日本における外国人の在留資格「永住者」(以下「永住権」)取得者は増えつづけています。しかし同時に問題になるのが、永住権の取消です。永住権は一度取得すれば、無条件でずっと在留できると思われがちです。しかし場合によっては、永住権は取り消されることもあります。

そこで今回は永住権の取消を、ケースごとにご紹介いたします。また永住権が取り消されてしまったあとにも、再取得は可能なのかについても解説いたします。

日本での永住権取得は難しい

日本での永住権取得は、世界基準では比較的難しいとされています。以下で詳しく解説いたします。

永住権取得のための条件

  1. 素行が善良であること
  2. 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
  3. その者の永住が日本国の利益になると認められること

永住権取得の条件を満たすのは「日本の法律を守り」「社会に迷惑をかけない、自立した生活をすることができている」という人物です。また「10年以上在留している」こと、「刑罰を受けていないこと」なども永住権取得の条件に含まれます。

さらに現在の在留資格が最長の在留期間(法務省ガイドランでは3年)であることも、条件のひとつとなっています。
ただし永住者や特別永住者の配偶者、定住者、難民認定を受けた方、日本での功績が認められた方などは、例外として10年が経っていなくても永住権を得る対象になります。

審査期間も長い

永住権の審査は、6ヶ月から1年程度の時間がかかります。審査が長引くこともあり、申請者は長期間待たなければなりません。

永住権を失うのはどんなとき?

それでは「永住権の取消」について、ケースごとにご紹介いたします。

ケース1:犯罪行為への加担など、罪を犯した場合

重大な犯罪を犯してしまった場合、永住権が取り消されることがあります。
具体的な例としては、2023年に東京で発生した詐欺事件に関わった外国人の永住権が取り消されたケースがあります。この事件では永住権を持っていた外国人が、詐欺グループのメンバーとして活動していたことが判明し、裁判で有罪判決を受けたあとに永住権が取り消されました。

このような刑事犯罪、再犯率の高い犯罪(窃盗、暴行など)、テロ行為、スパイ行為、反社会的行為なども、永住権の取消しの理由となります。

ケース2:出入国管理法違反

虚偽申請や不法滞在など、出入国管理法に違反した場合も、永住権は取り消されることがあります。具体的には2022年にフィリピン出身の女性が、永住権申請の際に虚偽の書類を提出していたことが発覚、その後に永住権が取り消されました。
このようなケースではただ永住権の取り消しだけではなく、「営利目的在留資格等不正取得助長罪となる場合もあります。

ケース3:長期間の海外滞在

永住権を持っている方が特別な理由なく長期間日本国外に滞在した場合にも、永住権が取り消されることがあります。一般的には一年以上日本を離れていると問題となることが多いです。

2009年7月には「特別再入国許可制度」ができました。これによって永住者は再入国許可を取得せずに出国ができ、出国から一年以内に再入国すれば永住権はそのまま保持されます。

永住権を失効してしまうケースとしては「期限を忘れてしまうこと」や「急な病気や事故など、家族の事情などで再入国できなくなってしまうこと」などが理由としては多いです。

ケース4:生活基盤の喪失

永住者が生活基盤を失った場合、たとえば安定した収入源がない、あるいは社会的に不適切な行為をくり返している場合などにも、永住権が取り消されることがあります。

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永住権が取り消されたら?

永住権が取り消されるまでの流れ

  1. 法務大臣が在留資格の取消を行う場合、まず出入国在留管理庁から「意見聴取通知書」が送付されます(緊急の場合は口頭の場合もあります)。
  2. 本人あるいは代理人が「意見聴取通知書」に記載された日時に指定場所に出向きます。陳述・証拠提出を実施。正当な理由がなく欠席した場合、在留資格が取り消されることがあります。出頭する日は調整することが可能です。
  3. 取消決定後、「在留資格取消通知書」が送付されます。
  4. 取消通知書には30日以内で出国日が指定され、行動範囲等の制限や条件が提示されます。
  5. 指定の期間内に出国しなければなりません。

退去強制手続及びの出国命令手続きの流れ

出典:出入国在留管理庁 「退去強制手続き及びの出国命令手続きの流れ

「意見聴取通知書」が送られてきたときは、記載された取消の原因と理由を確認し、心当たりがない場合は該当しないことを説明・立証しなければなりません。
また取消の原因と理由に該当しても、かならず在留資格が取り消されるわけではありません。

取消の原因と理由に該当するにいたった理由、反省の気持ち、日本に在留する必要性などが記された資料を提出して、資格を取り消さないように要望したり、在留特別許可を要望したりすることができます。

永住権の再取得は可能?

永住権を取り消されたあとで再取得することは可能です。
ただし特例に該当しない限り、ふたたび在留資格を取得して、10年在留などの要件をクリアする必要があります。

永住権をもう一度取得するための条件

条件となる項目内容
継続した在留期間通常は再申請する場合も、日本に継続して10年以上在留していることがもとめられます。このうち直近5年間は、就労資格または居住資格を持っている必要があります。
安定した収入と納税状況安定した収入があり、過去の納税義務を果たしていることが必要です。
法律を遵守していること過去に重大な法律違反や社会的な問題行動をしていないことがもとめられます。
身元保証人永住権の申請には、日本国内に居住する身元保証人が必要です。
健康状態健康であることも考慮される場合があります。

手続き

永住権の再申請手続きは通常の永住権申請手続きと同じで、出入国在留管理庁に必要書類を提出します。書類には在留カード、パスポート、収入証明書、納税証明書、身元保証人の情報などがふくまれます。

注意点

過去に永住権を取り消された理由が重大なものである場合、再申請が難しくなることがあります。とくに犯罪歴や重大な法律違反が原因で取り消された場合は、再取得の可能性が低くなるでしょう。

まとめ|永住権の取り消しについて

日本に来る外国人が増えて、永住権の申請も増えつづけていますが、その一方で「永住権の取消」も一定数増えています。
永住権は取得要件も厳しいうえ、時間もかかります。永住権を取り消されると簡単には再取得できません。申請の際はもちろんのこと、取得後も永住権を失う可能性があることには気を付ける必要があります。