日本では少子高齢化が進んでいて、製造業で働く人が不足しています。
そんな中、外国人労働者が日本の製造業を支える重要な役割を果たしていることがわかっています。

この記事では、製造業で働く人たちの変化や、外国人を雇うことのメリット、必要なビザについて、わかりやすく説明します。

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55万人の外国人労働者に支えられている日本の製造業

まずは、製造業で働く日本人と外国人の現状について、データで見ていきましょう。

高齢化やスキル不足が影響し、製造業で働く人が減っている

製造業の就業者推移のグラフ

出典:経済産業省 2024年版ものづくり白書

まず、日本全体の働く人に対する「製造業で働く人」の割合は減ってきています。

全体の働く人の数は、新型コロナの影響で一時的に減ったものの、2022年から増え続けています。
しかし、製造業で働く人も少し増えてはいるものの、全体の中での割合は下がっているままです。

このことから今後、国内で働く人を確保するのは難しいという状況がわかります。

製造業の若年就業者数の推移グラフ

出典:経済産業省 2024年版ものづくり白書

次に、製造業で働く若者について見てみましょう。

若い人の数は2012年まで減り続け、それ以降はほぼ変わっていません。2023年の製造業で働く若者は約259万人で、2000年代前半に30%を超えていた割合も、今では約25%にまで減っています。
この状況を改善しなければ、今後の製造業を支える「若い世代」の人数を増やしていく可能性は低いといえます。

日本人労働者が減った分を外国人労働者が補っている

製造業の外国人労働者数の推移グラフ

出典:経済産業省 2024年版ものづくり白書

製造業で働く外国人の数は、2008年以降ずっと増え続けています。
一時は新型コロナの影響で減ったものの、2023年には過去最高の55万2千人に達しました。

また、製造業全体で外国人が占める割合も増え、2023年には5.4%になっています。
これは2008年に比べて3.6ポイントの増加で、外国人が製造業で大きな役割を果たしていることがわかります。

つまり、製造業では減っている日本人の働き手を、外国人の働き手がほぼ同じ数で補っている状態です。
こうしたことから、外国人労働者が製造業でますます重要な存在になっていると言えます。

参考:経済産業省 2024年版ものづくり白書

【2024年版】人手不足が起きている業界の現状と解決策をご紹介!

製造業で雇用可能な在留資格

製造業に従事する外国人労働者の画像

製造業で外国人を雇う場合、まずその人が必要な在留資格を持っていることが大事です。
次のように、雇う仕事の内容によって適した在留資格が決まっています。

製品を作る「現場の仕事」をする場合の在留資格

  • 技能実習(1号・2号・3号)
  • 特定技能(1号・2号)
  • 特定活動
  • 留学
  • 家族滞在
  • 文化活動
  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

「機械の管理」や「事務作業」をする場合の在留資格

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定技能(1号・2号)
  • 特定活動
  • 永住者
  • 日本人の配偶者等
  • 永住者の配偶者等
  • 定住者

在留資格によって働ける仕事の内容が決まっていて、オフィス業務と現場作業の一部を両方行える資格もあります。
ここからは、それぞれの在留資格でどんな業務ができるのかを解説します。

就労系の在留資格

技術・人文知識・国際業務

略して「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれるこの在留資格は「外国人労働者の専門性を活かすこと」を目的としています。
そのため、技術的な業務や知識を生かす業務に就くことができます。ライン作業などの単純労働はできません。

【例】技術・人文知識・国際業務の業務

企画・開発、エンジニア、CADオペレーター、生産・品質管理、通訳・翻訳、マーケティングなど

技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザってなに? 取得する条件、雇用する際のポイント、注意点について

特定技能1号・2号

「特定技能」は人手不足となっている特定産業分野において「即戦力となる外国人材を受け入れること」を目的としています。
ある程度の知識や技術を持っている人材のため、企業内の様々な業務に就くことができます。「業務の一部」であれば、単純労働をおこなうことも可能です。

特定技能外国人を受け入れる方法|制度の概要、受け入れまでの流れ、支援計画10項目を作成するコツや注意点を解説

技能実習1号・2号・3号

「技能実習」は、発展途上国の人が日本で学んだ技術を母国で活かせるようにすることを目的とした制度です。
日本で働きながら技術を身につけてもらうための制度で、今は90種類の職種と165の作業が対象とされています。

