ホテル・旅館で外国人を雇うには? 宿泊業で使えるビザと注意点を解説

海外から日本を訪れる外国人観光客(インバウンド)は年々増えており、グローバル化の影響が国内にも広がっています。その一方で、ホテルや旅館などの宿泊施設では、人手不足が深刻化している状況です。
日本政府は「2030年に訪日客6,000万人」という目標を掲げており、それに対応するためには、宿泊業だけでも新たに約8万人の人手が必要になる見込みです。
この人数を日本人だけでまかなうのは難しく、外国人スタッフの採用と職場の働きやすさを整えることが急がれています。
この記事では、ホテル・旅館が外国人スタッフを受け入れる際に知っておきたい在留資格の種類や、その選び方についても整理しました。
あわせて、最新の統計データや職場改善のポイント、採用の成功事例も紹介しているので、外国人採用を検討している方はぜひ参考にしてください。
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宿泊業の人手不足、実際どれくらい深刻?【最新データ】
国内外からの旅行需要が戻りつつあるなか、人手不足に悩む宿泊施設が増えています。
十分なサービスを提供できずに苦しむホテルや旅館も少なくありません。
業界全体で人材確保が課題となっている今、最新の統計をもとに現状と今後の見通しを整理していきましょう。
宿泊需要は「回復」ではなく「急増」へ
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査
日本の宿泊業は、コロナ禍の影響を乗り越え、すでに回復の段階を超えて過去最高水準に達しました。国内旅行の回復に加え、訪日外国人の増加も大きな追い風となっています。
観光庁の調査によると、2023年の延べ宿泊者数は6億1,750万人となり、コロナ前の2019年(5億9,590万人)を上回りました。とくに訪日外国人の宿泊者数は1億1,780万人を記録しています。
さらに2024年は、1億6,360万人(前年比+38.9%)で過去最高となり、宿泊需要の勢いはとどまる気配がありません。
業界の課題は「従業員の不足」と「宿泊施設の偏在」
出典:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)
2025年4月の調査によれば、旅館やホテルなどの宿泊業で人手不足を感じている企業のうち、51.8%が非正社員の不足を問題視しています。現場を支えるスタッフの多くが非正規雇用であることを考えると、深刻な状況だといえるでしょう。
この非正規スタッフには、客室清掃や配膳、フロント対応といった重要な業務が多く含まれます。そのため人手が足りないと、サービスの質が下がったり、予約の制限や業務の外注など運営面にも影響が出てしまいます。
宿泊業は需要が戻ってきている一方で、こうした人材不足が安定したサービス提供の妨げになっているのが実情です。
さらにもう一つの課題が、宿泊施設そのものの地域的な偏りです。
全国的には新しいホテルの開業が進んでいるものの、東京・大阪・京都などの都市部では今も客室が足りず、高い稼働率が続いています。一方、地方では施設の増加が限定的で、観光客を受け入れられない地域も見られます。
このような状況では「人材がいても働ける施設がない」「施設があってもスタッフが集まらない」といった、雇用と設備のミスマッチが起きやすくなります。
さらに、土地代や建設費の上昇も新たな参入の障壁となり、宿泊業の成長を妨げる要因になっています。
宿泊業の新規求人は+10%増
引用:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ
※紫色のドットが宿泊業(兼 飲食サービス)に該当します
厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況」によると、2025年3月の有効求人倍率は1.26倍で、前年同月(1.27倍)からわずかに下がりました。
