少子高齢化が進む現代において、清掃業では人手不足が深刻化しています。
こうしたなかで、外国人採用を始めたいと考えている企業は少なくありません。

本記事では清掃業界の企業が外国人を雇用するメリットや、外国人が清掃業で働く場合に必要な在留資格について解説します。

日本の清掃業は常に人材が不足している

まずはじめに、清掃業の人手不足の現状について簡単におさらいしておきましょう。

厚生労働省の発表によると、清掃業界は令和10年度には約9万8千人の人手不足になると予想されています。
現在までも有効求人倍率は2〜3%と高止まりしており、人材確保が困難な状況が続いています。

人手不足の原因は「業界の高齢化」「労働環境や仕事のイメージの問題」「離職率の高さ」などが挙げられます。
こうした状況のなか、政府は労働環境の改善を進めるとともに「外国人労働者の受け入れ」に向けた制度を整えています。

参考:厚生労働省 労働経済の分析

参考:出入国在留管理庁 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針

清掃員求人への応募が減少している? 清掃業が直面している問題を解決する方法はある?!

清掃業で雇用可能な在留資格

清掃業で外国人を雇用するには、以下のいずれかの在留資格を持っている人材を採用することが前提となります。

特定技能、技能実習、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、留学、家族滞在、文化活動

各在留資格で可能な業務範囲が異なるため、ここからはその内容について解説していきます。

就労系の在留資格

特定技能1号・2号

「特定技能」は人手不足となっている特定産業分野において「即戦力となる外国人材を受け入れること」を目的としています。
特定産業分野には「ビルクリーニング」が指定されており、清掃業はこの分野に該当します。
※特定技能外国人の産業分野は、本人のパスポートに添付されている「指定書」で確認できます

特定技能外国人は分野に関するある程度の知識や技術を持っている人材のため、企業内の様々な業務に就くことができます。単純労働をおこなうことも可能です。

ちなみに、特定技能(ビルクリーニング)はオフィスや商業施設、マンションの共用部分などの清掃員であり、ハウスキーパーは含まれません。

在留資格「特定技能」についてぜんぶわかる|制度の概要・受け入れや支援の方法・関連機関の役割をまるっと解説

技能実習1号・2号・3号

「技能実習」は途上国などの「母国で活かせる技能の習得を目指し、日本で人材を育成(実習)すること」を目的としています。
可能な業務は作業ごとに細かく分類されており、現在はビルクリーニングを含めた90職種165作業が対象作業とされています。
技術を教えるための在留資格のため、備品補充の繰り返しなど「単純労働者」としての雇用はできません。

技能実習生の受け入れが可能な90職種165作業を解説! 受け入れるメリット、特定技能への移行についても知りましょう

身分系の在留資格

永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者

身分系と呼ばれるこれら4つの在留資格は、就労制限がないため日本人と同じように雇用が可能です。つまり、単純労働を含めた清掃業のすべての業務において就労ができます。

オフィスや商業施設、マンションの共用部分などの清掃員はもちろん、ハウスキーパーとしても活躍できます。

「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説

就労系、身分系以外の在留資格

留学・家族滞在・文化活動

これら3つの在留資格は、就労により収入を得ることは原則認められていません。

ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。

たとえば「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限がありますが、これを守ればハウスキーパーや単純労働なども含めた清掃業全般の業務に従事できます。

アルバイトで採用できる在留資格は? 資格外活動許可が必要な資格はある?

清掃業で外国人を雇用するメリット

外国人雇用によって得られるメリットはさまざまあります。

メリット① 若い労働力を確保して離職率を下げられる

最近では清掃業でもDXが進み、スタッフが清掃ロボットや管理システムを活用する機会が増えています。
このような状況下で、新しい技術やその応用方法に対する理解がはやい若者を採用したいと考える企業は少なくありません。

少子高齢化により若い日本人労働者数は減少し、とくに清掃業界の企業求人への応募者は高齢化しています。
しかし日本人の現状とは異なり、外国人労働者の数は「20〜29歳」の割合が最も多いです。
そのため若い外国人労働者を採用することで長期的に働ける人材を確保でき、清掃業の企業存続に良い影響を与えることが期待できます。

