製造業の人手不足を解消するための外国人雇用とは? 採用事例や雇用するメリット、製造業で働ける在留資格の種類について解説
少子高齢化が進む現代において、製造業では人手不足が深刻化しています。こうした中で、外国人労働者が日本の製造業を支える重要な役割を果たしていることがわかっています。 本記事では、製造業における労働者層の変化や外国人を雇用するメリット、必要な在留資格、製造業での外国人雇用に関する注意点について解説します。
55万人の外国人労働者が支える日本の製造業
まずは、製造業における日本人・外国人労働者の現状と関係性についてデータを用いて説明します。
高齢化やスキル不足により、製造業への就業者割合は低下
日本の全産業における就業者数は(コロナ禍で一時的に減少したものの)全体で見ると増加傾向にあります。
一方、製造業の就業者数については横ばいが続いており、全産業に占める製造業の就業者の割合が低下していることが公表されています。
製造業の人材不足には「若者離れ(高齢化)」や「スキルを持つ人材の減少」「労働条件に対する不満」などが関係していると言われています。
日本人労働者が減った分を外国人労働者が補っている
製造業の就業者数は低迷が続いているものの、業界内の外国人労働者数は増加しています。これは、離職・退職する日本人労働者数と同じくらいの新たな外国人労働者が製造業に就いていることを意味します。
また厚生労働省の発表によると2023年の外国人労働者数は204万人、そのうち製造業に従事する外国人は55万人で、全体の 27.0%を占め最多となっています。
この状況から、製造業における外国人労働者の役割と重要性がますます高まっていることがわかります。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)
▼製造業以外に人手不足になっている業界についてはこちらをチェック!
【2024年版】人手不足が起きている業界の現状と解決策をご紹介!
製造業で雇用可能な在留資格
製造業で外国人を雇用するには、以下のいずれかの在留資格を持っている人材を採用することが前提となります。
技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特定活動、留学、家族滞在、文化活動
各在留資格で可能な業務範囲が異なるため、ここからはその内容について解説していきます。
就労系の在留資格
技術・人文知識・国際業務
略して「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれるこの在留資格は「外国人労働者の専門性を活かすこと」を目的としています。
そのため、技術的な業務や知識を生かす業務に就くことができます。ライン作業などの単純労働はできません。
【例】技術・人文知識・国際業務の業務
企画・開発、エンジニア、CADオペレーター、生産・品質管理、通訳・翻訳、マーケティングなど
▼技人国ビザについてより詳しく知りたい方はこちらをチェック!技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザってなに? 取得する条件、雇用する際のポイント、注意点について
特定技能1号・2号
「特定技能」は人手不足となっている特定産業分野において「即戦力となる外国人材を受け入れること」を目的としています。
ある程度の知識や技術を持っている人材のため、企業内の様々な業務に就くことができます。単純労働をおこなうことも可能です。
在留資格「特定技能」について|受け入れまでの流れは? 支援計画10のポイントについても収録
技能実習1号・2号・3号
「技能実習」は途上国などの「母国で活かせる技能の習得を目指し、日本で人材を育成(実習)すること」を目的としています。
可能な業務は作業ごとに細かく分類されており、現在は90職種165作業が対象作業とされています。技術を教えるための在留資格のため、ライン作業などの単純労働は含まれていません。
技能実習生の受け入れが可能な90職種165作業を解説! 受け入れるメリット、特定技能への移行についても知りましょう
【最新情報】新制度「育成就労」について|技能実習制度との違い、何が変わるのか、今後の動きを詳しく解説
身分系の在留資格
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者
身分系と呼ばれるこれら4つの在留資格は、就労制限がないため日本人と同じように雇用が可能です。つまり、単純労働を含めた製造業のすべての業務において就労できます。
「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説
就労系、身分系以外の在留資格
特定活動46号
「特定活動46号」の告示により外国人留学生の就職先が拡大し、飲食業や製造業でも就労が可能になりました。
留学を通して学んだ技術的な知識や語学力などを生かす業務に従事することを前提としており「外国人従業員への言語サポート」などが含まれていれば、外国人従業員と一緒に単純労働をおこなうことも可能です。
留学・家族滞在・文化活動
これら3つの在留資格は、就労により収入を得ることは原則認められていません。
ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
たとえば「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限がありますが、これを守ればライン作業などの単純労働に就くことができます。
アルバイトで採用できる在留資格は? 資格外活動許可が必要な資格はある?