しかし「宿泊業・飲食サービス業」に限って見ると、新規求人は67,064件(前年同月比+3.3%)と増加しており、依然として人材需要の高い状況が続いています。
観光需要の回復にともなって求人が増えているにもかかわらず、働き手が足りないという構造的な人手不足が深刻になっているのです。
こうした背景のなか、外国人労働者の数も年々増加しています。2024年の時点では、日本で働く外国人が230万人に達し、そのうち宿泊業で働く外国人は約4万人でした。
この人数は今後も増えていくと見られており、人手不足を補う存在として大きな期待が寄せられています。
日本政府も制度の整備を進めており、外国人材の受け入れをさらに進めることで、宿泊業界の安定経営につながることが期待されています。
2030年までに必要とされる労働力
政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人に増やすという目標を掲げています。その実現に向けては、宿泊業で新たに約8.5万人の人材が必要になると試算されており、外国人スタッフの活用がますます重要になるでしょう。
観光立国を目指す日本にとって、外国人材は欠かせない戦力として注目されています。
今後の採用戦略を考えるうえでも、こうしたデータをしっかりと押さえておくことが大切です。
宿泊業で雇用できる外国人の在留資格まとめ
外国人スタッフを宿泊業で雇用するには、まず「どの在留資格で働けるか」を正しく知っておく必要があります。
在留資格にはさまざまな種類があり、それぞれに働ける仕事内容や条件が細かく決められています。「フロントに立ってほしい」「清掃スタッフとして採用したい」といった希望があっても、資格の内容によっては対応できないこともあるため注意が必要です。
ここからは、宿泊業での採用に関係する主な在留資格と、それぞれのポイントを実例とあわせて紹介します。
在留資格とは?
在留資格とは、日本にどんな目的で滞在するのか、どのような仕事ができるのかを示す「活動の許可」のことです。
資格ごとに①従事できる仕事内容、②就労時間、③在留期間などが決まっており、これに違反すると不法就労とみなされます。
宿泊業で外国人を採用するには、次のような在留資格を持っていることが前提となります。
技術・人文知識・国際業務/技能/特定技能/技能実習/永住者/日本人の配偶者等/永住者の配偶者等/定住者/特定活動/留学/家族滞在/文化活動
ただし、それぞれの在留資格で働ける仕事の範囲には大きな違いがあります。
希望する仕事に就けるかどうかは資格の内容次第なので、あらかじめ制度の基本を理解しておくことが大切です。
技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)
「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれるこの在留資格は、外国人の専門性を生かすために設けられたものです。大学や専門学校で学んだ内容と、実際に働く仕事の内容が関連している必要があります。
宿泊業では、フロント業務や海外対応などの仕事に就く人が多く見られます。
ただし、同じホテル内の業務であっても、仕事内容によっては働けない場合もあります。客室清掃や荷物運びのような単純作業は対象外とされているため、採用前に職務内容をよく確認しておきましょう。
【例】技人国で認められる宿泊業での仕事
- 外国語を使ったフロント対応
- 海外のお客様向けの予約管理
- 観光案内などインバウンド対応
- 多言語でのウェブサイト管理や広報活動
許可を得るためのポイント
- 専攻内容と仕事内容がしっかりつながっていること
例)観光学科や国際関係学科を卒業した人がフロント業務に就く
例)経営学部を出た人がマーケティングや予約管理を担当する
例)情報工学を学んだ人が予約システムや多言語対応のウェブ管理を行う - 給与や労働条件が日本人スタッフと同じか、それ以上であること
不許可になりやすいケース
