外国人雇用で使える助成金・補助金一覧をまとめました! 外国人採用を始めようとしている企業必見
さまざまな業界で人手不足が深刻化している現在、採用活動や雇用維持にかかるコストを減らしたい企業は多いです。
この問題の一助となるのが「助成金」や「補助金」。これらにはさまざまな種類があり、手続きも複雑であるため、活用に至っていない企業が少なくありません。
今回の記事では、外国人を雇用すると活用できる助成金や補助金を紹介します。
外国人を雇用すると助成金や補助金が活用できる
助成金や補助金というのは、事業の取り組みを支援するために国や地方公共団体から支給される資金です。
その中には外国人雇用を行う企業を対象とした支援もあります。
それぞれの条件に沿った申請をおこない、取り組みの実施後に報告・審査を通過することで後払いで支給されます。
金融機関の融資とはしくみが違うため、返済や利息の支払義務がないことが多いです。
事業に関するすべての経費が支給されるわけではありません。それぞれの補助金の目的や趣旨に合った、経費の一部が対象となります。
助成金(じょせいきん)とは?
「助成金」とは政府や自治体、企業などが特定の活動やプロジェクトを支援するために返済不要で提供する資金です。
おもに社会的な課題解決や地域活性化、新しいビジネスの立ち上げ、教育や研究活動などを支援する目的で提供されます。
助成金の特徴は以下の通りです。
① 返済不要
助成金は、融資と違って返済する必要がありません。条件を満たせば、自由に使うことができます。
② 特定の目的に使用
助成金は、通常なら特定のプロジェクトや目的に使うことを条件として支給されます。たとえば雇用創出や環境保護、文化事業などが対象です。
③ 申請が必要
助成金を受け取るためには申請プロセスを通過し、審査に合格する必要があります。
申請書には活動内容、目標、予算の詳細などを記載します。
補助金(ほじょきん)とは?
「補助金」とは、政府や地方自治体が特定の目的を達するために提供する資金。おもに事業者や個人に対して支給されます。助成金と同じように、上記で述べた補助金も返済をしなくてもいい資金ですが、目的や使用に関する条件が厳しく定められていることが多いです。
補助金の特徴は次の通りです。
① 特定の目的への使用
補助金は、特定の目的(たとえば新技術の開発、エネルギー効率の改善、地域経済の活性化など)に限定して使用される資金です。そのため使用目的に合致したプロジェクトや活動にしか使えません。
② 支給額の一部負担
多くの場合、補助金は対象となるプロジェクトや事業の全額をカバーするものではなく、総費用の一部(たとえば50%など)を支給するかたちです。申請者は残りの費用を自己負担する必要があります。
③ 審査と報告義務
補助金を申請する際には事業計画や予算書を提出し、厳格な審査を受けます。また補助金が支給されたあとには、適切に資金が使われたかどうかを証明するために、定期的な報告が必要となることが多いです。
外国人雇用と関係のある助成金・補助金
外国人を雇用する際におすすめの助成金・補助金を紹介します。
外国人雇用で使える助成金
・人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
・中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金 ※東京都主催
・人材開発支援助成金
・キャリアアップ助成金
・業務改善助成金
外国人雇用で使える補助金
・外国人雇用の支援補助金 ※地方自治体主催
・インバウンド対応力強化の支援補助金 ※観光関係の団体主催
・国際化促進インターンシップ事業
つぎからは、上記の助成金・補助金について特徴を紹介いたします。
外国人雇用でおすすめの助成金
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
引用:厚生労働省 人材確保等支援助成金
外国人労働者は日本人と文化や言語にちがいがあるため、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向があります。
この助成金は外国人労働者の定着に向けて、企業が「言語や文化に配慮した働きやすい職場をつくる」ために、労働環境を整備する費用の一部を支援するものです。
項目 | 内容 |
対象者 | ・雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用している事業者 |
要件 | ・就労環境整備計画書を作成し、労働局長の認定を受ける ・計画書で策定した就労環境整備を期間内に実施する ・就労環境整備の実施後1年間の外国人労働者の離職率が10%以下である ・就労環境整備の実施前1年間と実施後1年間を比べて、日本人労働者の離職率が上がっていない |
支給額 | 支給対象経費の50%~66% (上限額57万円~72万円) |
支給対象経費 | 就労環境整備計画期間に支払いが完了した以下の経費 |
注意点 | ・導入する就労環境整備措置がほかの助成金を受けている場合は、この助成金の支給を受けることができない ・過去に当該助成金の受給経験がある場合でも、再度(2回目の受給)申請が可能 ただし、就労環境整備計画の提出は前回の当該助成金の支給決定日の翌日から起算して3年経過している場合のみ |
手続きの流れや詳細は、厚生労働省 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)で最新情報が確認できます。