製造業で外国人を雇用するメリット
外国人雇用によって得られるメリットはさまざまあります。
メリット① 若い労働力が確保できる
若者は新しい技術やその応用方法に対する理解が早く、柔軟性や積極性が高いので積極的に採用したいと考える企業は少なくありません。
その反面、少子高齢化により若い日本人労働者数は減少しているのが現状です。このような状況下で若い労働力を確保することが難しくなると、製造業の未来に対する不安も募ります。
しかしながら厚生労働省の発表によると、外国人労働者の数は「20〜29歳」の割合が最も多いことがわかります。
そのため若い外国人労働者を採用することで長期的に人材不足を解消でき、製造業の企業存続に良い影響を与えることが期待できます。
参考:厚生労働省 在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移
メリット② 労働意欲が高く、社内のモチベーションが向上する
就労目的で来日した外国人の中には「日本の技術を学びたい」「家族のためにもっと稼ぎたい」と考えていて働く熱意や意欲が高い人が多くいます。その意欲は業務に対する積極性や責任感としてあらわれます。
そんな彼らの積極的な姿勢は、なんとなく働いていた日本人従業員にも刺激を与え、社内全体のモチベーション向上にも繋がります。その結果として、企業全体の生産性向上につながる企業も少なくありません。
メリット③ 企業のブランドイメージが向上する
外国人雇用など多文化環境での働き方を積極的に推進することで、多様性を尊重し職場環境をより良くしているという印象を世間に与えることができます。
グローバル化が急速に進むなか、いち早く外国人雇用を始めることで社会的な評価を高めてブランドイメージを向上させることができます。
また外国人労働者の存在は、周辺のコミュニティだけでなくインバウンドや国際市場においても優秀な戦力となるため、企業の発展にも貢献します。
メリット④ 短期間で大量募集できる
日本で暮らす外国人の中には「働きたくても働き口が見つからない」という人が多くいます。
たとえば、外国人留学生の就職に関する調査によると、日本での就職を希望している人のうち2割が就職先を見つけられていません。
その理由として最も多かった回答が「外国人向けの求人が少ない」ということでした。
このような状況から、外国人向けの求人を出した企業には多くの応募者が集まる傾向があります。
限られた求人情報に対して応募者が集中している今のうちに、外国人採用を始めると大量採用のチャンスが広がります。
こういった短期間・大量採用の実績については、後項で紹介していきます。
メリット⑤ 政府の支援プログラムが利用できる
外国人労働者の雇用には、政府の助成金や補助金を活用することができます。これにより、雇用コストの削減や研修プログラムの充実が図られ、企業の経済的なメリットが生まれます。
また、政府との協力により、外国人労働者の雇用に関する法的な問題や手続きをスムーズに進めることもメリットとして挙げられます。
外国人雇用で使える助成金・補助金一覧をまとめました! 外国人採用を始めようとしている企業必見
製造業での外国人雇用に関する注意点
製造業界で活躍している外国人労働者も多く、日本人労働者の代わりを担っているということをご紹介してきました。 しかし、前述した通り、在留資格別にどのような仕事ができるか、などに違いがあります。 また、初めて外国人を雇用するという際にはしっかり押さえておきたい注意点もあるのため、ここでは製造業界における外国人労働者雇用の注意点をご紹介していきます。
在留資格をチェック!
外国人労働者を雇用する際には、前述した在留資格を確実にチェックし、就労資格があるか、またどのような職種で雇用できるかをチェックする必要があります。就労資格外の仕事をしてしまうと、労働者側だけでなく、雇用主、企業側も不法就労罪に問われてしまうからです。こちらの就労資格などの点を踏まえて、身分系外国人ですと就労制限が一切なく、日本人を同じように雇用できるため、初めての外国人採用、雇用でも安心しておこなえます。
在留期間に制限がある場合
在留資格によって在留期間はことなります。そのため、在留資格でどのような職種につけるか、仕事ができるかをチェックすると同時に、在留カードを確認し、在留期間もしっかり把握しておきましょう。
社内体制・コミュニケーション
外国人を雇用する際に注意したい点として、社内体制やコミュニケーションスタイルに関してもあげられます。製造業界で仕事に関するマニュアルの説明や、専門用語を使用する際には、外国人労働者にとって理解しにくいことも多々あります。 そのため、日本語でコミュニケーションを取るだけでなく、翻訳したデジタルマニュアルを完備したり、英語でコミュニケーションを取れる担当者を設けておくのがおすすめです。
▼外国人とのコミュニケーションについてはこちらをチェック!外国人と上手くコミュニケーションをとるポイント・コツ4選|注意点やその対策についても解説
製造業での外国人労働者の採用事例を紹介
ここからは、在留外国人向け求人媒体である「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」を利用して、外国人採用に成功した事例を紹介いたします。
【事例1】即戦力人材の採用に成功!
- 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約1万人
- 掲載日数:180日
- 採用者数:1名
- 企業のサポート内容:休憩所・シャワー室・ロッカー完備、資格取得費を会社が負担
他県在住の外国人を越境採用。
外国籍の方向けの求人が少ないエリアで外国人の求人数が少ないからこそ、サポート内容を充実させることでスキルの高い人材(給与の幅で中間の以上に該当)の採用に成功しました。
【事例2】掲載初日から多数の応募者を獲得!
- 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約7千人
- 採用者数:1名
- 企業のサポート内容:多数の外国籍者が勤務している環境、柔軟なシフト対応、社員登用制度あり
掲載開始初日に2名ご紹介、掲載開始3日後に1名ご紹介。1週間のご検討後、1名の採用が決まりました。
「外国人採用を積極的におこなっている企業」といった働きやすさ・安心感を企業の特徴として強調することで採用に成功しました。
【事例3】人口の少ない地域も大人数採用に成功!
- 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約350人
- 掲載日数:120日
- 採用者数:6名
- 企業のサポート内容:多数の外国籍者が勤務している環境、管理職が目指せる
12名の応募者のうち、6名を採用。
日本語要件を低く設定し、主婦層をメインにアプローチすることで採用に成功しました。
さいごに
企業が外国人労働者を受け入れるメリットは大きく、彼らは製造業の未来を支える大きな力になります。
雇用後に長期的に働いてもらうためにも、文化の違いやコミュニケーション方法を理解してより良い関係を築いていきましょう。