外国人を採用しようと考えている企業にとって、海外に住んでいる外国人を採用するよりも、すでに日本語ができて日本の文化にも慣れている留学生を採用する方が有利です。

この記事では、外国人留学生の就職状況や面接で確認すべきこと、必要な書類、在留資格の変更方法について説明します。
留学生をうまく採用するためのポイントを学び、スムーズに採用活動を進めるための参考にしてください。

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外国人留学生の新卒採用の現状

外国人留学生が日本での就職を目指す状況は、年々変化しています。
以下は、文部科学省のデータをもとに、就職希望と実際の就職状況についてまとめたものです。

データ出典:文部科学省 外国人留学生の就職促進について(令和6年6月)

日本で就職したい外国人留学生は、全体の約6割

日本の高等教育機関を卒業・修了した外国人留学生の国内就職者数等の推移グラフ

日本での就職を希望する外国人留学生は、58%に達しています。
コロナ禍において一時的に減少したものの、2022年度に卒業した50,253人のうち、26,795人(53.3%)が日本で就職を決めました。

この数値が増加傾向にあるということから、外国人留学生にとって日本での就職のチャンスが増えていることがわかります。

日本での就労を希望する外国人留学生の特徴

留学生が就職する際に変更する在留資格の種類と、就職先の業種

就職先の業種では、非製造業が85%を占めており、とくにIT関連やサービス業が人気です。
逆に製造業は15%にとどまっています。多くの外国人留学生は、自分の技術や国際的な知識を活かせる仕事を選んでいることが分かります。

また、出身国別に見ると、中国からの留学生が10,182人(9.1%増)、ベトナムからは8,406人(22.1%増)、ネパールからは5,769人(31.0%増)と、とくにベトナムとネパールからの留学生が増えていることが分かります。

日本政府は、外国人留学生が日本で働ける割合を高めるために、2033年までに60%に引き上げることを目標にしています。
この目標を達成するためには、留学生がビジネスレベルの日本語を話せるように支援し、日本の企業での働き方を理解できるようにサポートすることが大切です。

外国人留学生が就職活動で苦労していること

外国人留学生が就職活動で最も困ったこととして「留学生向けの求人が少ない」という意見が多く聞かれました。
また「日本の就職活動の仕組みが分からない」「日本語の適性試験や能力試験が難しい」という声も目立ちました。

これらのことから、外国人を採用しようとしている企業は、まず留学生向けの求人情報を増やし、分かりやすく提供することが大切です。また、企業の採用活動の仕組みやスケジュールについて説明する機会を増やすことも重要です。
留学生は日常的に使う日本語は得意でも、ビジネスで使う日本語に慣れていないことが多いので、企業側はその点を理解しておきましょう。
入社後の研修制度を外国人向けに整えておくと、スムーズな採用につながります。

外国人留学生を新卒採用するメリット

新卒採用のメリットについて話す女性

外国人留学生を新卒で採用すると、どんなメリットがあるのか気になる人も多いと思います。
全国の有名企業486社を対象に、留学生の採用について調べた株式会社キャリタスの分析によると、以下の4つのメリットが大きいとされています。

  • 異文化・多様性への理解の向上(57.8%の企業が実感)
  • グローバル化推進への理解、意識醸成(56.3%の企業が実感)
  • 日本人社員への刺激・社内活性化(53.1%の企業が実感)
  • 海外の拠点や取引先との関係の向上(28.1%の企業が実感)

参考:株式会社キャリタス 「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する調査」(2024 年 12 月調査) 

ここからは、これらのメリットについてさらに詳しく説明していきます。

異文化や多様性への理解が深まる

外国人留学生を新卒で採用すると、社内に自然と異文化が溶け込むことになります。たとえば、留学生が持っている言葉や習慣、食文化などの違いが、日々の仕事で活かされます。
これにより会社の考え方が広がり、社員がいろいろな問題に対して柔軟に考えることができるようになります。

