「外国籍の社員から“永住権を取りたい”と言われたけれど、今は審査に時間がかかると聞いた。会社として何をすればいいのだろう?」「審査を待っているあいだに、今のビザが切れてしまわないか不安…」
そんな心配を抱えている方も少なくないはずです。

以前は、およそ半年で結果が出ることが多かった永住権の申請ですが、2025年の現時点では状況が変わり、1年以上かかる例も見られます。
思わず「そんなに長いの?」と感じるかもしれません。ただ、審査が伸びている理由と、待っている期間に会社として行うサポートのポイントを知っておけば、大きなトラブルは避けられるはずです。

この記事では、公式の資料だけではわかりにくい実際の審査期間のめやすと、企業側が押さえておきたい待機期間中のリスクの考え方を、わかりやすい言葉で紹介します。

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目次

永住権の審査期間、今のめやすはどれくらい?

カレンダーと時計の画像

永住権の審査は、いまも長くなる傾向が続いています。
結論を先に伝えると、入管が公表している「標準処理期間」と、実際にかかる期間のあいだには半年以上の差が生まれているのが現状です。まずは、このギャップを正しく知っておく必要があります。

公式の「標準処理期間4〜6か月」は本当にあてになる?

法務省のウェブサイトでは、永住許可申請の標準処理期間を「4〜6か月」としています。その数字だけを見ると「半年以内で終わるのだろう」と感じる方もいるかもしれません。

ただ、これはあくまでお役所が目標としている事務処理のめやすです。書類が完ぺきで、追加調査もなく、審査官の手が空いている、といった状態で進んだ場合の理想的な数字だと考えてください。
ところが実際には、申請件数の増加や個別の事情が影響し、この期間どおりに終わる例はほとんど見られません。

実際にはどうして1年〜1年半もかかるの?

では、現場ではどれくらい待つことになるのでしょうか。地域によって差はありますが、とくに申請が集中する東京では待ち時間が大きくふくらんでいます。
2025年時点の、より実態に近いめやすは次のとおりです。

観点審査期間の目安状況
出入国在留管理庁(標準処理期間)約4〜6か月事務処理の目標値。ここで終わるのはとてもまれです。
出入国在留管理庁(全国平均)約10〜11か月公表されている実際の処理日数。すでに目標の2倍に近い数字です。
東京出入国在留管理局(実務参考値)約1年2か月〜1年半全国でもっとも混雑。1年以上連絡がない例は一般的です。
地方の出入国在留管理局(実務参考値)約8か月〜1年東京よりは早い傾向。ただ、最近はここも伸びています。

※「実務」で使われる数字は行政書士などの現場データをまとめた目安であり、公式の発表ではありません。案件ごとに変わる点にも注意してください。

このように、地方で条件がそろっている場合でも、8〜10か月ほどを想定しておくほうが安全です。
とくに首都圏で申請する企業の場合は、「結果が出るまで1年半近くかかるかもしれない」と考えてスケジュールを組むようにしましょう。

審査期間が長くなる主な3つの理由

「どうしてこんなに時間がかかるのだろう?」と思う方も多いはずです。おもな理由は、次の3つにまとめられます。

1. 申請件数の増加

「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」などで働く外国人が増え、永住権を目指す人も急増している状況です。
いわば単純に、行列が長くなっている状態だとイメージするとわかりやすいでしょう。

2. 審査の厳しさが増している

これが最も大きな要因です。近年、税金や社会保険の未納が問題視され「税金・年金・保険を過去数年分きちんと納めているか」が厳しく確認されるようになりました。
その分、審査に時間がかかるケースが増えています。

3. 追加資料が求められるケースが多い

審査官が「説明が少ない」「内容が気になる」と判断した場合、追加の資料提出を求められることがあります。
このやり取りが発生すると、審査の進み方がいったん止まり、結果として大幅に遅れる場合があります。追加の提出だけで数か月延びた例も決して珍しくありません。

社員が「永住権」を取ると、会社にはどんな良いことがある?

