バスやタクシーなどの旅客自動車運送業界では、ドライバーが足りないという大きな問題があります。とくに成田空港などの主要な場所では、外国からの旅行者が増えて需要が増加しています。
一方で、地方ではバスやタクシーが生活に欠かせない存在ですが、高齢化の影響で働く人が減っているのが問題です。

この記事では、こうした状況に対処するため、外国人労働者を雇う動きが進んでいる旅客自動車運送業界の現状について説明します。

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どうして今まで外国人ドライバーが少なかったの?

これまで、外国人ドライバーを雇いたいと思っても「外国人の候補者を見つけるのが難しい」という問題がありました。
とくに、タクシーやバスを運転するために必要な二種免許を持つ外国人がとても少なかったことが大きな理由です。その背景についてくわしく説明します。

ドライバーとして働ける在留資格に制限があった

2024年までは、外国人が日本でバスやタクシーのドライバーとして働くための在留資格がとても限られていました。実際、バスやタクシーの運転に必要なスキルや知識を持っていても、「ドライバーとして働きたい」というだけでは、仕事をするためのビザがもらえなかったのです。

ドライバーとして働ける適切な在留資格は、「身分系」のビザを持っている外国人だけでした。身分系のビザは、例えば「永住者」やその家族、難民、日系人など、日本に長い間住むことが決まっている外国人に与えられるものです。
一部の例外として、特定の活動をしている外国人が「特定活動(告示46号)」で働くこともありましたが、それでも、日本でドライバーになろうとするには、長い時間がかかることがほとんどでした。

二種免許の試験が外国人向けではなかった

試験で難しい問題に挑戦する女性の画像

日本でバスやタクシーのドライバーとして働くためには、必ず「第二種免許」が必要です。今までは、この免許を取るのは外国人にとっていくつかの難しい点がありました。

学科試験は日本語だけ

二種免許を取るためには、交通ルールや危険を避けるための知識を問う学科試験を受けなければいけません。しかし、この試験は2024年の上半期まで、日本語でしか受けられませんでした。
日本語が得意でない外国人にとって、試験はとても難しく、受けるのをためらう理由となっていました。

免許を取るまでに時間がかかる

また、二種免許を取るためには、普通自動車免許を取った後、3年以上待たなければなりませんでした。たとえば、タクシーのドライバーになりたいと思っても、普通免許を取ってから3年経たないと二種免許の資格が得られません。
そのため、ドライバーになりたくても他の仕事をして生活を支えなければならなかったのです。

外国人ドライバーを採用するバス・タクシー会社が増加!

これまでの問題点があったにもかかわらず、最近では日本のバスやタクシー業界で外国人を積極的に雇う会社が増えています。

先駆けは「身分系」の在留資格で働く外国人

バスドライバーとして働く、身分系ビザの外国人女性の画像

現在、バスやタクシーの運転手として「身分系」の外国人を雇っている会社は増えています。これらの企業に話を聞くと、外国人ドライバーは日本人と同じように、しっかりと働いていることがわかります。
最初は少し不安に思っていた企業も、外国人ドライバーが異文化を理解し、乗客に思いやりを持って接する様子を見て、その不安が解消されました。

また、外国人ドライバーを雇うことで、次のようなメリットがあると評価されています。

外国人ドライバーならではの多言語対応

日本にはどんどん訪れる外国からのお客様(インバウンド)が増えています。
観光客はバスやタクシーを使うことが多いため、車内で多言語対応ができることが重要です。

外国人ドライバーは、外国のお客様に日本の魅力を伝えたり、おすすめを紹介したりできるため、インバウンド層に対して特別なサービスを提供できる存在となります。

日本語能力が完璧でなくても、コミュニケーションが取れれば問題ない

バスやタクシーの運転手には、ある程度の日本語力が求められますが、たとえば面接でしっかりと返事ができれば、それで十分と考える企業もあります。
また、仕事の内容はバス停の場所を覚えたり、運転に集中したりすることが多く、難しい書類を読むことは少ないため、JLPT(日本語能力試験)の資格がなくても問題ないことがよくあります。

