外国人が増加傾向にある近年、多くの企業が積極的な「外国人採用」をはじめています。日本を訪れる外国人留学生はコロナ直前の時期には31万人程度で年々増加していましたが、コロナ後には25万人以下にまで減っています。
とはいえ日本国内の労働力が減っている中では、外国人留学生の獲得競争も次第に激しくなっています。

実際には日本での就職活動を行う外国人留学生は、日本独自の就活システムに戸惑うことが非常に多いともいわれています。疲弊して日本での就業をあきらめる学生も少なくありません。
外国人雇用を検討する企業さまは、これら留学生が抱える悩みや問題もしっかりと把握して対策しておくと成功する可能性は上がるでしょう。

今回は外国人の新卒採用に関する情報をまとめました。

外国人の新卒採用における最近の動向

外国人の新卒採用を検討する企業は、外国人留学生の就職活動状況などを事前にしっかりと把握しておきましょう。
また同時に新卒の外国人が好みやすい業界もリサーチしておくと、効率的な採用活動が行えるでしょう。
そこでまずは外国人の新卒採用者の割合、新卒外国人に人気の業界をリサーチしました。

新卒外国人はどれくらいいるの?

冒頭でもお伝えしたように、近年は高等教育機関(大学や大学院など)への外国人留学生は増加傾向にあります。しかし実際に新卒採用のみの枠でいうと、外国人留学生が占める割合は決して高くはありません。
以下に参考になるデータをまとめました。

新卒採用における外国人留学生の割合
2013年1.66%
2014年1.54%
2015年1.82%
2016年1.75%
2017年1.67%
2018年1.89%
※割合は大学、大学院卒相当、正規社員として採用されたもの

【参考】リクルートワークス研究所「外国人留学生は若手採用難の時代の“救世主”たりえるか 古屋星斗」

上記の表を見ると、2013年から2018年までの新卒採用における外国人留学生の割合は1.5%~1.9%ほどと横ばい状態がつづいています。

2020年からは新型コロナウイルスの影響もあり、留学生の数は減少しましたので、留学生が日本企業に新卒で入社している割合は増えていないと考えられます。

ちなみに法務省入国管理局によれば、平成29年に就職目的で在留資格変更を申請した留学生は2万7,926人となっており、このうち2万2,419人が許可されています。これは前年(平成28年)の2万1,898人より6,028人(27.5%)、前年の許可数である1万9,435人より2,984人(15.4%)増加していることになるのです。

【参考】法務省入国管理局「平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」

また平成29年における在留資格変更許可申請に対する許可状況をおもな国籍、地域別でみると以下のようになります。

国籍・地域許可数
中国1万326人 (前年比713人 6.5%減)
ベトナム4,633人 (前年比2,145人 86.2%増)
ネパール2,026人 (前年比859人 73.6%増)
韓国1,487人 (前年比65人 4.6%増)
台湾810人 (前年比 121人 17.6%増)

【参考】法務省入国管理局「平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」

日本企業での就職を希望する外国人留学生を国別にみると、中国、韓国、台湾など日本から近い国や地域からの留学生が多く、平成29年は東南アジアのベトナムからの日本企業就職を希望する若者が増加しました。

新卒外国人はどんな業界が好き?

ついで新卒外国人に人気の業界や、志望業界などのデータをチェックしていきましょう。
株式会社ディスコが2018年6月~7月にかけて、2019年3月卒業予定の外国人留学生に対して行ったインターネット調査によると、文系・理系の志望業界上位は以下のようになりました。

文系の志望業界ランキング

 順位 文系志望する割合
1位総合商社34.4%
2位情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト23.4%
3位調査・コンサルタント22.5%
4位情報・インターネットサービス22.0%
5位自動車・輸送用機器20.1%
6位専門商社19.6%
6位電子・電機19.6%
8位ホテル・旅行18.7%
9位銀行13.9%
10位マスコミ12.0%
※40業界の中から5つまで選択した結果

理系の志望業界ランキング

 順位 理系志望する割合
1位電子・電機30.4%
2位自動車・輸送用機器25.0%
2位水産・食品25.0% 
4位医薬品・医療関連・化粧品23.2%
4位素材・化学23.2%  
6位エネルギー21.4%
6位情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト21.4% 
8位機械・プラントエンジニアリング16.1%
9位精密機器・医療用機器14.3%
10位商社12.5%
10位情報・インターネットサービス12.5%
※40業界の中から5つまで選択した結果

【参考】株式会社ディスコ「外国人留学生の就職活動状況」

ご覧のように同じ外国人留学生という枠でも文系、理系によって人気の業界や志望業界は異なることがわかります。
文系の第1位にランクインした商社(総合)は、グローバルに活躍できる業界でもあるため毎年多くの外国人から一定の人気を集めています。

また文系の上位には「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」「情報・インターネットサービス」などがランクインしており、IT業界への就職を希望する外国人が多いこともわかります。
一方の理系は上位に「電子・電機」「自動車・輸送用機器」「水産・食品」が入っているように、おもに研究や開発などをともなう専門的な製造業が人気です。

外国人の新卒採用、求職者の不安は?!