また、留学生が自国の文化を紹介することも多く、社員同士で文化を交換する機会が増えて、職場の雰囲気が豊かになります。
こういった環境は、これから先のグローバルな競争の中で、企業が強くなるためにも大切だと考えられています。

グローバル化を進めることへの理解が高まり、意識が変わる

外国人留学生を採用することで、企業は自然とグローバル化を意識するようになります。
たとえば、留学生が自国のビジネスや市場について知っているため、その情報を活用して海外市場にアプローチする方法が具体的になります。

社内でも国際的な対応が重要だと感じるようになり、国内の仕事にも国際的な視点を取り入れるようになります。
国際的なネットワークを広げることで、海外の顧客や取引先とのやり取りにも自信を持てる社員が増える点も大きなメリットです。

日本人社員に刺激を与え、社内が活気づく

外国人が考えるアイデアや仕事へのアプローチが、日本人社員にとって新鮮で、社内が活気づくこともあります。
たとえば、留学生が自国での成功事例や効率的な方法を共有することで、日本人社員の仕事のやり方に影響を与えることも少なくありません。

言葉や文化の違いを乗り越えようとする姿勢が、他の社員にも良い影響を与え、チーム全体の士気を高めることにも繋がります。

海外の拠点や取引先との関係がより良くなる

外国人留学生を採用することで、海外の拠点や取引先との関係もスムーズに進みます。
留学生が母国の市場に詳しい場合、その知識を活かして海外の拠点との連携を強化することができます。商習慣やビジネス文化を理解している分、商談や交渉がうまく進みやすいです。

取引先との直接のコミュニケーションがしやすくなり、信頼関係が深まれば海外市場への進出新たな取引のチャンスが増え、企業の国際的な成長が加速します。

外国人留学生の新卒採用に向けた採用活動のながれ

外国人留学生向けの新卒採用スケジュール(例)

STEP1. 求人情報の掲載

新卒採用では日本人・外国人どちらが対象であっても、求人を広く公開して多くの応募者を獲得する必要があります。近年は求人媒体やコーポレートサイトに求人情報を掲載することが一般的です。

上記にくわえて、留学生が対象の場合は学校の就職課・キャリアセンターを活用することをおすすめします。
就職課・キャリアセンターは学校側のフォローアップがあるため、留学生の利用率が高いのが特徴です。求人費用がかからないことも多いため、積極的に利用しましょう。

求人掲載のポイント

  • 多言語能力や異文化理解力などの、留学生特有の強みが活かせることを明記する
  • 留学生が理解しやすい形で、採用プロセス(書類選考、面接方法、内定通知など)を明記する
  • サポート体制や研修プログラムなど、入社後の支援内容を明記する
  • 「やさしい日本語」や「英語」で書かれた求人票を作成すると親切

STEP2. 説明会の開催

日本人の就職活動や中途の外国人採用とはちがい、留学生は日本での就職活動に慣れていないということを理解しておきましょう。
留学生に対しては「自社の魅力を伝える」だけでなく、就活の進め方やスケジュール感がつかめているかを確認することが大切です。

説明会をおこなう際のポイント

  • 留学生が安心して質問できる雰囲気をつくり、一人ひとりの不安や疑問に丁寧に答える
  • 留学生が就職活動を計画的にすすめるために、日本全体の就職活動の進め方や一般的なスケジュール感について説明する
  • 会社案内やプレゼンテーション資料を多言語対応にしておくと親切

STEP3. 書類選考

書類選考を通じて、留学生の基本情報や学歴、資格などと業務内容の関連性を確認します。
履歴書・エントリーシートには学業以外の個人の功績や、資格外活動についても記載してもらいましょう。

書類選考のポイント

  • 留学生の履修内容で適切な在留資格が取得できるか、法的に確認する
  • 日本語力が必要な在留資格に変更する場合は、このタイミングで日本語能力の証明書を提出してもらう