参考:厚生労働省 在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移

メリット② 労働意欲が高く、チームのモチベーションが向上する

就労目的で来日した外国人の中には「日本の技術を学びたい」「家族のためにもっと稼ぎたい」と考えていて働く熱意や意欲が高い人が多くいます。その意欲は業務に対する積極性や責任感としてあらわれます。

たとえば、外国人従業員が真剣に清掃作業に取り組む姿や、効率的な働き方を学ぶ姿を見ることで、教える側の日本人従業員も自身の業務に対する意識を高めることができます。その結果、チーム全体の生産性が向上し、清掃サービスの質も高まることが少なくありません。

メリット③ 多言語コミュニケーションが可能になる

外国人労働者を雇用することで、多言語対応の向上が大幅に期待できます。
とくに商業施設や宿泊施設では、インバウンド需要が拡大するなか、清掃スタッフが施設についてふいに質問される機会が少なくありません。
そんな時に多言語で対応できるスタッフの存在が、施設のサービス品質の向上に寄与することがあります。

また、積極的に外国人を雇用して多様性を尊重することで、労働環境や清掃業界に対するイメージの向上にもつながります。
加速する「多文化共生の時代」において、いち早く外国人採用を始めた職場はブランドイメージが良い企業として認識されるでしょう。

メリット④ 短期間で大量募集できる

日本で暮らす外国人の中には「働きたくても働き口が見つからない」という人が多くいます。
たとえば、外国人留学生の就職に関する調査によると、日本での就職を希望している人のうち2割が就職先を見つけられていません。
その理由として最も多かった回答が「外国人向けの求人が少ない」ということでした。

このような状況から、外国人向けの求人を出した企業には多くの応募者が集まる傾向があります。
限られた求人情報に対して応募者が集中している今のうちに、外国人採用を始めると大量採用のチャンスが広がります。

こういった短期間・大量採用の実績については、後項で紹介していきます。

参考:文部科学省 外国人留学生の就職促進について

メリット⑤ 政府の支援プログラムが利用できる

外国人労働者の雇用には、政府の助成金や補助金を活用することができます。これにより、雇用コストの削減や研修プログラムの充実が図られ、企業の経済的なメリットが生まれます。
また、政府との協力により、外国人労働者の雇用に関する法的な問題や手続きをスムーズに進めることもメリットとして挙げられます。

外国人雇用で使える助成金・補助金一覧|自社に合う助成金・補助金を見つけて賢く外国人を採用しよう

清掃業での外国人労働者の採用事例を紹介

ここからは、在留外国人向け求人媒体である「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」を利用して、外国人採用に成功した事例を紹介いたします。

【事例1】多くの応募者から最適な人材の採用に成功!

  • 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約16万人(展開地域の合計)
  • 掲載日数:60日
  • 採用者数:2名
  • 企業のサポート内容:制服支給、社宅制度あり

採用枠2名に対して、131件の応募がありました。
「日本語の読み書きができなくても可」といった低めの日本語要件にすることで、日本語を勉強中の「身分系」や「留学」の外国人から人気が高い求人になりました。
また、スムーズに採用活動を進めるために、こちらの求人ではGuidableが一次面接を代行しました。

【事例2】人口の少ない地域でも短期間でスムーズに採用が成功!

  • 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約2千人
  • 掲載日数:30日
  • 採用者数:1名
  • 企業のサポート内容:制服貸与、Wワーク歓迎、未経験歓迎、資格取得制度あり、3ヶ月のフォローアップ期間あり

仕事に慣れるまでは「不安や疑問を相談できる面談の機会」を設けていることなど、働きやすさ・安心感を企業の特徴として強調することで、在留外国人が少ない地域でも採用に成功しました。

【事例3】身分系在留資格を持つ、若年層の外国人の採用に成功!

  • 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約7千人
  • 掲載日数:60日
  • 採用者数:1名
  • 企業のサポート内容:制服貸与、未経験歓迎、退職金制度あり(勤続3年以上)

42名の応募者のなかから、1名を採用。
退職金制度などの福利厚生が充実していることを目立つ所に記載することで「若年層(20代)」かつ「身分系」という長期就労を見込める外国人採用に成功しました。

さいごに

企業が外国人労働者を受け入れるメリットは大きく、彼らは清掃業の未来を支える大きな力になります。
雇用後に長期的に働いてもらうためにも、文化の違いやコミュニケーション方法を理解してより良い関係を築いていきましょう。