外国人を雇っている企業は、外国人が退職する時に、通常の退職手続きとは少し異なる対応が必要になります。

この記事では、外国人労働者の退職手続きについてわかりやすく説明します。

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​​日本人と同じ退職手続き

日本人と同じ退職手続きのポイントをまとめたイラスト

外国人でも、基本的な退職手続きは日本人と同じです。まずは、共通する手続きと注意点について説明します。

1. 退職届をもらう

外国人従業員は、就業規則に「退職は1か月以上前に申し出る」と書かれていても、このルールをよく理解していないことがあります。
だからこそ、退職の話が出たときには、退職届の提出について丁寧に説明することが大切です。

法律上は退職届を必ず出さなくてもいいですが、口頭で退職願いを受けるだけだと、退職日を間違って覚えたり、会社との間でトラブルが起きる可能性があります。そのため、必ず書面で提出してもらうようにしましょう。
退職届を受け取った後は、すぐに退職手続きや貸与品の返却、引き継ぎについて説明し、対応を進めることが大切です。

2. 健康保険証や貸与物を回収する

保険証の画像

外国人労働者が持っている健康保険証や貸与物は、退職日や最終出勤日までに必ず回収しましょう。
もし回収を忘れると、退職後に郵送で返却をお願いしなければならなくなったり、返却が難しくなったりすることがあります。
退職者が有給休暇を使っている場合、退職日には出勤しないこともあるため、最終出勤日を確認し、その日までにすべての貸与物を確実に回収することが大切です。

回収するものとしては、以下のようなものがあります。他にも回収するものがあれば、しっかりチェックしておいてください。

  • 健康保険証
  • 社員証
  • 制服
  • 名刺(本人や顧客のもの)
  • パソコン
  • 業務用携帯電話
  • 作成した資料やデータ など

データについては、従業員が勝手に削除や悪用しないように指示し、会社側で適切に処理しましょう。
また、名刺は顧客情報や個人情報が含まれているため、必ず回収する必要があります。

健康保険証は退職日まで有効ですが、退職日の翌日からは健康保険の資格が失われます。
そのため、退職日が過ぎたらすぐに、扶養家族分の健康保険証も一緒に返却してもらいましょう。

返却方法についても事前に確認しておくことが大切です。
リモートワークをしている従業員の場合は、郵送で返却できるように返却キット(配送箱や送り状など)を渡しておくとスムーズです。
ただし、日本の職場での退職が初めての外国人労働者には、直接会って受け取る方が安心できるかもしれません。

3. 社会保険の資格喪失手続き

社会保険は、退職日の翌日から資格がなくなります。
社会保険には健康保険や厚生年金が含まれていますが、これらの資格をなくす手続きは、資格がなくなる日から5日以内に行う必要があります。
たとえば、3月31日に退職した場合、資格がなくなるのは4月1日です。そして、4月5日までに手続きを終わらせなければなりません。

具体的には、管轄の年金事務所に「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」と、本人と扶養家族の健康保険証を提出します。
また、もし健康保険組合に加入している場合は、年金事務所だけでなく、健康保険組合にも「資格喪失届」を提出し、健康保険証を添付する必要があります。

手続きを適切に行わないと、退職者が社会保険を不正に使うリスクが高まりますので、確実に手続きを進めることが大切です。

4. 住民税の手続き

住民税の手続きは、すでに転職先が決まっていれば「給与所得者異動届出書」の作成を依頼して手続きを行うのが一般的です。

ただし、外国人が退職後の転職先が決まっていない場合の方が、注意が必要です。
住民税の手続きは、退職のタイミングによっても変わります。1年のうちどの時期に退職するかによって、住民税の納付方法が異なります。
たとえば、最後の給与から住民税が一括で引かれることもあれば、特別徴収から普通徴収に切り替わり、自分で住民税を納める必要が出てくることもあります。

外国人がこれを知らないと「なぜ退職時の給料がいきなり減ったのか」「突然高額な表が届いた」「普通徴収についてよくわからないから未納」など、後々のトラブルに発展することがあります。
ですので、徴収方法が変わることについて、退職の話がでた段階で説明しておいた方が親切です。

5. 離職票や源泉徴収票などの発行

退職者に渡す書類はおもに3つあり、それぞれ役割があります。

1つ目は源泉徴収票です。
これは再就職先で年末調整や確定申告をする時に必要な書類で、退職後1か月以内に郵送しなければなりません。

2つ目は雇用保険被保険者証です。
これは再就職先やハローワークでの手続きに使う大切な書類です。会社が保管している場合は、忘れずに返却してください。

3つ目は離職票です。
これは失業給付を受けるために必要な書類です。59歳未満の人が再就職の希望がない場合を除いて、退職後に発行します。59歳以上の人は必ず発行しなければなりません。

​​外国人特有の退職手続き 

外国人特有の退職手続きのポイントをまとめたイラスト

ここからは、退職者が外国人の場合にのみ発生する手続きについて紹介します。

1. 外国人雇用状況届出書の提出

「外国人雇用状況届出書」という書類があります。この書類は、外国人を雇った時だけでなく、退職する時にも提出する必要があります。退職日から10日以内に、ハローワークに提出しましょう。

もし、雇用保険の対象となる外国人が退職する場合は、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する時に、外国人の情報(在留カード番号など)を追加することで、外国人雇用状況届出書の代わりにすることができます。

届出の方法は、ハローワークに直接持って行くこともできますし、電子申請を使うことも可能です。
電子申請の場合は、「外国人雇用状況届出システム」を使います。
ただし、過去に届出用紙でハローワークに外国人雇用状況の届け出をしたことがある場合、オンラインでユーザーIDとパスワードを発行することができません。その場合は、担当のハローワークに問い合わせてみてください。

外国人雇用状況届出書とは? 外国人を雇用する事業主は提出必須!