中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金 ※東京都主催
引用:TOKYOはたらくネット 中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金
東京都が主催する、外国人労働者の中小企業への定着を促進する助成金があります。
この助成金は、外国人従業員へ日本語教育などをおこなう企業に対して、実施にかかる費用の一部を支援するものです。
項目 | 内容 |
対象者 | ・東京都に事業所を置き、日本語能力がN2レベル以下の外国人労働者を雇用している中小企業 |
要件 | ・計画書を作成し、東京都知事の認定を受ける |
支給額 | 支給対象経費の50% (上限額25万円) |
支給対象経費 | 研修にかかった以下の経費 |
注意点 | ・申請は1年度に1回まで |
手続きの流れや詳細は、TOKYOはたらくネット 中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金で最新情報が確認できます。
人材開発支援助成金
引用:厚生労働省 人材開発支援助成金
この助成金は、労働者が業務における専門的な知識や技能を習得するための訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支援するものです。
この「労働者」は国籍を指定されていないため、外国人が訓練を受ける場合も助成金の申請対象になります。
人材開発支援助成金は「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」「障害者職業能力開発コース」の7種類があります。
今回は例として「人材育成支援コース」を紹介します。
項目 | 内容 |
対象者 | ・雇用保険被保険者となる労働者を雇用している事業者 |
要件 | ・職業能力開発推進者の選任 |
支給額 | 1事業所1年度あたり1,000万円 かつ 以下の条件の範囲内 |
支給対象経費 | 訓練期間中に申請事業主が全額を負担した以下の経費 |
注意点 | ・対象の経費、賃金、訓練実施がほかの助成金や補助金を受けている場合は、この助成金の支給を受けることができない |
手続きの流れや詳細、他のコースについては厚生労働省 人材開発支援助成金で最新情報が確認できます。
キャリアアップ助成金
引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金
この助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者といったいわゆる非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップを促進するために、企業がおこなう正社員化や処遇改善の取り組みにかかった費用の一部を支援するものです。
この「労働者」は国籍を指定されていないため、外国人が訓練を受ける場合も助成金の申請対象になります。
キャリアアップ助成金は正社員化支援として「正社員化コース」「障害者正社員化コース」処遇改善支援として「賃金規定等改定コース」「賃金規定等共通化コース」「賞与・退職金制度導入コース」「社会保険適用時処遇改善コース」の合計7種類があります。
今回は例として処遇改善支援の「賃金規定等改定コース」についてを紹介します。
項目 | 内容 |
対象者 | ・雇用保険被保険者となる労働者を雇用している事業者 |
要件 | ・キャリアアップ管理者の選任 |
支給額 | キャリアアップ対象 1人あたり3万3千円~6万5千円 |
支給対象経費 | ・対象労働者の賃金 |
注意点 | ・1年度1事業所あたりの申請上限は100人まで |
手続きの流れや詳細、他のコースについては、厚生労働省 キャリアアップ助成金で最新情報が確認できます。
業務改善助成金
引用:厚生労働省 業務改善助成金
この助成金は、生産性向上に資する設備投資などに加えて事業場内最低賃金を一定額引き上げた場合に助成されます。
事業場内最低賃金は「事業場で最も低い時間給」のことで、該当する労働者の国籍は指定されていないため外国人の場合も問題なく申請できます。
項目 | 内容 |
対象者 | ・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の中小企業 |
要件 | ・事業実施計画書を作成し、労働局長の認定を受ける |
支給額 | 支給対象経費の75%~90% かつ 以下の条件の範囲内 |
支給対象経費 | 事業実施期間に支払いが完了した「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資など」にかかった経費 ・在庫管理短縮のためのPOSレジシステム導入費 |
注意点 | ・賃金の引き上げ額は助成率を算出するものであり、支給対象経費には含まれない |
手続きの流れや詳細は、厚生労働省 業務改善助成金で最新情報が確認できます。
上記の5つ以外にも、日本経済の変化への対応を助成する「産業雇用安定助成金」や、地方で従業員を雇用する際に使える「地域雇用開発助成金」など日本人労働者・外国人労働者どちらを雇用した場合も使える助成金はさまざまあります。
詳しくは、以下を参考にしてください。
外国人雇用でおすすめの補助金
外国人雇用の支援補助金 ※地方自治体主催
地方自治体がそれぞれの地域を対象に主催する、外国人雇用を促進するための補助金があります。
この補助金は、外国人従業員へ日本語教育などをおこなう企業に対して、実施にかかる費用の一部を支援するものです。
