外国人アルバイトの採用ガイド|就労時間の上限と必要な手続きを解説
少子化が進み、学生の数が減る中で、日本人だけを募集しても人手を集めにくくなっています。
そのため、コンビニや飲食店、工場などでは外国人アルバイトの活躍が広がり、今では多くの職場で外国人スタッフが働いています。
こうした流れの中で、外国人アルバイトは欠かせない存在となりました。
この記事では、外国人アルバイトが増えている背景や、働くために必要な在留資格、そして就労時間の上限について、わかりやすく解説します。
外国人アルバイトの採用が増えている理由とは?
多くの企業で外国人アルバイトの採用が進んでいます。
では、なぜそのような動きが広がっているのでしょうか。ここではおもな理由を見ていきましょう。
少子高齢化と学生減で、日本人アルバイト人材が不足
日本では少子高齢化が進み、働く人の数そのものが減っています。
とくに、アルバイトとして働くことが多い大学生や高校生の人口が少なくなっており、その分を外国人留学生や在留者が支える形になってきました。
たとえば、大手コンビニエンスストア3社では、すでに多くの外国人スタッフが働いており、全体で8万人を超えると報じられています。
こうした背景から、外国人のアルバイト採用は企業にとって欠かせない取り組みとなりつつあります。
外国人採用を支える政府の取り組み

日本政府も、外国人が安心して働ける環境づくりと、事業主が正しく雇用できる体制の整備を進めています。ここでは、採用の計画や定着支援に関わる主な取り組みを紹介します。
最新データの定期公表
厚生労働省は毎年「外国人雇用状況」を公表しており、2024年10月末時点では2,302,587人と過去最高を記録しました。
国籍や在留資格、業種ごとの傾向を把握できるため、求人エリアの見直しやシフト配置、日本語教育への投資判断に役立ちます。
6月は「外国人雇用啓発月間」
6月は、事業主向けのセミナーや雇用管理の指針を周知する期間です。
短時間で最新ルールを学べるため、在留資格の誤解や就労時間の管理ミスによるトラブルを防ぐことができます。
相談体制の整備
ハローワークや労働局には、多言語で対応できる相談窓口が設けられています。
労働条件や在留資格、税金、社会保険などに関する問い合わせができるため、採用前の疑問を早い段階で解消できる点が安心です。利用することで、選考から入社までの手続きもスムーズに進みやすくなります。
最低賃金の改定周知
2025年秋には、各地で地域別最低賃金が改定されました(例:東京1,226円)。
正しい時給設定と法令に沿った求人票の作成ができるため、応募率の改善や賃金トラブルの防止につながります。
社会保険の適用拡大
2024年10月からは、従業員51人以上の企業で週20時間以上働くパート・アルバイトも社会保険の加入対象となりました。これにより、加入の基準が明確になり、処遇の公平性が保たれるようになっています。
全体として、事業主・外国人の双方が安心して働ける仕組みづくりが整ってきています。
この流れは今後も続き、外国人アルバイトの活躍はさらに広がっていくでしょう。
参考:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
参考:厚生労働省 外国人の雇用
外国人アルバイトの在留資格と働ける条件

外国人が日本で働くためには、決められた在留資格を持っていることが大切です。
ここでは、アルバイトができるおもな在留資格と、その特徴をわかりやすく紹介します。
1. 身分系の在留資格
「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」のいずれかに当てはまる場合、特別な許可を取らなくても働くことができます。
仕事の内容や雇用形態に制限がないため、日本人と同じように自由に働ける点が大きな魅力です。
ポイント
- 就労制限がなく、職種や雇用形態を問わず勤務できる
- 在留カードの就労制限欄に「なし」と記載されているか、採用時に確認する
2. 特定活動(ワーキングホリデー)
ワーキングホリデーは、観光を楽しみながら一定期間働ける制度です。
アルバイトも可能ですが、在留期間が6か月または1年と限られているため、採用前に在留期限やシフト予定を確認しておく必要があります。
また、多くの場合は税法上「非居住者」にあたり、給与から20.42%の源泉徴収が必要になります。租税条約の適用があるかどうかは、国籍ごとに確認しておくと安心です。
ポイント
- 職種や雇用形態に制限はない
- 在留期間(6か月または1年)を事前に確認する
- おおくの国では非居住者扱いとなり、給与から20.42%の源泉徴収が必要(租税条約の有無を要確認)
3. 留学・家族滞在・文化活動
「留学」や「家族滞在」などの在留資格は、本来、学業や生活を目的としたものです。そのため、アルバイトをするには資格外活動許可を受けなければなりません。
原則として週28時間以内、アルバイトを掛け持ちしている場合は、すべての勤務先を合わせて時間を管理する必要があります。
採用時には、在留カードの裏面にある「資格外活動許可欄」と有効期限を必ず確認しましょう。
ポイント
- 長期休暇中の学生は、1日8時間以内の就労が可能
- 掛け持ちの場合、すべての勤務先での合計時間を管理する
- 在留カード裏面の資格外活動許可欄に「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」などの記載があるかを確認する
また、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」や「高度専門職」などの就労ビザを持つ人も、資格外活動許可を取ればアルバイトが認められる場合があります。
ただし、「本業に関係する仕事であること」や「単純作業はできない」などの条件があるため、採用前に仕事内容が適しているかどうかを確認することが大切です。
外国人アルバイトの採用手続きと流れ