ここからは、永住権とはどんなものか、そして社員が永住権を取ったときに会社にはどんなメリットが生まれるのかを整理します。

ポイントは次の2つです。

  • 永住権は「ずっと日本で暮らせる在留資格」であること
  • 会社にとっても更新の手間が減り、長く育てやすくなること

まずは、この点を押さえておきましょう。

永住権と一般的な就労ビザのちがい

永住権は法的には「永住者」という在留資格の一つですが、一般的な就労ビザと比べると自由度に大きな差があります。
わかりやすく例えるなら、就労ビザが「条件つきの運転免許」だとすれば、永住権は「更新のいらない無期限ライセンス」のようなイメージです。

一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)

「エンジニアとして働くならOK」「1〜5年ごとに更新が必要」というように、細かな決まりがあります。
もし退職して次の仕事が決まらなければ、在留資格を失うおそれも出てきます。

永住権(在留資格「永住者」)

働き方や職業の制限がなくなり、どんな仕事でも選べます。
極端に言えば、一度仕事を辞めてしばらく休んでも、そのまま日本に住み続けることが可能です。更新の負担もほとんどありません。

永住権とは? 取得できる外国人の条件、帰化や特別永住者との違い、採用するメリットなどをくわしく解説

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【メリット】永住権を取ると会社にプラスになる3つの理由

メリット コンセプト画像

社員が永住者になると、会社が行う管理業務が軽くなります。具体的なメリットを見ていきましょう。

1. 更新のコストがなくなる

通常のビザは1〜5年ごとに更新が必要で、そのたびに書類の準備や印紙代が発生します。
永住者になれば、この手間が一気に減り、会社の負担も小さくなるのが大きな利点です。
※カード自体は7年ごとに更新しますが、本人の簡単な手続きで済みます。

2. 任せられる仕事の幅が広がる

就労ビザでは、「通訳として採用した人に工場のライン作業をお願いする」などのケースで違法になる可能性がありました。
永住者には就労制限がないため、部署の移動や職種の変更も日本人と同じように進められます。会社としては柔軟に人材配置ができるようになります。

3. 「日本でずっと働く覚悟」が固まりやすい

永住権を取ると住宅ローンが利用しやすくなるため、家を買う人が増える傾向があります。
暮らしの基盤が整うことで「日本で生きていく」という気持ちが強くなり、結果的に長く働いてくれる可能性が高まります。

【注意点】永住権取得後には「転職しやすくなる」という側面もある

メリットが大きい一方で、現実的に知っておきたいこともあります。
それは、転職のハードルが下がるという点です。

これまでは「ビザのスポンサーが今の会社である」という事情があるため、退職にはリスクがありました。
ところが永住権を取るとビザの制限がなくなるため、極端な話、次の日から別の会社に移ることも自由になります。

だからこそ大切なのが、会社と社員の信頼関係をていねいに育てることです。
「永住権を取ったら辞めてしまうかも」と不安に感じてサポートを控えるのではなく、「永住権取得を応援してくれた会社」という安心感をつくるほうが、長期的な定着につながります。
永住権の取得を福利厚生のひとつとしてとらえ、前向きに支えていく姿勢が、結果的には会社にも良い効果をもたらすはずです。

永住権の審査はどう進む? 申請から結果までの流れとスケジュール

カレンダーに予定を記入する手元の画像

ここでは、永住権の申請から結果が出るまでの具体的な流れを紹介します。
「いつ」「誰が」「何をするのか」をイメージできるようにまとめました。とくに、ステップ1ステップ3は会社の出番になります。

ステップ① 申請前の準備と書類集め

まず、たくさんの書類をそろえる作業から始まります。基本的には本人が準備しますが、会社が発行しなければならない書類もいくつかあります。
人事の方は、依頼されたときにすぐ出せるように準備しておくと安心です。

会社が用意する主な書類

  • 在職証明書
  • 直近の源泉徴収票(場合によっては過去1〜5年分)
  • 社会保険の加入状況証明書
    ※会社が社会保険に加入し、保険料を正しく納めているかを示すものです
  • 身元保証に関する書類
    ※上司や社長が保証人になるケースでは、本人確認書類などが必要になります

ステップ② 申請〜受付後の入管審査

書類がそろったら、本人が管轄の入管へ提出します。無事に受理されれば、ここからは長い「審査期間」に入ります。

入管でおこなわれる審査の流れは、次のとおりです。

  1. 書類の形式や内容に問題がないか
  2. 過去の在留状況や違反歴の有無
  3. 税金・年金・健康保険などの支払い状況
  4. 年収や預貯金などの生計状況
  5. 会社側の安定性(今後も働き続けられそうか)

ここで注意したいのは、「審査状況を問い合わせても答えてもらえない」という点です。入管に電話しても返答は「審査中です」となるため、落ち着いて待つしかありません。

ステップ③ 追加資料の依頼が来たときの対応

審査が始まってから数か月〜半年ほど経つと、入管から「資料提出通知書」が届くことがあります。
これは不許可の連絡ではありません。「もう少し詳しく確認したい」という意味です。