技能実習でできる仕事は、ライン作業などの単純な繰り返し作業だけでなく、技能が身につくような内容であることが必要です。
そのため、技能実習で外国人を雇う場合、職種や作業内容が制度のルールに合っているかを確認する必要があります。

たとえば、現場での仕事でも以下のような場合は技能実習に含まれます。

  • 技術を学べる作業(機械の操作や製品の品質管理など)
  • 作業の中に技術や知識を学べる内容が含まれている場合

つまり、ライン作業が含まれていても、その仕事が「技能の習得」に役立つならば、技能実習として働くことができるということです。

技能実習生の受け入れが可能な90職種165作業を解説! 受け入れるメリット、特定技能への移行についても知りましょう

身分系の在留資格

永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者

身分系と呼ばれるこれら4つの在留資格は、就労制限がないため日本人と同じように雇用が可能です。
つまり、単純労働を含めた製造業のすべての業務において就労できます。

「身分系」の在留資格 全4種類|就労系との違い、採用するメリットについて詳しく解説

就労系、身分系以外の在留資格

特定活動46号

「特定活動46号」が作られたことで、外国人留学生の就職先が拡大し、飲食業や製造業でも就労が可能になりました。
留学を通して学んだ「技術的な知識や語学力などを生かす業務」に従事することを前提としているため、「外国人従業員への言語サポート」などが含まれていれば、外国人従業員と一緒に単純労働をおこなうことも可能です。

留学・家族滞在・文化活動

これら3つの在留資格は、就労により収入を得ることは原則認められていません。
ただし出入国在留管理局で「資格外活動許可証」を取得している場合は、条件付きでアルバイト雇用が可能になります。
たとえば「1週間の労働時間が28時間以下であること」という労働時間の制限がありますが、これを守ればライン作業などの単純労働に就くことができます。

アルバイトで採用できる在留資格は? 資格外活動許可が必要な資格はある?

製造業で外国人を雇用するメリット

外国人雇用によって得られるメリットはさまざまあります。

メリット① 若い労働力が確保できる

若者は新しい技術やその応用方法に対する理解が早く、柔軟性や積極性が高いので積極的に採用したいと考える企業は少なくありません。
その反面、少子高齢化により若い日本人労働者数は減少しているのが現状です。このような状況下で若い労働力を確保することが難しくなると、製造業の未来に対する不安も募ります。

しかしながら厚生労働省の発表によると、外国人労働者の数は「20〜29歳」の割合が最も多いことがわかります。
そのため若い外国人労働者を採用することで長期的に人材不足を解消でき、製造業の企業存続に良い影響を与えることが期待できます。

参考:厚生労働省 在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移

メリット② 労働意欲が高く、社内のモチベーションが向上する

労働意欲が高い外国人労働者の画像

就労目的で来日した外国人の中には「日本の技術を学びたい」「家族のためにもっと稼ぎたい」といった強い目的を持っています。だからこそ、働く意欲がとても高く、与えられた仕事に対して積極的に取り組み、責任を持って行動します。

たとえば、新しい仕事を任されたときには自分から学んで、改善策を提案することもあります。
こうした前向きな姿勢は、「ただ仕事をしているだけ」と感じている日本人社員にも良い影響を与えます。外国人スタッフが一生懸命働いているのを見て、「自分ももっと頑張らないと」と感じる日本人も多いでしょう。
これにより、社内全体のやる気がアップし、チーム全体がもっと協力的になり、仕事に積極的に取り組む雰囲気が生まれます。

最終的には、こうした意欲的な従業員同士の良い影響が企業全体の生産性や業績向上につながることが多いです。
外国人労働者を雇うことは単に労働力を確保するだけでなく、企業の成長にも役立っています。

メリット③ 企業のブランドイメージが向上する

外国人雇用など多文化環境での働き方を積極的に推進することで、多様性を尊重し職場環境をより良くしているという印象を世間に与えることができます。
グローバル化が急速に進むなか、いち早く外国人雇用を始めることで社会的な評価を高めてブランドイメージを向上させることができます。

また外国人労働者の存在は、周辺のコミュニティだけでなくインバウンドや国際市場においても優秀な戦力となるため、企業の発展にも貢献します。

メリット④ 短期間で大量募集できる

大人数採用を実施した製造業の画像

日本で暮らす外国人の中には「働きたくても働き口が見つからない」という人が多くいます。

たとえば、外国人留学生の就職に関する調査によると、日本での就職を希望している人のうち2割が就職先を見つけられていません。
その理由として最も多かった回答が「外国人向けの求人が少ない」ということでした。

