製造業の外国人雇用|在留資格と採用の進め方【2025年版】
求人を出しても応募が集まらず、やっと内定を出しても辞退されてしまう。そんな悩みを、工場長や現場のリーダーから聞いたことはないでしょうか。
人手不足が続く製造業では、外国人を採用することが現実的な選択肢になっています。
この記事では、外国人雇用の基本や在留資格の種類をわかりやすく整理しました。
さらに、製造業での採用の流れや費用の目安、よくある質問への答えもまとめています。読み進めることで、採用の全体像をつかめるはずです。
目次
製造業で外国人雇用はどれくらい進んでいる?【最新データ】
国内の製造現場では、日本人の働き手が少しずつ減っています。一方で、欠員を埋める力として外国人の存在感は大きくなっています。
まずは「全体の人数の変化」と「外国人の増え方」を、データから見ていきましょう。
人が減る中での採用、まず全体像をチェック

引用:2025年版ものづくり白書
製造業の就業者数は横ばいからやや減少傾向にあり、全体に占める割合は約20年で19%から15%台へと下がりました。
つまり、人が集まりにくい状況で採用に取り組んでいるのです。
母数が縮むと、求人を出しても応募は集まりにくくなります。
さらに高齢化による退職も進み、教育の負担が重くなるのが現状です。その結果、採用・育成・定着を同時に考える必要が出てきます。
これを既存メンバーだけで補おうとすれば、残業の増加や品質トラブルにつながる可能性が出てきます。
ポイント
- 製造業の働き手は減少を続けている
- 欠員補充が絶えず、採用は長期化しやすい
- 「人が少ない前提」でスピード感ある採用と分かりやすい求人設計が求められる
外国人比率は約6%に、なぜ伸びている?

引用:2025年版ものづくり白書
コロナ期の落ち込みを超えて、外国人労働者数は増加傾向にあります。
直近では全体の約6%を占め、製造ラインや検査だけでなく、保全補助や品質・生産管理、さらには通訳まで役割が広がっています。
現場では、外国人を受け入れるのに合わせてSOP(標準作業手順)の見直しや教育の強化が進んでいます。
たとえば、写真や図を多用した多言語マニュアルを整えることで、仕事を覚えるスピードが上がり、小さなミスやトラブルも減少。結果的にラインが安定して動き、不良品も少なくなるケースが目立っています。
単なる人手の補充にとどまらず、現場の仕組みづくりが前進することが大きなメリットです。
ポイント
- 外国人の割合は増え続け、活躍の場も広がっている
- 受け入れと同時に教育や標準化が進みやすい
- 安定した生産や品質向上にも結びつく
まとめると、製造業では働き手が減少し続けているものの、求人需要は依然として高く、採用の難しさは残っています。
こうした状況を支える存在として、外国人雇用の拡大がますます重要になっているといえるでしょう。
現場と事務で「働ける在留資格」は?

製造業で外国人を採用するときは、「どの仕事を、どの在留資格で任せられるのか」を整理しておくことが大切です。まずは全体像をざっくり把握してから、それぞれの資格を確認していきましょう。
職務と主な在留資格の対応例
- 現場ライン・検査・組立:特定技能/技能実習(教育目的)/身分系
- 品質・生産管理・改善活動:技術・人文知識・国際業務(技人国)/特定技能/身分系
- 通訳・多国籍チームの連携:技人国/特定技能/特定活動/身分系
- 事務・調達・資材管理:技人国/特定技能/身分系
※ 特定技能は「制度上の対象業務」に限り就労可能です。任せたい仕事内容と制度の範囲が合っているか、必ず確認しましょう。
※ 技能実習は教育を目的とする制度のため、単純作業だけを切り出して任せることはできません。
技術・人文知識・国際業務(技人国)
この資格は専門知識やスキルを活かす「ホワイトカラー寄り」の仕事が対象です。
たとえば設計、CADオペレーション、品質管理、海外取引に関わる調達や通訳などが含まれます。
反対に、単純作業を中心とする現場ラインに配置すると制度違反になる可能性があります。
大切なのは「知識を活かす業務が主」であることです。そのため、職務記述書をしっかり整え、任せる業務が適切であることを明記しておくと安心でしょう。
特定技能1号・2号
特定技能は、人手不足が深刻な分野で外国人が即戦力として働ける資格です。
製造業では「工業製品製造業分野」に含まれ、ライン作業、組立、検査、設備保全の補助まで幅広く対応できます。
