2030年までに日本が直面する大きな課題のひとつは、深刻な人手不足です。少子高齢化が進む中、多くの業界で労働力の確保が困難になると予測されています。この記事では、2030年に向けた人手不足の背景やその影響について解説し、企業がこの問題にどう対処していくべきかを考えます。

2030年に向けた日本の労働市場の変化

パーソル総合研究所の調査によれば、2030年までに日本全体で約644万人の労働力が不足すると予測されています。この数字は、製造業、建設業、介護業界をはじめとしたさまざまな業界に大きな影響を与えるものです。特に中小企業や地方の事業所では、深刻な労働力不足が経営の存続に直結するリスクとなります。

なぜこれほどの人手不足が予測されるのでしょうか? その要因は少子化と高齢化の加速、若者の都市部への集中、さらには技術革新による産業構造の変化にあります。これらの要因が組み合わさり、2030年には労働力の需給バランスが大きく崩れることが懸念されています。

人手不足がもたらす影響

人手不足がつづくと、企業はつぎのような問題に直面します。

生産性の低下

労働者が不足することで、企業は生産性の維持が難しくなります。特に、現場のスタッフがすくなくなることで、業務が滞ったり、納期に間に合わないことが増えるでしょう。

人件費の上昇

労働力が希少になるにつれて、企業は人材を確保するために高い賃金を支払う必要が出てきます。これにより、コストが増加し、利益が圧迫されるリスクがあります。

では、さらに人手不足で実質賃金が上がると経済、企業、労働市場にどのような変化が起きるのかをみてみましょう。

・インフレ圧力の増加

実質賃金の上昇が広範に進むと、企業はコスト上昇に対応するために製品やサービスの価格を引き上げる可能性があります。これはインフレ圧力となり、物価全体の上昇につながることがあります。特に人手不足が賃金上昇を引き起こした場合、特定の業界でのインフレが他の業界にも波及するリスクがあります​。

・企業のコスト負担の増加

賃金が上昇すると、企業にとって労働コストが増加します。特に中小企業においては、賃金上昇によって利益率が低下し、競争力が落ちる可能性があります。この影響で労働集約型の産業では、生産性向上のための投資や技術革新が急務となります。人件費の上昇は、企業が自動化や効率化に投資する動機を強めることにもつながるわけです。

・人材確保の競争が激化

実質賃金の上昇は、労働市場全体での人材確保の競争を激化させます。企業は、優秀な人材を確保するためにより高い賃金を提示する必要があり、その結果として賃金の上昇がつづく可能性があります。

しかしこれは中小企業にとっては特に負担が大きく、大企業との差が拡大する要因にもなります。

・業務のアウトソーシングや自動化の加速

人手不足と賃金上昇の組み合わせにより、企業はコスト削減のために業務の一部をアウトソーシングしたり、ロボットやAIなどの技術を導入して自動化を進める傾向が強まります。これにより単純労働やくり返し業務が減り、高度なスキルを持つ労働者の需要がさらに高まります。

新規事業や成長の停滞

人手不足は、企業が新しいビジネスチャンスを追求したり、成長戦略を進める上での大きな障害となります。特に新しい技術やサービスを導入するためには、専門知識を持つ人材が必要ですが、彼らを確保するのが困難になる可能性があります。

人材確保の競争が平均賃金を上昇させる

インフレ、労働力不足、人材獲得・維持のための競争圧力などを背景に、大企業の従業員賃金は世界的に上昇傾向にあります。
過去5年間、さまざまな分野の企業で、従業員の給与が顕著に上昇しています。ここでは特に顕著な例として、2つ具体例をあげます。

テック業界(アマゾン、グーグル、アップル)

アマゾンやグーグルのような企業は、特にCOVID-19の大流行時に従業員の給与を大幅に引き上げました。たとえばアマゾンは、物流や倉庫部門における労働力需要の増加により、時給を数回引き上げました。

同様にグーグルも、ほかのハイテク大手との競争が激化する中、人材確保のために昇給を実施しています。

自動車部門(フォード、ゼネラルモーターズ)

フォードやゼネラルモーターズのような自動車関連企業も、特に熟練労働者への高い需要と半導体不足が生産に与えた影響のため、労働者の賃金を引き上げました。

グローバルなサプライチェーンの課題に対応するため、経験豊富な労働者を確保し、さらなる混乱を避けるために賃金を引き上げています。

世界の昇給動向

2022年と2023年の世界的な昇給率は平均約4.1%から4.6%で、過去20年以上でもっとも高い水準となっています。この傾向はインフレに対応したものでもあり、インドのように賃上げ率が2桁(約10%)に達した国もあります。

世界的に大会社系列の会社が賃金上昇をつづけていくと、中小企業などや、サービス業などは人を雇うのがますます難しくなっていきます。

外国人採用が解決策となる理由

このような状況を乗り越えるために、多くの日本企業が注目しているのが外国人労働者の採用です。外国人労働者は、特に若い世代が多く、豊富な労働力を提供できるだけでなく、異文化や多様な視点を職場にもたらすという利点があります。

また、政府も外国人労働者を受け入れるためのビザ制度やサポート体制を整備しており、外国人がよりスムーズに日本で働ける環境が整いつつあります。たとえば、特定技能ビザや技能実習制度(育成就労制度)を通じて、多くの外国人労働者が介護、建設、製造業などの業界で活躍しています。

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さらに、外国人労働者の採用を成功させるためには、文化や言語の壁を乗り越えるためのサポート体制が重要です。外国人労働者が安心して働ける環境を整えることで、彼らの能力を最大限に引き出すことができ、企業の成長にも寄与します。

2030年の人手不足に備えて今からできること

2030年に向けた深刻な人手不足を解消するためには、早めの対策が重要です。外国人労働者の採用はその有力な解決策のひとつです。外国人労働者を受け入れることで、労働力不足を補い、さらには企業に新しい価値をもたらすことが可能です。

当社では、外国人労働者の採用をサポートする求人媒体を運営しており、企業が安心して外国人労働者を採用できるよう、手厚いサポートを提供しています。今後の労働力不足に備え、外国人採用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。