2. 退職証明書の発行

退職証明書は、退職する人が希望する場合に発行する書類です。とくに、身分系以外の在留資格を持っている外国人が転職する時は、ほとんどの場合この証明書が必要になります。
なぜなら、入国管理局で在留資格を変更したり、就労資格証明書を申請する時に、この証明書を提出しなければならないことがあるからです。

退職証明書には、以下のような内容が書かれています。

  • 勤務期間
  • 業務の種類
  • 役職(地位)
  • 賃金(給料)
  • 退職の理由 など

この書類は、会社での事実を証明する役割を持っています。
決まったフォーマットはありませんが、厚生労働省が参考になる様式を公開しているので、そちらを参考にしてみてください。

3. 退職後に帰国する場合の税金手続き

外国人が退職したあとに帰国する場合は、税金の手続きが帰国のタイミングによって変わります。具体的には、次の2つのケースがあります。

最終給与や退職金を受け取ってから帰国する場合

この場合、企業は通常通りの税金の引き算(源泉徴収)を行い、年末調整もします。これによって、その年の税金がしっかりと精算されます。
つまり12月の年末調整を待たなくても、最後の給料や退職金で税金の調整が済むことになります。

最終給与や退職金を受け取るのが帰国後の場合

この場合、退職した人は帰国後に「非居住者」となるので、通常の年末調整は行われません。
その代わりに、企業は最後の給料や退職金に対して20.42%の特別な税金(非居住者源泉徴収)を引きます。この税率は「非居住者に適用される特別な税率」です。

退職した外国人は自分で確定申告をすることで、居住者として働いていた時に多く支払った税金を取り戻すことができます。

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退職する外国人本人が行う手続き

退職時に本人が行う手続きのポイントをまとめたイラスト

 

ここからは、外国人が退職するときに本人が行わなければいけない手続きについて紹介します。
外国人従業員によっては、この手続きを知らないこともあります。そのため、会社の人事担当者は退職時に説明しておきましょう。

1. 入国管理局への届出

退職した外国人は、退職日から14日以内に「所属(契約)機関に関する届出」を入国管理局に提出しなければなりません。

この届出の方法は、次の3つの中から選べます。

  • 出入国管理電子届出システムを利用する
  • 最寄りの入国管理局に書類を持って行く
  • 東京出入国在留管理局に郵送する

もし届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、1年以内の懲役や20万円以下の罰金が科されることがあります。
また、次回取得する就労ビザの期間が短くなる可能性もあるので注意が必要です。

参考:出入国在留管理庁 所属(契約)機関に関する届出

2. 転職先が決まっていない場合の手続き

退職後に転職先が決まっていない場合は、自分で国民健康保険に加入したり、年金を納める手続きをしなければなりません。
この手続きには、年金事務所や健康保険組合からもらう「資格喪失証明書」などが必要です。これらのことを事前に説明しておくと親切です。
また、手続きのサポートを受けられる連絡先を教えてあげると、さらに助けになります。

 

退職時に外国人からよく聞かれること

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ここからは、外国人従業員が退職するときに疑問を抱きやすいことや、よく受ける質問について紹介します。

Q1 退職後、何もしないで3か月以上過ごすとどうなるの?

退職した外国人が3か月以上何もしないでいると、在留資格が取り消されることがあります。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」といった在留資格は、特定の仕事をするために必要なものです。退職するとその条件が崩れ、「活動していない」とみなされてしまいます。

もし再就職のために活動していることを証明できれば(ハローワークに通うなど)、取り消されない場合もありますが、正当な理由がなく3か月以上無活動の場合は、資格が取り消されるリスクが高くなります。

Q2 失業手当は受け取れるの?

日本人と同じように、外国人も直近2年間に雇用保険に12か月以上加入していれば、退職後に失業手当(雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。

ただし、自己都合で退職した場合は、一般的に2〜3か月の給付制限があります。
この制限期間中に3か月が経つと、在留資格が取り消される可能性が高くなります。
また、長い間仕事をしていないと、次のビザ申請に悪影響を与えることもあります。ですので、退職後に失業保険の手続きをしたとしても、できれば3か月以内に新しい仕事を見つけるようにしましょう。

Q3 帰国するけど、支払い済みの年金は返ってくるの?

「脱退一時金」を請求すれば、今まで支払った年金保険料の一部が返ってきます。
以下の条件を満たすと、帰国後2年以内に自分で申請することで、脱退一時金を受け取れます。

  • 日本の国籍を持っていない
  • 厚生年金や国民年金を6か月以上支払った
  • 日本に住所がない
  • 年金を受け取っていない

この申請をすると、日本にいた間に納付した年金の記録がなくなるので、将来日本で年金を受け取ることができなくなります。
今後、日本に戻ってくるかもしれない場合は、よく考えてから申し込むようにしましょう。

参考:日本年金機構 脱退一時金

外国人労働者は年金加入するの?日本人労働者との違い、外国人特有の制度を解説!

さいごに

外国人労働者が退職する時は、後でトラブルが起きないように手続きをスムーズに進めることが大切です。

外国人本人が行う必要がある手続きについても退職前に質問されることがあるので、今回説明した内容をしっかり理解して、お互いに確認し合いながら進めるようにしましょう。

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