外国人は母国での生活や移住経験を通じて、柔軟性や順応力を身につけており、新しい環境にすぐ馴染み、他の日本人社員とも協力して働けることが多いです。

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「特定技能」の在留資格にドライバー職が追加

外国人ドライバーを雇いやすくするために、入管法(外国人の入国や滞在に関する法律)が改正されました。改正されたのは「特定技能」という、人手が足りない業界ですぐに働ける外国人を受け入れるための在留資格です。

2024年から、この特定技能が「自動車運送業」にも適用され、バスやタクシードライバーが対象となることが決まりました。これにより、2024年12月には新しい試験内容が発表され、ドライバーを採用するための準備が進んでいます。
今後5年間で、最大2万4500人の外国人ドライバーが日本で働けるようになる見込みです。
これにより、ドライバーとして働ける外国人の数が大きく増えることが期待されています。

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二種免許試験が20か国語に対応

2024年9月から、今まで日本語だけで行われていた二種免許の学科試験が、20か国語に対応するようになりました。これによって、外国人の方々が二種免許を取得しやすくなります。

この詳細については、後ほどくわしく説明いたします。

二種免許を早く取得できるようになった

2022年から、特別な教習を終えると、19歳以上で普通免許を持っている人は、もっと早く二種免許の運転試験を受けられるようになりました。
具体的には、以下の教習を終えれば受験資格が得られます。

  • 旅客自動車を運転するために必要な適性(自己制御能力)について、座学や実車を含む7時間以上の教習
  • 旅客自動車を運転するために必要な技能(危険予測・回避能力)について、座学や実車を含む29時間以上の教習

これらの教習を受けることで、二種免許を早く取得することができます。

参考:警察庁 第二種免許等の受験資格の見直しについて

二種免許試験が20言語に対応して何が変わるの?

20か国の国旗の画像

ここからは、外国人がタクシードライバーとして働き、交通業界の人手不足を解消していくために行われた重要な取り組みについて詳しく説明します。

外国人受験者にとってのメリット

二種免許試験が多言語に対応することで、外国人受験者にはとても大きなメリットがあります。まず一番大きなポイントは、自分の母国語で試験を受けることができるので、言葉の不安や負担が減ることです。
これによって、日本語が得意でない人でも、交通ルールや安全運転についてしっかりと理解できるようになりました。

また、試験内容を正確に理解できることで、運転中の安全意識が高まり、交通事故を減らすことにもつながると考えられています。
そのため多言語対応は受験者にとっての負担を減らすだけでなく、交通安全にも大きく役立つ取り組みとも言えます。

対応言語の種類

二種免許試験の多言語対応には、合計20の言語が含まれています。

英語、スペイン語、ペルシャ語、韓国語、中国語、ポルトガル語 ロシア語、タイ語、タガログ語、ベトナム語、インドネシア語、クメール語、ネパール語、ミャンマー語、モンゴル語、ウクライナ語、シンハラ語、ウルドゥー語、アラビア語、ヒンディー語

これらの言語は、日本に住む外国人の出身国や母国語を考慮して選ばれており、幅広い受験者のニーズに応えています。
この対応により、受験者は試験内容を正確に理解しやすくなり、合格率の向上にも役立っています。

外国人ドライバー採用のこれからの動き

二種免許試験が多言語に対応することは、外国人ドライバーを採用するための大きな第一歩に過ぎません。今後は、さらに制度の改善やサポート体制を強化することが必要です。
たとえば、外国人が働きやすい職場環境を作るために、企業は多文化に対応した教育やサポートをしっかり整えることが大切です。

こうした取り組みによって、日本の交通業界はもっと多様な人材を受け入れることができ、労働力不足の解消が期待されています。
外国人ドライバーが活躍することで、業界全体に新しい価値が生まれる未来が見えてきています。

さいごに

いろいろな国から来た外国人がバスやタクシーのドライバーとして働くことで、業界がもっと国際的で多様なものになります。
外国人ドライバーを採用することで、働き手を増やし、地域の発展にもつながるでしょう。

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