よく求められる追加資料

  • 最新の課税証明書・納税証明書
  • 年金記録の詳細(ねんきん定期便など)
  • 志望動機(理由書)の追記
  • 企業側への依頼(今後の給与見込み証明書など)

通知には「提出期限(たとえば2週間以内)」が書かれていることが多いため、届いたら最優先で対応しましょう。ここで提出が遅れると、その分だけ審査も長くなる可能性があります。

ステップ④ 結果通知〜在留カードの受け取り

長い審査を経て、ようやく結果が届きます。
許可された場合、外国人本人が入管へ行き、新しい在留カード(在留資格:永住者)を受け取ります。

会社側では、次のような社内処理を進めておきましょう。

  • 人事システムの「在留資格」「在留期間」を最新の情報に更新
  • 在留期限の管理リストで、当該社員を「永住者」として区分
  • 必要に応じて雇用契約書の内容を見直す

この一連の流れをつかんでおくと、会社としても落ち着いてサポートしやすくなります。

永住権の審査期間を短くするためにできることは?

「1年も待てない…少しでも早く結果が知りたい!」そう感じる方は多いと思います。
審査そのものを早める裏ワザはありませんが、ムダな時間を減らすことで、結果的に最短ルートに近づくことは可能です。

チェックリストを使って書類ミスをなくす

チェックリスト コンセプト画像

審査が遅れる大きな理由は、書類の不備です。記入漏れや添付忘れがあると、確認に1〜2か月かかってしまうことがあります。

出入国在留管理庁のホームページには「提出書類一覧表」が掲載されています。これを印刷し、申請前に本人と人事担当者の2人で確認する流れをつくりましょう。
第三者の目が入るだけで、ケアレスミスはぐっと減ります。

参考:出入国在留管理庁 永住許可申請 (申請書・必要書類・部数のところに一覧表があります)

永住理由書には会社からの評価を加える

「永住理由書」は審査の中心になる書類です。基本は本人が作成しますが、会社からできるサポートもあります。
それが、会社としての「推薦文」や「評価書」を添えることです。

たとえば、「〇〇さんは仕事にまじめで、今後も長く働いてほしい人材です」というように、会社から見た評価を伝えると、審査官に対して生活の安定性や信頼性をアピールできます。
ただし、会社が書きすぎると「本人の意思が見えない」と判断されることがあります。あくまでも本人の文章を中心に、事実の情報で支える形がおすすめです。

入国管理局に出す理由書の正しい書き方ガイド【例文つき】

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会社側でもチェックできる「落とし穴」を確認する

ここは、とくに気をつけたいポイントです。年金の未納・遅れがあると、不許可になる可能性が非常に高くなります。
「会社で社会保険に入っているなら大丈夫」と思いがちですが、実は注意が必要なケースがあります。

  • 転職の合間:前職を辞めてから今の会社に入るまでに、国民年金や国民健康保険の支払いを忘れていないか
  • 家族の在留状況:配偶者や子どものビザ、年金の支払いは正しく行われているか

人事としては、申請前に一度、年金事務所などで記録を確認するよう声をかけてあげると安心です。ほんのひと言のアドバイスが、大きなトラブルの防止につながります。

審査中の転職や引っ越しには注意する

審査が進んでいる間に、生活の変化があるケースもあります。この場合に、いくつか気をつけたい点があります。

引っ越し

住所変更の手続きをすれば問題ありませんが、管轄の入管が変わるほどの遠距離への引っ越しは、書類の移動に時間がかかることがあります。

転職

できるだけ避けたほうが良いです。

勤務先が変わると「生活が安定しているか」の審査がやり直しになり、期間が延びたり、不許可になるリスクも高まります。

部署異動・昇進

基本的にはプラスに働きます。ただし、給与や仕事内容が大きく変わる場合は、入管への報告が必要になるケースがあります。

会社としては、

  • 永住申請中の社員から転職の相談を受けたら、リスクを伝える
  • 大きな配置転換があるときは、事前に専門家へ確認する

といった配慮ができるとよいでしょう。

永住権の審査期間を短縮しやすい「プラス資料」とは?