このような状況から、外国人向けの求人を出した企業には多くの応募者が集まる傾向があります。
限られた求人情報に対して応募者が集中している今のうちに、外国人採用を始めると大量採用のチャンスが広がります。

参考:文部科学省 外国人留学生の就職促進について

メリット⑤ 政府の支援プログラムが利用できる

外国人労働者の雇用には、政府の助成金や補助金を活用することができます。これにより、雇用コストの削減や研修プログラムの充実が図られ、企業の経済的なメリットが生まれます。

また、政府との協力により、外国人労働者の雇用に関する法的な問題や手続きをスムーズに進めることもメリットとして挙げられます。

外国人雇用で使える助成金・補助金一覧をまとめました! 外国人採用を始めようとしている企業必見

製造業で外国人を採用するときの注意点!

「POINT!!」の画像

ここからは、これから外国人採用を始めたいと考えている方へ、採用活動中の注意点を紹介していきます。

注意点① 在留資格を事前に確認しましょう

外国人労働者を雇用する際、まず最も重要なのは、在留資格の確認です。
前項で紹介したとおり、就労可能な在留資格を持っているか、またその資格でどの職種に就けるかをしっかり確認する必要があります。

もし就労資格外の業務を行わせると、労働者本人だけでなく、企業側も不法就労罪に問われる可能性があります。
身分系外国人(永住者や日本人の配偶者など)であれば、就労制限がなく、日本人と同じように雇用することができるため、初めて外国人を採用する場合でも安心です。

注意点② 在留期間を把握しましょう

外国人労働者には、在留資格ごとに定められた在留期間があります。
そのため、在留資格で許可されている業務内容を確認した後、在留カードを確認して、どれくらいの期間働けるのかを把握することが大切です。
契約更新のタイミングや、必要な場合は在留資格の更新を促すことも必要です。

注意点③ 外国人労働者との働き方を社内に共有しましょう

外国人を雇用する際には、社内体制やコミュニケーション方法を整えておくことも重要です。
たとえば、宗教や文化の違いを理解した上でコミュニケーションが取れるように、他の社員に事前に共有しておくことで、外国人は安心して働き始められます。

また、製造業では、業務に関するマニュアルや専門用語の理解が難しい場合があります。
日本語のマニュアルだけではなく、翻訳されたマニュアルも準備しておくことで、スムーズに業務を進めることができます。

外国人と上手くコミュニケーションをとるポイント・コツ4選|注意点やその対策についても解説

製造業での外国人労働者の採用事例を紹介

在留外国人向け求人媒体「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」トップページのキャプチャ

ここからは、在留外国人向け求人媒体である「Guidable Jobs(ガイダブル・ジョブス)」を利用して、外国人採用に成功した事例を紹介いたします。

【事例1】即戦力人材の採用に成功!

  • 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約1万人
  • 掲載日数:180日
  • 採用者数:1名
  • 企業のサポート内容:休憩所・シャワー室・ロッカー完備、資格取得費を会社が負担

他県在住の外国人を越境採用。
外国籍の方向けの求人が少ないエリアで外国人の求人数が少ないからこそ、サポート内容を充実させることでスキルの高い人材(給与の幅で中間の以上に該当)の採用に成功しました。

【事例2】掲載初日から多数の応募者を獲得!

  • 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約7千人
  • 採用者数:1名
  • 企業のサポート内容:多数の外国籍者が勤務している環境、柔軟なシフト対応、社員登用制度あり

掲載開始初日に2名ご紹介、掲載開始3日後に1名ご紹介。1週間のご検討後、1名の採用が決まりました。
「外国人採用を積極的におこなっている企業」といった働きやすさ・安心感を企業の特徴として強調することで採用に成功しました。

【事例3】人口の少ない地域も大人数採用に成功!

  • 事業所所在地域(市区町村)の在留外国人数:約350人
  • 掲載日数:120日
  • 採用者数:6名
  • 企業のサポート内容:多数の外国籍者が勤務している環境、管理職が目指せる

12名の応募者のうち、6名を採用。
日本語要件を低く設定し、主婦層をメインにアプローチすることで採用に成功しました。

さいごに

企業が外国人労働者を受け入れるメリットは大きく、彼らは製造業の未来を支える大きな力になります。
雇用後に長期的に働いてもらうためにも、文化の違いやコミュニケーション方法を理解してより良い関係を築いていきましょう。

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