運送業界では深刻な人手不足が問題となっていますが、外国人ドライバーの採用に注目が集まっていることをご存知ですか? 

この記事では、人手不足の背景と、運送業で新たに外国人を採用できるようになった「特定技能1号」の制度についてくわしく解説します。

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なぜ今、外国人ドライバーが注目されているの?

まずは、外国人ドライバーが注目される背景について説明します。
運送業界では人手不足が大きな問題になっており、外国人を雇うための新しい制度改革もおこなわれています。

人手不足が深刻化する運送業界

厚生労働省の発表によると、2024年10月時点の自動車運転従事者の求人倍率は「2.67倍」でした。
これは、全体の求人倍率1.16倍に対して、運送業界での求人倍率が約2.3倍高いことを意味します。つまり、運送業界での採用は他の業界よりもずっと難しいということです。

運送業界では、とくにトラック運転手が足りなくなっています。
全日本トラック協会の発表によると、トラック運送事業における人手不足は年々深刻になっています。
ネットショッピングやネットオークション(たとえば、メルカリやヤフオクなど)の取引が増えたことで、物流の需要も増えています。しかし、運転手の高齢化が進んでおり、若いドライバーが少ないのが問題です。
また、長時間働かなければならないことや厳しい労働条件が敬遠されがちで、ドライバーの求人に応募する人が少ないという課題もあります。

バスやタクシーの業界でも同じように運転手の確保が難しく、とくに観光シーズンや都市部での需要が急に増えると、業務に支障をきたすこともあります。

こうした問題を解決するために、外国人労働者を受け入れる動きが広がっています。

参考:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和6年10月分)について
参考:全日本トラック協会 トラック運送業界の景況感(速報)

外国人ドライバー向けの新しい在留資格が誕生!

笑顔を向ける外国人ドライバーの画像

これまでは、「永住権を持っている外国人」や「日本人の配偶者」でないと外国人がドライバーとして働くことはとても難しい状況でした。しかし、運送業界の人手不足が深刻になってきたため、2024年に特定技能制度が見直されました。
その結果、自動車運送業が制度の対象分野(特定産業分野)に追加され、「特定技能1号」という在留資格を持つ外国人ドライバーを雇用できるようになりました。

この改正によって、トラックやバス、タクシー業界でのドライバー不足が改善されることが期待されています。
受け入れ見込みは2.45万人で、外国人ドライバーを雇うことで「物流の効率化」や「公共交通のスムーズな運営」にも貢献できると考えられています。

特定技能外国人を受け入れる方法|制度の概要、受け入れまでの流れ、支援計画10項目を作成するコツや注意点を解説

トラック、バス、タクシーで必要な資格は違うの?

業務内容と必要な資格の比較表

外国人が特定技能を使ってドライバーとして働くには、仕事の種類によって必要な資格や条件が変わります。
ここでは、新しく取得できるようになる「特定技能1号」を取って働くために必要な資格や条件を、わかりやすく説明します。

トラックドライバーに必要な資格と条件

トラックドライバーを目指す外国人が特定技能1号を取得するためには、以下の資格や条件が必要です。

  • 日本語能力試験でN4レベルに合格すること
  • 特定技能1号評価試験に合格すること
  • 日本の運転免許(第一種運転免許)を取得すること

まず、外国人がトラックドライバーとして働くためには、外免切替などを利用して普通自動車運転免許を取得するのが一般的な最初のステップです。そして、日本の道路交通法に従い、一定期間運転経験を積んだ後に、中型や大型自動車の運転免許を取得する流れになります。
さらに、特定技能1号評価試験では、トラックドライバーとして必要な「運行業務」や「荷物の積み下ろし(荷役業務)」に関する知識が問われます。
この試験に合格することで、特定技能1号の在留資格を得て、トラックドライバーとして働けるようになります。

参考:全日本トラック協会 (外国人向け)トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト

バス・タクシードライバーに必要な資格と条件

バスドライバー、もしくはタクシードライバーを目指す外国人が特定技能1号を取得するためには、以下の資格や条件が必要です。

  • 日本語能力試験でN3レベルに合格すること
  • 特定技能1号評価試験に合格すること
  • 日本の運転免許(第二種運転免許)を取得すること
  • 新任運転者研修を修了すること

まず、第二種運転免許を取る必要があります。この免許を受けるには普通免許などで3年以上運転した経験が必要ですが、海外での運転経験も認められるので、日本に来る前の経験を活かせます。

また、日本語能力試験ではN3レベルに合格することが条件です。これはトラックドライバーよりも一段階高いレベルですが、バスやタクシーの運転手は、乗客が乗り降りする際にアナウンスを行ったり、接客対応をしたりするため、高い日本語能力が求められるからです。

特定技能1号評価試験では、「運行業務」や「お客さんへの対応」に関する知識が問われます。
この試験に合格し、さらに日本の交通ルールや安全運転について学ぶ新任運転者研修を終えると、特定技能1号の資格をもらい、バスやタクシーの運転手として働けるようになります。

参考:日本バス協会 外国人向け「バス運転者を目指す人の為の学習用テキスト」
参考:全国ハイヤー・タクシー連合会 ハイヤー・タクシー運転者をめざす人のための学習用テキスト

外国人ドライバーを受け入れるときに気をつけることは?

