、「無料かもしれない」と誤解するケースもあるようです。
その結果、悪意がなくても支払いをしないまま帰国してしまうことがあります。
また、日本の保険診療は全国一律の公定価格ですが、医療機関ごとに料金が異なる国から来た患者が、値引き交渉を試みるケースもあります。
外国人が出国すると医療費徴収が難しいのはなぜ?

未払いのまま帰国した外国人患者から医療費を回収するのは、現実的に非常に困難です。その理由を整理します。
法的権限の制限
日本国内で発生した医療費の未払いについて、出国した外国人に対して法的強制力をもって徴収する手段は限られています。
出国後に債権回収を試みる場合、外国の法律が関わる国際的な手続きが必要となり、費用や時間の面で現実的でないケースがほとんどです。
とくに短期滞在の観光客については、本国での資産の差し押さえや訴訟は事実上難しく、回収できないまま終わるケースがおおいのが現状です。
連絡が取れなくなる
帰国後に住所や連絡先が変わることや、受診時に正確な情報が医療機関に残っていないこともあり、未払い発生後の追跡が難しくなります。
短期滞在者や観光客の場合、滞在先のホテル情報しかないケースもあり、帰国後に請求書を送っても届かないことが大半です。
国際送金の煩雑さ
帰国後に支払う意思がある患者であっても、国際送金の手続きの複雑さが負担になります。
国際送金には為替手数料に加え、国によっては数千円から1万円以上の手数料がかかることもあります。
そのため、手続きを後回しにするうちに未払いのまま放置されるケースも見られます。
医療機関・行政が取り組む未払い対策
ここからは、未払い問題への対策として行われている取り組みを紹介します。
医療費概算の事前提示
患者が受診前に予想される治療費を把握できるよう、医療機関が事前に概算費用を提示する取り組みです。
厚労省の「外国人患者の受入れのための医療機関マニュアル」でも推奨されており、以下のメリットがあります。
- 費用の透明性が高まり、患者が安心して受診できる
- 外国人患者が支払い計画(現金・クレジットカード・保険適用範囲の確認)を立てやすくなる
- 支払い能力がない場合の早期把握が可能になり、未払いリスクを軽減できる
参考:厚生労働省 「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」について
厚労省の医療費不払い情報報告システム
厚生労働省は出入国在留管理庁と連携し、保険医療機関から一定額以上の医療費不払いがある訪日外国人の情報を収集・共有するシステムを運用しています。
報告された情報は入国審査にも活用され、不払い履歴がある外国人については、次回以降の入国審査が厳しくなる仕組みです。
医療機関にとっては、このシステムを活用することが不払いの抑止にもつながります。
参考:厚生労働省 訪日外国人受診者による医療費不払い防止のための支援資料
自治体による未収金補填事業
自治体によっては、医療機関が受けた外国人患者の未払い医療費を補填する事業があります。
代表例として、東京都の「外国人未払医療費補てん事業」があります。1医療機関・1患者につき最大200万円を上限に、要件を満たした未収医療費が補填されるというものです。
※自院の所在地の自治体担当部署に、同様の補填制度の有無を直接確認しておくことをおすすめします
【雇用企業向け】外国人医療費関連のトラブルを避けるためには?

外国人を雇用している企業には、社員が適切に医療を受けられるよう支援する役割があります。
医療費トラブルを未然に防ぐためにも、以下の対策をおさえておきましょう。
保険加入状況と在留資格のひもづけを確認する
外国人雇用企業の担当者がまず確認しておきたいのは、在留外国人(就労・生活系の在留資格保持者)の公的医療保険への加入状況です。
在留資格の更新時期と健康保険証・国民健康保険証の有効期限が同じに設定されているケースもあります。
更新手続き後は、新しい保険証が発行されているかをすみやかに確認することが必要です。
| 雇用形態 | 加入すべき保険 | 企業の確認ポイント |
| 正社員・週20時間以上のパート | 健康保険(社保) | 入社時に加入手続きが完了しているか。在留資格更新後も保険証が有効かを確認 |
| 週20時間未満・業務委託など | 国民健康保険(国保) | 本人が住所地の市区町村で加入手続きをしているか。未加入のまま放置されていないかを確認 |
| 新規入社・在留資格変更直後 | 社保または国保(状況による) | 資格取得から保険証が届くまでの空白期間に注意。急病時は「健康保険被保険者資格証明書」の活用を案内 |
外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)
JMIP(Japan Medical Service Accreditation for International Patients)は、厚生労働省の支援事業として構築された制度です。一般財団法人日本医療教育財団が評価・認証を行っています。
多言語での診療案内や、異文化・宗教への配慮など、外国人患者の受入れ体制を第三者の立場で審査する仕組みです。
認証医療機関は一覧で公開されているので、外国人社員が受診先を選ぶ際の参考にしましょう。
参考:一般財団法人 日本医療教育財団 外国人患者受入れ医療機関認証制度
よくある質問【FAQ】
Q1. 医療費の未払いがある場合、外国人社員の在留資格の更新・変更に影響しますか?
A. はい、重大な影響が出る可能性があります。
未払いが発覚した場合、在留資格の更新・変更申請において「生活態度が不良である」と判断され、不許可や審査厳格化の対象となる方針が示されています。
厚生労働省と出入国在留管理庁が連携して対策を強化しているため、保険料の滞納だけでなく医療費の未払いがないよう、社員への指導と保険加入状況の確認が欠かせません。
Q2. 外国人社員が病院を受診する際、企業としてできる支援はありますか?
A. 以下の支援を事前に行うことで、医療費トラブルの予防につながります。
- 保険証の携行徹底:受診時は在留カードと健康保険証(または国民健康保険証)を必ず持参するよう指導する
- 通訳支援の手配:社内または外部の通訳サービスを活用し、治療内容や支払いに関する説明を正確に伝える
- 概算費用の事前確認:高額になりそうな治療は事前に病院へ概算費用を問い合わせるよう支援し、支払い計画を一緒に立てる
- 公的支援制度の案内:高額療養費制度・限度額適用認定証・保険料減免制度などをわかりやすく説明する
Q3. 外国人社員が「保険料を払っているのに3割より多く請求された」と言っています。なぜですか?
A. おもに以下の原因が考えられます。
- 保険証の期限切れ:在留資格の更新後に保険証の手続きが遅れ、資格喪失後の受診になっているケース
- 保険料滞納:保険料を滞納していると、保険給付が制限されるケース
- 自由診療との混同:保険適用外の治療や薬が含まれており、その部分が10割負担になっているケース
まとめ
在留外国人・訪日外国人が増加する日本において、外国人の医療費に関する問題は正確な理解が求められます。
公的データが示すとおり、外国人が医療費を過剰に利用しているという事実はありません。
一方で、訪日外国人(短期滞在者)による未払いは、制度や文化の違いによって発生しやすい構造的な問題があります。
企業が外国人社員を雇用する際には、保険加入の徹底・医療費制度の説明・受診時の適切なサポートを行うことが、トラブルの防止と社員の定着につながるでしょう。