- メインの仕事が客室清掃やベッドメイクなどの単純作業
- 学んだ内容と仕事の内容が合っていない、または誰でもできると見なされる内容
- 企業側が仕事内容をしっかり説明できず、提出書類が不十分になっている
技能
「技能」の在留資格は、海外で発展した専門的な技術を持つ外国人が、その技を日本で発揮するために認められるものです。たとえば中国料理やインド料理、フランス料理など、国内に同じレベルの技術者が少ない分野で活用されています。
宿泊業では、ホテルや旅館のレストランで、外国料理専門のシェフとして働くケースが代表的です。
ただし、この資格は高度な技能が求められるため、一般的な調理補助などの仕事では対象になりません。
【例】技能ビザで認められる宿泊業での業務
- ホテル内の中華レストランで広東料理を提供する料理長
- インド料理店でスパイス調合やタンドール窯を使った本格調理を行うシェフ
- フレンチレストランで伝統技法を使い、コース料理を担当する料理人
許可を得るためのポイント
- その料理が「外国ならではの専門料理」であり、日本では学びにくい技能であること
- 申請者に10年以上の実務経験があり、高度な技術を証明できること
- メニュー構成や過去の経歴、料理工程を示す資料などを準備できること
不許可になりやすいケース
- ファミリーレストランや一般的な洋食店での調理補助にとどまっている
- 業務内容があいまいで、専門性を証明できない
- 調理以外の配膳や清掃などが主な仕事になっており、技能として認められにくい
特定技能1号・2号
「特定技能」は、人手不足がとくに深刻な16の分野に対応するために新しく設けられた在留資格です。宿泊業もその一つに含まれており、必要な試験に合格すれば、学歴や職歴がなくても外国人が働くことが可能になります。
宿泊業では、フロント業務や清掃、配膳など、施設内のさまざまな仕事に従事できます。
「特定技能1号」の滞在期間は最長5年間で、1年ごとに更新する仕組みです。一方「特定技能2号」は期間に制限がなく、家族を日本に呼ぶこともできるため、近年は取得者が増えてきています。
【例】特定技能で認められる宿泊業での仕事
- チェックイン・チェックアウトの受付
- 客室の清掃やベッドメイクなどの衛生管理
- 館内レストランでの接客、配膳、レジ業務
- 備品補充や館内案内などのサポート業務
許可を得るためのポイント
- 「宿泊分野特定技能評価試験」に合格し、日本語能力試験(N4以上)を取得している
- 契約書や支援計画書に業務内容とサポート内容が明記されている
- 住まいの確保や生活相談、日本語学習の支援なども会社側が行っている
不許可になりやすいケース
- 実際には飲食店や建設現場など、宿泊分野以外の仕事をさせている
- 書類と実際の支援体制が一致しておらず、制度違反と判断される
- 他の従業員に比べて賃金や待遇が著しく劣っている
【2025年最新版】特定技能 全16分野の職種ガイド
技能実習1号・2号・3号
技能実習制度は、日本の技能や技術、知識を開発途上国の若者に伝えることを目的とした制度です。あくまで「実習」という立場であり、単に人手不足を補うための制度ではありません。本来は国際貢献の一環として、人材育成を通じた協力を目指しています。
対象となる職種は90種類、作業内容は165に分類されており、宿泊業では「接客・衛生管理作業(宿泊業)」と「ビルクリーニング作業」が対象です。
実習は1号から始まり、条件を満たすことで2号・3号へと進むことができます。
【例】技能実習で認められる宿泊業での業務
- 客室清掃やリネン類の交換・管理【ビルクリーニング作業】
- ベッドメイクや浴室清掃など、日常的な衛生管理業務【ビルクリーニング作業】
- アメニティの説明や荷物の運搬などの接客補助【接客・衛生管理作業】
- 宴会場での配膳や後片付けなど、サービスのサポート【接客・衛生管理作業】
許可を得るためのポイント
- 法務省・厚労省に認可された監理団体と契約していること
- 実習計画に「技能の習得」としてふさわしい業務が明記されていること
