特定技能外国人を受け入れる方法|制度の概要、受け入れまでの流れ、支援計画10項目を作成するコツや注意点を解説
「特定技能にはどんな職種が該当する?」
「特定技能制度で外国人はより採用しやすくなる?」
「受け入れに必要な条件はある?」
在留資格「特定技能」に対しての疑問を解消するため、基本的な内容から、受け入れに関してなど、深く掘り下げた内容を解説いたします。
在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の概要
「特定技能」は、2019年4月にできた在留資格のこと。人手不足になっている特定産業分野(2024年10月時点で16分野)で、即戦力となる外国人材を受け入れることが目的で作られました。
在留資格は「特定技能1号」「特定技能2号」があり、当人の技能レベルなどで区分されます。
日本に在留している特定技能外国人の推移
2024年6月の時点で、日本に住んでいる外国人は251,747人に達しています。
とくに令和5年から増加が目立っていて、これからも受け入れる分野の拡大や制度の変更によって、特定技能を持つ外国人はもっと増えると予想されています。
その中でも、「在留資格変更許可を受けた人(緑色の部分)」が多くを占めています。これは、日本にすでに住んでいる外国人が特定技能の資格に移行しているケースが多いことを示しています。
特定技能に移行すると、外国人労働者は安定した仕事や賃金アップが期待できます。
企業にとっても、すでに国内で働いた経験のある外国人が特定技能を取得することで、すぐに戦力として働ける人材を確保できるというメリットがあります。
このような要因もあり、在留資格変更許可を受ける外国人が増えています。
特定産業に設定されている16分野
特定技能の在留資格を持って、働くことができる産業(特定産業分野)は以下の16分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業(2024年に追加)
- 鉄道(2024年に追加)
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業(2024年に追加)
- 木材産業(2024年に追加)
「特定技能1号」「特定技能2号」を取得できる外国人
特定産業分野において「即戦力」と認められるには、一定の専門性や技能をもっている必要があります。
専門性や技能レベルは、在留資格を申請するまえに「産業分野別の技能試験」「日本語試験」などで測ります。
分野によっては、実務経験がなくても、試験に合格して一定基準を満たせば在留資格の取得ができます。
特定技能1号と2号は何がちがう? 就業できる業種や取得要件の違い、1号から2号への移行について
特定技能外国人を受け入れるまでの流れ
出典:出入国在留管理庁 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
特定技能の外国人を受け入れる流れは、つぎのとおりです。
STEP1. 技能試験と日本語試験
日本語能力と、働きたい分野の技能を測るためにテストを受験します。
それぞれ国内開催・海外開催があり、公式ウェブサイトから受験の申し込みができます。
(※特定技能1号を取得する場合、すでに技能実習2号を良好に修了している人は試験が免除されます。)
STEP2. 就職先の決定
企業が募集する特定技能外国人の求人に対して、本人が直接申し込むか、民間の職業紹介事業者やハローワークなどを通して、求職活動を行って雇用契約を締結します。
STEP3.在留資格の取得(変更)申請
申請に必要な書類をそろえて、管轄の出入国在留管理庁に申請します。
申請者本人が日本に在留している場合は、在留資格変更の許可がおりると同時に「在留カード」が交付されます。
申請者が海外在住中の場合は「在留資格認定証明書」が交付されます。受入れ機関が在留資格認定証明書をもって査証申請することで、ビザ(査証)が発給され、入国が可能になります。
外国人本人は、在留カードを受け取ってから就労開始までの間に、「生活オリエンテーションの受講」「住民登録」「給与口座の開設」「住宅の確保」などを終わらせる必要があります。
外国人ひとりでの対応が難しい事がらについては、企業担当者がしっかりサポートしましょう。
STEP4. 就労開始
入社後に「外国人労働者の支援」をつづけることも受け入れの一環です。特定技能外国人の「支援計画」10のポイントについては後述します。
特定技能外国人の受け入れに関わる機関の役割・条件
出典:出入国在留管理庁 外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
特定技能の在留資格で外国人を雇用する場合、受け入れ手続きはおもに「外国人本人」「受入れ機関(所属機関)」のほかに「登録支援機関」「送り出し機関」などがかかわります。
ここからは、それぞれの役割について紹介していきます。
外国人本人の条件
条件 | |
1 | 18歳以上 |
2 | 技能試験および日本語試験に合格している(技能実習2号を修了ている場合は試験免除) |
3 | 特定技能1号で通算5年以上在留していない |
4 | 保証金を徴収されていない、または違約金を定める契約を締結していない |
5 | 自らが負担する費用がある場合はその内容を十分に理解している |
6 | 在留資格の取得条件に含まれる素行などの基本事項に問題がない |
受入れ機関(所属機関)の役割と条件
受入れ機関とは、実際に外国人を雇用する企業のことです。
以下の条件を満たし、支援責任者(担当者)を選任しておく必要があります。
役割と条件 | |
1 | 入管法や労働法などの法令を遵守している |
2 | 過去1年以内に特定技能外国人や同じ業務をおこなう日本人労働者を、会社都合で退職させていない |
3 | 過去1年以内に支援計画の不履行や賃金の未払いなど、会社の不正行為によって行方不明になる外国人労働者を発生させていない |
4 | 給料支払いを預貯金口座振込でおこなえる |
5 | 特定技能協議会へ加入できる |