注意点をまとめたイラスト

ここでは、外国人ドライバーの採用を考えている企業が気をつけておくべきポイントを紹介します。

在留資格の種類を確認する

外国人ドライバーを採用するには、「身分系ビザ(日本人の配偶者や永住者など)」「特定技能1号ビザ」「特定活動46号ビザ」のいずれかが必要です。※特定活動46号はタクシー業務のみ対象
それ以外のビザを持つ外国人を採用すると、不法就労になり、法律に問題が起きることがあります。そのため、採用する前に必ず在留資格を確認し、正しいビザを持っているかどうかをチェックすることが大切です。

特定技能ビザの取得には評価試験と日本語試験の合格が必要

特定技能制度は「即戦力として働ける人」を対象にしているため、評価試験では必要な知識や技術があるかどうかを確認します。
また、日本語試験は、職場でのコミュニケーションや業務の安全を確保できるかを判断するためのものです。
この基準は、特定産業分野に関係なく、特定技能ビザを取得するすべての外国人労働者に適用されます。

日本の自動車運転免許を取得するタイミング

特定技能制度を利用して海外から外国人ドライバーを採用する場合、まず特定技能評価試験と日本語試験に合格し、その後日本に入国します。入国後、トラックドライバーは最長6ヶ月、バスやタクシードライバーは最長1年間の「特定活動期間」に、日本の運転免許を取得する必要があります。
この期間内に免許を取得できないと、特定技能ビザを取得できなくなり、ビザの延長もできません。

すでに日本に住んでいる外国人も、ビザの変更申請をする前に、日本の自動車運転免許を取得しておかなければなりません。

特定技能外国人を受け入れる事業者の要件

外国人ドライバーを受け入れる企業は、次の条件を満たす必要があります。

  • 道路運送法に基づいて自動車運送業を経営していること
  • 自動車運送業分野特定技能協議会のメンバーであること
  • 「運転者職場環境良好度認証制度」または「Gマーク制度」に基づく認証を受けた事業所を持っていること

これらの条件を満たすことで、外国人ドライバーが安心して働ける職場環境を整えることができます。

労働条件は日本人と同じにする

外国人ドライバーを受け入れるときは、労働条件を日本人社員と同じにしなければなりません。これは「同一労働同一賃金」というルールに基づいています。
外国人の社員に対して、低い給料や不公平な扱いをすることは法律で禁止されています。給料や福利厚生、休暇など、すべての面で平等に扱うことが、トラブルを避けて、スムーズな仕事環境を保つために大切です。

実際に外国人ドライバーは活躍しているの?

日本の運送業界は、他の国と比べてもサービスの質が非常に高いことで知られています。
そのため、初めて外国人ドライバーを採用する企業は、彼らのサービスの質や免許取得の難しさについて不安を感じることがあるかもしれません。

ここでは、実際に外国人ドライバーを採用している企業の事例をご紹介します。

外国人タクシードライバーの活躍事例

日本で働く外国人タクシードライバーの画像

アサヒ交通株式会社では、フィリピン、ミャンマー、タンザニア出身のドライバーたちが、優れた接客スキルと高い仕事の能力を持ち、チームを盛り上げています。
外国人ドライバーの採用は試行錯誤を重ねた結果、成功に繋がり、企業が新しい時代に対応するための大きな一歩となりました。これからのタクシー業界を支える力強いドライバーたちの活躍は、業界全体に希望を与えています。

▼実際に外国人採用をしているタクシー会社の記事はこちら!

タクシー会社で活躍中の外国人はどんなところがすごい? アサヒ交通株式会社さまに聞きました

外国人ドライバーを大規模に採用する計画

センコーグループホールディングスは、2032年までに特定技能資格を持つ外国人ドライバーを100人採用する計画を立てています。
2025年4月には第1期生の受け入れを始め、積極的にドライバーを育成する予定です。とくに、今後保有車両を1万台にするためには、外国人ドライバーの採用が不可欠だと考えています。

また、外国人ドライバーが活躍できる機会を大きく見込んでおり、将来的にはドライバー班長に昇進する道も用意しているそうです。
海外からの特定技能ドライバー採用も視野に入れ、ドライバー不足を解消するために大規模な採用を進めています。

参考:カーゴニュース センコーGHD、外国人ドライバー100人採用へ

さいごに

労働人口の減少によりドライバー不足が深刻化していますが、特定技能に「自動車運送業」が新たに追加されたことで、外国人ドライバーの活躍が期待されています。
早期に人手不足の解消を目指すためにも、外国人の採用を始めてみてはいかがでしょうか?

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