外国人が日本に住むためには「在留資格(ビザ)」を取る必要がありますが、その種類はたくさんあり、少しわかりにくいと感じる人も多いかもしれません。

この記事では、27種類の在留資格の中ではあまり知られていないけれど、とても大切な「特定活動ビザ」について説明します。

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そもそも特定活動ビザとはなんなのか?

国会議事堂の画像

日本には27種類のビザがありますが、「特定活動ビザ」は、どのビザにも当てはまらない特別な活動をする外国人に与えられるものです。

通常、新しいビザを作るには「出入国管理及び難民認定法」を変える必要がありますが、「特定活動ビザ」に関しては法務大臣が決めることができます。
そのため、法律を変えなくても、新しい活動に合わせて柔軟に対応できるのが特定活動ビザの特徴です。
たとえば、新型コロナウイルスの影響で帰国できない人たちのために、このビザが使われました。

特定活動の種類

特定活動は、大きく分けて3つの種類があります。それは、どの法律に基づいているかによって決まります。

  1. 出入国管理及び難民認定法に定められている特定活動
  2. 告示特定活動
  3. 告示外特定活動

これらの中でもさらに細かく分かれていて、どの活動が認められているかによって、「働いてもいいもの」と「働けないもの」があります。

それでは、この3つの特定活動ビザがどんなものか、詳しく見ていきましょう。

「出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動」とは?

法務大臣の決定ではなく、入管法の中で規定されている特定活動のことです。
現在は「特定研究活動」「特定情報処理活動」「特定研究等活動等の親・特定研究等活動等の家族」の3つがあります。

① 特定研究活動

特定研究活動ビザで仕事をする外国人の画像

高度な知識を持った外国人が、日本で専門的な研究をするための特定活動ビザです。
このビザを取得するためには、研究をおこなう機関が必要な設備と資金を用意している必要があります。研究の成果が実際に使われるか、使われる見込みがあることも求められます。

また、外国人研究者をきちんと管理する体制が整っていることも条件のひとつです。
このビザで許可される研究分野は幅広く、たとえば、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなども対象です。

参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定活動」(特定研究等活動)について

② 特定情報処理活動

特定情報処理活動ビザで仕事をする外国人の画像

自然科学や人文科学に関連する技術や知識を使って、情報処理の仕事をするための特定活動ビザです。
このビザを取得するには、仕事をする機関が十分な設備と資金を持っていることが求められます。また、外国人には人工知能やデータサイエンスなど、高度な情報処理に関する専門的な技術が必要です。

さらに、外国人が日本で適切に管理される体制が整っていることも条件です。
このビザで認められる活動は幅広く、医療データの分析や歴史データのデジタル化なども含まれます。

参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定活動」(特定情報処理活動)

③ 特定研究等活動等の親・特定研究等活動等の家族

在留資格「特定活動(特定研究活動)」または「特定活動(特定情報処理活動)」を持っている外国人の親族が、その家族として日本に滞在できる特定活動ビザです。

高度な研究や情報処理を行う外国人が日本に滞在し、活躍するためには、家族のサポートも重要です。この資格は、そういった外国人の家族が日本に一緒に住めるようにすることで、研究に集中できる環境を提供することを目的としています。

「告示特定活動」とは?

告示特定活動とは、入管法で決められた在留資格に当てはまらない場合に、法務大臣が「告示」として特定の活動を許可するものです。
2024年6月の時点では、54種類の告示特定活動がありますが、この数は状況によって増えたり減ったりすることがあります。
「1号」「2号」など、番号で呼ばれることが多いです。

具体的には、次のような外国人が、告示特定活動のビザを取得できる対象になります。

告示対象
1号外交官・領事官の家事使用人
2号高度専門職ビザ、経営・管理ビザなどを持つ外国人の家事使用人
3号台湾日本関係協会の在日事務所職員、またはその家族
4号駐日パレスチナ総代表部の職員、またはそのその家族
5号ワーキングホリデーで来日する外国人
6号アマチュアスポーツ選手
7号6号の家族
8号弁護士
9号インターンシップ
10号イギリス人ボランティア
11号現在は削除されています
12号サマージョブ(3ヶ月未満の短期インターンシップ)
13号2025年大阪万博の関係者
14号13号の家族
15号国際文化交流学生
16号EPA(経済連携協定)を利用するインドネシア出身の看護師、またはその候補者
17号EPA(経済連携協定)を利用するインドネシア出身の介護福祉士、またはその候補者
18号16号の家族
19号17号の家族
20号EPA(経済連携協定)を利用するフィリピン出身の看護師、またはその候補者
21号EPA(経済連携協定)を利用するフィリピン出身の介護福祉士、またはその候補者
22号EPA(経済連携協定)を利用して就学する、フィリピン出身の介護福祉士候補者
23号20号の家族
24号21号の家族
25号入院または入院前後の治療のために滞在する外国人
26号25号の日常生活を世話する人
27号EPA(経済連携協定)を利用するベトナム出身の看護師、またはその候補者
28号EPA(経済連携協定)を利用するベトナム出身の介護福祉士、またはその候補者
29号EPA(経済連携協定)を利用して就学する、ベトナム出身の介護福祉士候補者
30号27号の家族
31号28号の家族
32号建設業の従事者
33号高度専門職外国人の配偶者であり、日本で就労する外国人
34号高度専門職外国人(またはその配偶者)の親
35号造船業の従事者
36号研究・教育に関する指導者または経営者
37号情報技術処理者
38号36号、37号の家族
39号36号、37号(またはその配偶者)の親
40号1年以内の観光・保養を目的とする、特定の国出身の外国人
41号40号の家族
42号製造業の従事者
43号日系4世
44号起業家
45号44号の家族
46号日本の大学の卒業生
47号46号の家族
48号現在は削除されています
49号現在は削除されています
50号スキーインストラクター
51号未来創造人材外国人(J-Find)
52号51号の家族
53号国際的なリモートワーカー(デジタルノマド)
54号53号の家族