6 | 外国人が十分理解できる言語で支援が実施できる |
特定技能1号を受け入れる場合は「支援計画」を策定し実施しなければなりません。(※特定技能2号は支援義務がありません)
この支援は書類作成や各種申請・契約の支援など専門的な知識が必要で、受け入れの際にいちばん手のかかる作業になります。
最初の「支援計画書」は受入れ機関が作成する必要があるため、登録支援機関から作成のサポートを受けるかたちになります。それ以降の書類作成や支援の実施は登録支援機関へ委託する企業が多いのが実情です。
登録支援機関の役割と条件
登録支援機関は「支援計画」の作成・実施など外国人のサポートをおこなう機関です。
受入れ機関が支援計画のすべてを、社内でおこなえる場合は必須ではありません。しかし登録支援期間は出入国在留管理庁に登録済みの専門機関であるため、手続きをスムーズにおこなう上で有用です。
以下の条件を満たしている機関が、「登録支援機関」として認められます。
条件 | |
1 | 入管法や労働法などの法令を遵守している |
2 | 支援責任者・支援担当者を選任する |
3 | 過去2年以内に中長期在留者(就労系の在留資格)の受入れ実績がある |
4 | 外国人が十分理解できる言語で情報提供などの支援を実施する体制がある |
5 | 過去1年以内に、会社の不正行為によって特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させていない |
6 | 支援の費用を直接または間接的に外国人本人に負担させない |
登録の期間は5年間で、つど更新があります。
登録支援機関の一覧は、出入国在留管理庁ホームページから確認が可能です。活用する場合は事業者名が登録されているかを確認しましょう。
参考:出入国在留管理庁 登録支援機関(Registered Support Organization)
登録支援機関とは? 特定技能1号の外国人雇用で利用できる、政府認定機関による労働者支援「10項目」を解説
送り出し機関の役割と条件
「送り出し機関」とは、日本で働きたい外国人を募集し、海外側で送り出すまでの手続きをサポートする機関です。(※技能実習制度での送り出し機関の定義とは異なります。特定技能では任意で利用可能な機関です。)
送り出し機関とは、すでに日本に在住している外国人の在留資格(留学や技能実習など)を「技能実習」に変更して雇用する場合は関わることが少ないです。
一方で、海外在住の外国人を呼び寄せる場合には、その国の行政機関と手続きをおこなう必要があるため、送り出し機関と関わることが多いでしょう。
在留資格にかかる申請や、求職の申込みを適切に取りつぐことができる者として「現地担当者の日本語能力レベルが高い」「適切な候補者の選定が可能」などの条件をクリアし、海外政府の推薦を受けている機関を選ぶことをおすすめします。
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特定技能外国人の「支援計画」10のポイント
特定技能の在留資格を持つ外国人は、他の在留資格とくらべて決められた支援内容が多いです。
とくに前項で紹介した通り「特定技能1号」を受け入れる場合は、支援の内容やその方法を書面にして提出する必要があります。
ここからは、外国人の職業生活・日常生活・社会生活上の支援が必要だとして省令で定められた10項目の支援内容について説明します。
1. 事前ガイダンス
在留資格認定証明書の交付申請前、もしくは在留資格変更許可申請前に、以下の内容を対面・テレビ電話などで説明します。
- 労働条件
- 活動内容
- 入国手続き
- 保証金徴収の有無 など
2. 出入国する際の送迎
- 入国時:空港〜事業所(または住居)間の送迎
- 帰国時:事業所(または住居)〜空港間の送迎、保安検査場への同行
3. 住居確保・生活に必要な契約支援
- 社宅の提供(もしくは連帯保証人になる等)
- 銀行口座の開設
- 携帯電話やライフラインなどの契約サポート
4. 生活オリエンテーション
円滑に社会生活を営めるよう、以下の内容を直接説明します。
- 日本のルールやマナー
- 公共機関の利用方法
- 事故や病気など、緊急時の連絡先
- 災害時の対応 など
5. 公的手続などへの同行
必要に応じて、住居地・社会保障・税などの手続きに同行して、書類作成をサポートします。
6. 日本語学習の機会の提供
日本語教室などの入学案内をする。
日本語学習教材の情報を与える。
7. 相談・苦情への対応
職場や生活上の相談・苦情などに対応する。
この際、外国人が理解することができる言語で、内容に応じた必要な助言や指導をおこなう。
8. 日本人との交流促進
たとえば、以下のように日本人と交流する機会を設けることができます。
- 社員同士の交流会を定期的に開催
- 自治会などが開催する、集会や交流会への参加
- イベントやお祭りなどの行事の案内
9. 転職支援(人員整理などの場合)
受入れる側の都合によって雇用契約を解除する場合は、転職先を探す手伝いや推薦状を作成しましょう。
求職活動を行うための有給休暇の付与、必要な行政手続きの情報を提供することも大切です。
10. 定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者が、外国人とその上司などと定期的に(3か月に1回以上)面談する。
労働基準法違反などがあれば、その旨を通報する。
※特定技能2号を雇用する場合は、計画書の提出が不要になります。
ただし、上記の環境は整えておくことが理想です。
自社での支援を考えている場合には、必要なことを整理して最低限10項目の実施が可能か判断を慎重におこないましょう。
さいごに
外国人労働者を受け入れる企業は「労働者の適正な処遇」「社会・文化的な適応支援」が重要です。
とくに特定技能の在留資格を持つ外国人に対しては、日本語教育や日常生活に関するサポートを積極的におこないましょう。彼らが日本社会に溶け込みやすい環境を作ることができれば、長く働いてもらうことができます。
外国人労働者が安心して働けるように、特定技能制度や関連機関についての理解を深めましょう。