「これを出せば絶対早くなる」という資料はありません。ただ、審査官に良い印象を与えるプラス材料として使えるものはあります。

資料の種類効果
高度人材ポイント計算表70点・80点を超えると、高度人材として優先的に扱われる可能性があります。
日本語能力試験(N1など)の合格証日本語で問題なく生活できることの証明になります。
表彰状・感謝状素行が良く、社会に貢献していることのアピールになります。
ボランティア活動の証明地域とのつながりや日本社会への定着度を示す資料になります。

とくに「高度人材(高度専門職)」のポイントを満たしている場合は、通常の10年の居住ではなく、1〜3年の居住で永住申請ができる特例があります。
こうした条件に当てはまる人は、審査でも優先されやすい傾向があります。

審査が長引いていると感じたときにできること

「申請してから1年以上たつのに、まったく連絡がない…」そんな不安を抱える方もいると思います。
ここでは、ただ待つだけではなく、状況を確認するためにできる行動を紹介します。

どれくらい待ったら「長い」と判断するのか

先ほどの表でも触れたように、今は1年ほど待つのが一般的です。そのため、ひとつのめやすとしては、

平均期間(約11か月)に 2〜3か月を足しても連絡がない場合

このあたりで、確認のアクションを考えてみるとよいでしょう。
とくに東京入管では混雑が激しいため、1年半あたりがひと区切りと考えられます。

入管や行政書士に相談するときのポイント

行政書士に依頼している場合は、まず先生に相談するのが最も早い方法です。専門家ならではのルートで、進み具合を確認してくれるケースがあります。

一方、自社や本人が申請した場合は、入管の永住担当へ問い合わせることになります。
ただし、電話が非常につながりにくいことが多く、つながっても「審査順に進めています」という返答になることが一般的です。細かい状況までは教えてもらえないと理解した上で相談してみましょう。

不許可になった場合にできる選択肢は?

もし「不許可」の通知が届いても、そこで終わりではありません。永住権は何度でも再申請できるため、立て直すチャンスがあります。

大切なのは、必ず入管に出向いて具体的な理由を聞くことです。
たとえば、

  • 「年金の支払いが1回遅れていた」→その後2年間しっかり払えば、次は許可される可能性があります。
  • 「理由書の内容が弱かった」→内容を見直して書き直せば改善できます。

理由を確認しないまま再申請しても、同じポイントで再び不許可になる可能性が高くなります。そのため、まずは原因の把握が最優先です。

【Q&A】永住権の審査期間についてよくある質問

最後に、人事の方からよく届く質問をまとめました。気になるところを確認してみてください。

Q1. 永住権の審査期間の最新情報は、どこで確認できますか?

A. 法務省のホームページにある「在留審査処理期間」というページで確認できます。

ExcelやPDFの一覧が公開されており、見るポイントは「永住者」の行です。更新も随時行われているため、ブックマークしておくと便利です。

ただし、掲載されているのは過去に処理された案件の全国平均です。参考にはなりますが、実際の待ち時間とはズレることが多い点には注意が必要です。
とくに東京入管のように申請が集中している地域では、平均より大幅に長くなる傾向があります。

Q2. 審査中に社員が退職や転職を希望した場合はどうなりますか?

A. 退職しても審査が止まるわけではありません。

ただし「安定した生活基盤」という条件が弱くなるため、リスクは大きくなります。
とくに次の勤務先がまだ決まっていない状態で辞めてしまうと、不許可になる可能性が高いと考えてください。

そのため、本人には「永住権を目指すなら、結果が出るまでは今の会社にいるほうが安心だよ」と伝えてあげるのが親切です。
どうしても退職が避けられない場合は、行政書士に相談しながら、再就職先の条件やタイミングを慎重に決めることをおすすめします。

Q3. 永住権の許可前と後で、雇用契約を変えたほうがいいのでしょうか?

A. 基本的には、今の契約のままでも問題ありません。

ただ、永住権が取れると在留期間の制限がなくなるため、このタイミングで契約内容を見直す会社もあります。

もし雇用契約書に「在留期限に合わせて契約期間を決める」といった文章がある場合は、「期間の定めなし(無期雇用)」に変更する覚書を交わすのもよいでしょう。
社員にとっても安心につながり、会社との信頼関係づくりにも役立ちます。

さいごに

永住権の申請は、長いマラソンのように感じることが多いと思います。そこで、この記事の大事なポイントを3つにまとめました。

  • 覚悟しておきたい期間は「1年以上」
    現在の審査はどうしても時間がかかります。そのため、待っているあいだに今のビザが切れないよう、更新だけは必ず忘れずに進めてください。
  • 遅れる理由は「審査の厳しさ」
    とくに税金や年金のチェックは細かく見られます。また、書類の記入ミスや添付漏れも時間が延びる原因になるため、丁寧に確認しておくことが一番の近道です。
  • 会社が届けられるのは「安心感」
    書類の準備を手伝ったり、待っている期間の不安を聞いたりするだけでも、社員との信頼は深まります。
    永住権の取得を、社員の定着につながるチャンスと考えてみるのも良い方法です。

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