日本での生活を希望する外国人にとって「住居探し」は最も重要ですが、多くの課題がともないます。
グローバル化の進行により法律・規制が変化している部分もありますが、「言語の壁」や「連帯保証人の問題」「家主の不安」などの理由により外国人の入居を拒否する物件がいまだに存在することも事実です。

こうした中、UR賃貸住宅は先陣を切って外国人の住宅課題の解決に取り組んでいます。

「入居審査の基準」と「住民の声」にギャップがある

まずは、日本の不動産業界の現状について紹介します。

外国人は「国籍」を理由に契約できないことがある

外国人居住者が多い新宿区の調査によると、調査対象となる外国人1,024人のうち227人(約22%)の外国人が家を探すときに偏見や差別を感じたと回答しています。

国籍を理由に断られてしまった外国人からは、以下のような声があがっています。

  • 入居拒否された経験が10回以上ある
  • 長く日本に暮らしていて、日本語が話せるのに断られてしまった
  • 保証会社などの審査をクリアしてもオーナーに断られてしまった

また、入居を断った理由を聞くと「教える必要はない」と言われてしまうこともあるそうです。
そのほかにも「審査自体に時間がかかる」ことや「初期費用が高額」なことも、外国人が日本の賃貸契約に難しさを感じる要因となっています。

住民は「外国人が近所に暮らす」ことに抵抗はあまりない

引用:新宿区 令和5年度 新宿区多文化共生実態調査

同調査での日本人住民の回答は、近所に外国人が生活することを好ましくないと回答している割合は10.8%と非常に少ないです。

外国人が多い新宿区での調査結果であることから、外国人に起因するトラブルで不満・不安を感じる割合はそこまで多くないことがわかります。

参考:新宿区 令和5年度 新宿区多文化共生実態調査

このことから「入居審査の基準」と「実際の状況(現住民の意見)」が適正であるかどうかは正直なところ不透明です。

UR賃貸住宅が取り組む「外国人の暮らし」への支援策

引用:UR賃貸住宅

UR賃貸住宅は、国土交通省が管理する都市再生機構が提供する賃貸住宅のことです。
住宅の提供だけでなく、多様な世代が生き生きと暮らし続けられる住まい・まちを目指して地域資源であるUR賃貸住宅ストックの地域及び団地ごとの特性に応じた多様な活用を推進しています。

ここからは、UR賃貸住宅が取り組む「外国人の暮らし」への支援策について紹介します。

外国人に対する入居拒否がない

UR賃貸住宅では、一般の賃貸で起こりがちな「国籍が理由の入居拒否」はありません。
共生社会が必然的に進むなか、外国人の入居を積極的に受け入れています。これにより、外国人の社会参加や安定した生活を支援しています。

ただし、UR賃貸は持っている在留資格が「永住者」「外交」「公用」「特別永住者」「中長期在留者(就労系など)」の外国人が申し込み可能となっています。短期滞在の方は申し込み対象外です。

日本語堪能でなくても借りられる

UR賃貸住宅の制度として、借主に対して高度な日本語能力は求められません。
日本語を勉強中・不安がある場合は、物件探しや公共料金の申請手続きの際に日本語がわかる知人が同行するようにしましょう。

日本人や他の住人と交流できる

自治会によって定期的に開催されるイベントでは、同じ地区で暮らす人々と交流ができます。
場所によっては地域の語学教室に参加できるなど、UR賃貸住宅が多文化共生や地域交流の拠点となっています。

そのほかにも、居住者向けの相談窓口に外国人対応用のシステムが導入されるなど、フォローアップが充実しているのも特徴です。
外国人が日本で暮らすうえで、会社の人以外に頼れる存在がいることは非常に心強いため、積極的に活用したいサービスです。

連帯保証人が不要

外国人が賃貸契約する際に障壁となりがちなのが「連帯保証人」の制度です。
家族を母国に残して来日している場合など、身近に保証人の候補となる人がいない場合も多く、日本人よりも契約のハードルが高いのが実情です。

UR賃貸住宅の場合は、連帯保証人・家賃保証会社の利用が不要です。このため連帯保証人を立てることが難しい外国人だとしても、契約をスムーズにすすめられます。

礼金・仲介手数料・更新料が不要

一般の賃貸住宅で必要とされる礼金・仲介手数料・更新料についても、UR賃貸住宅の場合はすべてが不要です。
負担が大幅に軽減されるため、日本へ出稼ぎに来た外国人にとって大きなメリットがあります。

ハウスシェアリングができる

UR賃貸住宅のうち、一部の物件についてはハウスシェアリングが可能です。

外国人労働者は日本での1人の生活に心細さを感じることが多いです。
UR賃貸のハウスシェアリング制度を使うことで、出身国が同じ単身者同士が協力しあうために共同で生活したいという居住ニーズを実現できます。

社宅として使える

企業が社宅としてUR賃貸住宅を借りることも可能です。
外国人従業員のために住居を確保する際にUR賃貸住宅を利用することも多く、それぞれの企業ニーズにも柔軟に対応しています。

参考:UR賃貸住宅

外国人労働者は右肩上がりに増加する見込み

引用:参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

2023年10月末時点で、日本で働く外国人は200万人を超えています。
コロナ禍の際も外国人労働者数が減少することはなく、15年以上右肩上がりに増加しています。

こういった傾向もあり、政府は外国人の受け入れに関する制度の見直しについて議論を重ねています。
近ごろは「特定技能の対象分野拡大」や「技能実習制度の廃止・変更」など外国人労働者の待遇を良くするための動きがあり、これらが実現することでさらなる外国人労働者の増加を見込んでいます。

参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

「住居探し」や「暮らしの支援」に関する外国人への取り組みも、今後の動向で注目したいポイントです。