運送業界では、深刻な人手不足が続いています。そんな中で、外国人ドライバーの採用に注目が集まっているのをご存じでしょうか。

この記事では、人手不足が起きている背景と、運送業で新たに外国人が働けるようになった「特定技能1号」という制度について、わかりやすく説明していきます。

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なぜ今、外国人ドライバーが注目されているの?

まずは、外国人ドライバーが注目される背景について説明します。
運送業界では人手不足が続き、制度面でも受け入れ拡大の整備が進みました。

人手不足が深刻化する運送業界

厚生労働省の発表によると、2025年9月の全体の有効求人倍率は1.20倍でした。
全体的に人手が足りない状況が続くなか、ドライバー職(自動車運転の職業)の有効求人倍率は「2.5倍超」という高い水準で、採用の難しさが際立っています。

とくにトラック運転手の不足は深刻です。全日本トラック協会の調査でも、今後も人材不足が続くと予想されており、早急な対策が求められています。
その背景には、ネットショッピングやフリマアプリ(たとえばメルカリやヤフオクなど)の利用が増え、荷物の配送量が急増していることがあります。

また、国際的な貿易情勢や関税政策の影響により、物流の量が変動しやすくなっている点も無視できません。こうした変化が続くと、業務の負担が増え、さらに人手不足を悪化させるおそれがあります。

同じような課題は、バスやタクシー業界にも見られます。観光シーズンや都市部で需要が急に高まると、運転手が足りず、運行に支障をきたすこともあるようです。

このような背景から、外国人労働者の受け入れを進める動きが全国で広がっています。

参考:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和7年9月分)について

参考:全日本トラック協会 トラック運送業界の景況感(速報)

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外国人ドライバー向けの新しい在留資格が誕生!

活躍中の外国人ドライバーの画像

これまでは「永住者」や「日本人の配偶者等」といった、就労制限のない在留資格を持つ人しか、ドライバーとして雇用するのは難しい状況でした。
しかし、2024年3月に制度が見直され、自動車運送業(トラック・タクシー・バス)が新たに「特定技能1号」の対象分野に加わりました。

この制度では、特定技能を取得するための評価試験が必要です。試験は2024年12月から始まり、実施団体は一般財団法人日本海事協会となっています。

ポイント

  • 対象分野:自動車運送業(トラック・バス・タクシー)
  • 受け入れ見込み:5年間で約2万4,500人
  • 事業者側の要件:「働きやすい職場認証」または「Gマーク(安全性優良事業所)」の取得
  • 外国人側の要件:一定の日本語力の証明と、分野別評価試験の合格が必要
  • 準備在留:免許取得や新任研修のための「特定活動」が認められる

この改正により、トラック・バス・タクシー業界の人手不足を緩和し、物流の効率化や公共交通の安定運行につながることが期待されています。

参考:国土交通省 特定技能制度における自動車運送業分野の制度概要

トラック・バス・タクシーで必要な資格は違うの?

外国人が「特定技能」でドライバーとして働く場合、仕事の種類によって必要な資格や条件が少しずつ異なります。
ここでは、新しく対象になった「特定技能1号」で働くために必要な資格や条件を説明していきます。

業務内容と必要な資格の比較表

トラックドライバーに必要な資格と取得条件

トラックドライバーを目指す外国人が特定技能1号を取得するには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 日本語能力試験でN4レベルに合格すること
  • 特定技能1号評価試験に合格すること
  • 日本の運転免許(第一種運転免許)を取得すること

まず、外国人が日本でトラックドライバーとして働くには、外国の免許を日本の免許に切り替える「外免切替」を利用して、普通自動車運転免許を取るのが一般的です。
その後、日本の道路交通法に従って一定期間の運転経験を積み、中型や大型免許を取得していく流れになります。

特定技能1号評価試験では「運行業務」「荷物の積み下ろし(荷役業務)」など、トラックドライバーとして必要な知識が出題されます。
この試験に合格すると、特定技能1号の在留資格を取得でき、正式にトラックドライバーとして働けるようになります。

参考:全日本トラック協会 (外国人向け)トラック運転者を目指す人のための学習用テキスト

バス・タクシードライバーに必要な資格と取得条件

バスやタクシーの運転手を目指す外国人が特定技能1号を取得する場合も、いくつかの条件があります。

  • 日本語能力試験でN3レベルに合格すること
  • 特定技能1号評価試験に合格すること
  • 日本の運転免許(第二種運転免許)を取得すること
  • 新任運転者研修を修了すること

バスやタクシーを運転するには、まず第二種運転免許が必要です。
この免許を受けるには、普通免許などで3年以上の運転経験が求められますが、海外での運転経験も認められるため、日本に来る前の経験を活かせます。

また、日本語能力試験ではN3レベルの合格が条件です。これは、バスやタクシーの運転手が乗客への案内や接客対応を行うため、ある程度高い日本語力が必要だからです。

特定技能1号評価試験では「運行業務」「お客様への対応」に関する知識が出題されます。
この試験に合格し、日本の交通ルールや安全運転を学ぶ新任運転者研修を修了すると、特定技能1号の在留資格が認められ、バスやタクシーの運転手として働けるようになります。

参考:日本バス協会 (外国人向け)バス運転者を目指す人の為の学習用テキスト

参考:全国ハイヤー・タクシー連合会 (外国人向け)ハイヤー・タクシー運転者をめざす人のための学習用テキスト

二種免許試験が20言語に対応|バス・タクシー業界で進む外国人ドライバーの採用増加とその背景、今後の動向について解説

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外国人ドライバーを受け入れるときに気をつけることは?