補助金の名称と内容は自治体ごとに異なりますが、一般的に対象となる経費は以下のとおりです。
- 外国人材の採用にかかる費用(求人サイトの掲載費など)
- 日本語研修にかかる費用(会場費、外部委託費、教材費、交通費など)
- コミュニケーション促進にかかる費用(通訳機器の購入費など)
- 外国人労働者のための生活環境整備にかかる費用(寮の修繕、設備導入費など)
インバウンド対応力強化の支援補助金 ※観光関係の団体主催
インバウンド(訪日外国人旅行)への対応力を強化するために、観光地のサービスや宿泊・飲食系の事業者を支援する補助金があります。
補助金の名称と内容は自治体ごとに異なりますが、一般的に対象となる経費は以下のとおりです。
- 多言語対応にかかる費用(案内表示やパンフレットの作成費、多言語対応タブレットの導入費など)
- 公衆無線LANの設置にかかる費用
- 電子決済機器の導入にかかる費用
- 外国人旅行者のための設備修繕・導入にかかる費用(トイレの洋式化、防犯カメラの設置費など)
- インバウンド対応のための人材育成にかかる費用(研修会の開催費、セミナー受講費など)
この中で外国人雇用と関係があるのが「インバウンド対応のための人材育成にかかる費用」です。
日本のおもてなし文化を学ぶための研修やクレーム対応の研修など、外国人旅行者へ対応する際に必要となるスキルを身につけるための人材育成費用が補助金の対象になることがあります。
国際化促進インターンシップ事業
引用:経済産業省 国際化促進インターンシップ事業
外国人を直接雇用する前に、インターンシップ(就業体験)を通して外国人労働者の受け入れ機会を創出することで受けられる支援があります。
内容 | 項目 |
対象者 | ・国内に事業所をおく中小企業 |
要件 | ・インターンシップ責任者、指導担当者の選任 |
支給額 | インターンシップ 1人1日あたり2千円 |
注意点 | ・外国人インターンの受け入れは1企業1人まで |
この制度の特徴は、支援費(補助金)とは別に以下の支援を受けられることです。
- 受け入れ担当者向けの各種研修提供(異文化マネジメント研修、情報セキュリティ研修など)
- 専属コンシェルジュによるインターンシップ実施計画の策定支援
- 高度外国人材の受入環境整備のための伴走型支援
手続きの流れや詳細については、経済産業省 国際化促進インターンシップ事業で最新情報が確認できます。
上記のほかにも、外国人労働者の雇用管理の改善などを支援する「外国人雇用管理アドバイザー制度」や事業の国際競争力強化・海外普及を支援する「外国従業員受入事業」など補助金の代わりに充実した支援を受けられる政策がさまざまあります。
詳しくは、以下を参考にしてください。
参考:経済産業省 産業人材
助成金・補助金を活用する際の注意点
申請から支給までに時間がかかる
助成金や補助金のほとんどは、申請〜審査〜採択(交付決定)〜申請事業の実施〜実施報告〜受給の流れで進みます。
申請した月に入金されることはなく、審査期間や実施期間が長い場合は受給までに1年以上かかることもあります。
また、実施報告の内容によってはかかった経費の一部が支給対象にならないことがありますので、これらを踏まえたうえで現実的な予算編成をしましょう。
申請期間が短いためこまめに確認する
助成金や補助金は、申請期間が1か月間しかないことが少なくありません。また、情報の公開日を告知していないこともあります。
活用したい助成金・補助金が決まっている場合は、前年度の情報公開日を把握したりこまめにホームページを見にいくなど、定期的に申請の状況を確認して締切日をのがさないようにしましょう。
支援を受けられる回数に制限がある
一部の助成金や補助金には、支援を受けられる回数に制限があります。同じ事業やプロジェクトに対しての支援が1度限りと制限されていることも少なくありません。
複数回受けられる補助金・助成金だとしても、次の申請が可能になるのは最後に受給した日の1年後からという制約がある場合もあります。
受給上限額などを参考に、どのタイミング(プロジェクト実施)で申請するかを検討しましょう。
実施期間より前の支出は支給対象にならない
申請後の審査を通過したあと、事務手続きなどの説明会を終えることで申請事業の実施期間に入ります。
それまでは申請事業に着手することはできませんし、準備にかかる経費の支払いをしていたとしても支給対象経費にはなりません。
また、事業を実施していると計画段階より費用が増える場合がありますが、あまりにも大幅に変更すると受給対象から外れてしまう可能性がありますので、計画の修正・報告は必ずおこないましょう。
在留資格によっては支援の対象にならない場合がある
一部の助成金や補助金は、在留資格や身分条件によって支援の対象外となる場合があります。たとえば、キャリアアップなどの長期雇用を目的とした支援は「技能実習」や「特定技能1号」などの帰国を前提とした在留資格が対象外となっています。
事前に対象の在留資格を確認してから、申請にすすみましょう。
併給ができるかどうかを確認する
同じ事業やプロジェクトに対して複数の助成金・補助金を受ける場合、同一の経費は片方の支援しか受けられない場合があります。
支援制度の規定にしたがって併給が認められるかどうかを確認しましょう。
さいごに
助成金や補助金は、労働者の国籍を問わず受給できるものから「外国人労働者だけを対象」にしたものまでさまざまな種類があります。
最近は外国人の受け入れに対して政府が積極的なため、支援の種類も豊富になってきています。
自社で使える支援を探して、外国人の雇用にチャレンジしてみましょう。