外国人の就職活動では有名な話ですが、日本とはちがう文化の国から来た留学生にとっては、日本の就職活動のスタイルは奇妙で困惑することが多いようです。

実際、外国人留学生に就職活動の難易度の調査をしたところ、「とても厳しい」と回答したグループが42.8%「やや厳しい」と回答した組が37.9%となってなり、日本での就職活動に厳しさを感じている外国人は8割に上ることがわかっています。

【参考】株式会社ディスコ「外国人留学生の就職活動状況」

難しすぎるビジネス敬語

日本での就職活動を難しくさせている原因のひとつに「日本語」「敬語」「ビジネス敬語」など、言葉の壁が高いことがあげられます。そもそも日本語は世界でも難しい言語(とくに英語ネイティブの外国人)に分類されることが多いです。
本来であれば日常会話レベルの日本語を習得するだけでも、相当にすばらしいことです。

ところが就職活動などのビジネス世界になると、単に言葉を理解して発するだけではなく、ビジネスシーン特有の敬語もおぼえる必要があります。一例ですが「会社」という言葉ひとつとっても「当社」「弊社」「御社」「貴社」など、複数の言い方が存在します。
これらはコミュニケーションを取る相手によって、言い方を変化させていかなければなりません。外国人にとっては非常に難しく感じるでしょう。

もちろん上記の例は、あくまでもビジネス用語のひとつ。日本での就職を希望する場合は、ほかにも数多くのビジネス用語や敬語を学ぶ必要があります。

面接がリラックスできない

外国人留学生が日本での就職活動に難しさを感じる理由の2点めが面接です。
日本での就職活動は「集団面接」はもちろんのこと、「個人面接」でも面接官が複数いるケースもあります。

また日本は海外と比較すると、1回の面接時間が長いという特徴もあるようです。実際に「アメリカの面接は10分~15分ほどだけど、日本では1時間半以上の面接を行ったことがある」という外国人からの話もあります。

▼具体的にアメリカと日本の面接の違いは?

項目内容
フォーマリティ(形式)日本の企業の面接は、一般的にフォーマルであり、社会的なヒエラルキーを尊重する傾向があります。アメリカの企業の面接は、もちろんフォーマルですが、よりカジュアルなアプローチが一般的です。
質問のスタイル日本の面接では、応募者の人格やチームワーク能力、忠誠心など、個人の性格や社会的スキルに焦点が当てられることがあります。一方、アメリカの面接では、経験や過去の実績、具体的な業務に関する質問が一般的です。
面接の長さと構造日本の面接は、複数のラウンドで行われることがあり、複数の人物との面接が一般的です。一方、アメリカの面接は、一般的により短く、ひとつのラウンドで完了することが一般的です。
自己アピールのスタイルアメリカの面接では、自己PRや自己主張が重視される傾向があります。応募者は、自分の強みや成果に焦点を当て、それを具体的な例で説明することが求められます。一方、日本の面接では、謙虚さやチームプレイ能力が重視されることがあります。

外国人の新卒採用、企業が注意することは?

外国人の新卒採用ではいくつかの注意点がありますが、企業側も留学生も忘れてはならない手続きのひとつに「ビザの更新」があります。外国人留学生の場合は、日本での就職を希望する場合、就労ビザへの変更手続きを行わなければなりません。
新卒の外国人を採用する場合は、企業(雇用側)が国から留学生に働いてもらう許可を得なければ、正式雇用は不可ということです。

新卒の留学生を採用する場合、申請人の居住地を管轄する地方入国管理局にて、在留資格変更許可申請を行う必要があります。在留資格変更許可申請の詳細や手続き方法などは、出入国在留管理庁のサイトで確認できます。

外国人の新卒採用について理解できましたか?

今回は外国人の新卒採用に関する、お役立ち情報を解説しました。
外国人を新卒で雇う企業は増加しており、外国人向けの求人サイト、就職サイトも増えています。しかし多くの留学生は、言葉の高すぎる壁や、日本独自の就活システムに戸惑い、母国に帰ってしまうケースもまだまだ多いです。

そのため雇用する側も、外国人が就労しやすい体制を整えたり、外国人社員向けの研修を充実させたりといった工夫、対策をほどこす必要もあるでしょう。もちろん留学生は職場環境だけではなく、面接時の雰囲気にもとまどうことが多いです。これらの課題、問題にも積極的に取りくむことが大切です。