- 日本語指導や生活面の支援、報告体制が適切に整備されていること
不許可になりやすいケース
- 実習という名目だけで、教育や指導がほとんど行われていない
- 実習生を単なる労働力として使い、長時間勤務や単純作業ばかりを任せている
- 寮の環境や給与が不十分で、法令違反と判断されるおそれがある
技能実習生の受け入れが可能な90職種165作業を解説!受け入れるメリット、特定技能への移行についても知りましょう
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者
これらの在留資格は「身分系」と呼ばれる分類にあたります。最大の特徴は、働く職種や時間に制限がないことです。日本人と同じように、自由に仕事を選ぶことができるため、採用の自由度が高い資格といえるでしょう。
宿泊業でも、フロント業務から清掃、レストラン対応まで幅広く対応できます。
さらに、在留資格の変更や追加申請が不要な点も大きなメリットです。企業にとっては即戦力として期待しやすく、柔軟な雇用がしやすくなります。
注意したいポイント
- 在留カードの「就労制限の有無」を必ず確認してから採用を進めましょう
- 税金の滞納や法令違反があると、資格更新に影響が出る場合があります
- 家族と暮らす方も多いため、勤務時間や通勤環境への配慮が定着率アップにつながります
「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説
特定活動46号
「特定活動46号」は、日本の大学や専門学校を卒業した外国人留学生が、一定の条件を満たすことで就労できる在留資格です。2020年に制度が拡大され、働ける仕事の範囲も広がりました。
通常の「技術・人文知識・国際業務」などでは認められない業務でも、この資格があれば働ける可能性があります。たとえばフロント業務に加え、客室清掃やレストランでの接客といった、いわゆる単純労働も対象になります。
ただし、この資格を利用するにはいくつかの条件をすべて満たす必要があります。とくに「日本語力」「語学を使う業務があること」「フルタイム雇用であること」が重要なポイントです。
【例】特定活動46号で認められる宿泊業での業務
- フロント対応と清掃業務の兼務
- 通訳や翻訳を含む外国人観光客への接客
- ホテル内レストランでの接客や配膳(外国語での対応を含む)
- 日本語と外国語を使った電話応対やメール返信などの業務
許可を得るためのポイント
- 日本の大学や専門学校を卒業し、日本語能力試験N1またはN2に合格している
- 翻訳・通訳・語学対応などの業務が含まれ、日常的な意思疎通に問題がない
- 正社員としてフルタイムで雇用されている
不許可になりやすいケース
- 通訳や語学対応の業務が含まれておらず、単純作業だけを任せている
- 契約書や業務マニュアルに、語学を使う仕事内容が明記されていない
特定活動46号とは、どんなビザ? 取得できる人の条件や雇用方法、メリットについて解説!
資格外活動(留学・家族滞在・文化活動など)
本来は就労が認められていない在留資格でも、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を受けることで、一定の条件のもとで働くことができます。
たとえば、外国人留学生やその家族、文化活動を目的に来日している人たちが、宿泊業でアルバイトをするケースも増えてきました。許可があれば業務内容に特別な制限はありませんが、就労はあくまで副次的な活動と見なされます。
注意したいポイント
- 資格外活動を行うには、事前に許可を取得しなければなりません。無許可で働いた場合は、不法就労にあたります
- 留学生の場合、就労時間は週28時間以内、長期休暇中でも1日8時間が上限です
- おもな在留目的を逸脱しないよう、業務内容と就労時間を企業側でもしっかり管理する必要があります
外国人アルバイト採用ガイド|ビザ・制限など注意点や助成金について徹底解説!