外国人をアルバイトとして採用する場合は、在留資格の確認や書類提出など、いくつかのルールを守る必要があります。
ここでは、募集から入社後の手続きまでの流れを順に整理して紹介します。
1. 求人募集と選考
外国人アルバイトを募集する際は、一般的な求人サイトのほか、留学生向けサービスや日本語学校・専門学校との連携も効果的です。
選考のときには、在留資格や資格外活動許可(該当する場合)、そして働ける時間帯と上限時間を必ず確認しましょう。
面接では、できるだけわかりやすい日本語を使い、必要に応じて通訳や図解資料を用意すると安心です。そうした工夫によって、採用後のミスマッチを防ぐことができます。
2. 雇用契約を結ぶ
採用が決まったら、労働条件通知書や雇用契約書を作成します。契約内容には、以下の項目をしっかり明記しましょう。
- 雇用期間や仕事内容、勤務場所
- 勤務時間、休憩や休日、給与の支払い方法
- 退職や契約更新に関するルール
- 資格外活動許可の有無と勤務時間の上限、学期・長期休暇の区分
もっとも大切なのは、企業と本人の間で認識のズレをなくし、きちんと合意を得ることです。賃金や労働条件は、日本人と同じ基準で設定する必要があります。
3. 必要書類の提出
採用後は、通常の手続き(雇用保険・税金・年末調整など)に加えて、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が必要です。雇入れや離職のたびに提出します。
もし届出を怠ったり、虚偽の内容を提出した場合は、30万円以下の罰金が科されることがあります。そのため、在留カードなどで必要事項を確認し、確実に手続きを行うことが大切です。
4. 社会保険の手続き
外国人アルバイトでも、一定の条件を満たせば健康保険や厚生年金に加入することができます。
2024年10月からは、従業員51人以上の事業所で働く週20時間以上・月額賃金8万8千円以上・学生でない短時間労働者も、社会保険の対象に含まれるようになりました。
就業前に要件を満たしているかを確認し、シフトや契約内容に反映させたうえで、忘れずに手続きを進めましょう。
参考:厚生労働省 社会保険適用拡大|対象となる事業所・従業員について
外国人アルバイト採用の注意点を一覧で確認しよう