1号は最長5年間ですが、一定条件を満たせば2号へ移行でき、長期就労や家族帯同も可能です。こうした仕組みによって、将来を見据えた雇用計画も立てやすくなります。
技能実習1号・2号・3号
技能実習は「学んだ技能を母国へ持ち帰る」ことを目的にした制度です。
実習生は教育計画に沿って段階的にスキルを身につけていく必要があります。つまり、単純作業だけを繰り返させるのは制度の趣旨に反するため許されません。
受け入れ企業には、OJT記録や評価シートで技能の習得状況を示す責任があります。人手不足を補うだけの目的で使うのはリスクが高いですが、教育体制を整え、将来的に特定技能へ移行する道筋を描けば、企業と本人の双方にメリットが生まれるでしょう。
身分系の在留資格
身分系とは、永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等を指します。これらの資格を持つ外国人には就労制限がなく、日本人と同じように働くことが可能です。
現場ラインから品質管理、事務職まで幅広く任せられるのが特徴です。更新の心配も少ないため、安定した戦力として期待しやすい層といえるでしょう。
特定活動と資格外活動(アルバイト)
特定活動はケースによって内容が異なり、就労の可否も個別に決まります。
たとえば「46号」では、大学や専門学校で学んだ知識を活かすフルタイムの仕事が想定されています。現場作業も「通訳や指導とセット」であれば認められる場合があります。
一方、留学生や家族滞在者は資格外活動の許可を得れば週28時間まで働けます。基本的にアルバイトやパートとしての採用が多く、現場・事務いずれの作業も可能です。
また、留学生は長期休暇中であれば週40時間まで拡大できます。ただし、繁忙期に時間を超えてしまわないようシフト管理が必須です。
他社での勤務も合算して確認する必要があるため、本人と共有できる仕組みを整えることが安全につながります。
製造業の外国人採用はどう進める?

外国人を採用するとき、最初に迷いやすいのが「採用までの全体の流れ」です。
ここでは段階ごとに要点をまとめ、あわせて費用の目安も紹介します。
細かな書類やチェックポイントは別記事で詳しく解説しているので、まずは流れを大きくつかんでみましょう。
STEP1|職務内容の確認
最初に行うのは「任せる仕事」と「在留資格」が合っているかの確認です。
ライン作業を担当させる場合は特定技能や資格外活動(アルバイト)、改善や設計業務なら技人国など、仕事内容ごとに適した資格は違います。
職務記述書をあらかじめ用意し、現場責任者とも共有しておけば、後のトラブルを防ぎやすいでしょう。
確認段階でかかる費用の目安
- 社内調整にかかる工数(人件費換算)
- 職務記述書や募集要件を作成する時間
- 求人票やマニュアルの多言語化コスト
STEP2|募集・選考
募集段階では「仕事内容をどれだけ具体的に伝えられるか」が大切です。写真や動画で現場の雰囲気を見せると応募率が上がる傾向があります。
選考では口頭面接だけに頼らず、作業見学や簡単な実技を取り入れるとミスマッチを防ぎやすいです。
応募者の理解度を確認しながら進めることで、入社後の定着率が高まるでしょう。
募集・選考にかかる費用の目安
- 求人広告費や人材紹介料
- 通訳や翻訳にかかる費用
- 面接や選考に必要な社内工数
STEP3|契約・在留手続き
内定が出たら、在留カードの「資格名」「期限」「就労制限」を必ず原本で確認しましょう。
契約内容が資格の範囲から外れていないかをチェックし、必要があれば更新や変更を申請します。入社日から逆算して、余裕を持って準備を進めることが重要です。
契約・手続きにかかる費用の目安
- 申請に必要な収入印紙代
- 写真や翻訳書類の作成費用
- 行政書士など専門家に相談する費用
STEP4|受け入れから定着サポートへ
採用後の最初の3か月は「定着のカギ」となる大切な時期です。初日には安全衛生教育を徹底し、多言語化したマニュアルや指差し確認を取り入れると安心してスタートできます。
30日・60日・90日などの節目には面談を行い、悩みや課題を早めに把握できる体制を整えましょう。そうすることで、働き続けやすい環境が生まれます。
受け入れ・サポートにかかる費用の目安
- 保護具や制服などの備品購入費
- OJTや研修にかかる工数
- マニュアル作成や教育資料の整備費用
雇用前に何をチェックする?