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STEP4. 面接

採用面接を受ける女性

面接で意気込みを聞くことは大切ですが、雇用条件に対する認識のすり合わせや、書類選考で提出された内容に間違いがないかを一つずつ確認することも重要です。
言語の壁や文化の違いがある以上、こちらがしっかり伝えたと思っていても留学生は理解し切れていないこともあります。また、外国人側が自信をもっていても「企業側の意図と違った捉え方」になっていることもあります。
内定後の辞退を防ぐためにも、お互いが理解できるまで確認作業を行いましょう。

面接のポイント

  • 書類選考時の情報を再確認する
  • 仕事の内容や雇用条件を相互確認する
  • 国籍や宗教で差別をしない

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STEP5. 内定

面接で話した内容と日本語レベルが業務に支障がないと判断できたら、採用通知書(内定通知書)を送付します。

一般的な新卒採用では4月1日に雇用契約を締結することが多いですが、留学生を採用する場合は労働条件をあらかじめ伝えて、それに対する合意を得たことを書面で残す方が良いといえます。
具体的には労働条件通知書と内定承諾書を発行し、雇用主と留学生の双方が労働条件に合意しておくことで、入社当日の(認識違いや勘違いなどによる)トラブルを避けやすくなります。

また、在留資格の変更にかかる期間を踏まえて、遅くとも11月末までには内定の承諾を得るようにしましょう。

内定通知のポイント

  • 労働条件に合意を得ておく
  • 11月末までに内定承諾書を受け取る

STEP6. 在留資格の変更

卒業式を終えた留学生

在留資格の変更申請は、就労開始前年の12月〜翌年1月に開始します。
通常は申請後1〜2ヶ月程度で変更許可がおりますが、混雑具合によっては予定より時間がかかる場合があります。そのため、入社日が決まっている場合はなるべく早く申請しましょう。

申請時は卒業前であることが多いため、卒業見込証明書をもちいて申請します。
そして変更許可通知を受け取ったら、実際に卒業してから卒業証明書を提出して新しい在留カードを受け取ります。

参考:出入国在留管理庁 在留資格変更許可申請

在留資格変更時のポイント

  • 12月以降なるべく早く申請する
  • 変更許可通知が来ても、新しい在留カードを受け取るまで(卒業するまで)は「留学」として活動する

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STEP7. 入社

入社当日に、雇用契約書へ記入・捺印してもらいます。雇用契約書は内定通知の際に同封した労働条件通知書と同内容で作成します。
入社直後は外国人労働者に付き添って各部署へ挨拶へ行き、オリエンテーションとして企業理念や文化、キャリアに対する説明をおこなうと親切です。

そして、人事担当者はハローワークへ外国人雇用状況の届出を、出入国在留管理庁へ所属機関等に関する届出を提出します。
採用した外国人労働者から在留カード・パスポートを借り、かならず照らし合わせながら記入してください。
在留カード・パスポートのコピーの提出は不要ですが、届出の記載内容にまちがいがあると企業が罰則を科される恐れがあるため、十分に注意しましょう。

入社時の注意点

  • 外国人雇用状況の届出は入社日〜翌月10日まで
  • 所属機関等に関する届出は入社日〜14日以内

参考:厚生労働省 外国人雇用状況の届出について
参考:出入国在留管理庁 所属(活動)機関に関する届出

外国人雇用状況届出書とは? 記入する項目やオンライン申請方法、提出を忘れた場合の対処法についてわかりやすく解説

STEP8. 入社後

入社後も、継続的なサポートをおこないましょう。
研修や教育はもちろん、在留資格の更新や、永住者や高度専門職などへの在留資格変更を希望する場合には、書類作成や提出をサポートします。
また、定期的な面談を実施したり、日本人社員とのコミュニケーションの機会をもうけるなど、留学生が安心して働き続けるための環境を整えましょう。

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さいごに

日本政府は、外国人留学生の就職支援を充実させるために制度の改正をすすめています。
これにより、留学生が日本でキャリアを築きやすい環境が整い、日本の労働者不足解消にもつながると期待されています。

これから先、企業の競争力を高めるためにも、積極的に外国人留学生の新卒採用を検討してみてはいかがでしょうか?