宿泊業で外国人を雇用するメリット
外国人スタッフの採用には、宿泊業の人手不足を補うだけでなく、社内の雰囲気やサービスの質を高める多くの効果があります。
ここでは、具体的なメリットを5つに分けて紹介します。
メリット① 若い労働力が確保できる
最近では、宿泊業でもデジタル化が進み、ゲスト用アプリや宿泊管理システムを活用する機会が増えてきました。こうした変化に対応するため、新しい技術に柔軟な若手人材を採用したいと考える企業も増えています。
一方で、日本では少子高齢化や転職希望者の増加により、若い世代の確保が年々むずかしくなっているのが現状です。
そのような中、厚生労働省の統計によると、外国人労働者の年齢層は「20〜29歳」が最も多く、その割合は年々増加しています(※コロナ禍を除く)。
若い外国人を雇用することは、長期的な人材不足の解消につながるだけでなく、企業の安定した運営にも良い影響をもたらすと考えられます。
参考:厚生労働省 在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移
メリット② 労働意欲が高く、社内のモチベーションが向上する
外国人労働者の中には「日本の技術を学びたい」「家族のためにしっかり働きたい」といった目標を持って来日している人が少なくありません。そうした気持ちは、仕事に対する意欲や責任感として日々の行動に表れます。
たとえば、積極的に接客をしたり、効率的な働き方を覚えようと努力する姿を見て、日本人スタッフの意識が高まることもあります。教える立場であっても、相手の熱意に刺激を受ける場面が多くなるでしょう。
こうした相乗効果によって、職場全体の雰囲気が活性化し、結果として生産性の向上につながっていくケースも見られます。
メリット③ 多言語対応のサービスが可能になる
外国人スタッフの採用によって、多言語での対応力を高めることができます。とくに外国人観光客が増えている今、英語や中国語などで接客できる人材は、宿泊業にとって重要な存在です。
たとえば、チェックインの案内や観光情報の説明を外国語で行えると、旅行者が安心して滞在できるようになります。満足度が高まれば、リピーターの増加や高評価の口コミにもつながるでしょう。
さらに、異文化への理解を持つスタッフがいることで、きめ細かなサービスが提供しやすくなります。外国人のお客様にとって「また利用したい」と思える施設づくりに貢献できる点も大きな魅力です。
メリット④ 短期間で人材を確保しやすい
日本で暮らす外国人の中には、「働きたくても働く場所が見つからない」と感じている人が多くいます。実際、文部科学省の調査では日本で就職を希望している外国人留学生のうち、2割が内定を得られていないという結果が出ています。
その理由として「外国人向けの求人が少ない」という声が最も多く挙げられていました。つまり、外国人を対象とした求人を出すことで、他社より多くの応募が集まる可能性が高くなるということです。
こうした背景をふまえると、早めに外国人採用を始めることで、短期間で人材を確保しやすくなるといえます。採用のタイミング次第で、大きな差が生まれることもあるでしょう。
メリット⑤ 政府の支援制度が活用できる
外国人を雇用する企業には、助成金や補助金などの公的な支援を受けられるケースがあります。これらを活用すれば、研修にかかる費用の一部をまかなえる場合もあり、結果として採用コストの軽減につながります。
また、在留資格の手続きや雇用契約に関するサポートも受けられるため、制度に不慣れな企業でも安心して採用活動を進めることができます。
こうした支援をうまく利用すれば、コスト面と制度面の両方で安定した人材確保が可能になります。外国人採用に踏み出すきっかけとして、心強い後押しになるでしょう。
【返済不要】外国人雇用の助成金・補助金リスト|申請方法と注意点も解説
外国人も日本人も長く働ける職場づくりのポイント
外国人スタッフの採用だけでなく、日本人も含めた定着を考えることが大切です。ここでは、誰もが安心して働き続けられる職場づくりのポイントを紹介します。
労働環境を改善する
宿泊業では、長時間労働や低賃金、休みの取りづらさが離職の大きな原因になっています。こうした環境を変えないかぎり、外国人・日本人のどちらも長く働き続けるのはむずかしいでしょう。
たとえば、法定休日をきちんと確保したうえで、繁忙期以外に有給休暇を取りやすくする工夫が求められます。
早朝と深夜のシフトが連続しないような勤務の組み方も、負担の軽減につながるはずです。
そのほかにも、業務マニュアルを整えて仕事の属人化を防ぐことや、メンタルヘルス対策を取り入れることなども「働きやすい職場」としての評価につながっていきます。
IT・DXによる業務効率化
チェックインのタブレット化や自動精算機の導入、配膳ロボットの活用など、宿泊業でもデジタル化が進んでいます。こうした工夫によって、フロントや清掃スタッフの負担が減り、仕事の効率が上がりやすくなります。
業務の一部をシステムで補えるようになることで、人手不足の解消にも役立つでしょう。とくに、日本語が苦手な外国人スタッフにとっては、翻訳機能付きのツールや標準化された操作マニュアルが大きな助けになります。
技術をうまく取り入れることで、誰でも覚えやすく、働きやすい環境が整っていきます。
福利厚生を充実させる
外国人スタッフを長く雇うためには、給料だけでなく、生活のサポートも重視されます。たとえば、住まいを探すのがむずかしい人には社宅や住宅手当を用意することで、不安を減らすことができます。
制服の貸与や交通費の全額支給、食費の補助など、毎日の生活に直接関わる制度も喜ばれやすいです。なかには、健康診断や心のサポート、日本語学習の支援を行っている企業もあります。
こうした取り組みを積み重ねることで、安心して働き続けられる環境が生まれ、結果的に定着率の向上にもつながっていくでしょう。
宿泊業での外国人労働者の採用事例を紹介!