外国人を採用するときに、まず確認しなければならないのが「在留カードの内容」と「契約との整合性」です。
ここを見落とすと、知らないうちに資格外活動や不法就労につながり、企業側が責任を問われてしまう危険があります。そうならないためにも、採用担当者が最低限押さえておくべきポイントを整理しておきましょう。
在留カードの正しい見方と必要書類
在留カードは、外国人が働けるかどうかを判断する「身分証明書兼就労許可証」です。
表面には「在留資格名」「在留期限」「カード番号」、裏面には「就労制限の有無」や「資格外活動許可」の有無が書かれています。
契約書に記載した仕事内容と、在留資格で認められる就労範囲が合っているかを必ず確認しましょう。
たとえば「技人国」の資格なのに、単純なライン作業をさせてしまうと資格外活動にあたります。入社前の段階で、職務記述書と在留資格を突き合わせて確認することが欠かせません。
事前に準備しておく書類
- 在留カード(入社日に表裏両面のコピーを保管)
- 雇用契約書(職務内容を明記したもの)
- 住民票や本人確認書類
- 資格外活動許可(留学生や家族滞在者の場合)
資格外活動と不法就労の注意点
在留資格で認められていない業務を任せてしまうと、それは資格外活動になります。
さらに企業がそれを黙認すると、不法就労助長罪に問われるおそれがあり、罰則や企業イメージの低下につながりかねません。
こうしたリスクを避けるためには、就労範囲を明確にして社内で共有しておくことが大切です。
具体的には「この資格でできる作業一覧」を現場に掲示したり、日報や作業記録に業務内容を残しておくことが効果的です。
判断に迷った場合は専門家へ相談し、採用の段階から適法性を確保する姿勢を持つことが信頼につながります。
安全に進めるための工夫
- 作業範囲リストを掲示し、資格外作業を防止
- 日報や勤務記録に業務内容を残す
- 在留期限を台帳管理し、アラートを設定
- 行政書士などの専門家に相談して不安を解消
製造業が外国人雇用で得られる効果は?(人手・品質・スピード)

外国人雇用は「人手不足を補う」だけで終わりません。実際の現場では、若い労働力の確保に加え、職場全体の雰囲気や改善への意識が高まるなど、さまざまな効果が見られます。
ここでは製造業でよく挙げられるメリットを整理してみましょう。
1. 若い労働力を確保できる
国内の製造業では高齢化が進み、20〜30代の人材を集めるのが難しくなっています。一方で、外国人採用では若い世代の応募が多く、体力を必要とするライン作業や交代勤務に強みを持っているのが特徴です。
長期的に見れば工程リーダーや次世代の技能者に育つ可能性も高く、組織の若返りを後押ししてくれるでしょう。
2. 職場に前向きな雰囲気が生まれる
「しっかり稼ぎたい」「新しいことを学びたい」という目的を持つ外国人は意欲的に働きます。その姿勢が作業改善や効率化の提案につながる場合もあります。
こうした前向きな取り組みは周囲の社員に良い刺激を与え、職場の空気が明るくなることが多いです。また、日々の仕事の中で新しい情報共有の仕組みや多言語対応の工夫が広がり、コミュニケーション全体が活発になる効果も期待できます。
3. 品質やスピードの底上げにつながる
外国人を受け入れる際には、多言語マニュアルやSOP(標準作業手順)の整備が進む傾向があります。
こうした仕組みづくりのおかげで現場全体の効率や品質が向上しやすくなるのです。
教育体制も体系化されるため、ベテランと新人の知識格差が縮まり、不良率の低下や納期遵守率の改善といった成果につながるケースも少なくありません。
4. 採用広報や企業イメージの向上
「外国人も安心して働ける職場」という発信は、日本人応募者にとっても安心材料になります。
たとえば、現場の写真や多国籍メンバーの声を採用ページに載せることで、受け入れ体制をしっかり示せます。結果的に、次の採用活動でもプラスに働くでしょう。
製造業での外国人労働者の採用事例を紹介
ここからは、在留外国人向けの求人媒体「Guidable Jobs(ガイダブルジョブス)」を利用して、実際に採用につながった事例を紹介します。
単に数字を追うだけではなく、「なぜ採用に成功したのか」「どんな工夫が効いたのか」を具体的に見ていきましょう。
事例1|即戦力人材の採用に成功
- 地域の在留外国人数:約1万人
- 掲載期間:180日/採用人数:1名
外国人求人がほとんどない地域で、他県在住の候補者を採用しました。決め手となったのは、サポート体制を手厚く整えたことです。
休憩所やシャワー、ロッカーを用意し、資格取得費用も会社が負担。さらに給与レンジの中位以上に当たる条件を提示したことで、スキルの高い人材を迎えることができました。
ポイント:求人が少ない地域ほど「待遇の見える化」が強い差別化になります。
事例2|掲載初日から多数の応募者を獲得
- 地域の在留外国人数:約7,000人
- 掲載開始から3日で紹介者3名/採用決定1名
掲載初日から応募が集まり、わずか3日後には複数の紹介が入りました。
採用につながった理由は「外国人採用に積極的である」という姿勢を求人原稿で前面に出したことです。
実際に多くの外国籍社員が働いていることや、柔軟なシフト対応、社員登用制度があることを伝えた結果、応募者に安心感を与え、短期間で採用が決まりました。
ポイント:働きやすさや安心感を示すことで、応募スピードは大きく変わります。
事例3|人口の少ない地域でも6名を採用
- 地域の在留外国人数:約350人
- 掲載期間:120日/採用人数:6名
人口が少ない地域にもかかわらず、12名の応募のうち6名を採用しました。
成功の秘訣は、日本語レベルの条件を下げ、主婦層をターゲットにしたことです。さらに、多数の外国籍社員が働く環境や、管理職を目指せるキャリアパスを示すことで「地域に長く根付いて働きたい層」を引きつけました。
ポイント:小規模エリアでは「対象層を絞る」「将来像を示す」が決め手になります。
よくある質問(FAQ)