外国人をアルバイトとして採用する際は、在留資格の確認や労働時間の管理など、いくつかのルールを守る必要があります。
在留資格の確認
採用を進める前に、在留カードの原本を必ず確認しましょう。
在留資格の種類や資格外活動許可の有無、許可の内容が正しく記載されているかをチェックします。
あわせて、在留期限や更新の状況を定期的に確認しておくことも大切です。
ここをチェック!
- 在留カードの原本を確認し、写しを保管する
- 就労制限の有無と資格外活動許可の記載を確認する
- 在留期限を控え、更新時期を共有しておく
- 学生の場合は在学証明書を確認し、学期の区分を把握する
- 掛け持ちの有無や勤務時間の見込みを本人に申告してもらう
- 風営法などで禁止されている業務に従事させない方針を社内で明文化する
労働時間の管理
資格外活動許可を持つ外国人は、週28時間以内(留学生の長期休暇中は1日8時間以内)の労働が認められています。
複数のアルバイトを掛け持ちしている場合は、すべての勤務先での労働時間を合計し、上限を超えないよう注意が必要です。
もし規定時間を超えて働かせてしまうと、不法就労とみなされ、企業側も罰則の対象になるおそれがあります。日ごろから時間管理のルールを共有し、無理のない勤務体制を保つことが大切です。
ここをチェック!
- 学期中と長期休暇中の区分を明確にしておく
- 週28時間、長期休暇中は1日8時間の上限を守る
- 掛け持ちの勤務時間を合算し、超過がないか確認する
- 残業や深夜勤務の扱いを掲示し、承認手順を定める
- タイムカードの打刻方法を多言語で周知する
- 上限超過のアラートや是正の流れを整備しておく
コミュニケーションと教育
外国人アルバイトが職場で孤立しないように、定期的なフォローや研修を行いましょう。
職場で日本語学習をサポートすると、仕事の効率が高まり、チーム全体の雰囲気も良くなります。
ここをチェック!
- やさしい日本語で作成したマニュアルを配布する
- 図やイラストを使い、作業手順を視覚的に説明する
- 初勤務前に安全・衛生の研修を行い、記録を残す
- OJT計画を作成し、習熟度を段階的に確認する
- 定期的に個別面談を行い、相談窓口を周知する
- 連絡手段や緊急連絡先をあらかじめ決めておく
ハローワークへの届出
外国人を雇用したとき、または退職したときには「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する義務があります。
届出を怠ると罰則を受けることがあるため、手続きを忘れずに行うことが重要です。
ここをチェック!
- 【雇用保険の被保険者になる場合の提出期限】
雇用時:雇入れ日の翌月10日まで
離職時:離職日の翌日から10日以内 - 【雇用保険の被保険者にならない場合の提出期限】
雇用時:雇入れ日の翌月末まで
離職時:離職日の翌月末まで - 在留カードの情報と届出内容に違いがないか確認する
法律の遵守と公平な待遇
外国人だからといって、日本人と異なる条件で働かせることはできません。最低賃金や労働基準法などの法律を守り、平等な待遇を提供することが求められます。
国籍を理由に差をつけない公正な雇用は、企業への信頼にもつながります。多様な人材が安心して働ける環境を整えましょう。
ここをチェック!
- 最低賃金・割増賃金・休憩・深夜勤務の基準を守る
- 同じ仕事には同じ基準で賃金と評価を設定する
- 年次有給休暇を付与し、取得方法を周知する
- 社会保険の加入要件を確認し、該当者には手続きを行う
- 国籍による不当な扱いをしないと社内で明言する
- 多様性に関する方針を掲げ、従業員研修を実施する
よくある質問

Q. 留学生は週何時間まで働けますか?
A. 学期中は週28時間以内、長期休暇中は1日8時間以内まで働くことができます。
ただし、資格外活動許可を取得していることが前提です。風営法にあたる仕事には就くことができません。
また、掛け持ちで複数のアルバイトをしている場合は、すべての勤務時間を合計して管理する必要があります。もし上限を超えてしまうと、不法就労とみなされるおそれがあるため、注意が必要です。
Q. 採用時に必ず確認すべき書類はありますか?
A. はい。在留カードの原本確認と、必要書類の写しを保管することが基本です。
在留資格や就労制限、資格外活動許可の有無、有効期限をしっかり確認しましょう。
また、以下の書類も忘れずにチェックしてください。
- (留学生の場合)在学証明書と学期区分の確認
- ダブルワーク申告(他社名と想定勤務時間)
- マイナンバー、本人名義の振込口座
- 雇用保険・社会保険の加入可否を判断するための情報
Q. アルバイトでも社会保険は必要ですか?
A. 条件を満たす場合は、加入が必要です。
健康保険と厚生年金は、従業員51人以上の事業所で働く短時間労働者のうち、次の要件を満たす人が対象になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8万8千円以上(目安)
- 学生でないこと など
一方、雇用保険は「週20時間以上の勤務」かつ「31日以上の雇用見込み」がある場合に加入対象となります。就業前にこれらの条件を確認し、契約内容やシフトにも反映しておくと安心です。
Q. 外国人アルバイト採用で活用できる助成金はありますか?
A. 条件を満たせば、外国人アルバイトの採用に使える助成金があります。
たとえば、次のような制度が代表的です。
- 人材確保等支援助成金(外国人就労環境整備コース)
- キャリアアップ助成金(有期雇用から無期・正社員への転換)
- トライアル雇用助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
制度ごとに要件や募集時期が異なるため、最新の情報を確認してから申請しましょう。
さいごに
外国人アルバイトの採用は、人手不足の解消だけでなく、職場の生産性や多様性を高める大切な取り組みです。その一方で、在留資格の確認や就労時間の上限管理、正しい契約と届出、日本人と同じ条件での処遇など、基本を丁寧に守ることが欠かせません。
また、マニュアルを多言語化したり、研修の仕組みを整えたりすることで、現場の負担を軽くすることもできます。
社会保険や最低賃金といった最新ルールを定期的に見直せば、法令違反のリスクを減らしながら、定着率の向上にもつながります。
まずは、今日できることから一つずつ整えていくことが大切です。小さな工夫の積み重ねが、外国人採用を成功へと導く第一歩になるでしょう。
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