ここでは、在留外国人向けの求人サイト「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」を通じて、実際に外国人採用に成功した事例をご紹介します。
【事例1】多くの応募者の中から、希望に合った人材を採用
- 掲載日数:180日
- 採用人数:3名
- 企業のサポート内容:社員寮の提供、外部・社内研修あり、スタッフ同士の懇親会あり、多国籍スタッフが多数在籍
この企業では、採用したい人材に確実に届くよう、SNS広告を活用して求人を行いました。その結果、128名の応募があり、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持つ人材と、身分系の外国人それぞれの採用に成功しています。
また、選考を円滑に進めるため、一次面接はGuidableが代行しました。企業側の負担が軽減されたことで、採用活動もスムーズに進んだようです。
【事例2】在留外国人が少ない地域でも採用に成功
- 事業所の所在地域(市区町村)の在留外国人数:約250人
- 掲載日数:30日
- 採用人数:1名
- 企業のサポート内容:未経験者歓迎、資格外活動可、研修あり、制服貸与、資格取得支援制度、紹介手当あり
この企業では、日本語の条件を「ローマ字の読み書きができればOK」と設定していました。日本語を学習中の留学生や、家族滞在中の外国人からも応募が集まり、幅広い人材にアプローチできたことが特長です。
在留外国人の数が少ない地域でしたが、外国人向けの求人自体が限られていたため、近隣地域からの応募も多く寄せられました。結果として、希望に合う人材の採用につなげることができました。
【事例3】若い身分系外国人の採用に成功
- 掲載日数:30日
- 採用人数:1名
- 企業のサポート内容:未経験者歓迎、研修あり、制服貸与、資格取得支援、紹介手当あり
この企業では「中国語または英語が話せる方歓迎」と募集要項に明記し、日本語要件は「ひらがな・カタカナの読み書きができれば可」としました。言語面の条件を調整することで、多言語対応ができる応募者を効率よく集めることができたのが特徴です。
応募数は1か月で50件にのぼり、最終的には20代の若い応募者で、かつ「身分系」の在留資格を持つ人材を採用できました。このような条件の人材は長期的に働ける可能性が高く、企業にとっても大きなメリットとなったようです。
さいごに
宿泊業界では、人手不足の深刻化が続くなか、外国人の雇用やDXの導入など、新たな取り組みが広がりつつあります。
この記事で紹介した在留資格の特徴や、社内でできる工夫を参考にしながら、自社に合った人材戦略を考えてみてください。採用の進め方を少し見直すだけでも、スタッフの定着やサービスの質の向上につながっていくはずです。
外国人スタッフを長く受け入れていくために、文化の違いやコミュニケーションの取り方にも目を向けて、少しずつ歩み寄る姿勢を大切にしましょう。
宿泊業の外国人採用のヒントが詰まった事例集、見てみませんか?
外国人スタッフを実際に受け入れているホテル・旅館の採用事例をまとめた資料を、無料でご提供しています。
「どんな在留資格で、どんな業務に関わっているの?」「どのように定着につなげているのか知りたい」といった疑問に対して、実際の取り組みを通じてヒントが得られる内容です。
これから外国人採用を始めようと考えている方はもちろん、すでに制度を導入していて運用に不安がある方にもおすすめです。ぜひこの機会にチェックしてみてください。
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