Q. ライン作業はどの在留資格で可能ですか?
A. 特定技能・技能実習・特定活動で対応できます。条件付きではありますが、留学生アルバイトも従事可能です。
- 特定技能:人手不足分野の枠組みとして、幅広い業務の一部として現場作業が可能
- 技能実習:教育計画に沿った技能習得が目的。単純作業だけを任せることは不可
- 特定活動(46号):通訳など言語を活かす業務とセットであれば現場作業も可能
- 留学生・家族滞在(資格外活動許可あり):週28時間以内ならアルバイトとして勤務可能
Q. 技人国で現場作業と事務の兼務はできますか?
A. 原則としては認められませんが、例外的に「品質管理や改善のために現場を確認させる場合」や「研修の一環として業務理解を深める場合」に限り可能です。
技人国は知識や技術を活かすホワイトカラー業務を対象としています。そのため単純作業を主とする配置は認められていません。ただし品質管理のために一部の作業を実演する場合や、研修段階で短期間だけ現場に入る場合は適合すると考えられます。
主従関係が逆転しないよう、職務記述書に「知識を活かす業務が主」と明記しておくと安心です。
Q. 留学生は週に何時間まで働けますか?
A. 原則は週28時間まで、長期休暇中は週40時間まで働けます。
いずれも資格外活動許可を得ていることが条件です。他社での勤務も合算されるため、本人任せにせず企業側でもシフト管理を行う必要があります。
違反があると学生本人だけでなく雇用側にも責任が及ぶので注意が必要です。
Q. 在留カードはどこをチェックすればよいですか?
A. 表面の「在留資格名・期限」と、裏面の「就労制限・資格外活動許可」を確認してください。
採用時には、雇用契約で定めた職務内容と資格の範囲が一致しているかを必ず照らし合わせます。さらに、コピーを保存し、更新期限を台帳で管理しておくと安全です。
Q. 外国人雇用にかかる費用はどのくらいですか?
A. 求人広告や紹介料に加え、通訳・教育・手続き費用など段階ごとに発生します。
たとえば、募集段階では広告費や紹介料、採用後は在留手続きに必要な印紙代や翻訳費がかかります。さらに受け入れ準備では、備品や保護具の購入費も必要です。
ステップごとに費用を把握しておけば、予算超過を防ぎやすくなります。
Q. 補助金や助成金は利用できますか?
A. 利用可能です。教育・多言語化・定着支援に使える制度があります。
外国人雇用にかかわる助成制度は年度ごとに条件が変わります。教育研修や定着支援に活用できるものが多いため、申請要件を確認したいときは補助金・助成金まとめの記事を参考にしてください。
さいごに
製造業での外国人雇用は、人手不足を補うだけではありません。新しい力が加わることで現場に活気が生まれ、前向きな雰囲気を広げてくれる大きなきっかけにもなります。
ただし、そのためには在留資格や契約内容をきちんと確認し、安心して働ける環境を整えることが欠かせません。
むずかしく考えすぎず、まずは在留カードの確認や仕事内容の整理といった基本から始めてみましょう。こうした小さな一歩の積み重ねが、職場の安定と次の採用の成功へとつながっていくはずです。
外国人雇用を通じて現場をより良くしたい方へ
外国人雇用に関心はあっても「実際にうまくいくのだろうか」と不安を抱える方は多いものです。
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