参考:法務省 特定活動告示(令和6年5月31日改正)

ここからは、告示特定活動の中でも企業からの問い合わせが多い「ワーキングホリデー」と「インターンシップ」についてを紹介します。

例1. 告示5号 ワーキングホリデー

ワーキングホリデー中の外国人の画像

ワーキングホリデーは、日本と協定を結んでいる国の若者に、一定期間日本での滞在と働くことを認める特定活動ビザです。
日本と他の国の文化交流を深めたり、若者の国際的な経験を増やすことを目的としています。

このビザで来日する外国人は、働きながら日本を旅行したり、日本の文化を学ぶことができます。
風俗関連の仕事を除いて、どんな職業でも働くことができ、留学生のように週28時間の労働制限がありません。単純作業も可能な点が特徴です。

通常、滞在期間は1年以内です。企業は、正社員やアルバイトなど、雇用の形を自由に決めることができます。
そのため、観光シーズンに合わせてスタッフを増やしたい企業などにとっては、大きなメリットがあります。

【ワーキングホリデー制度の対象国】

オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、イギリス、アイルランド、デンマーク、台湾、香港、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、オーストリア、ハンガリー、スペイン、アルゼンチン、チェコ、チリ、アイスランド、リトアニア、スウェーデン、エストニア、オランダ、イタリア、フィンランド、ラトビア

ワーキングホリデー(特定活動)ビザの外国人を雇うには? 滞在期限、社会保険、他ビザへの切り替えについて

例2. 告示9号 インターンシップ

インターンシップで働く外国人の画像

インターンシップは、海外の学生が日本の企業や団体で実習をするためのビザです。
学生が社会での実務経験を積みながら、知識や技術を学ぶことを目的としています。

このビザで来日する外国人は、自分の大学で学んでいる専門分野に関連する仕事をする必要があります。そのため、インターンシップで得た知識や経験が、大学での評価対象になる場合もあります。

インターンシップの期間は1年以内で、大学の修業年限の半分を超えてはいけません。また、ビザを取得するには、海外の大学と日本の受け入れ先で交わした契約書や承認書が必要です。
ワーキングホリデーやサマージョブよりも手続きは少し複雑ですが、企業にとっては外国人採用の準備や外国人対応力を高めるのに役立ちます。

「告示外特定活動」とは?

告示外特定活動とは、法務大臣が公式に決めていないけれども、慣例として日本に入国して滞在できる特定活動のことです。

ここでは、外国人雇用に関係があるいくつかの活動を紹介します。

例1. 内定者のための特定活動ビザ

大学に通っている間に就職先が決まった人や、大学を卒業した後に仕事が決まった人が、仕事が始まるまで日本に滞在したい場合に取得するビザです。

このビザを持っていると、条件を満たせば1週間で28時間以内のアルバイトができます。また、内定先の企業でインターンシップをする場合は、1週間で28時間を超えるアルバイトも許可されることがあります。

例2. 特定技能1号に移行するための特定活動ビザ

「特定技能1号」のビザに変更したいけれど、必要な書類がまだそろわない場合や、準備に時間がかかることがあります。その場合、このビザを取得することで、現在働いている場所でそのまま働きながら、特定技能1号への移行準備を進めることができます。

この特定活動ビザを使っている間は、基本的に働く場所を変えることはできません。
ただし、このビザを使っている期間も、「特定技能1号」のビザでの合計の滞在期間に含まれます。

例3. 出国準備のための特定活動ビザ

在留資格の更新や変更の申請中に、ビザの期限を過ぎてしまったときに使えるビザです。
このビザがあると、申請結果が出るまで、または現在のビザが切れた後2か月まで日本に留まることができます。

ただし、もともと取得しているビザの在留期間が30日以下の場合や、再申請をする意思がない場合は、この特例は適用されません。

特定活動ビザの外国人を雇うときは、指定書の確認が大事!

指定書が貼られるパスポートの画像

特定活動ビザを持つ外国人は、人によってできる活動が違います。そのため、その外国人が仕事をしてもいいかどうかは、すぐにはわかりません。

そこで確認するべき書類が「指定書」です。
指定書は、在留カードと一緒に渡される書類で、パスポートに必ず添付されています。ここには、特定活動ビザでできることが書かれています。
指定書に「報酬を受ける活動を除く」と書かれている場合は、雇用することはできません。
また、就労できる場合でも、どの仕事ができるか細かく書かれているので、必ず内容を確認しましょう。

外国人を雇うときには、この「指定書」をしっかり確認して、できる仕事の範囲を把握してください。

特定活動の指定書ってなに? 見本で書き方をチェックしましょう! 

さいごに

特定活動ビザには「法定特定活動」「告示特定活動」「告示外特定活動」があり、それぞれ要件が異なることを紹介しました。

外国人を雇う際は、そのビザで就労が可能かを確認することが大切です。
特定活動外国人の採用は、さまざまなスキルや文化を取り入れるチャンスですので、指定書を確認しながら積極的に進めていきましょう!

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