注意点をまとめたイラスト

ここでは、外国人ドライバーの採用を考えている企業が、事前に確認しておくべきポイントを紹介します。
採用手続きや労働条件など、いくつかの点に注意が必要です。

外国人ドライバーの採用に必要な在留資格

外国人ドライバーを採用するには「身分系の在留資格(永住者・日本人の配偶者等・定住者)」 または 「特定技能1号(自動車運送業)」 が必要です。
また、「特定活動46号(本邦大学等卒業者)」 は、日本語を使った付加価値のある業務(たとえば通訳を伴う観光案内など)を行う場合に限り、タクシードライバーなどの職種で適用されます。

いずれの場合も、在留カードの原本確認外国人雇用状況届出書の提出など、法令に沿った手続きを必ず行わなければなりません。
在留資格に合わない仕事をさせると不法就労にあたるおそれがあり、企業にも罰則が科される場合があります。

特定技能で採用する場合、すでに別の在留資格で働いている人でも「特定活動(自動車運送業の準備活動)」に在留資格を変更することで、免許取得や研修を受けられます。この期間は、トラックが最長6か月/バス・タクシーが最長1年で、準備を終えたあとに特定技能1号へ移行する流れとなります。

特定技能ビザの取得には試験合格が必要

特定技能制度は、「即戦力として働ける人」を対象とした仕組みです。そのため、取得には評価試験と日本語試験 の両方に合格する必要があります。

評価試験では、仕事に必要な知識や技術を持っているかどうかを確認します。一方で、日本語試験は、職場でのコミュニケーションや安全に関する理解度を測るものです。
この基準は、特定産業分野に関係なく、特定技能ビザを取得するすべての外国人労働者に適用されます。

日本の運転免許を取得するタイミング

海外から新しく特定技能で受け入れる場合、基本的な流れは次の通りです。

  1. 評価試験・日本語試験に合格
  2. 入国後、「特定活動」で免許取得などの準備を実施
  3. 特定技能1号へ在留資格を変更

準備期間(特定活動)の上限は、トラックが最長6か月、バス・タクシーが最長1年です。
この間に、外免切替などで日本の運転免許を取得し(バス・タクシーは新任運転者研修も必須)、速やかに特定技能1号へ変更する必要があります。
もし期間内に免許を取得できない場合、特定技能への移行は認められません。

また、日本にすでに在住している外国人が在留資格を変更する場合も、身分系・特定活動46号以外の人は同様の流れを踏むことになります。
外免切替を行う際は、元の免許が有効であること、そしてその国に3か月以上滞在していた実績があることなど、細かな条件にも注意が必要です。

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特定技能外国人を受け入れる企業の条件

外国人ドライバーを受け入れる企業には、次のような条件が定められています。

  • 道路運送法に基づき、自動車運送業を経営していること
  • 自動車運送業分野特定技能協議会の会員であること
  • 「運転者職場環境良好度認証制度」または「Gマーク制度」による認証を受けた事業所を持っていること

これらを満たすことで、外国人ドライバーが安心して働ける環境を整えることができます。

労働条件は日本人と同じにする

外国人ドライバーを採用する際は、労働条件を日本人社員と同じにすることが原則です。
これは「同一労働同一賃金」というルールに基づいています。

外国人だからといって、給与を下げたり、不公平な待遇にしたりすることは法律で禁じられています。給料や福利厚生、休暇など、すべての面で平等に扱うことが大切です。
また、雇用契約を結ぶ際には、本人が理解できる言語で労働条件を説明するようにしましょう。そうすることで、トラブルの防止にもつながります。

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【実例でわかる】現場で活躍する外国人ドライバー

日本の運送業界はサービスの質が高く、初めて外国人を受け入れる企業ほど「接客の丁寧さ」や「免許取得の難しさ」に不安を感じることがあります。
ここでは、実際に外国人ドライバーが活躍している企業の事例を紹介します。

外国人タクシードライバーの活躍事例

日の丸交通株式会社

ダイバーシティ採用を積極的に進めており、現在は外国籍ドライバーが160名以上在籍しています(2025年10月時点)。
会社では、第二種免許の取得支援丁寧な研修を行っています。地理に不安がある未経験者でも安心してスキルを身につけられる環境が整っているのが特徴です。

公式ホームページでは、ドライバーたちの声(出身国・前職・研修での経験など)が多数紹介されており、実際の働き方を具体的に知ることができます。

アサヒ交通株式会社

フィリピン、ミャンマー、タンザニア出身のドライバーたちが、優れた接客スキルと高い仕事の能力を持ち、チームを盛り上げています。
外国人ドライバーの採用は試行錯誤を重ねた結果、成功に繋がり、企業が新しい時代に対応するための大きな一歩となりました。

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外国人ドライバーを大規模に採用する計画

センコーグループホールディングスは、2032年までに特定技能の外国人ドライバーを100人採用する計画を発表しています。
2025年4月から第1期生の受け入れを始め、モデル事業所で研修や教育の仕組みを整えたうえで、グループ全体へと広げていく方針です。

さらに、将来的には海外から直接、特定技能ドライバーを採用することも検討されています。
人手不足の解消と車両増強を両立させるため、計画的に人材の育成と登用を進めていく考えです。

参考:カーゴニュース センコーGHD、外国人ドライバー100人採用へ

さいごに

日本では、労働人口の減少によってドライバー不足がますます深刻になっています。
しかし、特定技能の対象に「自動車運送業」が新しく加わったことで、外国人ドライバーの活躍の場が広がりつつあります。

今後は、こうした人材の力を取り入れることが、運送業界の安定した運営にもつながるでしょう。
人手不足の解消を早めるためにも、この機会に外国人採用を検討してみてはいかがでしょうか?

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